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ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
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37. 「8:30」(ウェザー・リポート

 1978年12月、デヴォンシャー・スタジオにおける ウェザー・リポートのメンバー 4人の年内最後の顔合わせ日に 指定されていた時間に 大幅に遅刻してしまったピーター・アースキンは、今 息せき切って 階段を駆け上がってきたところ。
 そんなアースキンの耳に スタジオの内側から聴こえてきた - 誰かがちゃっかり自分のドラムスセットに座って演奏を始めている音が。

ジャコ・パストリアス ドラムセットに。
 ・・・ 何と ジャコが叩いていた。
 ジャコのドラムスは 必ずしもジャズ・プレイヤーのそれとは言えなかったが、常に個性的な力強さをもった、独自のリズムを打ち出していた。
 
 アースキンにとっては、生存競争の厳しいウェザー・リポートで、ドラマーの席を失わせるかもしれない ジャコのプレイは 常に脅威の対象だった(笑)。慌ててスタジオの防音扉を開けようとするも、その寸前、中の様子に 耳をそばだてた。
 定時より一時間以上も早くスタジオ入りした(に違いない )ジョー・ザヴィヌルも、今 フェンダー・ローズに座って、ジャコのドラムスに合わせながら 二人でデュオに興じていたのだ。
 ・・・いや それだけではなかった。
ジョー・ザヴィヌル ウェザー・リポート
 ザヴィヌルは、エレクトリック・ピアノの上に置かれた 見なれぬ卓上型エフェクターから伸びたマイクロフォンに向かって、明らかに歌いながら そこに並んでいるキーボードも押さえていた。そこから出てくるサウンドは、まるで楽器が喋っているような、ロボット・ヴォイスのような めずらしい効果を発揮していた。
 それは ハービー・ハンコック( ⇒ I Thought It Was You )に 先を越されたザヴィヌルが、負けじと手に入れたばかりの日本製のヴォコーダー コルグ VC-10 だった。
KORG Vocoder

 これに気づいたアースキンは、急いでスタジオとレコーディング機材とを繋げているミキシングルームへと走り、やはり その日に出勤していた 顔見知りのエンジニアを捕まえると頼んだ。
「今すぐ 二人が演奏している、あの音を しっかり録音しておいてください ! 」

 スタジオに入ったら どんな時でも テープ・レコーダーを回しておくということが、リハーサル中のウェザー・リポートのメンバー同士の鉄則になっていた。録ってさえおけば、たとえ空気中に消えてしまう即興演奏でも、後から振りかえって 新たな一曲に仕上げることもできる - ゆえに 貴重品と考えられていたのだ。

 ・・・言うまでもなく、これが のちに短波ラジオのノイズや バンドネオンの音、BBC放送など いくつもの音をコラージュし 効果的に重ねて仕上げることになる短い一曲 8:30の原型だ。
 今まさに ミキシング作業中だが、間もなくリリースされることになる 歴史的なライヴ・アルバムのタイトル・ナンバーとなる。


ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
⇒ 次回に続く

♪ 事実に基づいたストーリーですが、登場人物らの会話は “発起人”の創作で 架空のものです。

参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

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