本記事は、11月 9日「人気記事ジャズ ランキング」で 第1位となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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(14)「ヤング・アンド・ファイン 」
   (ステップス )1979年


本ストーリーは 前回(13)「ヤング・アンド・ファイン」(アート・ファーマー)の 続きです。
まだ お読みでない方は ⇒ こちら から どうぞ

 ステップス「スモーキン・イン・ザ・ピット Smokin’In The Pit 」
 マイク・マイニエリ率いる 偉大なるグループ“ ステップス Steps ”。この創造的なグループは、1979年(ランディマイケルの)ブレッカー兄弟が経営するニューヨークのライヴハウス「セヴンス・アヴェニュー・サウス」で活動していたマイク・マイニエリを中心としたセッション・バンドとして結成されました。
 スイングジャーナル1980年2月号には このマイニエリのグループの「セヴンス・アヴェニュー・サウス」におけるライヴを伝える記事が掲載されていますが、名称は マイニエリの「自己のグループ」としか記されていません、しかし そのメンバーは そのまま初代ステップスでした。おそらく 圧倒的な日本公演の成功を終え、その勢いを受けて 次はホームでのセッションに臨んだものでしょう。

 その歴史的な 初代ステップス Steps の スーパー・メンバーは、以下のとおり。
Mike Mainieri(Steps 1979) Michael Brecker(Steps 1979) Don Grolnick(Steps 1979) Eddie Gomez(Steps 1979) Steve Gadd(Steps 1979)
(左から) マイク・マイニエリ(ヴィブラフォン)Mike Mainieri
マイケル・ブレッカー(テナー・サックス)Michael Brecker
ドン・グロルニック(ピアノ)Don Grolnick
エディ・ゴメス(ベース)Eddie Gomez
スティーヴ・ガッド(ドラムス)Steve Gadd


Smokin In Pit(日本コロムビア=Better Days) ステップス 演奏風景
【 日本コロムビア Better Days盤(2枚組LP)の曲順 】
1枚目 side A
  1. ティー・バッグ Tee Bag
  2. ラヴァー・マン Lover Man
1枚目 side B
  1. フォールティ・テナーズ Fawlty Tenors
  2. ソング・トゥ・セス Song To Seth
2枚目 side A
  1. ヤング・アンド・ファイン Young And Fine
  2 . ソウル・アイズ Soul Eyes
2枚目 side B
  1. ノット・エチオピア Not Ethiopia
  2. サラズ・タッチ Sara’s Touch

録音:1980年12月14、16日、東京 The Pit Inn

Smokin In Pit(NYC) ステップス at Pit In 1979
【 NYC盤(2枚組CD)の曲順 】赤字は 未発表トラック
Disc-1
 1. Tee Bag (13:44)
 2. Uncle Bob (11:00)
 3. Fawlty Tenors (10:46)
 4. Lover Man (08:34)
 5. Fawlty Tenors (Alternate Take) (12:30)
 6. Song To Seth (13:02)
 7. Momento (New Addition) (02:55)
Disc-2
 1. Young And Fine (16:32)
 2. Not Ethiopia (10:59)
 3. Soul Eyes (12:15)
 4. Recorda Me (New Addition) (10:10)
 5. Not Ethiopia (Alternate Take) (12:00)
 6. Sara’s Touch (13:59)

( 録音、ロケーション:同じ )
 
 初代ステップスの主要なメンバーは、当時「フュージョン・プレイヤー」と認識されていた若手のミュージシャンたちでしたが、もともと生粋のジャズ畑での仕事を手掛けてきた実績もありました。
 Mike Mainieri 「Blues On The Other Side」(1962年 Argo) Mike Mainieri(1962年 Argo)「Blues On The Other Side

 マイク・マイニエリは、自己のビッグバンドも率いていた大物ドラマー、バディ・リッチのアレンジャーとしての仕事が そのキャリアの出発点でした。最初のリーダー・アルバム「Blues On The Other Side(1962年 Argo盤 MVCJ-19187)」は ミルト・ジャクソンジョン・ルイスが中心だったモダン・ジャズ・カルテット M.J.Q. と同じ楽器編成(ヴァイブ、ピアノ、ベース、ドラムス)、マイニエリ自身によるオリジナル曲には優れた非凡さを感じますが、後年のマイニエリに比べると 演奏は かなりおとなしい4ビート・ジャズです。ちなみに ここでドラムスを叩いているのは、ジェフ・ポーカロの実父(!)ジョセフ・ポーカロJr.。
 
 A Simple Matter Of Conviction エディ・ゴメスが初参加したビル・エヴァンスのアルバム(Verve)

 エディ・ゴメスについては 長く ビル・エヴァンス・トリオのベーシストを務めていたことで有名ですから、もはや あらためて申すまでもないでしょう。写真のディスク( A Simple Matter Of Conviction、1966年 Verve盤 )は エディ・ゴメスビル・エヴァンスとの最初の共演盤です。向かって右側のソファの向こう側にいる髭でメガネの男が若きゴメスです。ちなみに このトリオのドラマーは、珍しくも ウェスト・コーストの名手シェリー・マンでした。

 Horace Silver 「In Pursuit of The 27th Man」(BLUE NOTE) ブレッカー兄弟参加の ホレス・シルヴァー 72年 BLUE NOTE盤 
 
 ステップスで もう一人の重要な人物だったマイケル・ブレッカーが、かつてトランペッターの兄ランディと共に ブルーノートの名ピアニスト、ホレス・シルヴァーのクインテットのフロントを務めた 1972年の貴重な録音「In Pursuit of The 27th ManBLUE NOTE / 7243 5 35758 2 3 )です。3曲に参加、特に 発起人(妻)は このA面3曲目「Gregory Is Here」の テナーサックス・ソロに注目しています。若きマイケルは ソロの冒頭、意表を突いて 半拍飲み込んでから蹴つまずくようなスタート・ダッシュを聴かせます。エリック・ドルフィーのように斬新で 予想外な跳躍を聴かせる 不思議な即興フレーズには、思わず誰しも引き込まれるでしょう。

 発起人(妻)の個人的な思い出
 偉大なステップスの初来日は、若手ミュージシャンや 音楽を真剣に愛する学生たちに大きな影響を与えました。六本木ピット・インにおける来日公演はもちろんのこと、2枚組LP「Smokin' In The Pit (Better Days盤 ) 」の発売は、日本中のジャズ愛好家を(聴く者も演奏する者も)圧倒したと言ってよいと思います。
 ステップスに触発されるように 渡辺香津美、清水靖晃、笹路正徳など 才能ある当時の若手ミュージシャンたちに同様のスタイルを踏襲する動きが見られ始め、大学祭・学園祭では「新しい4ビート・ジャズ」がトレンディとされ、コピーされ 模倣されまくっていました。
 この当時、わたしは 都内某私立大学の付属中学校に在籍していて、系列の大学の軽音楽部のずっと年上の先輩たちが 夜遅くまで一生懸命「縦乗り」の4ビートに取り組んでいる姿を目撃しています。特にステップスの音楽は、彼らにとって 最先端ジャズのまさしく「教科書 」でした。本当に良い時代でした・・・。
 スティーヴ・ガッドが叩く 独特の4ビート・ジャズのスイング感覚、個人的な嗜好を言っちゃうと( 名ピアニスト チック・コリアとのセッションは別格にして )、わたしは この六本木ピット・インにおける ステップスの一員としてプレイするガッドの演奏が、最も好きでした! これは断言しちゃいます。

 クラヲタへ 無茶な前置きを ひとつ
 ・・・しかし クラヲタの皆さまには 果たして感じ取って頂けるでしょうか、この演奏内容の凄さを。
 もし この2枚組名盤の素晴らしさを 無理矢理 クラシック音楽のディスクの中から 比肩し得るような存在を 探してみるとしたら?
 うーむ・・・ と 三日ほどかけた熟考の末、出した結論は -
 バッハ ブランデンブルク協奏曲(SEON)1977 バッハ ブランデンブルク協奏曲(SEON盤 )

 ・・・はい。グスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヘン、クイケン兄弟、アンナー・ビルスマといった 凄いメンバーが1976~1977年、一堂に会した セオンの名盤 J.S.バッハの「ブランデンブルク協奏曲 」全曲盤で どうだ! と大胆に言い切ってみせたら、その価値の大きさが クラヲタの皆さまにも 多少伝わるでしょうか・・・(?)。
 ・・・閑話休題。

 ステップス「スモーキン・イン・ザ・ピット 」全曲の感想、一挙掲載!
 
 「ティー・バッグ Tee Bag 」 は、マイク・マイニエリの作曲。
 ブルージーなテーマに 覇気が漲(みなぎ)っています。従来のジャズ・ドラマーの横揺れのスイング感とは明らかに異なる、恰も垂直に4つを刻むような“デジタル感覚”の縦乗りスイング感は 古今東西ガッドのドラミングだけに聴かれたオリジナルな個性です。ソリストのフレーズに極めて敏感に反応する見事なバッキングもライヴならでは、特にソリストがマイケル・ブレッカーマイニエリの時に彼らの演奏をプッシュ・アップするような、ガッドによる良い意味での「煽り」は凄まじいです。
  ・・・・・ 
 CD(NYC)盤で初めて追加収録されたドン・グロルニック作曲の「アンクル・ボブ Uncle Bob 」は、このピット・イン・ライヴが収録される約一週間前の12月8、10日 同じメンバーでスタジオ録音されたステップスのアルバム「ステップ・バイ・ステップ Step By Step 」の中で演奏されていた 新しい感覚の4ビート・ナンバーでした。
 Steps Step By Step(1979)  Steps_A Collection(NYC)
 ステップ・バイ・ステップ Step By Step 」(左)LP(Better Days )盤のジャケット(右 )CD再発(NYC )盤 
 
 この「アンクル・ボブ Uncle Bob 」は、テーマの動機を有効に使いながら その場でソロ・フレーズをドンドン再構築させてゆくマイケル・ブレッカーのテナーから 挙げ句の果てに「セント・トーマス」のフレーズまで噴き出すとは思わなかった! 一瞬で了解したガッドが これにアクセントを叩き込んでみせる反射神経にも感嘆の一語です。続くグロルニック自身のピアノ・ソロも シングル・ノートとブロックコードのフレーズが バランスよく交互に転がる快適さ。4ヴァース交換、ここでは ガッドの弾(はじ)けまくるドラムスの創意が際立ってユニーク。テーマ再現の時には もう乗っちゃって止まらないって言うか、溢れだすエネルギーをとどめることが出来ないほど、まさに演奏家と一緒に楽興の時をシェアしてもらえます。
  ・・・・・
 「ラヴァー・マン Lover Man」は、言うまでもなくJ.デイヴィス、R.ラミレス、J.シャーマン共作の有名なジャズ・スタンダード。凄演の余熱を冷ますかのように マイニエリのクールなヴァイブ演奏でスタート、グロルニック - エディ・ゴメス - ガッドによるピアノ・トリオに続いて 再びマイニエリの楽想を途切れさせない見事なソロ、そして短いカデンツァの後 簡潔に終わります。
  ・・・・・
 「フォールティ・テナーズ Fawlty Tenors 」は、ドン・グロルニックの作曲。オリジナル(Better Days)LPに収録された演奏の他、未発表の別テイクもCDに収録されました。
 この奇妙なタイトルは、わたしの憶測ですが グロルニックが好んでいた「フォールティ・タワーズ Fawlty Towers」( あの伝説的な「モンティ・パイソン 」の主要メンバーだった ジョン・クリーズ 主演・演出、英BBCが1970年代後半に制作した全12話のコメディ番組 )のタイトルのパロディではないかと思います。
 BBC_Fawlty_Towers.jpg BBC_Fawlty_Towers_Title_Wikipedeia.jpg
 ・・・もとい、これは ガッドが得意とするサンバ風のラテン・リズムと急速な4ビートが交互に現れるキメの多い複雑なナンバー。オリジナル・ヴァージョンでは ピアノ → ヴァイブ → テナー のソロ順でしたが、別テイクでは ピアノとヴァイブの順序が交替、また わずかですがテンポも遅くなっています。ソロの内容量と充実度は甲乙つけがたいですが、演奏の熱さと持続度はオリジナル・ヴァージョンの方に 軍配を挙げたいと思います。演奏を締めくくる直前には、両テイクとも ガッドの短いドラムス・ソロが かなり唐突に炸裂して、興奮の炎に油を注いでいます。
  ・・・・・
 「ソング・トゥ・セス Song To Seth 」は、マイク・マイニエリのマイナーなバラード・ナンバー。作曲者自身のヴァイブと グロルニックによる硬質なピアノのデュオによる演奏が大部分ですが、演奏の最後の方で エディ・ゴメスの短いベース・ソロが挿入されます。ガッドも表情をつける程度、要所でシンバルによるトレモロを響かせたり、バス・ドラとタム中心に最小限必要なリズムを重く刻んでいます。
  ・・・・・
 未発表 CD追加収録曲「モーメント Momento 」は、ドン・グロルニック作曲、自身のピアノ・ソロによる約2分程度の短い演奏です。涼しさ、静寂な佇(たたず)まいを感じさせる、しかし技巧的なフレーズも散発する佳曲。憶測ですが、何かこの後に続くナンバー(不明)のイントロだったのかも知れません、楽曲の途中でフェードアウトされてしまう直前に マイニエリによるヴァイブのトレモロが 一瞬 聴こえます。
  ・・・・・
 そして いよいよ、ジョー(ヨーゼフ )・ザヴィヌル作曲「ヤング・アンド・ファイン Young And Fine 」について 語らせて頂く日が来ました(嬉 )。
 アレンジの基本構成は アート・ファーマー(CTI )盤 と同じです。
 マイニエリによってアレンジされたアンサンブル部分に合わせて、ガッドが実に自然なアクセントを叩き分けてみせる その素晴らしさ。それに加え 即興性も豊かなフィルインから生まれる躍動感が音楽に息吹と熱を与えています。そのエネルギーは申し分ないです。
 しかし 一聴、すぐに感じるのは テーマを吹くマイケル・ブレッカーのテナー・サックスの音色の美しさなんです。 ・・・本当に上手い。メロディの一音一音を、これほどまでに大事にして、なんと丁寧に吹く人なんでしょう。単純に比較すべきではありませんけど、たとえばウェザー・リポートの名手ウェイン・ショーターよりも、若い頃に影響を受けたと言われるジョー・ヘンダーソンよりも、マイケルの 実に表情豊かなメロディづくり -フレージングひとつひとつを 実に深く考えていると思われる点、即興のソロを披露する瞬間においても 実に軽々とフラジオレットを吹き切ってみせたり、それも計算され尽くした個所で、まさにここしかない という個所で 実に効果的に使ってみせる点、さっきまで力強く吹奏していたかと思うと 次の一瞬 その力をすっと抜いてみせたり、それをすくいあげるように次のフレーズに飛び移ってみせたりするような そんな奇抜な点など、その才能と美質の素晴らしさは まさに圧巻と言えます。マイケル・ブレッカーの凄さは この「ヤング・アンド・ファイン」だけでなく、このライヴ盤のどこに針をおろしても 明白に確かめることができます。
 マイケルの熱演に比較すると、ここでのグロルニックのピアノ・ソロだけは 少々行き詰まりを感じました。さすがに ちょっと長過ぎたかなーって・・・。醒めてしまったオーディエンスの空気を 再び徐々に加熱させるマイニエリの マレットが32分音符でヴァイブを激しく叩きまくる名場面は、ガッドのドラムスによる支援があって初めて その勢いも倍増していることを忘れてはなりませんよね。
  ・・・・・
 マイケル・ブレッカー作曲の「ノット・エチオピア Not Ethiopia 」は、マイケルが兄ランディと共に当時活動していたフュージョン・グループ ブレッカー・ブラザーズのアルバム「ストラップハンギン Straphangin’ (1981年 Arista盤)」で再演されることになる一曲です。
 Straphangin’ 1981年 Arista ブレッカー・ブラザーズストラップハンギン Straphangin’」(Arista)盤

 この「ノット・エチオピア Not Ethiopia 」は、マイケルらしい キリモミ状の と言うか 螺旋(らせん)状の と言うか とにかく屈折した不思議なメロディ・ラインを持っていて、それは実に魅力的な楽曲です。フラジオレットを多用するマイケルの切れまくったソロの その凄さについては 言葉を尽くして説明しても決して伝わらないでしょう、とにかく聴いてください。そして ここでのガッドのソロ、もはや誰も止める人はいません。その叩きまくるソロの前半はタム転がしが中心、後半はスネア中心の展開となります。ドラムス・ソロにもかかわらず 起承転結を見事に押さえたソロ構成の巧みさには、目を見張ります。
 この演奏一曲だけでステージに参加している渡辺香津美のギター・プレイは、それと知らずに初めて聴いた時、ジョン・スコフィールドかと思うほどのソリッドなピッキングに驚かされました。
 渡辺香津美(Steps ゲスト)
 ↑ 渡辺香津美、居並ぶ才人・名手の集団であるステップスの中に飛びこんで まったく互角に張り合う凄腕は、同じ日本人として実に誇りに思います! 
 なお この曲「ノット・エチオピア」にも CDには別テイクが追加収録されています。こちらも十分素晴らしい演奏ではありますが、あくまで「本テイクと比較すると」、ガッドのドラムス・ソロも粗い部分が耳につき、若干聴き劣りすることは否定できません。目玉の香津美さんが入っていない点も含め、二つを比べると別テイクの演奏は マイナス評価になります。・・・すみません。
  ・・・・・
 「ソウル・アイズ Soul Eyes 」は、名ピアニスト(個人的には あまり好みの演奏家ではありませんが・・・)マル・ウォルドロンが作曲した ジャズ・スタンダード曲が 素材です。
 中程までマイニエリのヴァイブとグロルニックのピアノを中心に 二人の透明な会話中心で進行するので、「ラヴァーマン」や「ソング・トゥ・セス」と同様、マイケル・ブレッカーはお休みなのかな、と考えていると 途中から テナー・サックスがちゃんと入ってきて マイケルによる入魂のバラード・プレイが聴けます。結尾の 流れ落ちるようなカデンツァも実に素晴らしいです。この曲では ガッドはスティックを捨て、得意とするブラシに持ち替えています。
  ・・・・・
 「リコーダ・ミー Recorda Me」は、マイケル・ブレッカーが私淑したテナー・サックスの名手ジョー・ヘンダーソンによるブルーノート最初のリーダー・アルバムだった名盤「ページ・ワン Page One (1963年)」に収録されていたサンバ調のナンバーが素材です。
 Joe Henderson Page One(Blue Note) ジョーヘンダーソンページ・ワン」(Blue Note 1963年) 
 
 この「リコーダ・ミー Recorda Me」も「スモーキン・イン・ザ・ピット」オリジナル盤の発売時には 未収録だった演奏ですが、これは ガッド・フリークには軽視できぬ内容なのです。
 楽曲のリズムがガッド得意のサンバ調であるとともに、めずらしく3分30秒以上にも渡る 長尺のドラムス・ソロ - その徐々に熱くなって技巧を凝らしてゆく仕上り - は 実に興味深く、当初なぜ未発表だったのか 理解できません。エディ・ゴメスが弾(はじ)くベースによる おもしろい基本パターンや、ここでもマイケル・ブレッカーの憑かれたようなフレーズが炸裂しまくるテナーサックス・ソロなど、ピックアップすべき話題も満載の名演奏です。
  ・・・・・
 マイク・マイニエリ極めつけとも言える 美しい名曲「サラズ・タッチ Sara’s Touch 」。この翌年に マイニエリ自身、そしてガッドもまた録音に参加することになる、彼らの盟友ウォーレン・バーンハートのリーダー・アルバム「マンハッタン・アップデイト Manhattan Update(1980年 Arista盤)」A面1曲目に収録されることになる作品です。
 Warren Bernhardt_Manhattan Update(Arista) Manhattan Update(1980年 Arista)  
 
 そのテーマは 最初グロルニックのピアノ・ソロによって提示、マイケル・ブレッカーによって繰り返されます、これも美しい吹奏です。よく伸びるエディ・ゴメスのアコースティック・ベースも実に効果的。転調しながら やがてマイニエリのヴァイブによってカウンター・メロディが奏され、この後 テナー・サックスのソロへと 緩やかに入ってゆきます。ブレッカーのソロは 斬新なフレーズを あたかも湧水が溢れるかのように次々と繰り出し、徐々に熱さをも加えてゆきます。「機能的に」「わざと」「意図的に」フリーキーなトーンをも使用することによって 制御不能になった心の感情をも表現する - 情緒的な表現を理知的に計算する - マイケル・ブレッカーのスケール大きなソロ、ここでの素晴らしい演奏を、 わたしは個人的にも 最高に高く評価したいと思います。
 ここでガッドは かなり淡々と8ビートを基本に 刻み続けていますが、もはやソリストのフレーズに則して これ見よがしに支援するようなリズムの強調などは 敢えて加えていません。
 マイケルの劇的なソロに触発され、続くマイニエリのソロも はじめ静かですが、やはり起伏の激しい即興表現へと展開してゆきます。あたかも長い長い物語を語り終えた後であるかのように、巧みに自作のテーマ・メロディへと戻ってくると、これをマイケルに引き継いで、極めて静かに曲を締めくくる・・・その後には 音楽の 深い余韻が残るのでした。

後日談 その1 「オレの身体はひとつだけ」
 スモーキン・イン・ザ・ピットから 2年後の1981年のこと。
 マイニエリ(左)と ガッド 1979 マイニエリ(左)と ガッド
ガッド    「ちょっと オレの悩み 聞いてくれる、マイク?」
マイニエリ 「スティーヴ・ガッド 恋の相談室か」
ガッド    「そっちの方は間に合ってるんだってば。・・・仕事の悩みだよ」
マイニエリ 「ま、まさか オレたちステップスの継続に関係あることじゃないだろうな」
ガッド   「・・・マイク、実は そうなんだ。忙し過ぎて オレ もう限界なんだよ。今、レコーディングのオファーだけでも ポール・サイモン、チック・コリア、アル・ディメオラ、デイヴ・グルーシン、ラリー・カールトン、アル・ジャロウ、マンハッタン・トランスファー、トム・スコット、グローヴァー・ワシントンJr. 渡辺貞夫の日本のプロモーターからまで依頼が目白押し、考えてくれよ、オレの身体はひとつしかないんだ。本当に すまないんだが ステップスのツアーに付き合うのは もう とても無理・・・ 」
マイニエリ 「才能ゆえのウレシイ悲鳴って感じだな、スティーヴ。仕方ない お互いさまだ。よくわかるよ。でも惜しいなー、オレには マイケルのテナーと同じくらい お前のドラムスが必要なんだが - 」
ガッド   「どうか許してくれ。最近ストレスで 酒の量も増えてきちゃってさ。オレの代わりにステップスのリズム・セクションが務まるドラマー、誰か いないかな・・・」
マイニエリ 「お前ほどのドラマーの代わりなんて 簡単には見つからないよ。ウェザー・リポートドラマーにでも参加してもらわなけりゃ(苦笑)」
ガッド   「 ・・・ (頭をかかえる) 」

後日談 その2 「さらば ザヴィヌル( by ピーター・アースキン) 」
 ・・・こちらは ウェザー・リポートのレコーディング・スタジオです。
 他の誰よりも早くスタジオに来て 独りドラムセットに座り 黙々と練習しているピーター・アースキンの背中に、ウェザー・リポートのリーダー ジョー・ザヴィヌルが声をかけました。
 ザヴィヌルとピーターアースキン(CBS 1979) ピーター・アースキン(左)と ザヴィヌル
 「思い通りにならないメンバーは 切り捨てだー」


ザヴィヌル 「グート・モールゲン(おはよう)、ピーター
アースキン 「あ、おはようございます ザヴィヌルさん。」
ザヴィヌル 「さあ、今日は 次のアルバムに収録する“ダラ・ファクター Dara Factor”を 仕上げるぞー」
アースキン 「そう思って、ボク “ダラ・ファクター”に 合いそうなオリジナルのリズム・パターンを 昨夜 考えてきたんですよ。ザヴィヌルさん、今 叩いてみせますから、聴いてくれますか」
ザヴィヌル 「いや、その必要は まったくない。実は コレを使うことに もう決めてるんだ」
アースキン 「・・・な、何ですか、コレ?」
ザヴィヌル 「リズム・マシーンだよ、ドンカマとも呼ぶ。これはな、完璧な技術を備え、あらかじめプログラミングしておけば楽譜にも忠実、しかも軽いからワールド・ツアー用のトランクにも仕舞えるし、何より この私に 口ごたえしないし 文句も言わない。そして コレが重要なんだが、決してジャンキーにもならないのさ、こんな素晴らしいパーカッション・プレイヤーは いないだろう。ガハハハ・・・(哄笑) 」
アースキン 「・・・(くそ、ジャコと一緒に もう辞めてやる) 」

 ピーター・アースキンは この一作を最後に ウェザー・リポートを脱退・・・
 Weather Report (1981) Weather Report,1981 ・・・ しかし やっぱり「NYC」 は 傑作!

 そして、スティーヴ・ガッドと入れ替わりに マイク・マイニエリステップスへ 参加することになるのでした。。。
 ピーター・アースキンが ドラムス奏者として参加したステップス 最初のアルバムが「パラドックス Paradox(1981年録音)」です 。
 Steps Paradox(1981) StepsParadox ”(1981年録音)

 今回の スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。 」は 三回連続 特別企画「ヤング・アンド・ファイン」でしたが、おかげさまで ひとまず 完結させることができました!  長々と おつきあいくださって どうもありがとうございました。

※ 文章は、事実を基にしていますが 音楽家の会話は すべてフィクションです。 

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