本記事は、10月31日「人気記事ジャズ ランキング」で 第1位となりました。
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クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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(13)「ヤング・アンド・ファイン」
   (アート・ファーマー)1979年


本ストーリーは 前回(12)「ヤング・アンド・ファイン」(ウェザー・リポート1978 )の続きです。  
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 1979年4月、フュージョン系の新しい音楽を開拓するジャズ・レーベルだったC.T.I.から 当時「意外」にもリーダー作を録音することになった アート・ファーマーArt Farmer 1928‐1999)は、アイオワ出身のトランペット(フリューゲルホーン)奏者で、その音色のとおり 温和で謙虚な性格であった と伝えられています。
 Art Farmer  Steve Gadd(Steps 1979)  Mike Mainieri(Steps 1979)
(左から)アート・ファーマースティーヴ・ガッドマイク・マイニエリ 
 
 ・・・で、只今 何故「意外にも」と書いたか、説明を加えさせて頂きますと、1928年生まれの アート・ファーマーは 年代的には 偉大なテナー・サックス奏者の巨峰たち ソニー・ロリンズ(1930生まれ)、スタン・ゲッツ(1927生まれ )、ベニー・ゴルソン(1929生まれ )らと、また 夭折の天才トランペット奏者クリフォード・ブラウン(1930生まれ )とも 同世代で、殊にわが国では 名ピアニスト、ソニー・クラークのブルーノート・レーベルにおける人気盤「クール・ストラッティン Cool Struttin’」に 参加していたことでも よく知られ、1950~1960年代のビ・バップ期の名プレイヤーとして カテゴライズされるのが普通だからです。
 Sonny Clark Cool Struttin(BLUENOTE) クール・ストラッティン Cool Struttin’
 
 そんなミュージシャンが、フュージョン系イメージの強い CTIレーベルからリーダー作を発表する - しかも世代の異なるヴァイブ奏者マイク・マイニエリがプロデュースすることになったという、この「意外な」企画が成立した経緯は不詳ですが、もちろん C.T.I.のオーナー、クリード・テイラーの人脈によるものと察せられます。
 実は 本日 話題にしようとしている 名盤「ヤマ YAMA 」が録音される すでに2年前(1977年)、スティーヴ・ガッドは 「クロール・スペース Crawl Space」というアルバムで ファーマーとは 共演実績がありました。そこでは ガッドの他、デイヴ・グルーシン(キーボード)、エリック・ゲイル(ギター)、ジェレミー・スタイグ(フルート)、ウィル・リー(エレクトリック・ベース)、ジョージ・ムラージュ(ベース)という 聴き逃せない顔ぶれが並んでいます。また、その翌年(1978年) - ということは「ヤマ YAMA 」の前年ですが - ファーマーと名ギタリスト ジム・ホールとの双頭セッション「ビッグ・ブルース Big Blues 」というアルバムにおいて マイニエリガッドは メンバーとして参加していました。そのアルバムでは ジャズ・スタンダードの一曲「ウィスパー・ノット Whisper Not 」も渋い名演、またクラヲタにとっては ラヴェル原曲「逝ける王女のためのパヴァーヌ」のアレンジが興味深いのではないでしょうか。
 Art Farmer Crawl Space(CTI)1977 Art Farmer Big Blues(CTI)1978
 ファーマーの CTI(ガッド共演)盤
 (左から)「クロール・スペース Crawl Space(1977年)」、「ビッグ・ブルース Big Blues(1978年)」
 
 こういった経緯があって、CTIでは ファーマーの 次のアルバムには 満を持して 才人マイク・マイニエリに 全面的なプロデュースを委ねたのでしょう。実際、その新作である「ヤマ YAMA 」の仕上がりは 予想以上に 「素晴らしい!」の一語です ( この後 詳述 )。

ファーマー 「やあ、マイニエリ君、今回は 私のアルバムのプロデュース、よろしく頼むよ 」
マイニエリ 「若輩者ですが よろしくお願いします、ファーマーさん」
ファーマー 「基本的には 若い君達のアイデアに お任せしようと思ってるんだ。但し 今回は、ジョー・ヘンダーソンテナー・サックスと、私のフリューゲルホーンによる 二管フロント編成で アレンジを書いてもらいたいんだ」
マイニエリ 「わかりました。お二人をバック・アップさせて頂くメンバーは、 普段から一緒に活動している私の仲間たちで、皆 若いですが 腕は確かです。アルバムの中で 取り上げてほしい ご希望の楽曲などは ありませんか、ファーマーさん? 」
ファーマー 「・・・逆に 君たちに訊きたいのだが、おススメの 何か 売れそうな素材はあるかい」
マイニエリ ウェザー・リポートの“ヤング・アンド・ファインという曲を考えていました」
ファーマー 「あ、知っているよ、最近の曲だろう。私はジョー・ザヴィヌルの作品には 彼がキャノンボール・アダレイ と共演していた頃から注目してきたんだ、あの曲は16ビートで 意外に流麗なメロディだったよね」
マイニエリ 「さすがファーマーさん、実は そのウェザー・リポートのレコードに参加していたドラマーのスティーヴ・ガッド も 今回 ファーマーさんのアルバムの リズム・セクションに起用しようと思っているんですが」
ファーマー 「スティーヴなら 最高じゃん。よく知っているし、大歓迎だよ」
ガッド     「お久しぶりです、ファーマーさん」
ファーマー 「いよー、稼いでるな、スティーヴ。君が参加してるウェザー・リポートの新しいレコード、私も聴いたよ」
ガッド     「恐れ入ります。でも あれは ・・・」
ファーマー 「どうしたのかな ? 急に元気がなくなっちゃったね 」
ガッド     「あの録音は 自分にとっては 甚だ不満足な出来だったから 触れて頂きたくない位なんです・・・。でも ファーマーさん、実は 今回 ご一緒させて頂くセッションでは、あの時の ザヴィヌルの曲“ヤング・アンド・ファイン”を 4ビート基本で 思いきりスイングさせちゃおう というマイクからの提案があるんですが、いかがですか」
ファーマー 「それは おもしろい! あのメロディになら 間違いなく合いそうだ。古いスタンダード曲を現代風のリズムでアレンジし直すのはよく聴くけれど、このように新しい音楽を 4ビートで演ろうっていうのは 興味深い発想じゃないか。CTIと契約してから いつも 君たちのような若いメンバーと一緒に演(や)れるから パワー・ステーションでのレコーディングも 楽しみだな」
マイニエリ 「(よかったな、スティーヴ。よし、思い切り暴れてみせろ!)」
ガッド    「(サンキュー、マイク。このお礼は 次のプレイで爆発させるよ!)」

Art Farmer Yama(CTI)1979 
アート・ファーマー Art Farmer「ヤマ Yama 」(CTI )
A面 3曲目「ヤング・アンド・ファイン Young And Fine 」
   アート・ファーマー(フリューゲルホーン )Art Farmer
   ジョーヘンダーション(テナーサックス )Joe Henderson
   マイク・マイニエリ(ヴィブラフォン )Mike Mainieri
   スティーヴ・ガッド(ドラムス )Steve Gadd
   ウィル・リー(エレクトリック・ベース )Will Lee
   ドン・グロルニック(キーボード )Don Grolnick
   ウォーレン・バーンハート(キーボード )Warren Bernhardt
   ジョン・トロペイ(エレクトリック・ギター) John Tropea
   デヴィッド・スピノザ(エレクトリック・ギター)David Spinozza

併録曲:ダルズーラ、ストップ、ロータス・ブロッサム、ブルー・モントルー
録 音:1979年4月、パワー・ステーション
CTI(キングレコード KICJ-8267 )
 

 アルバム・タイトルの「ヤマ Yama」とは、実は 日本語で、最も盛り上がる「山場」の「」に由来した、「クライマックス」の意味だそうです。
 ウェザー・リポートのオリジナル・ヴァージョンにおけるジョー・ザヴィヌルの弾くヴォイシングを かなり忠実に踏襲した「ヤング・アンド・ファイン」のイントロダクション。マイク・マイニエリのヴィブラフォンの明るい音色のせいか、オリジナルのシンセサイザーの色調より 遥かに爽やかな印象です。テーマが登場する直前、マイニエリが叩くヴィブラフォンによる分散和音を聴いていると、まるで つぼみが開いてゆくような愉悦感で 心が一杯になります。
 変ホ長調の流麗な主旋律、その魅力的なメロディは ジョー・ヘンダーソンのテナー・サックスとマイニエリのヴァイブとのユニゾンで奏されます。
 ブリッジからアート・ファーマーのオブリガートが控えめに加わって、そのまま最初のソロは フリューゲルホーンによる 実に心地よいストレートな音色を楽しめます。こういった良質なフュージョン系の演奏に、フリューゲルホーンという楽器の 透明でよく伸びる音色は、とてもよく溶け合っていることがわかります。 
続くマイニエリのヴァイブ・ソロも実に快適です。
 しかし ここで演奏を支配しているのは、楽曲の端々まで完璧に掌握しているスティーヴ・ガッドの刻む 素晴らしい千変万化のリズムでしょう。前年の「ウェザー・リポート(Mr.Gone) 」ヴァージョンの どこか萎縮させられたバッキング・ビートに比べると、ここで湧き起こる自由な開放感は ガッドの備えている資質・長所・美点 を 余すところなく発揮した名演であると思います。
 基本4ビートで切りこんでゆくリズム、そのきめ細やかな表情、ニュアンス、キメ、アクセントなど 柔軟にして完璧です。ジョー・ヘンダーソンのサックス・ソロになるや 今度はロック調の16ビートを刻みはじめ、ソリストに合わせながらリズム・パターンを自由自在に変化させるガッドの独断場といったところです(尤も ヘンダーソン自身は 残念ながら いまひとつロック・リズムには 乗り切れていないと思います)。

 なお、この アルバムの最後に収録されている「ブルー・モントルー Blue Montreux 」という都会的な佳曲は、マイク・マイニエリの作曲した 実に格好いいオリジナル作品ですが、もともと前年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに「アリスタ・レーベル」の オールスター・ジャズ・フュージョン系ミュージシャンが大挙出演して圧倒的な名演を繰り広げた際の 有名なライヴ録音 「ブルー・モントルー Blue Montreux 」にも収録されたタイトル曲でした。

モントルーⅡ(1979)Arista
ブルー・モントルー Blue Montreux  から 
アルバム・タイトル曲「ブルー・モントルー Blue Montreux 」
アリスタ・オールスターズ Arista All Stars
   マイク・マイニエリ(ヴァイブ奏者 )Mike Mainieri
   マイケル・ブレッカー(テナー・サックス奏者 )Michael Brecker
   ランディ・ブレッカー (トランペット奏者 ) Randy Brecker
   ウォーレン・バーンハート(ピアノ、キーボード奏者 )Warren Bernhardt
   スティーヴ・カーン (エレクトリック・ギター奏者 )Steve Kahn
   トニー・レヴィン (ベース奏者 ) Tony Levin
   スティーヴ・ジョーダン (ドラムス奏者 )Steve Jordan 

併録曲:ロックス Rocks、アイム・ソーリー I'm Sorry、マジック・カーペットMagic Carpet、バズBuds、フローティングFloating、ヴァージン・アンド・ザ・ジプシー The Virgin And The Gypsy
録音:1978年7月21 & 22日 スイス、モントルー
Arista (BMGファンハウスBVCJ-37065)

 この楽曲は マイニエリが 当初よりモントルージャズ・フェスティヴァルのステージ用にと 特別に書き下ろした新作でした。彼にとっては 自信作でありながら、まだこの当時は どのアルバムにおいても スタジオ・レコーディングされていない新曲でした。併せて こちらも聴き比べて頂くと どちらも その演奏の素晴らしさに 驚かれることと思います
注意 ※「アリスタ盤のブルー・モントルー」には ガッドは 不参加です )。

次回、 (14)「ヤング・アンド・ファイン」(ステップス)1979年  に続く・・・

※ 今回・次回の文章は、事実を基にしていますが 音楽家の会話は すべてフィクションです。

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