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NHK大河「鎌倉殿の13人」の音楽に
ドヴォルザーク「新世界より」が 切り貼られた違和感


♪ 今日の文章は 2022年 1月に 一度書きかけて ボツにした文章を 本日 整え直したものです。

NHK 鎌倉殿の13人(2022年) (4) 三谷幸喜
 おはようございます、 “スケルツォ倶楽部発起人 です。

 私 発起人、毎年 NHKの大河ドラマを好んで観てきましたが、今年は 愛好する「右大臣実朝」の時代でもある「鎌倉幕府」成立時期・・・ この時代がドラマに採り上げられるのは なかなか稀なことで、その直前の時代までを描いていた「義経」(2005年)、平清盛」(2012年) を除けば、名作と思う「草燃える」(1979年)以来のこと。

 しかも 今回は、日本中から熱い視線を浴びている才能、三谷幸喜が - 異色な“青春群像”ドラマとして注目された快作「新選組!」(2004年)、個性的な脚色で堂々と再構築した成功作「真田丸」(2016年)に続いて - 三度(みたび )大河脚本を担当すると聞き及び、いやが上にも ワクワク感は高まりました。

 そんな期待が裏切られることはなく、今年(2022年) 1月からスタートしたドラマ「鎌倉殿の13人」は、日本史を知っていても「予測不能」な解釈に 毎回驚かされ続け、気づいたら 早や折り返し地点に入っているではありませんか。やっぱり三谷脚本は オモシロいなー・・・ 特に、ピーター・シェーファー「アマデウス」における モーツァルト(天才)とサリエリ(その才を解する凡人)の関係性を 源義経菅田将暉)と梶原景時(二代目中村獅童 )との人間関係に擬(なぞら)えてみせたアイディアなど、その秀逸さには 思わず膝を叩きましたね。
梶原景時と義経(NHK鎌倉殿の13人) 映画「アマデウス」Tom Hulce, F Murray Abraham(1984)

 すでに前回( 7月 3日放送回)、初代“鎌倉殿”たる源頼朝大泉洋)は 孤独の絶頂で急死、開幕間もない鎌倉武家政権は 今が正念場にもかかわらず 戴いてきた源氏の旗頭を失って 途方に暮れています。京都朝廷には決して弱みは見せられない、そんな未完成な幕府は・・・
源頼家(NHK鎌倉殿の13人) 阿野全成(NHK鎌倉殿の13人)
 まだ年若い長男 - 源頼家金子大地)を擁するのか、それとも頼朝の異母弟 阿野全成新納慎也)を中心に固めるのか、周囲の思惑と緊迫、御家人同士の対立が描かれようとしているところ・・・。

NHK「鎌倉殿の13人」 ⇒ 7月17日予告編

 さて、もし大河のような長丁場のドラマを観るオモシロさを どこに感じるか、と訊かれたら、私は 主要人物の(時間の経過とともに)変わりゆく人格の描写(演技)にある、と答えると思います。純粋な若者が成長して人格的に円熟を深めてゆく過程には見応えがありますが、どちらかというと 根がイジワルなのかw 同じ変わりゆく人物の演技でも 悪いほうへと変わってゆく描写にこそ 私は興味が向きます。
 歴代NHK大河の思い入れランキングなら 個人的には かなり上位に置きたい傑作「黄金の日々」(1978年、城山三郎/原作、市川森一/脚本)の中で、名優 緒形拳が演じた豊臣秀吉の人格的変貌ほど衝撃を感じたものはありませんね。
NHK「黄金の日々」染五郎、緒形拳
 ドラマの前半までは 主人公 納屋助左衛門(六代目市川染五郎=現・二代目松本白鸚 )を何くれと助ける人情に篤かった藤吉郎秀吉が、関白就任後は あり得ないほど冷酷な悪役に堕してしまったからです。このときの緒形の発揮した素晴らしい演技力の幅広さ/奥深さに、放送されていた当時 子ども心にも 心底感服しました。
 「鎌倉殿~ 」でも 伊豆の若武者だった北条義時を主演する小栗旬の、ドラマ後半 - 幕府の二代目執権へ - いかに「成長」を遂げるか、その演技力にも期待しています。

エヴァン・コールEvan Call(1988~ )
 さて、このドラマのオリジナル音楽を担当するのは エヴァン・コール Evan Call (1988~ )という若い作曲家。詳しくは存じませんが、バークレー出身。でもアメリカではキャリア皆無。意外にも 来日した日本で 映像音楽の仕事を始め(アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」、同「ジョゼと虎と魚たち」など )いくつかの映像音楽を手がけている注目の人だそうです(スミマセン、発起人 未聴 )。
 「鎌倉殿~ 」の音楽に限って申せば、ドラマティックなクラシカル・オーケストレーション技術は文句なく合格点、メインテーマに聴かれる抒情性も十分、あとは作曲家としての - 失礼ながら - 個性の構築は これから・・・ と感じるものの 特に 大きなマイナス要素も見出せぬ中、唯一「既存の名曲を使う」という “禁じ手”にだけは 正直 首を傾(かし)げました。

 それは初回 第一話(2022年 1月 9日放送回 )ラスト近く、義時小栗旬)が、敵方に追いつめられた頼朝大泉洋)を救出しようと(三谷台本らしくコミカル味も満点 )女装に化粧までさせた上 馬に乗せて逃走、ドローンに搭載したカメラが頭上から主演二人の窮地を脱する騎行を見下ろす場面・・・ 何とそこに 突然 ドヴォルザーク「新世界」交響曲終楽章、力強いホルンとトランペットによる、あの あまりにも有名な主旋律が降ってきたのでした。その瞬間、昂揚感を高めた効果を否定するものではありませんが、私の 第一印象は、スミマセン、食傷に近い 残念な感覚でした(あくまで 私の個人的印象ですよ )。
鎌倉殿の13人(新世界が流れるシーン)NHK 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」オリジナル・サウンドトラック Vol.1 (SONY)

 かつて大河ドラマの音楽で、作曲者がオリジナル以外の既存名曲を使ったのは、私が知る限り 2012年の「平清盛」(吉松隆/音楽)以来と思います。このときは 伝カッチーニ「アヴェ・マリア」のほか、エマーソン・レイク & パーマー「タルカス 」が、いずれも吉松アレンジによって 効果的に使われました。
NHK大河ドラマ「平清盛 」
♪ 詳しくはこちら ⇒ NHK大河「平清盛 」の音楽(吉松隆)

 この当時は 驚きこそあれ 違和感までは ありませんでした。作曲家吉松隆の音楽的キャリアを多少知っていたせいもあったかもしれません。
 そんな「平清盛」の中で 吉松が選んだ「知る人ぞ知る」楽曲センスに比べたら、「鎌倉殿~」で「新世界終楽章のメロディとは あまりにも一般に有名過ぎるセレクト、いかがなものでしょうか。「新しき武家の世」を開く緒戦だからといって、これほどまで正面切ってBGMとして そのまんま流してしまうって、あまりにも直球、あまりにもベタな印象が強すぎる気が・・・。

 後でネットで調べてみたら、このシーンでドヴォルザークを使うというアイディアは、演出側からの要請だったのだそう。「“新世界”を 使ってくれ 」って、それ、まさか 三谷幸喜の意向・・・? そういうセンスの人だったのかな? ドラマのオリジナル作曲を任されていたはずのコール氏の プロとしてのお立場を考えたら、絶対に不本意なことだったと思いますよ、正直 恥ずかしかったんじゃないかなー。まあ一般の視聴者さんからは 好意的な評価が多かったようだから、結果オーライ・・・ って やつですか? 

NHK 鎌倉殿の13人(2022年) (4) ドヴォルザーク Dvorak ヴィヴァルディ(WIki )
 同様に、義経が 思いきり跳びまくる 壇ノ浦合戦シーンを筆頭に、「新世界」以上に耳に憑いたのが、今度は ヴィヴァルディ「冬」からの あからさまな引用でした。これも演出側の要請があったのでしょう。パブリック・ドメインとして 利用許可なく使える著作物だからいいのかとか、オリジナル楽曲の創作にこだわりを持ち プロ作曲家としての矜持を守れとか、そんなことをコール氏に 申し上げる気は毛頭ありませんが、ドヴォルザークが、ヴィヴァルディが NHK大河の画面から流れ出した瞬間、私には大きな違和感を覚えたとしか言えません。

 パブリックドメイン を “引用” するという この音楽的手法、果たして 今後も続ける気なのでしょうか、少なくとも(一度書きかけて没にした この文章を 追記を加えて書き直している 2022年 7月=) の時点では抑えているようで、鎌倉幕府 開府以来 耳にしておりませんが。

 
 スケルツォ倶楽部、次回は 名曲「新世界より」から 一枚選ぶ つもりです。実は 今回は その前触れでしたー(笑)。


♪ おまけ
巴御前(NHK鎌倉殿の13人) 巴御前-2(NHK鎌倉殿の13人)
秋元才加の演じた巴御前 うーん、カッコよかったなあ ♡


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