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発起人、初めての「新世界より」(ドヴォルザーク
- 下校の放送と 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」



 今晩は。
 さて、思い出してみれば 自ら意識して「音楽」を聴くようになったのは、ようやっと小学 3年生の秋になってからのことでしたか。
 何をかくそう、私 “スケルツォ倶楽部発起人は 1962(昭和37)年生まれ、小三以前、音楽といえば TVから勝手に流れてくる流行歌や ドラマの伴奏楽曲、アニメの主題歌くらいなもの、それらにでさえ自分から耳を傾けることは決してありませんでした。まだ有線放送も普及していませんでしたから、近所の駅も商店街も とても静かなものでした。
 小学校でも 始業/終業のベル以外は、登校時間帯に木造校舎のスピーカーから鳴らされるレコードといえば、子ども向けの いわゆるセミ・クラシック程度(「森の水車」とか グリークの「」とか )でしたが、当時はまったく何の関心も湧かず、今 思い出してみても 驚くほど音楽には無関心でしたね。

 そんな、まだ「音楽を聴く」意識も皆無だった、小学校に入学したての私 発起人 - 1年生の授業は 水曜と土曜は午前中で終わり、他の曜日も 5時間で終わっていました。 1時間授業とはいっても 1コマは 45分でしたから 午前中 4コマ、午後 1コマ、ゆえに 5時間授業の日でも 午後 2時半には集団下校していましたっけ。
 しかし「その日」は なぜか 一年生だった私だけ 午後 4時過ぎまで 学校に残っていました。その理由は まったく覚えていませんが -。
 とにかく その夕方近く、私は独り 校庭に 立っていました。

 その時です。

 頭上から 今まで聞いたこともない 異様な音響が校庭に降ってきました。
 それは 静かな音ではありましたが、まるで それまで陽が当たっていた光景が 一瞬で日陰に転じてしまうような、何かが背後からしのび寄ってくるような、 とても不吉な警報にも感じました。さらに、遠くから静かに雷鳴も轟(とどろ)いていました。
 うわー、 もう恐怖しかありません。子どもの直観で、ここには長く留まっていては危ないと感じ、文字どおり一目散に、逃げるように走って帰りました。
 一体 何があったのでしょうか、何もわからぬまま泣いていました。
 恐ろしさのあまり 両親にも友だちにも この「恐怖体験」w を 話すことはありませんでした。

「下校の時刻となりました。校内に残っている生徒は 電気を消して 早く帰りましょう」

 ― はい、お察しのとおり “その音” とは ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」第2楽章の冒頭のことでございます。

 この 静かなるファンファーレが、下校時に木造校舎のスピーカーから アナウンスに先立って流されていたBGMだったと知るのは、もう少し先のこと・・・ 発起人 6歳 - 私の耳は 当時 これを まだ「音楽」と認識することさえ できぬほど幼稚で未熟だったのでした。
 
 間もなく 私は 家庭の事情で転校することになりました。
 転校した先の学校で 下校時に流されているBGMは、ドヴォルザークではありませんでした。ゆえに「恐怖」の実体を 私が正しく知るのは さらに後のこととなります。

 その後、私は 突然目が覚めたかのように 音楽に対し 猛烈なほど興味を持つようになり( ⇒ 「初めは ベートーヴェンから。」 をご参照 )、自ら進んで 初めて「新世界より」を鑑賞することになるのは、それから さらに 3年後(小学校3年生 )の秋のこと。
 そのきっかけとは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読んでいたときでした。
新世界-5
 カムパネルラジョバンニに「あれ とうもろこしだねえ」というところから、汽車は地平線の果てまで広がる平原の小さな停車場に とまるわけですが、午後 2時を指す振り子時計が「しずかなしずかな野原のなか」で カチッカチッと正しく時を刻む、その「音のたえまを遠くの遠くの野原の果てから」「糸のように流れてくる」「かすかなかすかな旋律」こそ、「新世界交響楽だわ。」と乗客の少女がまるで「ひとりごとのように」さりげなく曲名を言い当ててみせる、その場面に流れる言葉が刻みしリズムの なんと美しきことでしょう。
新世界-3
 さらに「コロラドの高原」と思しき、「まっ黒な野原」を一人の「インデアンが白い鳥の羽を頭につけたくさんの石を腕と胸にかざり小さな弓に矢をつがえて」銀河鉄道の汽車を追って走ってくるというシュールな描写と、その背景で「いよいよはっきり地平線のはてから」湧き 幅ひろく明るく流れている音楽こそが「新世界交響楽」だと書かれていたのでした。
新世界-4

 小三だった私は、賢治のイマジネーション世界と その独特な言葉による描写が気に入ってしまい、矢も楯もたまらず まだ未知だった「新世界交響楽」という楽曲を 聴いてみたくて たまらなくなりました。

散策するベートーヴェン(部分) シューベルトの肖像画 伝「モーツァルト 」とされる肖像画
 当時 ベートーヴェンシューベルトモーツァルトのいくつかの名曲との邂逅をすでに済ませていた私でしたが、まだまだ新しい音楽に飢えていた時期でした。
 文字どおり“新たな世界”との出会いを求め、早速 学校の図書館で「新世界交響楽」なる、格好いいタイトルの楽曲について調べました・・・ どれどれ、なんでも「国民楽派」という音楽家の中でもドヴォルザークというチェコの作曲家の交響曲で、とびきり親しみやすい名曲であるらしい。

 親にねだって、初めて入手した「新世界より」は チェコの名匠カレル・アンチェル(指揮) ウィーン交響楽団(1958年 2月録音 / PHILIPS)盤、例によって中古レコード専門店ハンターで購入。理由は 一番安かったから。名盤の誉れ高い チェコ・フィルとの後年のレコーディング(スプラフォン)盤とは異なります。
カレル・アンチェル 新世界より カレル・アンチェル ウィーン交響楽団 1958年 2月録音 PHILIPS ドヴォルザーク Dvorak
 
 これは当時 日本フォノグラムから 900円という価格帯でリリースされていた超廉価盤(グロリア・シリーズ)の中の一枚で、スメタナの「モルダウ」が余白に収められていました。
 レコードに針を下ろして 驚いたことに、もう次から次へ速射砲のように繰り出される美しいメロディ攻撃とメリハリの利いたオーケストレーションの豪華なサウンドを楽しんでいるうち、あっという間に第一楽章は終わってしまいました。うう、この世に こんな判りやすい交響曲が存在して良いのだろうかと、出会ったばかりの「新世界」が もう一聴で大好きになってしまいました。

 そして いよいよ第二楽章が 始まりました。
 金管の柔らかなコラールが鳴りだした瞬間、私は 雷に打たれたような驚きに襲われ、スピーカーの前で 全身が動かなくなりました。
 これ だったのか・・・
 まだ一年生だった三年前、当時の小学校の校庭で放課後に聴いた、あの「」の記憶と この柔和な音響とが、この時 脳の中で 一致しました。
 この四小節で 人生観が変わってしまうほどの衝撃を 受けた、と言っても 大袈裟ではありません、息苦しくなるほどの感動。

 かつては「異様な音響」として恐怖しか感じられなかった「不吉な警報」も、今は 美しく繊細な金管の和声と、その最低音に加わっているチューバの音色さえ鮮明に聴きとることができました。遠くに轟(とどろ)いていたと信じこんでいた雷鳴も、実は ティンパニ奏者のロールだったことが判りました。ヤレヤレ、三年前(六歳)の自分は 一体 何を聴いていたのだろう・・・。
 そして 初めて聴くイングリッシュ・ホルンによる美しい「家路」のメロディの魅力と言ったら・・・ ああ、あの四小節の続きは こんなふうに なっていたのか - 。
 もはや多言は無用 - 。 後半二楽章も 言うまでもなく素晴らしく、それこそ初めから 深い満足感に浸ることができた、国民楽派の交響曲との それは感動的な出会いの思い出となりました。

 こうして また新たな名曲と出会うことができました・・・。これほどまで 深い喜びと感動に包まれ、確実に人生を豊かにしてくれる(であろう)音楽を聴くという悦びの大きさのあまり、これが実は 背徳の罪に属する悪習なのではなかろうか、実は 許されぬ行為なのではなかろうかと、内心 罪悪感さえ覚えたものです(笑)。

 あまりにも気に入ってしまったため ぜいたくにもw 初めて同曲異演を求めることとなりました。その後 まもなく ストコフスキー/ニュー・フィルハーモニアO.(RCA)盤も入手することとなります。こちらのほうが印象もさらに鮮烈で、小学生にとっては判りやすかったわけですが、これが実は・・・ トンデモ盤だったということが、後で判明します。
 でも それはまた別の話題 ⇒ ♪ ストコフスキー「新世界より 」ほか

 スケルツォ倶楽部、次回は 名曲「新世界より」から 一枚選ぶ つもりです。実は 今回は その前触れでしたー(笑)。


♪ 関連記事 ⇒ 冨田 勲 : 宮澤賢治の印象を音楽で描く 「イーハトーヴ交響曲


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