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ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
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32. ヤング・アンド・ファイン
Young And Fine (ウェザー・リポート)


 ・・・1978年、ある夜のニューヨーク。
 当時 一流のセッション・ドラマーとしてニューヨークではファースト・コールな存在となっていた、若きスティーヴ・ガッドが ヴァイブ奏者で親友だったマイク・マイニエリと 地下のスタジオで話しこんでいた。

マイニエリ(左)と ガッド 1979 
ガッド    「ちょっと オレの悩み 聞いてくれる、マイク? 」

マイニエリ  「スティーヴ・ガッド、恋の相談室か 」

ガッド    「いやいや、そっちは間に合ってるんだ。・・・仕事の悩みだよ 」

マイニエリ  「最近 忙しくて結構なことだな 」

ガッド    「それはお互いさまだろ、今 オレたち とても乗ってるって感じじゃない? 」

マイニエリ  「そうだな、最近 新しい音楽のアイディアがドンドン湧いてくるんだ。それを実現できる仲間も増えてきたし 」

ガッド    「毎日のように いろんなミュージシャンとスタジオで仕事させてもらって ネットワークも広がってきた・・・ 」

1 Stuff スケルツォ倶楽部2 Bob James Heads スケルツォ倶楽部3 Paul Simon スケルツォ倶楽部4 Steely Dan AJA スケルツォ倶楽部5 深町純 ニューヨーク・オールスターズ スケルツォ倶楽部5.マイク・マイニエリ ラヴ・プレイ スケルツォ倶楽部
マイニエリ  「たしかに ここ数年間のお前は凄いよ。ワーナー・ブラザース系列のロック/ポップスの仕事、R&B系の仕事、新旧のジャズ・ミュージシャンとの仕事、どれも高いレヴェルで こなしているものな 」

ガッド    「さらに 今 ウェザー・リポートのレコーディングに参加しないかって、オファーが来てるんだ 」

マイニエリ  「え、それはスゴイじゃないか。ウェザー・リポートと言えば 帝王マイルス・デイヴィスの最高のブレインだったウェイン・ショータージョー・ザヴィヌルが結成した双頭バンド - 」

ガッド    「そう。それに一昨年からリズム・セクションの要(かなめ)を 若い凄腕ベーシストに入れ替え、ロック・ファン層にまでアピールして 人気も急上昇 - 」

マイニエリ  「最新アルバム“ヘヴィ・ウェザー”なんか、ジャズ・レコードには珍しくビルボードにランク'インするほどのベストセラーだったろ。そこに お前 スティーヴ・ガッドも参入ってわけか。とうとう頂点まで登りつめたな、スティーヴ 」

ガッド    「いや、でも ウェザー・リポートは 音楽の質がとても高いから、要求される内容も大変そうじゃないか。それにリーダーのザヴィヌルって人は ひどく気難しいそうだから、オレには プレッシャーが大きいよ 」

マイニエリ  「お前なら大丈夫だよ、オレが保証する。ぜひやってみろ、応援するよ 」

ガッド    「果たして務まるかなー。オレは基本的に 仕事は楽しくないと嫌なんだ 」

マイニエリ  「あ、おい スティーヴ、酒やクスリに頼るのだけは 止めておけよ。ステージやレコーディング前に、こっそりやってるのを オレは知ってるんだぞ 」

ガッド    「だって 大舞台の前ほど 緊張してダメなんだよ 」

マイニエリ  「“だって” じゃないよ。お前ほど才能あるのに そんなこと言ってるなんて 信じられないがなあ・・・ 」


Weather Report_スケルツォ倶楽部 Weather Report_Mr.Gone(CBS)1978 スティーヴ・ガッド (3)
ウェザー・リポート Weather Report
Album「Mr.ゴーン 」Mr.Gone 収録
「ヤング・アンド・ファイン」Young And Fine(06:55 )

  ジョー・ザヴィヌル(キーボード、パーカッション )Zawinul
  ウェイン・ショーター(テナーサックス)Wayne Shorter
  ジャコ・パストリアス(ベース)Jaco Pastorius
  スティーヴ・ガッド(ドラムス)Steve Gadd
  ピーター・アースキン(パーカッション)Peter Erskin
録 音:1978年、ロサンゼルス
音 盤:CBSコロンビア(ソニー・レコード SRCS‐9149)


ジョー・ザヴィヌル Joe Zawinul スティーヴ・ガッド (2)
ザヴィヌル 「・・・いやー、このレコードは難産だった。わしのコンセプトは決して悪くなかったのだが、それを アルバムという具体的な形にするまでには混迷を極めたね。なにしろウェイン・ショーターは V.S.O.P.のワールド・ツアーで忙しがって 全然手伝ってくれやしないし、ジャコ・パストリアスのヤツは ただ面白がってスタジオを荒らして帰るだけ、でも何より困ったのはドラムスだよ。前任のパーカッション奏者マノロ・バドレーナをアル中理由でクビにした途端、もうひとりのドラマー、アレックス・アクーニャが 家族サービス優先だとか言い出して 辞めてしまったんだ。それから ずっと後任が決まらない。メイナード・ファーガソンのビッグ・バンドで そこそこイケてる新人ドラマー、ピーター・アースキンをジャコのやつが連れてきたんで、まあ補欠として繋いではいたのだが - 」

アースキン 「・・・ ザヴィヌルさん、今 補欠 っていう 聞き捨てならない言葉が聴こえた気が 」

ザヴィヌル 「(舌打ち )余計なこと考えるな、スタジオに戻って、オマエさんは シャッフルの練習でもしてなさい 」

アースキン 「(憤然として退場 ) 」

ザヴィヌル 「それで評判の良いドラマーを何人も試したよ。すでに有名なミュージシャンも何人かいたな。たとえば ジェフ・ポーカロとか、あいつは何も演奏できなかったので レコーディング・スタジオにすら入れなかった。それから・・・ええと 何という名前だったっけ、ほら ポール・サイモンのドラマーだった - ガッド、そう スティーヴ・ガッドだ。実は わしは 彼のメカニカルなドラムス・テクニックを評価していて、その技術を アルバムの中でも わしのお気に入りの一曲“ヤング・アンド・ファイン”で 機能的に使おうと思っていたんじゃ。でも ここだけの話、あろうことか ガッドは ひどいジャンキーで、わしの家に来ても だらしなく一晩中 床に転がって寝ていたんだよ。演奏してもビートに乗れてないし、二曲ほどリズム・トラックを録音したが まったく期待外れだった(タメイキ )。それで、しかたなく 後からピーター・アースキンを呼んだんだ 」。

ザヴィヌルとピーターアースキン(CBS 1979)
アースキン 「はい、ザヴィヌルさん 何か御用ですか 」

ザヴィヌル 「ピーター、“ヤング・アンド・ファイン”の スティーヴ・ガッドが演奏したベーシック・トラックの上に、ひたすらハイ・ハットを叩いてリズムを乗せるんだ 」

アースキン 「え? そんなことしていいんですか 」

ザヴィヌル 「わしの言うことを聞かんか。ほら、早くシンバルを叩け。その間、わしはTVでワールド・カップを観ている。終わったら教えてくれ 」

8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符 8分音符16分音符16分音符

アースキン 「ふー、終わりました 」

ザヴィヌル 「よーし、ご苦労。ミックスして聴いてみるか 」

    (プレイバック! )

アースキン 「・・・いかがでしたか、ザヴィヌルさん 」

ザヴィヌル 「うーん・・・  ダメだな。オマエさんも 今日は帰っていいよ 」

アースキン 「(憮然として帰宅 ) 」

ザヴィヌル 「・・・ で結局、そのテイクの上から さらに 私が自分でハイ・ハットのリズムを叩き直したというわけ。スピーカー右寄りに定位して聴こえるのが 私のパーカッション・プレイ。よし、これで何とか聴けるようになったぞと 」

葉巻を吸うジョー・ザヴィヌル
ザヴィヌル 「(葉巻に火を点け ソファに腰を沈める )あーあ、それにしても この世界のどこかに、完璧な技術を備え、楽譜が読めて、ワールド・ツアーにつきあえて、文句も言わず わしの言うことを唯々諾々と聞くような、そしてジャンキーじゃないドラマーは いないものかな 」

夜のニューヨーク

 ・・・後日、別の夜のニューヨーク。

 発売されたウェザー・リポートの新譜「Mr.ゴーン」A面3曲目「ヤング・アンド・ファイン」を聴きながら 落ち込んでいるスティーヴ・ガッドを、マイク・マイニエリが慰めていた。

マイニエリ  「だから 注意しただろ、クスリには頼るなよって・・・」

ガッド    「スタジオの緊張感に耐えられなかったんだ - 」

マイニエリ  「(レコードに針を下ろす )それにしても このミックスはヒドイな。まるで 当てつけるように 後からオーヴァー・ダビングされたハイ・ハットで、お前のドラムスの音は 殆んど消されてるようなものじゃないか 」

ガッド    「自分のせいなんだから仕方ないさ。たしかに あの日はプレイできる体調じゃなかった。ザヴィヌルが怒るのも当然かも 」

マイニエリ  「元気だせよ、スティーヴ。よく聴くと お前のプレイは 決して悪くなんかないぞ。特に 途中で救急車のサイレンみたいなシンセサイザーが鳴った後 テーマが戻り、ザヴィヌルの長いキーボード・ソロが始まってから、そこのバックでお前が叩くフィル・インの切れの良さったら。不自然な音量バランスで ドラムスのディテイルが聴こえなくなってしまったのは、ホントもったいないなー 」

ガッド     「もうウェザー・リポートから 声がかかることは ないよ 」

マイニエリ  「ザヴィヌルと別れたら 一流ドラマー っていうジンクスを知らないな。あ、そう言えば 今 ちょうどCTIレーベルのクリード・テイラーから オレにアート・ファーマーの 次のリーダー・アルバムのプロデュースをやらないかって 依頼が来てるんだ 」

ガッド    「へえ、それで 」

マイニエリ  「もちろん ドラムスはお前さ、それでアート・ファーマーを盾にして ザヴィヌルへの意趣晴らし(笑 )、オレたち流のアレンジで“ヤング・アンド・ファイン”をCTIで 演(や)っちゃおうぜー!」

ガッド    「え、オレたち流のだって?」

♪ 今回‐ここまでは、スケルツォ倶楽部 スティーヴ・ガッドを 讃えるヤング・アンド・ファイン(ウェザー・リポート )からの転用(!) 若干 手を加えて 再録したものですw
「ヤマ」(アート ファーマー)
ガッドマイニエリの会話、この先が気になるかたは ⇒ 「ヤング・アンド・ファイン 」(アート・ファーマー 1979年)へ!


ジャコ 出番になったら起こしてね < 出番になったら起こしてよね zzz
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
⇒ 次回につづく


♪ 事実に基づいたストーリーですが、登場人物らの会話は “発起人”の創作で 架空のものです。

参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

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