本記事は、10月 8日「 人気記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
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ピアノ協奏曲「ピーナッツ・ギャラリー 」
(エレン・ズウィリック 作曲 )を 聴く。

ピーナッツ・ギャラリー
青字部分 ・・・ チャールズ・M.シュルツ 著 ( 三川基好=訳 「スヌーピーの50年」世界中が愛したコミック『ピーナッツ』 より )
 ・・・ 地元のオーケストラのコンサートに行ったところ、エレン・ズウィリックの新曲が演奏されていました。それでヒントを得て描いた漫画に、彼女の名前を使わせてもらいました。
 その作品が これです。 ↓ 

 (1)次の曲は フルート協奏曲...
 ( コンサート・ホールにて )
 マーシー 「次の曲は フルート協奏曲ですよ」
 (2)作曲家は エレン ズウィリッチ、女性です!
 マーシー 「作曲者は エレン・ズウィリックという人で、なんと女性なんです!」
 (3)でかした、エレン!
 ペパーミント・パティ 「でかしたぞ、エレン!」
 谷川俊太郎=訳 角川書店 A Peanuts Book featuring SNOOPY 第8巻“ Keep the Blanket ”より

 ・・・ 彼女( エレン・ズウィリック )からは とてもていねいな手紙が来て、私たちは知り合いになりました。
 カーネギーホールで一連のファミリーコンサートが開かれる時、エレンはそのうちの1回のために何か新しい曲を作るよう頼まれたようです。彼女は「ピーナッツ」の登場人物たちを集めて、12分のピアノ協奏曲を書きました。
 とてもうれしく思いました。
 チャーリー・ブラウンと仲間たちに触発されて作られた音楽は、この曲が初めてではありませんが、素晴らしい曲だったし、なにしろ本物のクラシック音楽の作曲家の作品ですから。
 ( 同、チャールズ・M.シュルツ著 三川基好=訳 「スヌーピーの50年」世界中が愛したコミック『ピーナッツ』より )

 その曲が、今回 ご紹介する エレン・ズウィリック Ellen Taaffe Zwilich 作曲:ピアノと管弦楽のためのピーナッツ・ギャラリー(1996年)」です。( 作曲者の読み方は ズウィリッチ、ツウィリッヒ、ツヴィリヒ ・・・などと、まだ国内では表記が統一されておりません )。
 彼女は 本国のアメリカでは 極めて高い評価を受け、尊敬されている女流作曲家( ペパーミント・パティが興奮している理由は、彼女が ウーマン・リヴ の支持者だから。皆さんもご存知のように、大成した女性の作曲家は 音楽史上でも稀少 )なのです。
Ellen Taaffe Zwilich ELLEN TAAFFE ZWILICH
エレン・ターフィ・ズウィリック (Ellen Taaffe Zwilich 1939 ~ )
 フロリダ(マイアミ )出身。女流ヴァイオリニスト、エディト・パイネマン や ソプラノ歌手 イレアナ・コトルバス らと同年生まれです。
 1960年に フロリダ州立大学を卒業後、ストコフスキーアメリカ交響楽団で演奏するためニューヨークに移り、その後 ジュリアード音楽院に入学、1975年に 女性として初めて作曲法の博士号(D.M.A.)を得、同年 ピエール・ブーレーズのジュリアードにおける管弦楽のためのシンポジウムに参加したことが記録されています。
 彼女の代表作は 交響曲第1番管弦楽のための3楽章(1982年)」、「Symbolon(1988年)」、交響曲第2番チェロ交響曲)(1985年)、交響曲第3番(1992年)、交響曲第4番「The Gardens」バス・トロンボーン協奏曲(1989年)、フルート協奏曲(1989年)、オーボエ協奏曲(1990年)、バスーン協奏曲(1992年)、ホルン協奏曲(1993年)、トランペット協奏曲(1994年)の他、ヴァイオリン協奏曲ピアノ協奏曲、合唱曲 や 連作歌曲 も書いています。

  ピアノ協奏曲 「ピーナッツ・ギャラリー」を 聴く!
何を弾いていたの? 「ピーナツギャラリー」って言う曲だよ. 何ですって?
ルーシー 「何を弾いていたの」 
シュローダー 「“ ピーナッツ・ギャラリー”っていう曲だよ 」

 
 ・・・それでは エレン・ズウィリック作曲の ピアノ協奏曲ピーナッツ・ギャラリー(1996年)」を聴いてまいりましょう。
エレン・ズウィリック作品集「ミレニアム・ファンタジー」( Naxos 8.559656 )
エレン・ズウィリック作品集 ( Naxos 8.559656 )
ジェフリー・ビージェル (ピアノ)Jeffrey Biegel
アレクサンダー・ジメネス(指揮)Alexander Jiménez
フロリダ大学交響楽団 Florida State University Symphony Orchestra

録音:2009年4月4、5日 フロリダ
併録:ピアノ協奏曲「ミレニアム・ファンタジー(2000)」、「2台のピアノと管弦楽のためのイメージ(1986)」
 なお、この Naxos盤 CDジャケットに掲載された絵は、やはり女流の画家だった アリス・ベイリー Alice Bailly (1872-1938) が描いた「自画像( 1917 )」です。

素晴らしい出だし「シュローダーのベートーヴェンファンタジー」
 シュローダー 「出だしが素晴らしいんだよ・・・」

第1曲「シュローダーのベートーヴェン・ファンタジー Schroeder’s Beethoven Fantasy 」(02:21)
 一体どんな音楽なんだろう・・・とワクワクしながらCDのPLAYボタンを押してみると、ベートーヴェンの「大フーガ 変ロ長調 Op.133」、「ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 “ハンマークラヴィーア” Op.106」 第1楽章冒頭、「交響曲第9番ニ短調 Op.125」第2楽章スケルツォのフレーズなどが次々と引用され、思わず「お、これは 」と色めき立ちました。
シュローダーのベートーヴェン ファンタジー
 しかし、肝心の楽曲は 一ヶ所にとどまっている印象 とでも言いましょうか 発展性に乏しく、同じ個所のパッセージをときどき繰り返すコラージュ的作品とわかると、正直 最初の興奮は急速に醒めてしまいました。
 ・・・けれども、ここに切り貼りされたベートーヴェンのオリジナル作品に共通するのは、いずれもベートーヴェン典型的な「たーん、と・とんっ」リズム なんです! これには萌えました。

ライナスの子守唄、スヌーピーのサンバ、チャーリーブラウンの哀歌
シュローダー 「そして “ライナスの子守唄”、“スヌーピーサンバを舞う”、“チャーリー・ブラウンの ためいき ”・・・ 」

第2曲「ライナスの子守唄 Lullaby for Linus」(02:28)
 愛用の毛布をかかえて指をしゃぶりながら 至福の時を過ごすライナスが目に浮かびます。
 ライナスの毛布の上でも寝る
 しかし 決して安楽な音楽というわけではありません。不協和な和声がフルートの柔和な旋律に苦味を与えているのは、毛布(セキュリティ・ブランケット)を抱えるという彼の行為が 実は ライナスの精神的不安を忘れる一時的な逃避に過ぎないことを はからずも指摘しているかのようです。
 楽曲の最後、低音弦でゆっくりグリッサンドで滑り下りてくる音で ライナスは深い眠りに落ちてゆきます。

第3曲「スヌーピー、サンバを舞う Snoopy Does the Samba」(02:26)
(3)スヌーピー、サンバを舞う
 最初から最後までドラムスがサンバを模したリズムを叩き続けます。ピアノ・ソロは プロコフィエフを思わせるようなスヌーピーサンバのメロディを呈示します。単調なメロディはやがてピアノから弦合奏に引き渡されるものの、楽曲自体は 特に発展もなく繰り返されます。ここでのパーカッション奏者には 譜面に縛られない自由奔放な素養が求められます。
 このディスクにおけるオーケストラのパーカッション奏者の刻むリズムは少し硬く、サンバの愉悦感には少し遠いです。読譜能力の高い スティーヴ・ガッド のような ジャズの即興演奏家が参加してくれれば理想的でしょうね。

第4曲「チャーリー・ブラウンの ためいき Charlie Brown’s Lament 」(02:53)
 原題のラメント Lamentとは「悲しむこと」、「嘆き」、「後悔すること」、「くよくよ思い悩む」などといったニュアンスもありますが、音楽用語では 宗教的な追悼曲(哀歌)を 本来は意味します(バーンスタインの 感動的な 交響曲第1番「エレミア」は、その第3楽章が哀歌 Lamentation となってます )。発想用語のラメントーソ lamentoso(悲しく)、ラメンタービレlamentabile(悲しげに)などと共通する語源です。
(1)チャーリーブラウンのラメント
 チャーリー・ブラウンの嘆きは、凧上げが出来ない、好きな女の子に話しかけることもできない、バレンタインカードももらえない、率いている野球チームも常に惨敗・・・などという、その対象は 必ずしも宗教に根ざしたものではありません。しかし 悲しみに沈むチャーリー・ブラウンの存在とは、ストレスを抱えている 現代の私たち - 日常的に悩める者すべて - の分身である、という意味で 普遍的で崇高な存在でさえある と言えるのです。低音弦やピアノによって空虚な五度音程がゆっくりと繰り返されるのを聴きながら、「うん、キミの気持 よくわかるよ 」 って、まるで子どもだったころの 不器用な自分自身を眺めるような気持で チャーリー・ブラウンのことを 応援したくなります。

「ルーシー ぶち切れ」、「ペパーミントパテイとマーシーがパレードを先導」!
 シュローダー 「それから“ルーシー ブチ切れ”、“ペパーミント・パティとマーシーがパレードを先導”!」

第5曲「ルーシー ブチ切れ Lucy Freaks Out」(02:27)
 嵐の前の静けさでしょうか、不安そうなヴァイオリン・ソロを支える穏やかなアンサンブルもやはり長くは続きません。きっと誰かが不用意にルーシーの気に障ることを言っちゃったんでしょう、一転 俄かに黒雲がわき出るかのような不協和音が膨張し、やがて強烈なパーカッションとピアノの打撃を伴なって、高音の弦を中心にルーシーの金切り声が炸裂します。
ルーシー ブチ切れ 谷川俊太郎 = 訳(角川書店)
 その酷烈さは容赦ありません。
 ・・・おや、でも 言いたいことを言って 落ち着いたのでしょうか、再び 曲頭のような静寂が訪れるものの あ、やはり 安心は出来ません、曲が終わる前に、もう一度 爆発が待っています。その最後には 高音の弦とクラリネットのユニゾンによって、すっかり姿を変えた曲頭の旋律が一度だけ呈示されるのが印象的です。

第6曲「ペパーミント・パティとマーシーがパレードを先導 Peppermint Patty and Marcie Lead the Parade 」(02:13)
 スネア・ドラムが楽曲をリードする変拍子マーチです。ペパーミント・パティならリズム感は良さそうに思えるのですが、マーシーに叩かせてはいけませんね。変拍子なので歩数は決して合いませんし、頻繁に休止が入るので、ピーナッツの面々のパレードも このままでは将棋倒しになりそうです。
(1)パレード (2)パレード
ペパーミント・パティ 「OK 進め。さあ、みんな 遅れずに渡って!」
マーシー 「でも 先輩、IDカードまで チェックしなくてもいいんですよ・・・」

 ここで主にリズムを刻んでいるのはピアノですが、シュローダーが弾くベートーヴェンの「ハンマークラヴィーアソナタや「第9」のスケルツォ動機、弦セクションにはライナスの寝息も一瞬だけ聴こえ、スヌーピーの踊るサンバのメロディの断片、チャーリーブラウンの五度動機も低弦から響き、そしてブチ切れルーシーの叫び声まで 全てのキャラクターが次々と登場、それは サン=サーンスの 「動物の謝肉祭 」終曲 と同じ発想の賑やかなフィナーレとなりますが、念のため サン=サーンス の音楽ほど 聴きやすくは ありません。

ほら、今度カーネギーホールで世界初演されるんだって わたしの曲はもっと長くなくっちゃ
シュローダー 「ほら、今度カーネギーホールで世界初演されるんだって」
ルーシー 「・・・わたしの曲は もっと長くなくっちゃ やだ 」


 スヌーピーの音楽 次回 (13)ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、スヌーピー・スタジオ に続く・・・


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