クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
メニュー画面は ⇒ こちら

「トロペイ Tropea 」
(ジョン・トロペイ )1975年

 (左から)ティー、ガッド、トロペイ
 (左から) リチャード・ティースティーヴ・ガッドジョン・トロペイ (1979年、“ To Touch You Again ”より ) 
 
トゥ・タッチ・ユー・アゲイン To Touch You Again
To Touch You Again(1979年 ビデオ・アーツVACZ-1013)
パーソネルは、以下のとおり。
ジョン・トロペイ(ギター)John Tropea
ウィル・リー(ベース)Will Lee
スティーヴ・ガッド(ツイン・ドラムス 右チャンネル)Steve Gadd
リック・マロッタ(ツイン・ドラムス 左チャンネル)Rick Marotta
リチャード・ティー(ピアノ)Richard Tee
レオン・ペンダーヴィス(キーボード)Leon Pendarvis
ランディ・ブレッカー Randy Brecker、マイケル・ブレッカー Michael Brecker、デイヴィッド・サンボーン David Sanborn、バリー・ロジャース Barry Rodgers(ホーン・アンサンブル)
ほか


 スティーヴ・ガッドとの共演歴も数多いジャズ=フュージョン・ギタリストで、1970~80年代にかけてはファーストコールのセッションマンとして知られた ニューヨーク出身の堅実な名手 ジョン・トロペイ(John Tropea 1946~ )のソロ・アルバム「トゥ・タッチ・ユー・アゲイン To Touch You Again(1979年 ビデオ・アーツVACZ-1013)」を入手、「A列車で行こう Take the“ A ” Train」のコード進行から派生させたようなリチャード・ティー作曲の快適な逸品「ユーアー・マイ・エヴリ・ニード You’re My Every Need 」と並び、一聴してお気に入りとなってしまった もうひとつの名曲「ルック・ホワット・ゼイヴ・ダン・トゥ・マイ・ソング Look What They’ve Done To My Song」を 初めて聴いた時のこと。
 リック・マロッタとのツイン・ドラムスで 右スピーカー側のガッドのフィル・インが炸裂する快感に身をよじりながら 02:07頃からの ギター・ソロに耳を傾けていると、「いかにも」っていう感じの独特のピッキングや 気持ちよいフレージングに「ふんふん、エリック・ゲイルが ゲスト・ギタリストとして参加しているんだな 」と思いながら ジャケットを読み直してみると・・・おや? ゲスト・ソリストのクレジットなんか どこにも書かれておらず、ただ「ギター、ジョン・トロペイ」と記されてるだけではありませんか ・・・え? もしや これってゲイルのプレイじゃなくて、リーダーのトロペイ自身の演奏だったの?! 
 ・・・と、このように トロペイは まるでエリック・ゲイルそっくりにプレイすることも出来れば、また顔色一つ変えずにウェス・モンゴメリー張りにオクターヴ奏法を渋く弾きこなしてみせることも出来ちゃうし・・・
 Tropea10 - The Time Is Right
(写真)「トロペイ10 Tropea10 - The Time Is Right ポール・サイモン盤にも参加していたトロペイが ここではギターのオクターヴ奏法で「恋人と別れる50の方法」のメロディー・ラインまで奏でる(!) 近年の注目盤(ガッドも参加しています )2006年 VACM-1303

 ・・・そうかと思うと ブラジル出身のデオダート Eumir Deodato が かつて リヒャルト・シュトラウス交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の 冒頭をジャズ=ロック風にアレンジした有名な一枚「 Deodato “Prelude”(1972年CTI ) 」に参加した時には エレキ・ギターの音を思いきり歪ませてダークなロック・ギタリストを装うことさえ出来ちゃうし・・・
 Deodato “Prelude”(1972年CTI ) Eumir Deodato
 (左)「デオダート:ツァラトゥストラはかく語りき ( 原題“Prelude” ) 」若きトロペイの出世作。デオダートのCTI第1作に参加 この時代のロック・スタイルのギター・ソロを模倣 (1972年 CTI 輸入盤ZK-65129)。
 (右)デオダート Eumir Deodato


 ・・・といった 極めてヴァーサタイルな技術を身につけた、そう、トロペイは 成るべくして成った「生まれついての」スーパー・スタジオ・ミュージシャンなのでした。

トロペイの初リーダー作 名盤「トロペイTropea」( 熱帯水族館 )を あらためて聴き直す
 John Tropea Steve Gadd and Rick Marotta 1975
ジョン・トロペイ John Tropea「トロペイ Tropea 」
(左)ディスク表紙、
(右)大男のリック・マロッタに抱擁される 小柄なガッド

録音:1975年、ニューヨーク
(ビデオ・アーツ・ミュージックVACZ-1011)
 
基本的なレギュラー・メンバー
   ジョン・トロペイ(ギター)John Tropea
   リック・マロッタ(ツイン・ドラムス 左 )Rick Marotta
   スティーヴ・ガッド(ツイン・ドラムス 右 )Steve Gadd
   ウィル・リー(ベース)Will Lee
   ドン・グロルニック(キーボード)Don Grolnick 
   ルーベンス・バッシーニ(パーカッション)Rubens Bassini

以下は アンサンブル・セクション
   ランディ・ブレッカー Randy Brecker、
   サム・バーティス Sam Burtis を含む5人のホーン・セクション、
   マイケル・ブレッカー Michael Brecker、
   デイヴィッド・サンボーン David Sanborn、
   ジョージ・ヤング George Young、
   ボブ・ミンツァー Bob Mintzer を含む7人のリード・アンサンブル、
   ジーン・オルロフ Gene Orloff
ハッスルにも参加していた弦楽奏者)を含む 12人のストリングス奏者

 
1. タンブリン Tambourine(04:38)作曲 トロペイ 
 トロペイと言えば、巧みなリズム・ギター。彼ほど格好良くバッキング・リズムを刻める奏者はいません。この曲で トロペイは 多重録音を駆使して自分で刻むリズム・ギターの上に自分自身でギター・ソロを取っていますが、この独特のモーダルなコード進行自体、ソリストにとって たいへん気持ち良くソロを演奏できるように工夫されている和声進行なのです。
 当時のトロペイのアルバムの殆どが ガッドと もうひとりのフュージョン・ドラマーとして劣らぬ名手だったリック・マロッタとのツイン・ドラムスという豪華なリズムセクションでした。もちろん このアルバムもそうです。
 目を閉じて ヘッドホンで聴いてみると、左右に二人のドラムス奏者がソリストの背後の少し高い位置に並んで、シンクロさせるように4本のスティックを 各自のドラムス・セットに振り降ろしては繰り返し叩きつける光景が目に見えるようです。
 考えてみれば、ガッドの出世バンドだったとも言えるスタッフでもクリス・パーカーとのツイン・ドラムスでした。また ボブ・ジェームスのタウンホール・ライヴや サイモン&ガーファンクルのセントラル・パーク・コンサートでもグラディ・テイトとのツイン・ドラムスを披露していましたよね。しばしばツイン・ドラムスを採用してきたガッドは、この左右に拡がりゆく豊かな音響効果の他にも、もう一人のドラマーにリズム・キープを任せることによって より高く自由に飛翔出来るメリットに味を占めていたのではないでしょうか。もちろん、ステージ上の視覚的な効果も極めて大きいと思います。ジョン・トロペイのアルバムで(だけ)聴くことが出来る 名手リック・マロッタガッドとの豪華なコンビネーションは、実に拡がりを感じるリズムに耳も心も奪われてしまいます。そして、この魅力的なリズム・コンビネーションを選択したのは、言うまでもなく トロペイ自身であった筈(!)なのです。

2. セヴンス・ヘヴン 7th Heaven(04:11) 作曲 グロルニック
 ガッドのスネアによって 打ち寄せる波のようなクローズド・ロールで始まります。これに被さるストリングスのアーバンな動き、実に格好イイ! やがて作曲者であるドン・グロルニックのエレクトリック・ピアノのリズムに乗せて、リック・マロッタガッドによるドラムスのフィル・インが交互に飛び交う瞬間は 最高の気持ちよさです。これにトロペイがテープを逆回転させたかのような不思議なメロディを爪弾きます・・・何て変な曲だ! でも凄く良い。やがてラテン風のリズム・セクション&パーカッションに乗って トロペイのブルーなギター・ソロが始まりますが、長くは続きません。再びイントロダクションと同じ 打ち寄せる波のパートが繰り返されます。帰ってきたマロッタガッドのツイン・ドラムスの自由な会話が、今度は長く続きます。ううーっ もう悶絶です。 ・・・え? おーい、こんなところでフェイド・アウトするなよーっ! 早いよーっ・・・

3. ザ・ジングル The Jingle(04:38) 作曲 トロペイ
 この曲にはガッドは不参加。このナンバーに限っては 演奏メンバーも異動が多いです。ガッドに代わって ルーズでパワフルなビートを叩きだすドラムス奏者は アラン・シュヴァルツバーグ Alan Schwartzberg という人。かつてジミ・ヘンドリックスと共演していたドラマーで、この録音当時には70年代のアメリカン・ハード・ロックを代表するグランド・ファンク・レイルロードと双璧をなすグループ、マウンテンのメンバーだったそうです(熊谷美広氏のライナーに拠ります)。その他 ドン・ペイン(ベース)Don Payneケン・アッシャー(キーボード)Kenny Ascherロン・トロペイ(パーカッション)Ron Tropea ほか。レギュラー・メンバーで このナンバーに参加しているのは リーダーのトロペイ以外  ルーベンス・バッシーニ(パーカッション)Rubens Bassini だけです。
 また ここでは さらに別の顔を見せて(聴かせて)くれるジョン・トロペイ、まったく異なるギター奏者が 何人も同時に演奏しているようです。実に 気持ちよさそうに朗々とソロを爪弾く役、伸びやかに歌う役、まるでキース・リチャーズのように 鋭くカッティングを繰り返す役・・・。本当にトロペイは器用なプレイヤーです。

4. ジャスト・ブルー Just Blue(08:15)  作曲 トロペイ
 再びレギュラーメンバー中心の演奏。ガッドマロッタのツイン・ドラムスが 時々役割を交替しながら、淡々とビートを刻み続ける気持ちよさ。若きジョージ・ヤング George Youngのアルト・ソロは、浮遊感ある曲調には合ってはいるものの 構成とエモーショナル面から 訴求力は今ひとつ。クローズド・ロールを効果的に生かしたガッドとマロッタによる ドラムスのフィル・インが左右から聴こえてきますが、しかし 何ということ これからというときに 突然フェイド・アウトしてしまうー・・・ って、うーん それはないんじゃないかな?

5. マフ Muff(05:58) 作曲 トロペイ-R.マロッタ-W.リー 共作
 トロペイウィル・リー(ベース奏者)、リック・マロッタ(ドラムス奏者)というリズム隊によって生み出されたオリジナル楽曲。繰り返されるリフのメロディは、どこか アヴェレイジ・ホワイト・バンド Average White Band の「ピック・アップ・ザ・ピーセズ Pick Up The Pieces 」を連想させるファンキーな曲調を持っています。
 脱線しますが その ピック・アップ・ザ・ピーセズ 」と言えば、「ハッスル 」のヴァン・マッコイも 名盤「ディスコ・ベイビー Disco Baby 」の中で、ガッドもメンバーだった“ソウル・シティ・シンフォニー The Soul City Symphony ”名義で レコーディングしていましたね。実は その録音には トロペイガッドリック・マロッタと 一緒に参加していたことは、興味深いです、すでに その頃から 彼らは仕事仲間だったわけですね。 
 ギター・ソロの後、01:44辺りから ツイン・ドラムスのアンサンブルによる二人のドラムソロが聴けます。その後は、あー サンボーン David Sanbornの素晴らしいアルト・ソロだ、うーん、情熱的! もー 千切れそうです。

6. シスコ・ディスコ Cisco Disco(04:33) 作曲 B.ミンツァー
 これから約5年後、天才ジャコ・パストリアスビッグ・バンド(1980年)でアレンジャーを務めることになる才人ボブ・ミンツァー Bob Mintzer の 明るい個性が良く出た楽しい作品。ご存知のとおり、彼は テナー・サックス奏者としては マイケル・ブレッカーに 勝るとも劣らない名手ですが、ここでは珍しくフルートに徹していますね。

7. ザ・ブラット The Bratt(05:06) 作曲 D.スピノザ
 マロッタ=ガッドのツイン・ドラムスの絶妙な会話に始まります。ここでは もうひとりのギタリスト、デヴィッド・スピノザ David Spinozzaが作曲した、まるでブレッカー・ブラザースのナンバーのような 錐揉み状にツイストする屈折したメロディが何とも気持ちいいです。終始バランス良く両側でリズムをキープする二人のドラマーは、途中 何度も お互いを引き立て合い、同じリズム・パターンの繰り返しにもかかわらず、聴者をまったく退屈させません。

8. ドリームス Dreams(04:46) 作曲 トロペイ 編曲 デオダート
 アルバム最後の曲には ガッドは不参加。若きトロペイを 初アルバム「 Deodato “Prelude”(1972年CTI ) 」に起用抜擢した ブラジルの作曲家・編曲家デオダート Eumir Deodatoが、ここでアレンジとエレクトリック・ピアノで参加(!)。
 トロペイは、アコースティック・ギターを抱え、名手リチャード・デイヴィス Richard Davis による 堅実なアコースティック・ベースのプレイに乗って 演奏しています、ここまでずっとホーン・アンサンブルの中に埋没していたサム・バーティス Sam Burtisによるトロンボーン・ソロが聴けます、それは短いながら なかなか味わい深いです。ドラムスはリック・マロッタひとり。最後にイントロダクション・パートが再現され、トロペイの生ギターによる乾いた響きを残して終わります。

 トロペイは 座敷童 ざしきわらし (?) 
 ジョン・トロペイは、常に 今 演奏されている音楽全体を見渡してから、その中に敢えて自分自身を(良い意味で)埋没させ、他のミュージシャンたちが駆け回るスタジオという競技場(フィールド)においては 彼らのプレイの隙間を上手に埋めながら 強い自己主張を避け、自分が発すべき音を慎重に選んでいる、というスタンスに立っているように わたしには聴こえるのです。
 そう考えた時、ではトロペイのキャラクターは?と問われたら、困ったことに 今一つ明確なイメージを持ち得ておりません。決して目立つ人ではないので 聴く人が聴けば きっちりと仕事してる、でも うっかり注意を怠るリスナーには その存在に気づいてもらえないことさえあるかも。ある意味で「座敷童(ざしきわらし) 」のような存在のギタリストだ と口を滑らせたら、きっと真面目なトロペイ・ファンの方からは 何だそれは!と お叱りを受けちゃうでしょうね(・・・すみません)。

 Short Trip To Space
 それじゃ 今夜はトロペイの「ショート・トリップ・トゥ・スペース Short Trip To Space1977年、ビデオ・アーツVACZ-1012 ) 」の中から、これも超・好きなナンバー「ツイスト・オブ・ザ・リスト Twist Of The Wrist (トロペイ=スピノザ共作) 」を聴きながら、夢の中で 70年代のニューヨークの摩天楼を背に どこまでも歩いてゆこうと思います。
 今宵も 最後まで わたしの駄文に つき合ってくださった貴方には、心より お礼を申し上げたいです。では おやすみなさーい 。。。

 ↓ 清き一票を!
にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村
blogram投票ボタン
人気ブログランキングへ
Club Scherzo, since 2010.1.30.

関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)