本記事は、8月 3日「 人気記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(14)1926年 エルノ・ラペー 「シャルメーヌ Charmaine 」
と、マントヴァーニ楽団のこと

800-085-2“mantovani’s golden hits”  
 エルノ・ラペー作曲 「シャルメーヌ Charmaine 」
 マントヴァーニ 指揮 Annunzio Paolo Mantovani
 マントヴァーニ楽団The Mantovani Orchestra
 録音:1975年(再録音)同楽団によるオリジナル・レコーディングは 1951年。
(上)Polygram-LONDON(輸入盤800-085-2“mantovani’s golden hits” )


FLASH 2139-2“Mantovani Charmaine”  2枚組 輸入盤460-039-2 “ The Very Best Of MATOVANI ”
(左)マイナー盤(60年代の放送録音 FLASH 2139-2“Mantovani/Charmaine” )
(右)Decca ( 2枚組 輸入盤460-039-2 “ The Very Best Of MATOVANI ” )


 今回は、最後まで 読んでくださる方が いらっしゃるかどうか ちょっぴり心配な分野からの話題です。
 かつて ムード音楽 という( 呼称も もっと適切なカテゴリー名があればよかったのに・・・ )ジャンルで 一世を風靡(ふうび )したマントヴァーニ楽団の 夢のように美しいテーマ音楽として 知らぬ人のない名曲「シャルメーヌ Charmaine 」と マントヴァーニについて、取りまとめようと思っています。
 
 ワルツ「シャルメーヌ Charmaine 」は、サイレント映画「栄光 What Price Glory(1926年、ラオール・ウォルシュ監督 」 の伴奏音楽として、当時キャピトル・シアター(サイレントの映画館)の音楽監督を務めていたハンガリー出身のエルノ・ラペー Erno Rapee によって作曲された佳曲です。
 「映画館の音楽監督 」(?)・・・  はい、そうなんです。当時のアメリカの映画産業は、今日からは想像できないほどの、まったく異なる大劇場形態を誇っており、例えば ブロードウェイには 数百~数千人規模も収容可能な メガ「映画シアター」が軒を連ねていたのだそうです。サイレント映画が娯楽の全盛だった時代、これら大劇場では 競って 質の高いオーケストラ、一流の演奏家をシアター付きで召し抱え、特にキャピトル・シアター劇場オーケストラの演奏技術の高さは有名だったそうです。
 キャピトルに招かれて音楽監督に就任していたエルノ・ラペーは、ハンガリー ブダペスト王立音楽院の教授を務めていたほどの音楽家でしたし、彼がシアターで率いることになったオーケストラでコンサート・マスターを務めていたのは、音楽院でラペーの後輩だった「ヴァイオリニスト 」、ユージン・オーマンディでした。
 ラペーキャピトル・シアター・オーケストラによる休憩時間の演奏は、当時 ラジオで中継されるほど 高いレヴェルにあったのです。彼の作曲した「シャルメーヌ 」も、当時ヒットしたワルツのひとつでした。

 その後、この「シャルメーヌ 」は、一時 完全に忘れ去られてしまいましたが、1951年 マントヴァーニが「発掘 」、アレンジを施して自分の楽団で演奏・録音したところ、その驚異的なシングル盤の売れ行きによって 不死鳥のように蘇り、マントヴァーニ楽団のテーマ音楽として - というより「現代ムード音楽のスタンダード 」という地位を得て復活し、その「栄光 」を 文字どおり不動のものとしたわけです。

マントヴァーニの略歴
 マントヴァーニ( 本名 アヌンツィオ・パオロ・マントヴァーニ 1905-1980 )は、イタリアのヴェネツィア出身、父はミラノ・スカラ座のオーケストラに所属し、トスカニーニの指揮の元 コンサートマスターまで務めていたヴァイオリニストで、イタリア音楽院でも教鞭を取っていた人物だったそうです。
 その後、マントヴァーニ家アヌンツィオが4歳の(1909年)頃、イギリスに移住しています。何故か その父から 直接に音楽教育を受けることはなかったようですが、ピアノ、ヴァイオリンの演奏を巧みに身につけ、若いうちからロンドンのメトロ・ポール・ホテル小編成のサロン・オーケストラを率いるようになります。当時のメンバーの中にはジョージ・メラクリーノ George Melachrino もいたそうです。ここではクラシックの小品を主な演奏曲とし、ホテルを訪れる人に聴かせていたのが最初でした。そのうちラジオに出演することによって、レパートリーを広げ、知名度も高めて行きます。
 1940年、英デッカ ( ロンドン ) と契約し、レコーディングとコンサート活動を精力的に行なうようになりました。質の高いムード音楽の一時代を築いた功績は大きく、1980年3月29日に74歳で亡くなるまでの40年間、英デッカにレコーディングした曲数は767曲もあると書かれています。アルバムもLPでは60枚以上残されており、CD時代になってから編まれたベスト盤・コンピレーション盤も含めると、膨大な枚数になりそうです ( 尚、ここまでの記述の多くは、宮本 啓 氏の CD解説書に書かれた情報に拠るものです、どうもありがとうございました ) 。
 マントヴァーニ楽団を 代表するレコードとなった「シャルメーヌ 」の演奏は、やはりマントヴァーニの優れたアレンジの腕によって その旋律の美しさが最大限に活かされ、曲本来の素晴らしさに世界の聴衆を気づかせた、ということが 再認識された真の要因であったに相違ありません。 



▲ 「その秘密 」は、すべて マントヴァーニの編曲に 
 アレンジは、ワルツのリズムこそ強調されてはいませんが、マントヴァーニ楽団ならではの効果的な工夫によって 楽曲の旋律線が最大限に生かされているのです。それは “ カスケイディング・ストリングス ” と呼ばれる弦楽合奏における独自のオーケストレーション技法で、1935年頃からマントヴァーニの盟友だったイギリスの作・編曲家ロナルド・ビンジの全くオリジナルなアイデアだったと伝えられています。
 マントヴァーニ楽団は、30名以上のオーケストラの大部分を弦楽器セクションが占めていますが、ヴァイオリンを4部(時には8部)のパートにまで細分化し、その各パートには同じメロディ・ラインを揃えて演奏させず、それぞれが異なる音符の長さによって 少しずつスライドさせ(ずらし)て弾くように、わざわざ細かくコントロールを施すのです。これを全体で聴くと、その音楽は あたかも滝が流れ落ちてくるかのような、エコーやディレイにも似た豊かな立体効果を聴者に与えることがわかります。しかし録音スタジオのエフェクター技術に 安易に頼るようなことは決してせず、この美しいストリングスの響きを 楽員の演奏技術によってのみ 生み出していることは、注目に値します。この特殊な演奏法が高く評価、マントヴァーニ楽団特有のトレード・マークになったことは 言うまでもありません。
 「シャルメーヌ 」の カスケイディング効果を活かしたストリングスの対旋律として、ステレオの右チャンネルから 静かに滑り降りてくる低音弦の ふくよかな動きなどは、まるで 音のヴェールの裾(すそ)が 広がるのを 淑(しと)やかに収めようとしているみたいで、そんな一瞬にも 小さなカタルシスを感じ、痺(シビ )れまくってしまう私です。


■ マントヴァーニによる クラシック音楽素材の音盤
● ウィンナ・ワルツ名演集
 ( ポリドール POCL-20117 “マントヴァーニ・シュトラウス・アルバム” )

マントヴァーニ・シュトラウス・アルバム
 シュトラウス・ファミリーのワルツの名曲を 斬新なアレンジで演奏したディスク。
「美しく青きドナウ 」、「春の声 」、「南国のばら 」、「皇帝円舞曲 」、「ジプシー男爵 」~ 恋人のワルツ、「千夜一夜物語 」、「オーストリアの村つばめ 」、「酒・女・歌 」、「加速度円舞曲 」、「ウィーンの森の物語 」、「朝の新聞 」、「こうもり 」~ 円舞曲(親しい仲間 ) 収録。
 1953年録音、ステレオフォニックとうたわれてますが、疑似ステレオでしょうか、せっかくのカスケイディング音響の拡がりは いまひとつです。
 弦セクションの技能には まったく不満は感じませんが、マントヴァーニ楽団 唯一の弱点は、やはり金管セクションでは(?)ということを考えさせられる一枚(主観的な感想、ご容赦 )です。

● アンコール小品集
 ( ポリドールPOCD-1504 “コンサート・アンコール” )

POCD-1504“コンサート・アンコール”マントヴァーニ
 クラシックのアンコール・ピースを収めた魅力的な一枚。
 「月の光(ドビュッシー原曲)」、「スペイン舞曲第5番(グラナドゥス原曲)」、「『風変わりな店』よりカンカン(ロッシーニ ~ レスピーギ原曲)」、「朝の歌(エルガー)」、「ツィゴイネルワイゼン(サラサーテ原曲)」、「秋(シャミナード原曲)」、「インドの歌(リムスキー=コルサコフ原曲)、「美しいロスマリン(クライスラー原曲)」、「タイスの瞑想曲(マスネ原曲)」、「常動曲(ヨハン・シュトラウス二世 原曲)」収録。
 かつて 若き日のマントヴァーニが、ロンドンのホテルで小編成のサロン・オーケストラを率いていた頃、宿泊客に聴かせることを目的に主要なレパートリーとしていたクラシックのアンコール・ピースは、まさに これら小品だったのではないでしょうか。

● マントヴァーニ・イン・コンサート
 (ポリドール P28L-20082)
 
イン・コンサート(ポリドール P28L-20082)
 1970年に編集された、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにおける実況録音集との設定で 曲の合間合間にマントヴァーニ自身による楽曲紹介の声も収められた貴重盤ですが、拍手や会場ノイズを巧みにオーバー・ダビングした疑似ライヴ(?)である可能性も高いように思われます。
 冒頭「シャルメーヌ」のイントロのみ触りで聴かせた後 マントヴァーニの挨拶が入り、喜歌劇「こうもり」序曲、「ムーンリヴァー」、「ホラ・スタカート」、「アクエリアス」、「枯葉」、「グリーンスリーヴス」、「イタリア奇想曲(チャイコフスキー原曲)」、「イタリア音楽メドレー(オー・ソレ・ミオ、サンタ・ルチア、フニクリ・フニクラなど)」、そして最後「シャルメーヌ」で 名残惜しげに締め括られています。

● 「メリー・ウィドウ ~ マントヴァーニ・オペレッタ・メモリーズ」
 (ユニヴァーサル・クラシック UCCD-7148 )
 
オペレッタ・メモリーズ」(ユニヴァーサル・クラシック UCCD-7148 )
 ウィンナ・オペレッタワルツを豊麗なストリングによる演奏を中心にアレンジされた傑作ディスクです。
 曲目は、レハールによる「フレデリカ」、「ルクセンブルクの伯爵」、「フラスキータ」、「ジプシーの恋」からのワルツ、カールマンの「伯爵夫人マリーツァ」、「チャールダーシュの王女」からのワルツ、オスカー・シュトラウス「チョコレートの兵隊」、そしてヨーゼフ・シュトラウスの「天体の音楽」、ヨハン・シュトラウス二世による喜歌劇「こうもり」序曲を収めた ヴァラエティ溢れる一枚です。
 とりわけレハールの「メリー・ウイドウワルツのアレンジの美しさは 絶品です。もしかしたらマントヴァーニ楽団の最高傑作かも知れません。特に、後半のカスケイディング・ストリングスの効果たるや絶大、まるで舞踏会場の明かりが ひとつずつ灯されてゆく様子を眺めているような素晴らしさです。

● ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」
 ( 輸入盤 Decca Heritage 475-6159 )

「ラプソディ・イン・ブルー」( 輸入盤 Decca Heritage 475-6159 )
 名手ジュリウス・カッチェン(1926−1969)との共演で ガーシュウィンの名曲「ラプソディ・イン・ブルー」および「ピアノ協奏曲 へ調」(1955年録音)の録音まで残されているのですが、これは凄い(!)です。いつものマントヴァーニのレコードとは異なり、基本的にはガーシュウィンの意図したオリジナル・スコアどおりで 編曲者の手が加わったアレンジ楽譜ではないものの、極端な緩急のスピード、楽譜に書かれていない筈のパーカッションなどが 所々 付け加えられており、やはり 興味は尽きません。
 特に「ラプソディ・イン・ブルー」のほうが オモシロイ仕上りです。皆さん よくご存知の有名な冒頭 クラリネット・ソロによる あの長いトリルと異様な大グリッサンド - マントヴァーニは、最初から そのクラリネットに寄り添うかのように ストリングスのカスケイディング効果をいきなり披露してくれます。「ええっ、何じゃ~ これは?」という困惑の声と「イョッ、待ってました!」という ご贔屓(ひいき )筋の掛け声とが 同時に聞こえてきそうな瞬間です。11:03頃からも 突然 弦セクションの滝が一斉に流れ落ち、その盛大な効果が再び炸裂、ああ! もはや 悶絶は避けられません。

● 最後に もう一枚!
 あの歴史的な熱血テノール マリオ・デル・モナコ
「ポピュラー・ソング曲集(1963年録音:Deccaユニヴァーサル UCCD-7100)」
・・・なるコンピレーション盤で マントヴァーニ楽団が伴奏を務めている録音もあるのです。
デル・モナコマントヴァーニ ・・・う ーん、何というエグイ組み合わせなのでしょうか。
Mantovani &  Mario Del Monaco(Decca)  マリオ・デル・モナコの「ポピュラー・ソング曲集(1963年録音Deccaユニヴァーサル UCCD-7100)」
 ここでも 稀代の名歌手が歌うガスタルドンブッツィ=ペッツィアなどの背後で、まさしく怒涛のように カスケイディング・ストリングスの「音の滝」が 流れ落ちていくのが はっきり「見えます」!
 
 ・・・正直 ここまでくると、もはや楽曲に合っているのか ミスマッチだったのかなどは、どうでもよくなってしまうほど。あなたの耳も不純な悦びに浸れますよ~。

1928年 昭和天皇、即位礼 挙行。
     ソ連、トロツキー追放。第一次五ヶ年計画開始。
     スターリン、実質的な支配者となる。
     ブニュエル、映画「アンダルシアの犬」。
     ディズニー、アニメーション映画「蒸気船ウィリー」。
     ラヴェル、「ボレロ」。
     ガーシュウイン、「パリのアメリカ人」初演。
     クルト・ヴァイル、「三文オペラ」。
     ヤナーチェク没。

1929年  ムッソリーニ、ローマ法王とラテラノ条約調印。
     ニュールンベルクでナチスの全国大会。
     エルサレム「嘆きの壁」事件。
     ニューヨーク、暗黒の木曜日、世界経済恐慌。
     ニューヨーク近代美術館設立。
     オーストリア共和国憲法改正。
     ホフマンスタール没。

1930年  ロンドン海軍軍縮会議。 
     ホーギー・カーマイケル、「わが心のジョージア Georgia On My Mind 」
     ベナツキー、喜歌劇「白馬亭にて」  に続く・・・


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コメント

さらに1年半後のお返事、スミマセン (^_^;)

ご指摘のFLASH盤 よくよく見直したら・・・ 本当だ このジャケット写真 裏焼きですね。 こういう細かいところに目をつけるセンス、発起人 結構好きです。 
そういえば、マイルス・デイヴィスの「ミュージング・オブ・マイルス(Prestige ) 」もLPでは左右逆だった時期がありましたね (後に修正されたはず )。ポール・マッカートニーのシングル 国内(東芝 )盤「ハイ・ハイ・ハイ / Cムーン 」も ポールが巧みに「右利き 」でベース弾いてました(笑)。

URL | “スケルツォ倶楽部”発起人 ID:-

4年後に偶然とおりがかりました

FLASH盤(公開録音放送?で拍手入り)は偶然もっていますが、
このジャケットの写真は、どうも裏焼き(左右逆)ですね。
マントヴァーニの胸ポケットのハンカチが右胸にあります。
僅かに見えるピアノの蓋もよく見ると怪しい。(本当なら右手側が開く)
指揮やヴァイオリンだったら起きない間違いですが、ピアノだと気が付きにくいかも・・・

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