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ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
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【番外編】 ウェザー・リポート
ライヴ・アルバム「8:30」(エイト・サーティ)


(小)Weather Report Eight-Thirty CBS Weather Report Eight-Thirty CBS(urabyoushi) 
ウェザー・リポート Weather Report
ライヴ・アルバム「8:30」

プロデュース:ジョー・ザヴィヌル
コ・プロデュース:ジャコ・パストリアス
録 音(ライヴ):1978年11月、カリフォルニア州サンタ・モニカ
 (スタジオ):1979年初頭、デヴォンシャー・スタジオL.A.
発 売:1979年 8月
音 盤:ARC / Columbia Records(L.P. 2枚組)


ウェイン ショーター スケルツォ倶楽部 ジョー・ザヴィヌル スケルツォ倶楽部 ジャコ・パストリアス スケルツォ倶楽部 ピーター アースキン スケルツォ倶楽部
パーソネル
ウェイン・ショーター Wayne Shorter – Tenor Sax, Soprano Sax
ジョー・ザヴィヌル Zawinul – Electric Piano, Acoustic Piano, ARP Synthesizer , Oberheim Polyphonic Synthesizer, KORG Vocoder
ジャコ・パストリアス Jaco Pastorius – Electric Bass, Drums on “8:30”& “Brown Street”
ピーター・アースキン Peter Erskine – Drums, Percussions

+ ウェストL.A.キリスト教会児童合唱団 West Los Angeles Christian Academy Children’s Choir – Chorus on “The Orphan”

Disc-1
 Side A

 1.ブラック・マーケット Black Market (Zawinul) 09:50
 2.スカーレット・ウーマン Scarlet Woman (Alphonso Johnson, Zawinul, Wayne Shorter) 08:43
 Side B
 1.ティーン・タウン Teen Town (Jaco Pastorius) 06:07
 2.ア・リマーク・ユー・メイド A Remark You Made (Zawinul) 08:03
 3.スラング Slang (Jaco Pastorius - Bass Solo) 04:46
 4.イン・ナ・サイレント・ウェイ In A Silent Way (Zawinul) 02:51
Disc-2
 Side A

 1.バードランド Birdland (Zawinul) 07:18
 2.サンクス・フォー・ザ・メモリー Thanks For The Memory (Wayne Shorter - Tenor Sax Solo) 03:35
 3.バディア/ブギ・ウギ・ワルツ・メドレー Badia / Boogie Woogie Waltz Medley (Zawinul) 09:31
 Side B [ Studio Recording ]
 1.8:30 (Zawinul) 02:37
 2.ブラウン・ストリート Brown Street (Zawinul, Wayne Shorter) 08:36
 3.親のない子 The Orphan (Zawinul) 03:16
 4.サイトシーイング Sightseeing (Wayne Shorter) 05:35

 もし 私 “スケルツォ倶楽部発起人が、ウェザー・リポートの最も優れた達成が聴けるアルバムとして一枚 選ばせてもらえるとしたら - グループ名を冠したファースト・アルバム(1971年)は別格として - やはり即答で名盤「ナイト・パッセージ」(1980年)を挙げるだろう。
ウェザー・リポート:8:30(CBS ) ウェザー・リポート:ナイト・パッセージ(CBS )
 だが、その前作に当たる ライヴ・アルバム「8:30」を抜きに 「ナイト・パッセージ」を、延(ひ)いてはウェザー・リポートそのものを語ることは 決して出来ない。「8:30」の意義とは、偉大なジャズ・グループが 彼ら自身の前史を総括するマイルストーン的役割を担っていたのみならず、当時のジャズが進むべき未来さえ垣間見せた(聴かせた)ことに在るからだ。

 1978年、メイナード・ファーガソン ビッグバンド出身の即戦力ドラマー、ピーター・アースキンの加入と同時に開始された、その年 6月の 日本公演 から始まる 大規模なワールド・ツアー(日豪欧米を周り、その年末いっぱいまで費やすことになる楽旅 )のステージ・ライヴ音源から厳選された、と当初は喧伝されていたものだが、実際に使われたマテリアルは カリフォルニア州モンテカルロのシヴィック・オーディトリアム公演からのレコーディングが殆どだった、と後に ザヴィヌル本人が明かしている。

 これは、長いツアーの後半(多くの場合なりがちな )マンネリに陥ることなく、むしろ逆に、後になればなるほど ウェザー・リポートの演奏が放つパワーネスと精度が上昇し、美しく磨き上げられていったことを示している。もし疑う人がいたら、彼らの楽旅最初の地だった日本公演(6月)の録音、ツアー途上にあったドイツ、オッフェンバッハ公演(9月)録画の音、 さらに正規ライヴ盤「8:30」におけるカリフォルニア公演(12月)の音と ぜひ聴き比べて頂きたい。

Disc-1
Side A
1.ブラック・マーケット
Black Market (09:50)

 長らくステージ・レパートリーの中心だった、ザヴィヌル畢生の一曲。
 ここに聴ける「完成型」に至るまで、果たして何度ザヴィヌルはライヴ・ヴァージョンのアレンジを変えてきたことか、明らかな失敗も含め 非正規ライヴ音源を並べて彼らの苦労を振り返ってみるのも一興(笑)。長い追求の果て、このライヴ盤の最初に収録された、無駄を削ぎ落としたアレンジと よく考え抜かれたステージ演出は もはや“完璧”の域では。
ステージのウェザー・リポート
 冒頭、いつもの平和な南国市場の雑踏を思わせる(アレックス・アクーニャの家族が交わす会話をナマ録したとされる)SEに先立ち、楽旅中に訪れたオーストラリアの動物園で ジャコが録音してきたとされる猿類の雄叫びの生録が流れてきて どこかただならぬ雰囲気を醸し出す。そして オリジナルよりかなり速いテンポで、ザヴィヌル、ジャコ、アースキンという三人(トリオ )だけのリズム・セクションで 強力に演奏は始まる。もはやシーケンサーは使われず、漲(みなぎ)るジャコのパワフルなベースの威力が圧倒的。間もなく 7/8拍子と 4拍子とを交互に刻む変拍子になった所で 初めてウェイン・ショーターが、サックスを片手にステージへ登場するのが これを迎える聴衆の歓呼の拍手で判る。ペンタトニックなサビのフレーズから 朗々と演奏に参加する、効果的な演出が 素晴らしい。
ウェイン・ショーター(4) ピーター・アースキン
 やがて ショーターのテナー・サックスと アースキンのドラムスだけが残ったデュオ・パートが、ジャズ本来がもつ即興性を聴衆に思い出させる仕掛け。この背後で ザヴィヌルジャコが 賑やかにパーカッションを振っている音が聴こえてくる。
 続くザヴィヌルの 滾々と湧き出でるがごときキーボード・ソロは ハ長調、やがて主調の変ロ長調へと急に復帰/転調すると そこから曲はコーダに入り、バンドは一斉に音量を落とす。それを合図に SEで打ち上がる花火の効果と言ったら もう・・・。


2.スカーレット・ウーマン
Scarlet Woman (08:43)

 ザヴィヌル、ショーター、前任ベーシスト アルフォンソ・ジョンソンの共作。
 この神秘的な楽曲もステージで採りあげられるようになって久しい。伝統的なジャズでは殆ど聴かれることのない、短い信号風フレーズをテーマに持つという稀有な作品。
ジョー・ザヴィヌル
 実演を重ねる度、おそらくホールの広さにも比例して、どんどんスケールが大きくなってゆき、それは「信号」と次の「信号」との間(ま)をより長く置いた後に炸裂するトゥッティの衝撃とも言える演奏効果の大きさに表われている。この楽曲のアレンジも(「ブラック・マーケット」ほどではないものの)、ステージで再演される都度ザヴィヌルによって毎回書き直されていた労作である。最後に近く シンセサイザーの効果音が延ばされた途中で 明らかに 後から繋いだように不自然なテープ編集で緊張が途切れており、そこだけは些か興ざめ。
 尚、オリジナル・リリースはL.P.二枚組だったものの、アメリカでフォーマット構成がCD(一枚)で再発された時、残念ながら このナンバーは米盤ではカットされていた。日本国内盤では、オリジナル(二枚組)構成が遵守されている。


Side B
1.ティーン・タウン
Teen Town (06:07)

Jaco ジャコ・パストリアス ウェザー・リポート:ヘヴィ・ウェザー(CBS ) 
 アルバム「ヘヴィ・ウェザー」に収録、ジャコの個性的な一品「ティーン・タウン 」は、かつての熱血ステージ・レパートリーだった「バーバリー・コースト」の位置に取って代わるもの。ここでもオッフェンバッハ公演(9月)でのアレンジと ほぼ同じ - ということは、ジャコが奏でるバップ風のベース・ラインの上に、ザヴィヌルが ベース・シンセサイザーの音を重ねてしまうという、残念な効果を確かめることができる。
 これにはジャコも内心 不満を感じていたらしく、ツアーのステージで「ティーン・タウン」がクライマックスを迎えると、自身のベース音量を手元で大きくしていたとも。だが、これに負けじとザヴィヌルも キーボードに付いているヴォリュームの目盛を常に上げるものだから PAから二つの電気楽器が競うように大音量を発するようになり、もはや(従来の)ジャズとは呼べない オフビートでオープンするハイハットのダンス・リズムと相まって、ライヴ会場は さながら電化ロックの爆発的なコンサートのようだった、との証言も残っている。
Weather Report live and unreleased SONY
▲ ちなみに、私 発起人が推薦する 実況レコーディングの「ティーン・タウン」は、 “Live & Unreleased”(2002年/SONY)に収録されたヴァージョン(1977年 9月、ロンドン録音)だ。名盤「ヘヴィ・ウェザー」に収録された初期スタジオ・ヴァージョンと同じく、まだザヴィヌルが キーボードを重ねていないため、粒立ちの良いジャコのベースの動きが 鮮明に聴きとれる。


2.ア・リマーク・ユー・メイド
A Remark You Made (08:03)

 ザヴィヌルが、ジャコのベース、ショーターのサックスを想定しつつ書き下ろした名曲。ライヴ・ヴァージョンでもジャコショーター、ザヴィヌルによる、たいへん充実した音空間が築かれる(アースキンの謙虚なプレイにもぜひ一票を投じたい )。
 やはりショーターは、切にテナー・サックスを聴きたい。よく歌うニュアンスも音量も豊かで美しい。ああ、いつまでもこの音の中に浸っていたい、と思ってしまう。その秀逸なるソロに続き、鍵盤の低音から徐々に立ち上がってくるザヴィヌルが奏でる「アコースティック・ピアノ」の絶妙な入り、その呼吸の素晴らしさも忘れがたい。
 だが、実は これは 生ピアノの音ではなく、同年 6月の日本公演で 来日した際に入手した(憶測 )ヤマハの 打弦式エレクトリック・ピアノ CP-80 の音である。ここで ザヴィヌルの楽器について 付記する前に、参考まで お手元にお持ちの「レジェンダリー・ライヴ・テープス : 1978-1981」から CD-2の 4曲目に収録された、「リマーク・ユー.・メイド」(1978年 6月28日、新宿厚生年金ホール録音)のピアノの音色を、アルバム「8:30」に収録された同じ曲の“ピアノ”の音と ぜひ聴き比べて頂きたい。歴然であろう(?)
打弦式エレクトリック・ピアノ YAMAHA CP-80
▲ これは、ピアノと同様 弦を張って 88鍵に拡張された特殊なステージピアノで、よりグランドピアノに近いアコースティックな音響が出せるヤマハの画期的な新製品(1978年発売)だった。しかも胴体部分と鍵盤部分とを二分割できたので、堅牢な外装がそのまま運搬ケースの役割も果たした。200kgもの重量と大掛かりな付帯作業を要するグランドピアノの運搬に比べたら 遥かにツアーにも適している。
ウェザー・リポート(ジャコ、ザヴィヌル、ショーター) ウェザー・リポート:ヘヴィ・ウェザー(CBS )
 ・・・もとい。豪放かつ繊細なショーターのテナーが再び登場、これに織り合わされるように 遥か遠くで鳴っているようなシンセサイザーの巧みなソロが いつ果てるとも知らず繰り返されるが、彼ら旋律楽器を一貫して支え続けるジャコのベースの豊潤なる重音の響きにも深く唸らされてしまう。この楽曲での隠れた主役が、実はエレクトリック・ベースであることは言うまでもない。オリジナルなスタジオ・ヴァージョンを凌駕した、ライヴ盤中でも白眉のトラックである。


3.ジャコのベース・ソロ / スラング
Slang (04:46)

 ジャコの華麗なベース・ソロは、今回もウェイン・ショーターの「ドロレス」断片から始まる。その技巧的な指先で転がるように美しい十六分音符が均一な粒立ちを保ったまま流れ着いたその果て、よくジャム・セッションなどで使われる単純なエンディング・フレーズで勝手に切り上げてしまう潔さ(笑)。
 ここでもワールド・ツアー中に習得したMXRデジタル・ディレイのリピート/ホールド・スウィッチで一定フレーズを任意にループさせ、その結果 偶然のように出来上がったリフを繰り返すグルーヴに乗せて 即興的にベースでソロをとるという、当時のジャコの典型的なソロ・アクトを聴くことができる。
 さらにアコースティック360アンプのディストーション・ユニットのヴォリュームを最大に上げてフィードバックさせ・・・
スラング ジャコのベース・ソロ
 このフレーズ引用は ジャコが敬愛するカリスマ ジミ・ヘンドリックスに捧げるオマージュであり、そのまま徐(おもむろ)に楽器を床の上に置くと自分自身はアンプの上によじ登って、そこからベースに飛び降りるというアクロバティックなアクションまで聴くことができる。
 思えば 二年前のスイス、モントルーのステージ でのまだ大人しかったソロ・アクトと比べると、かなり過激になっている。


4.イン・ナ・サイレント・ウェイ
In A Silent Way (02:51)

 かつてW.R.のコンサートに行けば、必ずウェイン・ショータージョー・ザヴィヌルによる即興的なデュオを聴くことができたものである。その素材は、彼らのオリジナル「ブラックソーン・ローズ」や「5つのショート・ストーリー」であったり、デューク・エリントンの「ソフィスティケイティッド・レディ」(東京-新宿厚生年金会館/1978年) であったり、あるいは その場で降ってきた 霊感(インスピレーション) に基づくインプロヴィゼーションであったり・・・ と 様々だったが、ここに記録された演奏は 1969年マイルスのアルバム製作に抜擢されCBSスタジオへ招かれたザヴィヌルマイルスに提供した、彼ら二人にとっても 記念すべきオリジナル・チューンの即興的な再演ということになる。
In A Silent Way_イン・ナ・サイレント・ウェイ ショーターとザヴィヌル
 ザヴィヌルは、マイルスのスタジオで “黄金のクインテット”の一員となっていたウェイン・ショーターと再会することになる。“再会”とは、これよりさらに10年前(1959年)、若き日の二人が メイナード・ファーガソンのビッグバンドに在籍しており、互いに顔見知りだったという事情に拠る(ファーガソン楽団と言えば、時代は違うが、ピーター・アースキンも そこからジャコに引き抜かれた経緯がある、よくよく縁が深いのかも)。
 デュオの最後に ショーターが ソプラノのマウスピースの先端を軽くくわえ、短く “プッ”と鳴らして演奏を終わらせているが、グループ名を冠した彼らのファースト・アルバム(1971年)冒頭「ミルキー・ウェイ」にも ショーターの“プッ”が聴ける瞬間があり、これをどうしても連想してしまう。


Disc-2
Side A
1.バードランド
Birdland (07:18)

 演奏(録音)された時期によってリズム解釈が異なるという話題を、以前どこかで書いたので 重複するかもしれないが、ここにあらためて整理しておきたい。
 オリジナルのスタジオ録音は アクーニャによるリム・ショットが縦四つにリズムを刻むという、どちらかと言えば 当時のディスコ・ビートを思わせる スクウェアな「乗り」だった。
ウェザー・リポート (2) ウェザー・リポート:ヘヴィ・ウェザー(CBS )
 それがアースキン加入後、初の東京公演(6月)におけるライヴでは 基本的にオリジナル・レコーディングの刻みを踏襲しようとしていたことが聴き取れるものの、実際には わずかに後乗り方向へとシンコペイトさせ始め 演奏も後半になると二拍/四拍にスネアを打ちこむようになる。
 オッフェンバッハ公演(9月)では一拍三連でスウィングするリズムに変化を遂げ この「8:30」(12月)ヴァージョンでは 完全なシャッフルと化し スウィングしている。後に作曲者ザヴィヌルは、何かのインタヴューで「バードランド」は、この「8:30」収録ヴァージョンを最も高く評価していると読んだ記憶がある。


2.サンクス・フォー・ザ・メモリー
Thanks For The Memory (03:35)

 ワールド・ツアーを通してショーターが自身のソロ・アクト素材に使ったスタンダード「サンクス・フォー・ザ・メモリー」(思い出をありがとう )は、1938年の(ラルフ・レインジャー/作曲、レオ・ロビン/作詩)アメリカではたいへん有名なスタンダード・ソング(ボブ・ホープシャーリー・ロス)だという。発起人は、個人的に スタン・ゲッツの古いヴァーヴ(1952年)盤 での演奏が やはり忘れがたい。

Bob Hope & Shirley Ross - Thanks for the Memory (1938) [Restored]
 ショーターが 初め 流れるようにカデンツァ風な動きを経て 巧みにメイン・メロディと低音(ベースライン)とを交互に吹き進めるうち 徐々に何を演奏しているのか判った聴衆が 嬉しそうに喝采を贈っているのが聴こえるが、いかに このノスタルジックな歌が アメリカの一般大衆の間に浸透しているかを知らしめるものである。
 ちなみに、同じ年のワールド・ツアー 6月の東京公演では まだ同曲は演奏されておらず、ショーターのソロ・コーナーに選ばれた楽曲は、自作の「ポンタ・ジ・アレイアネイティヴ・ダンサー)」やガーシュウィン・ナンバーなどだった。
ウェイン・ショーター (3)
♪ 過去記事 ⇒ 敢えて ウェイン・ショーターのスタンダードが聴きたい。


3.バディア / ブギ・ウギ・ワルツ・メドレー
Badia / Boogie Woogie Waltz Medley (09:31)

ウェザー・リポート テイル・スピニ’ン CBS ウェザー・リポート スウィートナイター CBS
 これまでジョー・ザヴィヌルウェザー・リポートのコンサートを締めくくるナンバーに何を選んできたか 確認できる範囲で辿ってみると、最も初期の生演奏が視聴できるドイツのTV番組Beat Club(1971年 8月)、および NDR Jazzworkshop(1971年 9月)では「ドクター・オノリス・コウサ」だった(アルフォンス・ムザーン脱退前)。
 翌1972年 1月「ライヴ・イン・トーキョー」では「アンブレラ」(結尾のみ「セヴンス・アロー」の印象的なフレーズ)が演奏されているものの、盛り上がりに欠けると考えたのか ザヴィヌルは 次なるアルバム「ボディ・エレクトリック」B面に抜粋した東京公演ライヴでは 「ディレクションズ」を最後に貼り直している。同年 8月のモルデ・ジャズ・フェス(ノルウェイ)では(ザヴィヌルマイルスの共作)It's About That Time(「セヴンス・アロー」フレーズで締め)を選ぶなど 必ずしも 毎回一定しているわけではなかった。

WEATHER REPORT LIVE 1972 - Zawinul Shorter Vitous Gravatt Romao
 1973年 5月 シカゴのクラブクワイエット・ナイト)で、当時のニュー・アルバム「スウィートナイター」収録の「ブギ・ウギ・ワルツ」を 早くもステージのラストに置いた(非正規)録音が存在する。そのエンディングで 「セヴンス・アロー」フレーズが 依然として聴かれることが興味深い。が、ミロスラフ・ヴィトゥスがグループを脱退して以降、二度とステージで聴かれることはなくなる。
 リズム・セクションがアルフォンソ・ジョンソンチェスター・トンプソンらに替わった1974年以降の米国内公演のライヴ(非正規)盤でも 引き続き「ブギ・ウギ・ワルツ」が 最後に置かれ、クライマックスを築いているが、さらに 1975年11月ベルリンでの楽旅ライヴ(Victor/BirdJAM)盤を聴くと、少し速度を速めた程度の「バディア」に重ねて、「ブギ・ウギ・ワルツ」の執拗なメロディが 突如浮上してくる様子を 初めて確認できる。呪術的なメロディを繰り返し、熱狂的なメドレーにしてしまう力技的なアイディアは、すでにアルフォンソ・ジョンソンが在籍時に試みられていたものだったのだ。
 そして ジャコが加入した1977年のアメリカ国内~ヨーロッパー・ツアー以降ウェザー・リポートはセット・リストを一新、エンディングも殆ど「バディアジブラルタル」というメドレー構成となり、前年まで頻繁に演奏されていた「ブギ・ウギ・ワルツ」は 一旦姿を消してしまう。1978年のワールド“8:30”ツアー(少なくともヨーロッパ公演以降)、当時 空前の大ヒットを記録していた「バードランド」を 「最後から二番目」に置いて会場を大いに湧かせ、その喝采に応えて バンドがアンコールを始める体(てい)で、「バディア/ジブラルタル」をプレイする流れが ライヴの定番となる。が、いつからそうなったかは不明なれど、コンサート終盤のメドレーで 著しくテンポを速めた「バディア」に ミックスされるラスト・ナンバーが(おそらくは聴衆の反応をみて )「ジブラルタル」から かつての「ブギ・ウギ・ワルツ」に戻されていることは特筆すべきこと。
 これは、私 発起人の推測するところ、「ジブラルタル」が「ブギ・ウギ・ワルツ」と同じ E♭のモードで書かれており、両曲とも コーラスのメロディが互いに酷似していること(それゆえ「ジブラルタル」と「ブギ・ウギ・ワルツ」が 同じ日に 同じステージ上で演奏されることは 決してなかった )、さらに 両曲いずれに置き換えても A♭モードで書かれた「バディア」とは調性においては相性が良く、それなら 6/8拍子の「バディア」に接続させる以上 4/4拍子の「ジブラルタル」より 3/4拍子の「ブギ・ウギ・ワルツ」のほうが 適性も高く(同じ三拍子系のタイムだから )より自然に繋がるものと ザヴィヌルが 検討した結果だったのであるまいか・・・(?)と。
 メドレー後半、ザヴィヌルのエレクトリック・フェンダーローズが 速い 同音連打 で残る場所、ジャコの超絶技巧なパターンに聴ける独特なベース音型、特に後半エンディングまでの「」は、すでに1975年時点で出来上がっていた台本の流れであった。これが わずか 4人のミュージシャンによって放たれる、凄まじいまでの熱気は もはや忘我の極致的に素晴らしい。
 オッフェンバッハ公演と同様、ステージの最後は ジャコが「バーバリー・コースト」で使用した「例の」フロリダ鉄道のSEが盛大に鳴らされ、プレイヤーたちは 楽器を置いてステージを去ってゆく。鉄道の激しい通過音が止んでも 猶しばらくの間 鳴り止まない警報機の残響が好きだ。


 以下、二枚組レコードの最後の第4面がスタジオ録音となった経緯について。
 記事はこちら ⇒ 38. 「一枚目B面の演奏が消去されました」


Side B [ Studio Recording ]
1.8:30 (Zawinul) 02:37
 記事はこちら ⇒ 37. 「8:30」(ウェザー・リポート)
(小)ザヴィヌルとジャコ 1976年ニューヨーク(ADLIB)

2.ブラウン・ストリート Brown Street (Zawinul, Wayne Shorter) 08:36
 スタジオ録音。ジャコがベースを弾いていない(!)ことで知られる(代わりにザヴィヌルがシンセサイザーで 低音パートを補う )カリプソ・ナンバー。楽しいリズムに乗せて バンドが野放図にインプロヴィゼーションを散々繰り返した末、最後に一度だけテーマが姿を現わして惜しげもなく終わるという、興味深い趣向が印象的な構成だ。
 南米のリズムを ジャズに採り入れる試みは、ディジー・ガレスピーのアフロ・キューバン以来 ゲッツ/ジルベルト のボサノヴァなど 多くの成功例が枚挙に暇(いとま)なしだが、この当時 カリブ海の解放的なカリプソのリズムも 古くは トミー・フラナガン(「エクリスプソ 」)や 抜いては語れないソニー・ロリンズ(「セント・トーマス」、「ブラウン・スキン・ガール」など )を筆頭に、マイルス(「カリプソ・フレリモ」)が試みるに至って 1970年代後半には ハービー・ハンコック(「カリプソ」 )や ここでのウェザー・リポートの録音、 エリック・ゲイルマリオン・ブラウン(「ラ・プラシータ 」)まで、幅広くジャズミュージシャン層から 注目を集めていた - リアルタイムを経験した当時の空気感を回想すると、そんな感覚がある。

3.親のない子 The Orphan (Zawinul) 03:16
ジョー・ザヴィヌル
 記事はこちら ⇒ 35. オルファン The Orphan ザヴィヌルの戦争記憶とユニセフ国際児童年(1979年)

4.サイトシーイング Sightseeing (Wayne Shorter) 05:35
ウェイン・ショーター
 記事はこちら ⇒ 36. サイトシーイング Sightseeing(ウェザー・リポート)


 ジャコ・パストリアスが在籍中の ウェザー・リポートの ライヴ・アルバム8:30 は、1979年夏にリリース、ベストセラーとなり 同年「ベスト・ジャズ・フュージョン演奏」部門で、グラミー賞 を 受賞することになる。


ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
⇒ 次回に続く


参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

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