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♪ 名曲の名演を 一つだけ残すとしたら

第四回 
シベリウス 交響曲第7番

フィンランド観光(ラップランド)Utsjoki Film Lapland
フィンランド観光 Utsjoki Film Lapland

 おはようございます “スケルツォ倶楽部発起人です。
 冬はもちろん 夏でも - 要するに 一年中いつもですが - 夜明け前に目覚めてしまった朝は、まだ暗いリスニングルームへ 独り降りてゆき、時間をかけて香り高く仕上げたコーヒーをポットに落とすと、深く椅子に腰掛け、静かに集中してシベリウスの音楽に耳を傾ける習慣です。

 つい昨日 - 日曜の朝も もう 4時半頃には目が覚めてしまい、大好きなシベリウスの音楽のことを考えだしたら やはり 起きてしまいましたね。
BIS_The Essential Sibelius Sibelius_Hahn(D.G. )
 不滅の七大交響曲の他にも、物思いに深く沈めてくれる「トゥオネラの白鳥 」、厳しい寒さにも耐え得る「ポホヨラの娘 」、こんな明け方近い時刻に相応しい「夜の騎行と日の出 」、稀代の名作「タピオラ 」、そして静かに心躍る「カレリア 」組曲、多言無用の名曲「フィンランディア 」や「悲しいワルツ 」、美しくも哀しい「鶴のいる情景 」、いつまでも繰り返し浸っていたい「アンダンテ・フェスティーヴォ 」、さらに個人的には シベリウスの全作品中 最も愛好する傑作 ヴァイオリン協奏曲とか・・・。

舘野泉_シベリウス (2) 館野泉_シベリウス
 また 素晴らしいピアノ曲も忘れてはイケません・・・ 「抒情的瞑想 Op.40 」や 組曲「キュリッキ 」。さらに、舘野泉氏がヤルヴェンパーのアイノラ山荘に保管されたシベリウス所蔵のピアノを奏でた、独特の音色と美しい演奏が記憶に残る「花の組曲 」、「樹の組曲 」・・・ とりわけ感銘の深い一曲こそ「樅の木 」 Op.75-5。

 でも 今朝選んだ一曲は・・・ 特異な単一楽章で知られる独自の世界にあって 大自然が憑依したかのような 交響曲第7番 - です。
セル クリーヴランド管弦楽団 私家版 (2) シベリウス 第7番 オーマンディ(RCA) シベリウス 交響曲第5番 デイヴィス ボストン交響楽団(PHILIPS) 
 目も眩むような夜明け前の高い空を ちぎれて流れてゆく雲が、まだ遠く朝焼けの光芒さえ届かぬ暗闇の中、少しずつ晴れ渡りゆくように キーンと頭も冴え渡ります。
 遥か遠くの山々へエコーのようにこだまするトロンボーンと 天空に残る有明の月と星の瞬(またた )き、そして遠雷のようなティンパニの轟(とどろ )き・・・
 今まで 幾度このようにして まだ見ぬ北欧のフィヨルドに想いを馳せたことでしょうか。

 おや、二階の寝室のドアが開いて トイレに起きたらしい妻が 階段を降りてくる足音が・・・

  「あらアナタ、日曜なのに またこんな朝早くから起きちゃって・・・(音楽に気づく )ははーん、また北欧のフィヨルドに想いを馳せているというわけね? 」

  「いいから 気にしないで、部屋に戻って 寝ていてくれよ 」

  「つきあうわよ、シベリウスに - これ 7番よね。わたしもコーヒー、頂いてよい? 」

  「もちろんだよ。でも 7番だって どこでわかったんだ? 」

  「(カップにコーヒーを注ぎながら )だって 遥か遠くの山々へエコーのようにこだまする、このトロンボーン・・・ 」

  「天空に残る有明の月と星の瞬(またた )き・・・ 」

  「そして 遠雷のようなティンパニの轟(とどろ )き・・・でしょ? 」

  「でも今朝の一枚は、いつものとは ちょっと違うんだな(と、ディスク・ジャケットを見せる) 」

  「あら、意表を衝いて ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル盤! 」
エフゲニ・ムラヴィンスキー エフゲニ・ムラヴィンスキー (2)
  「1965年モスクワ音楽院大ホールにおける、歴史的なライヴ音源だ 」

  「なーるほど、それがトロンボーンに 独特なヴィブラートがかかっている理由(わけ)だったのね。ムラヴィンスキーに シベリウス録音が残っていたことが わたし 驚き 」

  「恥ずかしながら、実は オレも この録音の存在を意識したのって、つい最近のことなんだ。ムラヴィンスキーのモスクワ音楽院ホール・ライヴと言えば、無く子も黙る 超快速名演『ルスランとリュドミーラ』序曲とか、嵐のような『ヴァルキューレの騎行』、チャイコフスキーやショスタコーヴィッチなど 大指揮者の代名詞的“お国もの”名演ばかり先に好んで聴いてきたものだから、実はヒンデミットやシベリウスは後回しにしていました・・・ すみません 」

  「正直者ね 」

  「そうしたら、期待していなかった分 演奏と録音状態の良さに括目 」

  「期待していなかったって、ムラヴィンスキーに? それ凄い失言・・・ 」

  「LP時代のメロディア(MKレーベル )って モノラル録音も多かったし、良くない音質に偏見があったんだよ。でも何と言われても返す言葉はない・・・ どころか分離の良いステレオ・レコーディングで、シベリウスの7番を、この滑り下りるような二つのヴァイオリン・セクションが左右に振り分けられながら流れ落ちてゆく両翼配置の気持ちよさったらないな 」

  「ホント、こんなにも素晴らしかったとはね・・・ 」

  「そしてムラヴィンスキーに仕込まれた最盛期のレニングラード・フィルだ。互いに喰らい合うように呼応する、あまりにも雄弁な弦楽器奏者の細分化された役割が、シンコペートするボウイングまで明瞭に聴き取れるんだからな 」

  「これほどまで正しい楽器配置を再生できるオーディオの重要性まで再認識させられるわね。 ・・・あ、そう言えば あそこは どうなの? 」

  「あそこ・・・ って? 」

  「シベリウスの7番と言えば、あそこしかないでしょ。オーケストラを一瞬で吹き飛ばす、ほら、ラルガメンテ・モルトの突風よ! 」

  「ああ、あそこか。ちょうどいい、間もなく訪れるよ、ほら 聴いててごらん・・・ 」

― ブワッ!

  「うーん、す、凄い・・・」

  「金管が炸裂すると同時にティンパニが強烈な唸りを上げ、そして弦が恐ろしいほどの悲鳴を上げる瞬間とが、全く意図せず、それらが自然に吹いた突風であるがごとき 素晴らしい効果を上げていただろ 」

  「その後に訪れる静寂も素敵だわ・・・。空を仰げば ゆっくりと揺蕩(たゆた)う雲を眺めるがごとき雄大なトロンボーンも流れてゆく・・・ 」

  「1977年10月、NHKホールにおけるムラヴィンスキー/レニングラード・フィルの来日公演でも演奏された、このシベリウスの7番を 非正規録音(おそらく膝上)で隠し録りされた劣悪な音源がAltusレーベルからリリースされたけれど、それは全くディティールが聴き取れない、残念な代物だったっけ・・・ 実は オレは そっちを 先に聴いてしまったんだよなー 」
エフゲニ・ムラヴィンスキー 1977 ムラヴィンスキー レニングラード・フィル 1977NHKホール・ライヴ ALTUS 
  「でも1977年Altus盤を この1965年モスクワ音楽院ライヴと聴き比べたら、1965年盤と基本的な解釈や楽曲の組み立て、演奏時間など ほぼ同じだったわよ 」

  「ほう・・・ 」

  「シベリウスの 7番に関しては、すでに60年代から確立されていた(と思われる)ムラヴィンスキーの基本演奏方針は、その晩年に至るまで ほぼ不動だったと言えるのではないかしら 」

  「っていうか オマエ、ムラヴィンスキーの新旧 2枚の音盤で すでにシベリウス第7の聴き比べまで済ませてるじゃないかよ? 」

  「てへっ、ゴメンねこ (=^・^=) せっかくアナタに合わせてあげてたのにな~ 」

  「かーっ、ホント腹立つ 」

ムラヴィンスキー レニングラード・フィル 1965モスクワ音楽院大ホール・ライヴ メロディア モスクワ音楽院のエフゲニ・ムラヴィンスキー
シベリウス 交響曲第7番
エフゲニ・ムラヴィンスキー(指揮)
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
録 音:1965年 2月23日 モスクワ音楽院大ホール
音 盤:メロディア(BMGビクター/BVCX-4008)


  「さ、そろそろ 今日も “一枚選ぶ”時間が来たわよー 」

  「うーん、シベリウスの第7交響曲を 数多(あまた)の名盤群から選ばなくてはならないとは・・・ 」

  「でも すでにアナタ 心に決めた一枚があるんじゃない? ここまでの流れから 」

  「そうだな・・・。スタイリッシュな カラヤン/ベルリン・フィル(1967年/DG)盤の魅力は捨てがたい。が、若きロリン・マゼール/ウィーン・フィル(1963年/Decca)盤のメリハリを効かせた爆演も 実は大好きだ。しかし ベルグルンド/ヘルシンキ・フィル(1984年/EMI)盤の醸し出す本場の空気と安定感抜群な演奏水準の高さには誰も敵わない・・・」
シベリウス 第7番 カラヤン ベルリンフィル(DG) シベリウス 第7番 マゼール ウィーンフィル(DECCA) シベリウス 第7番 ベルグルンド ヘルシンキフィル(EMI)

  「・・・で? 結局 ムラヴィンスキーにする気なんでしょ?」

  「いや、やはり 長らくお世話になった バルビローリ/ハレ管弦楽団(1966年/EMI)盤 に決定だ! 」

  「ええ・・・? 意表を衝いて、まともな王道を選んだわね、アナタ 」

  「だって、一枚だけ決める以上、他のディスクはすべて処分する勢いで選ぶわけだろう? もう二度と聴けないとしたら、逆に 今後聴けなくなることを惜しむ気持ちの高い演奏のほうを選ばざるを得ないだろ? 」

  「んまあ、そうね 」

  「大っ好きなシベリウスの7番を もし今後 一生 レニングラードのトロンボーンだけでしか聴けないとしたら・・・? 結尾部の長い弦の係留に あろうことか金管の音を重ねてしまうという 独自な変更点も・・・? やはり それらは耐えられないな。とびきりの名演であることを認めつつ それでも やはりオレは落とすよ、それがムラヴィンスキーであっても 」

  「(笑 )では、シベリウス交響曲第7番バルビローリ/ハレO.(EMI)盤さえあれば、アナタは もう他は イラナイと・・・ 言えますか? 」

  「はい、言えます ! 」

ジョン・バルビローリ バルビローリ_シベリウス全集 シベリウスの肖像(1915年 シベリウス博物館)
シベリウス 交響曲第7番
ジョン・バルビローリ(指揮 ) John Barbirolli
ハレ(ハルレ )管弦楽団 The Hallé Orchestra
録 音:1966年 7月27-28日 キングス・ウェイ・ホール
音 盤:EMI CLASSICS(7243-5-67299-2-6 )交響曲全集


「かみしめるほどに味が出てくるタイプで、心ある聴き手に推したい演奏 」(吉井亜彦氏 )
バルビローリ Sir. John Barbirolli (3) 

「きわめて内容の濃い逸演。一貫したリリシズムの中から限りなく憧憬に溢れた詩情を浮かびあがらせた。バルビローリの鍛え上げてきた手兵オーケストラが 本来やや軽めの重心を持っている点も ここではメリットとして働き、他盤では聴かれぬ精妙かつ爽やかなロマンティシズムの醸成に寄与しているように思う 」(宮崎 滋氏 )
バルビローリ Sir. John Barbirolli (2)

バルビローリが遺した貴重なレコーディングによって 今も語られる 英国の地方オケ、ハレ管弦楽団による 第7番 - その美質とは、シベリウスの音楽を愛する人なら誰しも 真摯に耳を傾ければ、そこに広汎な普遍性を聴きとれることでしょう。
 神は細部に宿ります。一瞬だけきらめいたかと思うと 次の瞬間には もう姿を消し去っている弦セクションの些細なパッセージや ホルン・アンサンブルの大らかな深呼吸、さえずる木管の隙間に息を継ぐ休符の自然さ、ここぞという場で リズミカルに踊るティンパニの粒立ちなど、聴き手の痒い所に手が届くような、そんな一瞬一瞬の絶妙な個性の積み重ねのすべてが、この録音には刻まれています 」 (“スケルツォ倶楽部発起人
バルビローリ Sir. John Barbirolli (4)

♪ サー・ジョン・バルビローリが登場する スケルツォ倶楽部 過去記事
⇒ R.シュトラウス「ばらの騎士」ワルツ
⇒ 暑中見舞いは そりの鈴の音に乗せて


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