本記事は、10月30日「人気記事ジャズ ランキング」で 第1位となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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(12)「ヤング・アンド・ファイン」(ウェザー・リポート)1978年

 今晩は、“スケルツォ倶楽部”発起人 妻のコーナーです。
 実は 最近 週三日程度なんですが 内職をスタートさせ、以前より少し忙しくなってる わたし です。 “スティーヴ・ガッドを讃える” - 更新が滞ってて スミマセン。
 今回は 久しぶりの執筆、少し趣向を変えて ストーリー仕立て(3回連続の予定・・・)です

マイニエリ(左)と ガッド 1979 
マイク・マイニエリ(左)と ガッド

 ・・・1978年、ある夜のニューヨーク。
 スティーヴ・ガッドが 前年に名盤「ラヴ・プレイ(Arista)」で共演したヴァイブ奏者で親友のマイク・マイニエリと スタジオで会話してます。

ガッド    「ちょっと オレの悩み 聞いてくれる、マイク?」
マイニエリ 「スティーヴ・ガッド 恋の相談室か」
ガッド    「いやいや、そっちは間に合ってるんだ。・・・仕事の悩みだよ」
マイニエリ 「最近 忙しくて結構なことだな」
ガッド    「それはお互いさまだろ、今 オレたち とても乗ってるって感じじゃない?」
マイニエリ 「そうだな、最近 新しい音楽のアイデアがドンドン湧いてくるんだ。それを実現できる仲間も増えてきたし」
ガッド    「毎日のように いろんなミュージシャンとスタジオで仕事させてもらって ネットワークも広がってきた」
マイニエリ 「たしかに この数年のお前は スゴイよ。ワーナー・ブラザース系列のロック、ポップスの仕事、R&B系列の仕事、新旧のジャズ・ミュージシャンとの仕事、どれも高いレベルでこなしてるもんな」
ガッド    「実は、今 ウェザー・リポートのレコーディングに参加しないかって、オファーが来てるんだ」
マイニエリ 「え、それはスゴイじゃないか。ウェザー・リポートと言えば 帝王マイルス・デイヴィスの 最高のブレインだったウェイン・ショータージョー・ザヴィヌルが結成した双頭バンド - 」
ガッド    「そう。それに一昨年からジャコ・パストリアスという 若い凄腕のベーシストも加わり、ロック・ファン層にも知られるようになって バンドの人気も急上昇 - 」
マイニエリ 「最新アルバム“ヘヴィー・ウェザー”なんか、ジャズ・レコードには珍しくビルボードにランクインするほどのベストセラーだったろ。そこに お前スティーヴ・ガッドが参加ってわけか、とうとう頂点まで登りつめたな、スティーヴ
ガッド    「いや、でも ウェザー・リポートは 音楽の質がとても高いから、要求される内容も大変そうじゃないか。それにリーダーのザヴィヌルって人は すごく厳しいらしいから、オレには プレッシャーが大き過ぎるよ」
マイニエリ 「お前なら大丈夫だよ、ぜひやってみろよ。応援してるぜ」
ガッド    「つとまるかなー、オレは 基本的に仕事は楽しくないと嫌なんだ」
マイニエリ 「おいスティーヴ、酒や薬に頼るのだけは 止めておけよ。ステージやレコーディング前に こっそりやってるのを オレは知ってるんだぞ」
ガッド    「だって 大舞台の前ほど 緊張してダメなんだよ」
マイニエリ 「“ だって ” じゃないよ。お前ほどの優れた才能があるのに そんなこと言ってるのって、信じられないがなあ・・・」

ジョー・ザヴィヌル Joe ZawinulWeather Report_Mr.Gone(CBS)1978 Weather Report_スケルツォ倶楽部
(左) ジョー・ザヴィヌル Joe(Josef) Zawinul
(右) アルバム「ミスター・ゴーン Mr.Gone 」 と 最盛期のウェザー・リポート

「ヤング・アンド・ファイン Young And Fine 」(06:55)
  ジョー・ザヴィヌル(キーボード、パーカッション)Joe(Josef) Zawinul
  ウェイン・ショーター(テナーサックス)Wayne Shorter
  ジャコ・パストリアス(ベース)Jaco Pastorius
  スティーヴ・ガッド(ドラムス)Steve Gadd
  ピーター・アースキン(パーカッション)Peter Erskin
録音:1978年、ロサンゼルス
CBSコロンビア(ソニー・レコード SRCS-9149)


ザヴィヌル 「・・・いやー、このレコードは難産だった。私のコンセプトは決して悪くなかったのだが、それを アルバムという具体的な形にするまでには混迷を極めたね。ウェイン・ショーターウェザー・リポート以外の音楽に夢中で 全然手伝ってくれやしないし、ジャコ・パストリアスのヤツは ただ面白がってスタジオを荒らして帰るだけだし、でも何より 困ったのはドラムスだよ。前任のパーカッション奏者マノロ・バドレーナをアル中理由でクビにした途端、もうひとりのドラマー、アレックス・アクーニャが 家族サービス優先だとか言い出して 辞めてしまったんだ。それから ずっと後任が決まらない。一応 補欠のピーター・アースキンで 繋いではいたのだが - 」

ザヴィヌルとピーターアースキン(CBS 1979)
ピーター・アースキン(左)とザヴィヌル 「趣味は ニット帽集めだ」

アースキン 「ええっ? ザヴィヌルさん、ボク、補欠だったんですか 」
ザヴィヌル 「(舌打ち )余計なこと考えるな、スタジオでシャッフルの練習でもしてなさい 」
アースキン 「(憤然として退場 ) 」
ザヴィヌル 「それで評判の良いドラマーを何人も試したよ。すでに有名なミュージシャンも何人かいたな。たとえば ジェフ・ポーカロとか、あいつは何も演奏できなかったので レコーディング・スタジオにすら入れなかった。それから・・・ええと 何という名前だったっけ、ほら ポール・サイモンのドラマーだった - ガッド、そう スティーヴ・ガッドだ。私は 実は 彼のメカニカルなドラム・テクニックを評価していて、その技術を アルバムの中でも私のお気に入りの一曲“ヤング・アンド・ファイン”で 機能的に使おうと思っていたんだ。でも ここだけの話 あろうことかガッドは ひどいジャンキーで、私の家に来ても だらしなく床で一晩中寝ていたんだよ。演奏してもビートに乗れていないし、2曲ほど録音したが まったく期待はずれだった。それで、しかたなく 後からピーター・アースキンを呼んだんだ 」。
アースキン 「ザヴィヌルさん、何か御用ですか 」
ザヴィヌル 「ピーター、“ヤング・アンド・ファイン”のスティーヴ・ガッドが演奏したベーシック・トラックの上に ハイ・ハットのリズムだけ ひたすら乗せろ 」
アースキン 「え、そんなことしていいんですか 」
ザヴィヌル 「私の言うことがきけないのか。ほら、早くシンバルをたたけ。その間、私はTVでサッカーのワールドカップを観ているから、終わったら教えてくれ 」
8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符
アースキン 「 ( ・・・あー、疲れた ) 終わりましたよ、ザヴィヌルさん 」
ザヴィヌル 「よーし、ご苦労だった。ミックスして聴いてみよう 」
    (プレイバック!
アースキン 「・・・いかがでしたか、ザヴィヌルさん 」
ザヴィヌル 「うーん、ダメだな。やっぱり お前も 今日は帰っていいよ 」
アースキン 「(憮然として帰宅 ) 」
ザヴィヌル 「結局、そのテイクの上から さらに 私が自分でハイ・ハットのリズムを叩き直したというわけ。スピーカー右寄りに定位して聴こえるのが 私のパーカッション・プレイ。よし、これで何とか聴けるようになったぞと。あーあ、それにしても 完璧な技術を備え持ち 楽譜が読めて ワールド・ツアーにつきあえて、文句言わずに私の言うことを聞くような、そしてジャンキーじゃないドラマーは どこかにいないものか・・・(いるわけがないよな )」


 ・・・後日、別の夜のニューヨーク。
 発売されたウェザー・リポートの新譜「Mr.ゴーン」のA面3曲目「ヤング・アンド・ファイン」を聴きながら 落ち込んでいるスティーヴ・ガッドを、親友のマイク・マイニエリが慰めています。
マイニエリ 「だから 注意しただろ、酒や薬には頼るなよって・・・」
ガッド    「スタジオの緊張感に耐えられなかったんだ - 」
マイニエリ 「それにしても これはヒドイな。まるで 当てつけるように 後からオーバーダビングされたハイ・ハットの音で お前のドラムスの音は 殆んど消されてるようなものじゃないか」
ガッド    「自分のせいなんだから仕方ないさ。たしかに あの日はプレイできる体調じゃなかった。ザヴィヌルが怒るのも当然かも」
マイニエリ 「そんなに落ち込むなよ、スティーヴ。よく聴くと お前のプレイは 決して悪くはないぞ。特に 途中で救急車のサイレンみたいなシンセサイザーが鳴った後 テーマが戻り、ザヴィヌルの長いキーボード・ソロが始まってから、このバックで お前が叩くフィル・インの切れの良さ、音量バランスでよく聴こえないのは ホントもったいないことだなー」
ガッド    「ウェザー・リポートから 声がかかることは もう二度とないよ」
マイニエリ 「ザヴィヌルだけが音楽家じゃないさ。スティーヴ、そう言えば 今 ちょうどCTIレーベルクリード・テイラーから オレにアート・ファーマーの 次のリーダー・アルバムのプロデュースをやらないかって 依頼が来てるんだ。お前にドラムスを頼むよ。それでさ、アート・ファーマーを盾にして(忍び笑い)ザヴィヌルへの意趣晴らし に、オレたち流のアレンジでヤング・アンド・ファイン”をそこで 演っちゃおうぜー!」
ガッド    「え、オレたち流のだって?」

 ・・・ この続きは、次回 (13)「ヤング・アンド・ファイン」(アート・ファーマー)1979年 にて 

※ 今回・次回の文章は、事実を基にしていますが 音楽家の会話は すべてフィクションです。

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