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アンラヴェル “ラヴェル” ラヴェルメント
Unravel RAVEL Ravelment 
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ravel[1] Unravel RAVEL Ravelment (5) Unravel RAVEL Ravelment (2) unravel RAVEL ravelment
 “unravel
─  【 vt. 他動詞 】 解明する、 (もつれた糸などを ) ほどく、
    (物語の筋を )解決させる; (話し言葉 )破綻させる.
 “Ravel
─  【 n. 固有名詞 】 モーリス・ラヴェル Maurice Ravel
    (1875-1937 )フランス印象派の作曲家.
   “ravelment
─  【 n. 名詞 】  紛糾、混乱、もつれ
                      三省堂「EXCEED 英和辞典 」より



グレン・グールド、「ラ・ヴァルス」(ピアノ版)を
厳寒北洋の石油採掘リグ上で弾く(?)



 今晩は、“スケルツォ倶楽部発起人(妻のほう)です。
 土曜日のこと、夫の散らかった書斎を掃除してあげていたら CD棚に・・・ おお、何と グレン・グールドの弾いたラヴェルの 「ラ・ヴァルス 」ピアノ編曲版によるディスクを発見 ! 
発起人のCD棚

 へえ、こんな録音があったのね - オリジナルは 放送音源らしいけど。
 ちょっと珍しい この音源が CBSから初めてリリースされた1995年、オリジナルのライナーノーツを書いたミヒャエル・シュテーゲマン(宮澤淳一/補筆・訳)の文章は とても興味深い。少し長くなるけど、一部勝手に引用させて頂くことに。

以下引用青字部分)。
グールドにとって )ラヴェルの演奏は、CBCのTV放送でしか実現しなかった。
 1975年 2月 5日に放送された「今日の音楽」 第2回「秩序からの飛翔 1910-1920年」において、グールドはラヴェルの“ラ・ヴァルス”を弾いた。本来は管弦楽曲であり、作曲者自身によるピアノ用編曲も 数種類残ってはいるが、グールドは、彼自身が編曲した版を用いた。
 これについてグールドは、シルヴィア・ホックバーグに宛てた手紙で、以下のように書いている。


引用の引用
「私(グールド)の漠たるフランス恐怖症が、たちまち現われるのではないかと不安です。でも、今 10年ずつ時代を区切って編成しているこのテレビのシリーズ番組は、ほかに代わりとなるものがないとすれば、良いトレーニングの場なのです。

「この番組のおかげで、生まれて初めてドビュッシーとラヴェルを弾かざるを得なくなったのですから。しかしまた、そういったものを弾くのは これが最後になることもまた 申し添えなくてはなりません。

「実は“ラ・ヴァルス”のレコードを作ってくれ、とCBSコロンビアにせがまれているのですが、自分の意志は貫こうと思います。少なくとも 数年前にショパンのソナタのどれかを― などという、同様の意向を示された時と同じくらい 断固たる態度で(笑)。

「いずれにせよ“ラ・ヴァルス”は、実に楽しいものでした。ラヴェル本人によるピアノ編曲は、少なくともその半分は、まったく使い物になりません。ご存知かもしれませんが、通常の二段の譜表には、彼は作品の和声の基本構造を書き出しているだけなのです。作品に趣を与える色彩的要素の大半は、とても小さな印刷で、三番目の譜表に随意的な追加の形で添えてあるだけなのです。はっきり言って、曲の多くの部分で第三の譜表の音符を組み入れつつ、 通常の二段譜に書かれたものに忠実であり続けることなど、まず無理です。

「結果として、私は ヘ音譜表にある下生えの大半を可能な限り取り除き、第三譜表の音符は、出来るだけ組み込むよう努めました。それはモーリス・ラヴェルの書いた声部進行に、控えめながら、若干の修正を施すことになりましたが(笑)」
(以上1974年12月 6日 )

(「グールド編/ラ・ヴァルスミヒャエル・シュテーゲマンによるライナーノーツの引用-続き

 ・・・さて その後 何年も経ってから、この思い出のCBC放送録音は甦ることとなった。
 それは 1980年、CBS録音活動25周年を記念して 2枚組レコード「シルバー・ジュビリー・アルバム」が発売され、その2枚目のディスクに収められた 自作自演のドラマ「グレン・グールド・ファンタジー」の中で、 この「ラ・ヴァルス」が使われたのだ。
 編曲からの編曲となった、この「ラ・ヴァルス」は、およそ信じられぬほどの自由をもって獲得したヴィルトゥオーゾ的な力技である。

 風刺的なラジオ・ドラマは、コンサートから遠ざかっていたグールドが 満を持して演奏会へ歴史的な復帰を果たすというシーンで終わるのだ (略 ) が、架空の“復帰コンサート”の舞台は、何と、カナダから北西に遠く離れたボーフォート海に浮かぶ ガイザー石油の“採掘リグXB‐67号”が選ばれた。
洋上のグレン・グールド(小)

 採掘リグから 3km離れた原子力潜水艦“不滅号”上に配置された放送オーケストラの音と有線テレビを介して その音声を繋ぐことによって、グールドとの共演が行なわれた -という設定で (略)、採掘リグの甲板にいる聴衆(石油会社の重役と株主たち)が湧き立つ中、ラジオのニュースキャスターは、この模様を潜水艦から実況中継を試みる。
北洋の石油採掘リグ(イメージ)

 氷海は荒れ、有名な折りたたみ椅子もすでに波にさらわれてしまい、床に正座する以外 鍵盤に向かう方法も失われているにもかかわらず、ピアニストはアンコール・ナンバーを弾き始めた。それが グールド自身の編曲による「ラ・ヴァルス」だった !
北洋上でラヴェルを弾くグールド(イメージ)

 だが次の瞬間 ディーゼル・エンジンの音が聞こえてきた。もはや危険と判断した聴衆がとうとう避難を開始したのだ。 実況を伝え続けるため残ったニュースキャスターの声。
「採掘リグの上に残った独奏者(グールド)は、もはや聴衆がひとりもいないことに やっと気づいたようです (略) このリサイタルは、放送法公共行事令の規定に基づく公共の催しとは すでにみなされないため、ここで放送は打ち切らなければなりません 」

 そして今 グールドは「ラ・ヴァルス」を ひとり最後まで弾き切った。
 孤独な演奏者に喝采するのは、もはや氷上のアザラシたちだけ - 彼らは 盛んな鳴き声と両ひれ足を打ち合わせ 拍手を贈っていた・・・。
アザラシの群れがグールドに拍手(イメージ)

 最後に、グールド氏が舞台を去る足音とともに、 盛大な喝采に応える声が かすかに聞こえてきた・・・
「ありがとう、ありがとう、ありがとうございました。」


(以上、引用ここまで )


 すでに当時 あらゆるコンサート企画からのドロップアウト宣言をしていたグレン・グールドが、再びコンサートに復帰する、という秀逸な発想によるラジオ・ドラマ「グレン・グールド・ファンタジー 」。しかし、(架空の)復帰コンサート「会場」に 聴衆の姿は ありません、アザラシたちを除いて。
 このドラマ(フィクション )は、グールドの“シルヴァー・ジュビリー”アルバムの 2枚目で聴くことが出来ます(このアルバムのタイトルが、ホロヴィッツの“ゴールデン・ジュビリー”コンサートに引っ掛けて命名されていることは言うまでもないことです)。

 この中で演奏されたグールド編曲によるピアノ版「ラ・ヴァルス」を コンプリート収録したディスクは、今も Sony盤で 容易に入手可能。中古盤なら 1,000円以下で 入手できるようですよ(悲)。

グールド ラヴァルス(ラヴェル)を弾く CBS(小) ラヴェル・アンラヴェル・ラヴェルメント
グレン・グールド
ラヴェル「ラ・ヴァルス」(グールド/編曲)

録 音:1974年 CBCスタジオ、トロント
音 盤:国内ソニー(SRCR-9874)
併録曲:
ベルク ピアノ・ソナタOp.1、クシェネック ピアノ・ソナタ第3番Op.92-4(1958年、ニューヨーク)、ヴェーベルン ピアノのための変奏曲Op.27(1964年、トロント)、ヴェーベルン 9つの独奏楽器のための協奏曲Op.24 ボリス・ブロット指揮/アンサンブル(1977年、トロント)、ドビュッシー クラリネットのための狂詩曲第1番 ジェイムズ・キャンベル(クラリネット)1973年、トロント

 「ラ・ヴァルス」を ピアノ版で聴くとしたら、あくまで音響という点に限って言えば、ソロ演奏より作曲者自身による 2台ピアノ編曲版のサウンドのほうを 正直 好むものですが、このグールドによる貴重な録音だけは 別格ですね。
 これは、実にオモシロい、素晴らしいレコーディングだと思います。

 よりによって コンサート会場として選ばれた 極寒の北海に浮く原油採掘リグ上に置かれたグランド・ピアノの前に座り、冷たい波の飛沫と寒風に耐えつつ 唸り声を上げて ラヴェルを弾き続ける(もちろん架空のですが )グールドの凛々しい姿・・・ うーん、それは ちょっと 観てみたい。

海岸のグレングールド
 でも実は、その寒さこそ かつてコンサート会場で、センシティヴなグールド自身が感じてきた 孤独の淵にある自身の姿を象徴する場面の温度でもあったのでしょうね。 
 そんな悲壮さをも ナンセンス感覚で乗りこえる、自分をネタにしてみせるグールドの独特な感性、そのアイデアの凄さったら ちょっと他に類例が無い凄さですよね。

 あ、そこへ夫が 帰宅した。

    「ただいま・・・ お、北海の氷上でピアノを弾くグールドを聴いてるんだな 」

わたし  「果たして わたし、ここで爆笑してもいいものかしら? 」

    「いいとも。爆笑といえば、モンティ・パイソンのコントにも 縛られた袋の中に閉じこめられたスヴャトスラフ・リヒテルチャイコフスキーピアノ協奏曲第1番を弾きながら拘束の紐を解いて、フーディーニよろしく 袋から脱出、見事エスケープ ! っていう、とことん頭の悪い 傑作ギャグがあったよなー 」


▲ モンティ・パイソン の コント Bag Piano より

わたし  「これ、リヒテル本人とも ましてやグールドとも 無関係でしょ(怒 ) 第一 コントの中の “リヒテル” さん 髪ふさふさ だし。“アナタは好きでもモンティ・パイソン、わたしは好きじゃない” っていう歌詞の、ドリカムのナンバーもあったわよね 」

    「お、懐かしい。カラックスジェリー・アンダースンもだっけ ? 」

わたし  「(タメイキ)どうでもいいけど、夜中わたしが寝ようとしている時刻に スーザの“自由の鐘”を 大音量でかけて 行進したりするのだけは 止めてよね ! 」

    「何を! 踏んづけてやる! 」


▲ Glenn Gould - Ravel, La Valse (OFFICIAL)
注目の演奏は、動画の 02:07頃から。視覚を伴うと グールドの素晴らしいタッチが 一層 際立ちますね。


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