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Getz Children Of The World (CBSソニー 25AP-1696 )
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スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
クリスマスのプレイリスト
CHRISTMAS PLAYLIST (60min.)


 メリー・クリスマス、“スケルツォ倶楽部発起人です。今宵は、カフェ ソッピーナからお届けします。
 私より年上の 音楽好きなFさんご夫妻に、このクリスマス・シーズン、ご来訪客も多くなる応接間でのティータイムに流してもらえるような ウィンターソングスをセレクト、小一時間のプレイリストを一枚のCD-Rに編集して プレゼントしようと思ってます。
 クラシックジャズに偏ったり、好みが独りよがりに傾くことがないよう 程ほどに聴きやすさを心がけましたよ。日本語の響きは なんとなく日常生活に戻されてしまうような気がして、敢えてJ-POP系は外しておきました。
 はい。それでは ご一緒に “スケルツォ倶楽部会員の皆さまも、私たちが選曲した 今宵の「レシピ 」は いかがでしょう?

スケルツォ倶楽部 クリスマスのプレイリスト

♪ 進呈 スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
クリスマスのプレイリスト CHRISTMAS PLAYLIST(60min.)



“シンフォニー”シッド と チャーリー・パーカー(左) 晶文社 チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ、ライヴ版ロイヤル・ルースト編Vol.1_Bird At The Roost Vol.1 The Savoy Years、Complete Royal Roost Performances
1 イントロダクション(01:03) 1948年12月25日 Introduction 25th,Dec.1948
D.J.“シンフォニー”シッド(M.C. )D.J.Symphony Sid At Royal Roost

「チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ、ライヴ版ロイヤル・ルースト編Vol.1」から
Bird At The Roost Vol.1 The Savoy Years、Complete Royal Roost Performances
録音:1948年12月25日
音盤:SAVOY / キングレコードK-30Y-6241~42

 モダンジャズ黎明期、チャーリー・パーカーディジー・ガレスピーらの音楽にいち早く注目、「ビ・バップ 」と名づけて広く周知した功績によって知られる 白人DJ “シンフォニーシッドが、1948年クリスマスの夜から朝にかけて ニューヨークのクラブ“ロイヤル・ルースト”から全米ラジオ中継されたジャズ・ライヴで MCを務めた音声記録から、その貴重な語り口の部分、臨場感を醸(だ )そうと 勝手に短く切りとって拝借しました。
過去記事で詳しく ⇒ 1973年のピンボール」(村上春樹スタン・ゲッツの「ジャンピング・ウィズ・シンフォニー・シッド


Manhattan Transfer Manhattan Transfer(Warner Bros. )
2 レット・イット・スノー(04:35 ) Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
マンハッタン・トランスファー Manhattan Transfer

録音:1992年 「クリスマスアルバム」から
音盤:Sony (SRCS-6552)

 フランク・シナトラディーン・マーティンのレコードで知られる、クリスマスのスタンダード・ナンバー。クロード・ソーンヒルの「スノーフォール」で始まり ビートルズの「グッドナイトホワイトアルバム所収 )」で終わるという秀逸な選曲も個性的だった、マンハッタン・トランスファーの(短かった )Sonyレーベル時代にリリースされた「クリスマス・アルバム」の中でも モダンなアレンジが素敵な、おススメの一曲です。
 静寂の「バークレー・スクエアのナイチンゲール」を思わせるヴァースの導入部は 懐かしいティム・ハウザーの声がリードする柔らかいア・カペラ。やがて The weather outside is frightful … から 4人の混声アンサンブルが、静かなオーケストラを伴って入ってくる瞬間の素晴らしさったらもう。


アンディ・ウィリアムス - アンディのクリスマス・アルバム
3 クリスマスの12日間(03:56) The Twelve Days Of Christmas
アンディ・ウィリアムス Andy Williams

録音:1963年 「クリスマスアルバム」から
音盤:CBS(ソニー MHCP-515 )

 「ア・ソング・アンド・ア・クリスマスツリー」 A Song And A Christmas Tree という別タイトルでも知られる、12月に子どもたちが歌う 数え唄的な楽しいイギリス民謡です。
 キリスト生誕を祝うまでの12日間、毎日「良き友」が一人ずつ ツリーに飾る贈り物を持って訪れてくるという歌詞で、キャンディ、輝く星、銀のベル、キャンドル… と、一日一つずつプレゼントが増えてゆく趣向なので、日を追うごとに数えるプレゼントも増えてゆき、繰り返すたび 歌もどんどん長くなるわけです。そして最後の十二番を歌い終える頃 そんなクリスマスツリーを見上げれば、もうたくさんの贈りもので ツリーは すずなり状態に。
 アレンジがたいへんおもしろいアンディ・ウィリアムスとコーラス隊による歌唱、みんなでプレゼントを数えるパートは 基本リズムが三拍子になります。


若きコルンゴルト_Korngold コルンゴルト RCA映画音楽集
4 コルンゴルトの「クリスマス 」 (01:40) Erich Korngold “Christmas”
映画「人間の絆」 (E.グールディング監督 )“Of Human Bondage” から

チャールス・ゲルハルト指揮 / ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1972年~1974年 (RCA コルンゴルト映画音楽集から )
音盤:RCA / BMGファンハウス(BVCC-37308 )

 マーラー、R.シュトラウスの後継者的存在だった天才コルンゴルトは、ユダヤ系だったためナチスの迫害を逃れ 大戦中アメリカへ亡命。この音源は、彼が1940年代に作曲したハリウッド映画のオリジナル・スコアを30年後に再演 & ステレオ録音でリリースしたもので、70年代に一大センセーションを巻き起こした「クラシックフィルム・スコア・シリーズ」所収の一曲です。「人間の絆 」の他、「シー・ホーク 」、「二つの世界のはざまに 」、「海の狼 」、「嵐の青春 」、「放浪の王子( こじき王子 ) 」など、忘れられた名曲の数々は、今日のハリウッド映画に付けられた音楽の源流が、実はウィーン世紀末に端を発し、コルンゴルトという重要な媒介を通ってアメリカへと流れ込んだ事実に気づかされる、歴史的な価値も高いレコーディングです。
 滑走する雪ぞりの疾走を描写する「クリスマス 」は、サマセット・モーム原作の映画のために コルンゴルトが作曲した短いスケルツォ(トラックの 01:13から 02:51までの抜粋 )ですが、その殆ど空中を飛ぶ速さに唖然とします。頬に当たる風となって耳元を吹き抜けてゆく木管楽器の対旋律は 舞い散る雪粉のよう。短い時間内にあるまじき想像を超えるドリーミーな楽曲展開には大拍手。きらきら飛び散る砕氷の輝きを感じさせる打楽器群のアンサンブルは もはや崩壊の一歩手前( ! )、氷の花がぽんぽん開いてゆくように 弦セクションが描く剃刀にも似た切れ味といったら・・・。


マレーネ ディートリヒ リリー マルレーン(CBSソニー)
5 飾りのついた四輪馬車 (03:39) The Surrey With The Fringe On Top
マレーネ・ディートリヒ Marlene Dietrich

録音:1950年代 アルバム「リリー・マルレーン 」から
音盤:CBS(ソニー 28DP-5348 ) 

 ロジャーズハマースタインによる、1943年に大ヒットを記録したブロードウェイ・ミュージカルオクラホマ!」中のナンバーなので、正確には クリスマス音楽というわけではないのですが、そりの鈴の音が 前曲(コルンゴルト )の雰囲気にきれいにつながるため、勝手に並べてみたものです。
 コルンゴルト同様、ヒトラー第三帝国に背を向け、渡米したままハリウッドで活躍していた大女優マレーネ・ディートリヒの後半生もまた戦禍の影響に翻弄されました。ブロードウェイのミュージカル・ナンバーをディートリヒが わざわざ(彼女の母国語である )「ドイツ語」訳詞で歌っている理由は、生粋のドイツ人たる彼女が戦時中 連合国軍側に協力し、対独兵士に向け流されていた厭戦放送に乗せる目的のレコーディングだったから、とされています。その中の一曲が、あの「リリー・マルレーン」でもあるのですが、これについては またいずれ別の機会に詳しく。


クリス・レア ドライビング フォー クリスマス
6 ドライヴィング・フォー・クリスマス (03:59) Driving Home For Christmas
クリス・レア Chris Rea

録音:1987年
音盤:Magnet / Victor(VIPX-1877 )シングル

 さて、お次は クラシックな馬車から 現代の自動車に乗り換えて(笑 )。
 クリスマスに故郷へ帰る途上、たくさんの思い出に浸りながら 時間たっぷり余裕でハンドルを握っている男が主人公です。そんな素敵なクリスマスソング、隣の車を運転する男を眺めたら「彼も同じみたいだった。みんな一緒なのさ 」という歌詞が、好きです。
 「ずいぶん昔、この曲を録音する前のことだが、妻が私をミドルズブラまで連れ帰るために電車賃を節約しようと、オースチン・ミニを転がしてロンドンまで迎えに来たんだ。私たちは車で家へ向かったんだが、酷い渋滞に巻き込まれてしまってね。その時にこの曲の着想を得たんだ。これは、クリスマス・キャロルの車バージョンなんだよクリス・レアの回想より ) 」
 下降を繰り返す二つの魅力的なバッキング・コードは、スケルツォ倶楽部の過去記事 - マイルス・デイヴィス 「カインド・オブ・ブルー 」の 「ソー・ホワット 」に影響を受けた(と思われる )音楽 にも共通する、私 発起人 お気に入りなサウンドです。ああ、ひたすら快適。楽曲をエンドレスにリピートさせて 雪道を ドライヴしてみたくなるなあ。


ジェイムス テイラー クリスマス アルバム (Hallmark盤) ジェームス テイラー クリスマスアルバム Toots Thielemans
7 クリスマス・ソング (03:52) 
The Christmas Song (Chestnuts Roasting On An Open Fire )
ジェイムス・テイラー feat. トゥーツシールマンス(Harm.)
James Taylor feat. Toots Thielemans

録音:2002、2004、2006年 ハリウッド 
音盤:Columbia 88697 00323 2 / アルバム“James Taylor at Christmas”から

 大好きなジェイムス・テイラーの、これも大好きなクリスマス・アルバムから。このディスクが最初にリリースされた2004年当時は、アメリカの大手通販会社(画像左/Hallmark盤 )系列でしか買えない限定販売だったため、日本では入手困難な稀少盤でした。手に入らないと思うと一層の聴きたさに髪をかきむしったのも 今では懐かしい思い出(現在では 曲数も増えて、祝・国内盤もリリース )。
 ストリングス・セクションの素敵なアレンジは、デイヴ・グルーシンのペンによるもの。そして この一曲に限ってですが、フィーチャーされるゲスト・ソリストは、トゥーツ・シールマンス翁( ! )、惜しくも 3年ほど前(2016年)に他界しましたが、忘れられぬ稀有な才能でした。半音階を多用するモダンなソロ・・・ 屈指のハーモニカおじさんと 比類なき暖かさの籠(こも)った個性的な声で語り紡ぐジェイムス・テイラーとの共演なんて、ありそうで なかったんじゃないかな、こんな素敵な顔合わせが聴けるセッション、他にはちょっと思い出せません。


ハーブ アルパート クリスマス ハーブ アルパート クリスマス 裏ジャケット
8 ウィンター・ワンダーランド (03:06) Winter Wonderland
ハーブ・アルパート & ティファナ・ブラス Herb Alpert & The Tijuana Brass

録音:1968年 「クリスマス・アルバム」から
音盤:A&M Records(SP-4166 )

 「ビター・スウィート・サンバ 」のヒットで知られる ティファナ・ブラス The Tijuana Brassのリーダーにして A&Mレコードの創始者、音楽ビジネス面でも成功を収めたハーブ・アルパートの有名なクリスマス・アルバムから。レコード冒頭一曲目が、これでした。
 軽快なリズムに乗せたメイン・パートの聴きやすさと好対照に、無伴奏コーラスでクリスマス聖歌風な雰囲気を醸しだすなど、絶妙な弦セクションのアレンジとともにレコーディングに加わったショーティー・ロジャーズのアイディアでしょう。


ロジャー・ニコルス近影 ロジャーニコルスア サークル オブ フレンズ  
9 クリスマス・イズ・マイ・フェイヴァリット・タイム・オブ・イヤー (03:31)
Christmas Is My Favorite Time Of Year
ロジャー・ニコルス & ア・サークル・オブ・フレンズ
Roger Nichols & A Circle Of Friends

録音:1995年 アルバム “Be Gentle With My Heart”から
音盤:Lexington / Toy's Factory(TFCK-88954 )

 ソフト・ロックの歴史的名盤として知られる「ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ(1967年 ) 」以来30年ぶりのニューアルバムとして 日本からこの一枚がリリースされた時、(予想していたよりも )さほど話題にならなかったことが 私には意外でした。
 グループ名の表記が“ザ・スモール・サークル”から どことなく謙虚に響く “ア・サークル”に変わっている理由は、このアルバムのレコーディング時点で ロジャー・ニコルスが音楽活動を共にしていた、全く新しいメンバーによって録り直された新しいアレンジが施された演奏(「愛のプレリュード」、「ドリフター」など )であること、アルバムの残り半分を占める新曲で構成されていたからなのでしょう。(当時)ニューアルバムの最後に収められた、いかにもロジャー・ニコルスらしい この美しい一曲「クリスマス・イズ・マイ・フェイヴァリット・タイム・オブ・イヤー 」は、かつてはソフト・ロック路線だった彼らのサウンドが、長い時間を経て そのスタイルを技巧的なAORカラーに自然移行したことを、聴き手に納得させるものでした。


ビートルズ フリー アズ ア バード ビートルズのクリスマス 1967
10 クリスマス・タイム・イズ・ヒア・アゲイン (03:03)
Christmas Time (Is Here Again )
ザ・ビートルズ The Beatles

録音:1966年、1967年
音盤:EMI/Apple/Odeon(東芝EMI/TOCP-8715 )

 1963年から69年にかけて ビートルズのファンクラブ会員にのみ毎年限定で制作・頒布された レアなクリスマス・レコード(ソノシート )がオリジナルです。これは1967年の作品(4人の共作 )で、 7年間にわたって毎年一枚ずつ制作され続けた同企画の中では 最も完成度の高かったクリスマスソングでした(なんだか変な声が混ざっているなあと思ったら、コーラスには四人の他にも ジョージ・マーティンや俳優のヴィクター・スピネッティが参加しているそうです )。長い間 公式リリースされなかったので 知る人ぞ知る音源でしたが、1995年 すでに他界していたジョン・レノンの遺した未発表曲の断片を 他の三人のメンバーが被せる形で完成させた“新曲”「フリー・アズ・ア・バード 」シングルのC/Wとして(短縮/編集版でしたが )発表、初めて一般に聴かれるようになりました。
 曲の後半には1966年にレコーディングされたポール、ジョン、ジョージ、リンゴの順番でクリスマスへの挨拶の言葉が重ねられ、最後に「蛍の光」と寒風の音に乗せて ジョンがスコットランド訛りでユーモラスに語る小芝居の声でF.O.してゆきます。


ジョン・レノン=小野洋子 ハッピークリスマス Shaved Fish John Lennon  
11 ハッピー・クリスマス (03:35) Happy X’mas(War Is Over )
ジョン・レノン & 小野洋子 John Lennon & Yoko Ono

録音:1971年10月 ニューヨーク
音盤:Apple/Odeon(東芝EMI AR-2943 ) “Shaved Fish”にも収録

 まだクリスマスソングなるジャンルが 今日ほどポップ・ミュージック領域に浸透していなかった時代、クリスマスをテーマに選ぶようなシンガーは、ビング・クロスビーフランク・シナトラといったイメージの“大御所”に限られ、それも讃美歌ゴスペル、極めて穏当なオリジナルソングを歌う程度でした。なにしろ1957年にエルヴィス・プレスリークリスマス・アルバムをリリースした時には、全米、およびカナダのラジオ局の多くが「神を冒涜する歌唱だ」として放送を禁止、社会問題になったほど。70年代になってもビルボードなどでは クリスマスソングを一般チャートとは同列にランクインさせない規定さえありました。
 そんなアメリカがベトナム戦争の泥沼にまみれていた当時、ジョン・レノンが(「クリスマス・ギフト・フォー・ユー 」のフィル・スペクターを共同プロデュースに迎え )わざわざクリスマスソングを「装って」 実は“戦争反対のプロテストソング”をレコーディングした功績は、大きいです。ここから発せられるメッセージは もはや一ミュージシャンのものではありません。まさにこの点が、70年代のレノンが正当に評価される分水嶺と言えましょう。
 ジョン・レノンが切なくクリスマスを祝うパートと、ハーレム・コミュニティ児童合唱団と一緒に並んで小野洋子の歌うバッキング・パートが 「あなた方が望みさえすれば 今すぐにも戦争は終わるのに ! 」と(邦題では「戦争は終った 」などと表記される習慣ですが、直訳ではレノン夫妻の仕掛けたニュアンスが正しく伝わりません ) 同時進行で 自然に重なり合うコーラスの効果に、目頭が熱くなります。
 ひとつの戦争が終結しても 未だ世界中で紛争は絶えることなく、常にこの歌が流れるたび新たな問題提起に気づかされる衝撃は、ひとえにこの一曲「    」が 究極の平和の歌=「クリスマスソング」の容(かたち)を借りているからに他なりません。


Wonderful Christmastime Paul McCartney マッカートニーⅡ  
12  ワンダフル・クリスマスタイム (03:48) Wonderful Christmastime
ポールマッカートニー Paul McCartney

発表:1979年11月
音盤:Parlophone(東芝EMI ERP-20644 )、“McCartney II” (スーパー デラックスEdit. )収録(ユニバーサルUCCO-9990 )

 弾むアナログシンセサイザーの音、そりの鈴の音、上昇するメロディに 降りてくるコーラス、ああ、これは良い曲だ、ビートルズを解散しても さすがポール・マッカートニーだなーなどと考えながら、リアルタイムでFM放送から流れてきたのを最初に聴いた私“発起人”はまだ高校生でした。その時ラジオのD.J.が「ウイングスの“ワンダフルクリスマス” 」と紹介していたことを記憶してます。当時のミュージック・ビデオでも ポールがバンドのメンバーと一緒に演奏している映像だったので、いかにも大勢呼んできて楽しんでます的なイメージだったのが、翌年ポールの大麻不法所持でウイングス来日公演すべて中止になった頃、この曲がポール独りによる多重録音だったという情報を初めて知って、心底驚いたものです。その後、殆ど間を置くことなく これも ポールの独り多重録音による ソロ・アルバムマッカートニーⅡ」がリリースされましたっけ。


ジョージハリスン デインドン ジョージ・ハリスン ダークホース
13 ディン・ドン (03:41) Ding Dong, Ding Dong
ジョージ・ハリソン George Harrison

発表:1974年12月 アルバム“Dark Horse”(右 )から
音盤:Apple(東芝EMI EAR-10679)

 “ビートルジョージと言えば、60年代後半から傾倒したヒンドゥー教とインド文化を好む菜食主義者でした。ラヴィ・シャンカールとの交流によって ロック・イベントとしては史上初の大規模な(バングラデシュ支援の )チャリティ・コンサートを開催したことが、偉大な功績でしょう。
 ヒンドゥー教徒としての立場から、キリスト生誕を祝うようなクリスマスソングは(たぶん )発表しておらず、この「ディン・ドン 」も新年を祝う鐘の音とともに「古き(偽り)を送り出し、新しき(真実)を迎え入れよう 」という縁起の良い歌詞です。鐘の音を模す音列は、ウェストミンスタービッグベンを思わせます。
 歌唱をお聴きになればお分かりのとおり、この当時ジョージはひどく喉を傷めており、声帯の深刻な不調を抱えていました、明らかに辛そうですよね。同時期には、ビートルズ解散後最初の北米ツアーを挙行したものの過密なスケジュールで心身ともに疲弊しているところへ、コンサートのプログラム内容には評論家らの辛辣な批判が浴びせられ、レコードセールスも急降下、さらには「マイ・スウィート・ロード」の盗作疑惑訴訟で敗れるなど、気の毒なほどの逆風 & 負のスパイラルが続き、まさに「ディン・ドン 」の歌詞に肖(あやか)って 明るい鐘の音とともに災厄を払えることを祈る心境だったのではないでしょうか。


リンゴ・スター アイ ワナ ビー ア サンタ
14 ホワイト・クリスマス (03:14) White Christmas
リンゴ・スター Ringo Starr

発表:1999年10月 アルバム “I Wanna Be Santa Claus”から
音盤:Mercury(ユニヴァーサル PHCW-1061)

 リンゴがレゲエ・アプローチで披露する興味深いクリスマス・スタンダード、気分としては、「ワイキキビーチのクリスマスレスリー・ウォールズ )」だそうです。旦那芸の極致とも言うべきリンゴの魅力的な声は、オリジナル・アルバム制作にあたって 選曲次第で、成功も失敗もほぼ決まってしまう感あり。四人のビートルの中でも、クリスマスソングでフル・アルバム出せてしまうなど、唯一リンゴ・スターを措いて他にはいないでしょう。

 あ、トラックの最後に クラシカルなコンサートの始まる前にオーケストラがチューニングするサウンドが入ってしまった・・・ この次には何か オーケストラ編成の楽曲を選ばないと、不自然だなあ。


ルロイ・アンダーソンの「そりすべり 」MCA (ユニヴァーサル MVCE-30033~34 )
15 そりすべり (02:42) Sleigh Ride
ルロイ・アンダーソン Leroy Anderson
(作曲者自身による )指揮/オーケストラ Orchestra(unnoted )

録音:1959年6月
音盤:MCA (ユニヴァーサル / MVCE-30033~34 )

 ・・・ というわけで、ルロイ・アンダーソンの素敵なアンコール・ピースをここでひとつ選びました。「トランペット吹きの休日 」、「ワルツィング・キャット 」、「忘れられし夢 」など、いずれも大好きな名曲たちです。
 これらを聴くなら、やはり作曲者自身による この自作自演盤が(私にとっては )いまだに同曲の最もお気に入りなベスト・パフォーマンスです。スピード感のあるテンポ、演奏の勢いと推進力の高さ、思いきり派手に鳴らす複数のパーカッション(スレイベル、ウッドブロック、むち、シロフォン、グロッケンシュピール )の賑やかさ、何よりノリノリなスウィング感、そしてユーモラスな馬のいななきを模するトランペットによる“締め”のパートまで、録音状態も まだ十分に鮮明な現役のステレオ・レコーディング。他の どのレコーディングも 決して敵(かな)いません。 - でも もしも同時期のユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団ルロイ・アンダーソンのナンバーをCBSコロンビアで アルバム一枚企画してくれていたら、さぞや素晴らしかったのではないかなあ・・・ などと想像します。

関連記事 暑中見舞いは そりの鈴の音に のせて


グレッグ・レイク Greg Lake Greg Lake I Believe In Father Christmas
16 夢みるクリスマス (03:33 ) I Believe In Father Christmas
グレッグ・レイク Greg Lake (Emerson,Lake & Parmer )

録音:1975年、ロンドン
音盤:90年代に再発された際のシングル・ジャケット(WEA International )

 セルゲイ・プロコフィエフ作曲、「トロイカ 」(組曲「キージェ中尉」から )の有名な旋律を印象的なリフに拝借した、いかにもエマーソン、レイク & パーマーのメンバー(すでに今は亡き グレッグ・レイク名義 )らしいアイディアも秀逸な、素晴らしい一曲です。美しい十二弦ギターのアコースティックな爪弾きに乗せ、かつてサンタの存在を信じていた幼き日々の記憶を語り、やがてそこから世界の平和にまで想いを馳せ広げゆく奥深い内容です。短い演奏時間にもかかわらず、数あるロック系のクリスマスソングの中でも 最もスケール大きな作品のひとつに仕上がっています。後半のクライマックスにはオーケストラが加わり、さらに壮大な世界を描いています。


“シンフォニー”シッド と チャーリー・パーカー(左) 晶文社 チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ、ライヴ版ロイヤル・ルースト編Vol.1_Bird At The Roost Vol.1 The Savoy Years、Complete Royal Roost Performances
17 アウトロ(01:24) 1948年12月25日 Outro.25th,Dec.1948
D.J.“シンフォニー”シッド(M.C.)D.J.“Symphony” Sid At Royal Roost

「チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ、ライヴ版ロイヤル・ルースト編Vol.1」から
Bird At The Roost Vol.1 The Savoy Years、Complete Royal Roost Performances
録音:1948年12月25日
音盤:SAVOY / キングレコードK-30Y-6241~42

 このCDの冒頭1曲目、“シンフォニー” シッドの紹介で始まった、チャーリー・パーカーのクインテットによる、「ホワイト・クリスマス」のテーマ再現部から 再び ここニューヨークのクラブ“ロイヤル・ルースト”に戻ってきましたよ。今宵のパーソネルは、“バードパーカー(アルト)の他、ケニー・ドーハム(トランペット )、アル・ヘイグ(ピアノ )、トミー・ポッター(ベース )、そして名手マックス・ローチ(ドラムス )という豪華な顔ぶれでした、お楽しみ頂けましたでしょうか。


 それでは、最後に一曲 素敵なアンコールを用意しましたよ。私 発起人が、最も愛好するジャズ=フュージョンクリスマスソングの逸品です。

Michael Franks 2011 Jazz to the World_Blue Note Records
18 レット・イット・スノー (04:20) Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
マイケル・フランクス Michael Franks

発表:1995年 オムニバス・アルバム“Jazz to the World”から
収録曲(ミュージシャン名 ):
Winter Wonderland(Herb Alpert and Jeff Lorber )、Baby, It's Cold Outside(Dianne Reeves and Lou Rawls )、It Came Upon A Midnight Clear(Fourplay )、Have Yourself A Merry Little Christmas(Diana Krall )、O Tannenbaum(Stanley Clarke、George Duke and Everette Harp )、Let It Snow ! Let It Snow ! Let It Snow !(Michael Franks )、The Christmas Waltz(Tha Brecker Brothers )、The Little Drummer Boy(Cassandra Wilson )、I'll Be Home For Christmas(Herbie Hancock and Eliane Elias )、O Come O Come Emmanuel(John McLaughlin )、Christmas Blues(Holly Cole )、Angels We Have Heard On High(Steps Ahead )、The Christmas Song(Anita Baker )、What Child Is This ?(Chick Corea )、Winter Wonderland(Dave Koz )、II Est Ne, Le Divin Enfant(Dr. John )
音盤:Blue Note/CDP-7243 8 32127 2 9 (ユニバーサル TOCJ-6730 )

 この素晴らしい名盤については 以前すでに紹介しましたが、J.F.ケネディの妹 ユーニス・ケネディ=シュライヴァーがその創設に尽力した、知的障害者のためのスペシャル・オリンピックス基金への支援を目的としたチャリティ・アルバムでした。キース・へリングのオリジナル・アートワーク・ジャケットによっても知られています。
 ミュージシャンたちは 各自いずれも、クリスマスにちなんだ楽曲を、この新録音のために特別編成したメンバーによってレコーディングしたのです。チック・コリア、ジョン・マクラフリン、ハービー・ハンコックイリアーヌ・エライアス、ブレッカー・ブラザーズ、ステップス・アヘッド、ダイアナ・クラールなど、たいへん豪華なメンバーが参加しました。
 マイケル・フランクスが、サミー・カーン作詞 / ジュール・スタイン作曲による 冬のスタンダード曲「レット・イット・スノー ! ~ 」を手がけた際、サポートに集まったメンバーの素晴らしさに、リリース当時 目をみはったものです。
Michael Franks ArtieTraum.jpg Carla Bley-1989 Steve Swallow Danny Gottlieb Veronica Nunn - American Lullaby
▲ (左から ) マイケル・フランクス(ヴォーカル )アーティ・トラウム(録音プロデュース、アコースティック・ギター )、カーラ・ブレイ(ピアノ )、スティーヴ・スワロー(ベース )、ダン・ゴットリープ(ドラムス )、そして録音当時はまだ無名でしたが ヴェロニカ・ナン(バック・コーラス )・・・。

 このレコーディングの重要性を じわじわ感じられてきたのは、やはり冬のコンセプト・アルバム「ウォッチング・ザ・スノー 」を聴いてからのこと。
 「レット・イット・スノー ! ~ 」は、当時パット・メセニー・グループのドラマーだった ダン・ゴットリープが叩くブラッシュワークの優しいアウフタクトで始まります。すぐに ECMカーラ・ブレイが アコースティック・ピアノで単音ドミナントのオクターヴ( C ↘ C )打鍵を繰り返します。
楽譜 Let it snow! Intro
▲ ここは、まさしく「ウォッチング・ザ・スノー 」の同名タイトル曲でも用いられていた、空から舞い落ちて雪片を表現するピアノ奏法ではありませんか。そしてマイケルが、彼独自の節回しにアレンジした歌唱発声による “Let It Snow ! Let It Snow ! Let It Snow !
楽譜 Let it snow!
▲ ここもまた アルバム6曲目「セッド・ザ・スノーフレイクス 」Said the Snowflake や 8曲目「ホエン・ザ・スノーマン・シングスWhen the Snowmen Sings に登場した ミ・ファ・ソ音型が そのまま曲頭からはっきりと聴こえてきます。これこそ「ウォッチング・ザ・スノー 」の中に 繰り返し現れた、雪の舞い落ちる様を描写する「スノーフレイク音型 」に他なりません(ここ、一部過去記事の使い回しありw )。

Michael Franks - Watching The Snow 2003
▲ 詳しくは こちら マイケル・フランクス流 “新年の祝い方” ~ 冬のコンセプト・アルバム「ウォッチング・ザ・スノー

スケルツォ倶楽部 クリスマスのプレイリスト

本日の記事は、2019年12月15日にリリースしたものの再投稿となります。


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