本記事は 11月13日「 人気記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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スケルツォ倶楽部
名優ゲアハルト・シュトルツェの演技を聴く
 オルフ「オイディプス王」(クーベリック)D.G.ゲルハルト・シュトルツェ(最小サイズの肖像写真)   目次は こちら

(15)1960年、クナッパーツブッシュの指揮で
   ダーヴィットを演じる


 1960年「ダーヴィット」
 ~ ワーグナー:楽劇「ニュールンベルクのマイスタージンガー」

 1960マイスタージンガー(クナッパーツブッシュ)
ワーグナー:楽劇「ニュールンベルクのマイスタージンガー 」
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮
バイロイト祝祭管弦楽団、合唱団
ヨーゼフ・グラインドル(ザックス )
テオ・アダム(ポーグナー )
ルートヴィヒ・ウェーバー(コートナー )
ヴォルフガング・ヴィントガッセン(ヴァルター )
カール・シュミット=ワルター(ベックメッサー )
ゲアハルト・シュトルツェ(ダーヴィット )
エリーザベト・グリュンマー(エーヴァ )
エリーザベト・シェルテル(マグダレーナ )他
ライヴ録音:1960年7月
Golden Melodram(輸入盤 G.M.1.0029-4CD )

 偉大なハンス・クナッパーツブッシュ(1888-1965)が、バイロイト祝祭劇場 ワーグナーの楽劇「ニュールンベルクのマイスタージンガー」を指揮するのは 1952年以来、実に8年振りとなります。
 クナッパーツブッシュは、戦後の新バイロイト開幕以来 1953年を除いて、殆んど毎年 同音楽祭の指揮台に迎えられましたが、一度だけ1955年に「さまよえるオランダ人」を振ったことを例外にすれば、その主要な演目は 舞台神聖祭典劇「パルジファル」で、この他には 楽劇「ニーベルングの指環」4部作と 楽劇「マイスタージンガー」以外の作品を振ることは基本的にはなく、その死の前年まで バイロイト祝祭劇場の指揮台に 193cmの長身で立ち続けました。

▽ ハンス・クナッパーツブッシュが指揮した バイロイト演目の記録
( 出典は、バイロイト音楽祭 公式アーカイヴから )

1951年:「パルジファル」、「ニーベルングの指環」、「マイスタージンガー
1952年:「パルジファル」、「マイスタージンガー
1953年:(病欠) ヴィーラント・ワーグナーとの不仲説も。
      代行した指揮者は クレメンス・クラウス(「パルジファル」、「リング」を指揮)
1954年:「パルジファル
1955年:「パルジファル」、「さまよえるオランダ人
1956年: 「パルジファル」、「ニーベルングの指環
1957年:「パルジファル」、「ニーベルングの指環
1958年:「パルジファル」、「ニーベルングの指環
1959年:「パルジファル」、
1960年:「パルジファル」、「マイスタージンガー
1961年:「パルジファル
1962年:「パルジファル
1963年:「パルジファル
1964年:「パルジファル

 この1960年のバイロイトにおける「マイスタージンガー」の録音で聴かれるクナッパーツブッシュの選んだテンポ設定は 実に素晴らしく、たしかに速度は遅いのですが、かつて「リング」の一部で聴かれたような 超スロー・テンポに陥ることは無く、それは オーケストラと舞台の両方が 極めて自然に深呼吸を繰り返すような、誠に快適なスピードを選択していると思います。

 シュトルツェは八面六臂の大活躍
 1960年、ゲアハルト(ゲルハルト)・シュトルツェルドルフ・ケンペの指揮により 初めてバイロイトで「ラインの黄金」の「ローゲ」を演じ( 既述 )、同時に 1956年以来 大好評の当たり役「ダーヴィット」として「マイスタージンガー」のステージでも走り回っていたわけですから、この年の夏 相当に忙しかったのではないでしょうか。
 この役 - 靴職人の親方ザックスに仕える徒弟「ダーヴィット」役を ここまでにシュトルツェがどれほど磨き上げてきたかを、不十分な音質ながらも貴重な録音によって、私たちは自分の耳で確かめることが出来ます。
 肝心の第1幕、シュトルツェの聴かせどころ - 騎士ヴァルター(この年もヴォルフガング・ヴィントガッセンが演じています)に、ダーヴィットが「作詩を志す者の心得」を 得意気に説明しようとする場面 - も、おそらく原テープの劣化によってでしょう、この前後の部分は特に貧弱な音質に落ちてしまうのが誠に残念ではありますが、ここでのシュトルツェの巧みな歌唱を聴いていると、やはり心を奪われてしまいます。
 靴の製造工程を巧みに洒落ながら、定められた文法・語彙・韻といった専門用語の解説をしつつ、たくさんの言葉、単語や用例を まるで奇術師が空中に放り上げながら次々と広げて見せるように シュトルツェが猛烈に歌いまくるのを聴いていると、本当にワクワクして 私など もうじっとしていられなくなってしまいます。
 その出色の演技力を駆使し、ドラマの台詞の一言一言に適した「音声」が、この稀代のキャラクター・テノールの喉の奥から あたかも順々と高射砲のように飛び出してくる様子たるや、もう圧巻です。
 時に 作り声、時に裏声、地声、猫なで声、怒声、嗄(しゃが)れ声、ささやき声など、まるで初期のディズニー映画のように 目まぐるしく七色の声を駆使しながら、まさしくその能力の本領を発揮し切っている様子を ご堪能ください。

第3幕の冒頭にも聴きどころが。
 クナッパーツブッシュによる この落ち着いた前奏曲の素晴らしいテンポは、 ワーグナー演奏の ひとつの理想であると断言してもよいでしょう、その緩やかな音楽に乗って シュトルツェのダーヴィットが ザックス工房に登場します。ここから 徒弟による 長い独り言が始まります。
 親方が黙り込んでいる理由が判らず、ははあ、さては昨夜の大喧嘩(第2幕第7場)のことで、きっとザックスは自分のことを怒っているに違いない、ひぇー 叱られるのだろうか、叩かれるだろうか、ああではないか、こうではないかと、くよくよ思い悩む小心な若者の 内心のストレスが手に取るように伝わってきます。
 シュトルツェの演じるダーヴィットの コミカルな独白、仕草の自然さ、軽妙な表情など、その全てが、私の贔屓(ひいき)目から聴けば、「史上最高」とまで言い切りたくなります。
 ようやく口を開いてくれた親方に促され、徒弟ダーヴィットが ヨハネ祭の宣言句を歌おうとして、いきなり間違え、あろうことか 昨晩のベックメッサーの 調子っぱずれな求婚歌のメロディで(・・・出だしが似ている!)歌いだしてしまう、その微妙な間の取り方の可笑しさも絶品。
 あらためて気を取り直し、再び宣言歌を しかし極めて一本調子に なんとか無事に歌い通しますが、その徒弟の生真面目さが シュトルツェの「演技」であることは 言うまでもありません。上手い!
 このメロドラム盤は、たしかに 部分によっては著しく音質にムラもあるのですが、平均的な鮮明さという点では クリュイタンス(1956年)盤 の録音状態より、かなり聴きやすいものと感じます。

次回 (16)喜歌劇「こうもりオルロフスキー公爵 を演じる に続く・・・

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