fc2ブログ
♪ スケルツォ倶楽部
Club Scherzo
全記事タイトル

ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made
初めから読む ⇒ CONTENTS


31. ピーター・アースキン

 退団したアレックス・アクーニャの後任ドラマーを探すことを ザヴィヌルから依頼されたジャコは、実家へ戻り 水面下で 彼のフロリダ・コネクションとも呼ぶべきマイアミ中心の旧友たちへ連絡をとることにした。
「どこかに優秀なドラムスは いないものかな 」

 ジャコとは少年時代からの知り合いで、かつてピーター・グレイヴスのビッグ・バンドで吹いたこともあるトランペッター、ロン・トゥーリーは当時「ロッキーのテーマ」のカヴァーで大ヒットを飛ばしていた ビッグ・バンドの大御所メイナード・ファーガソンのオーケストラに在籍し、全米ツアー中だった。そしてバンドの次なる公演予定地こそ、偶然にも彼ら二人 - ロンジャコ - の地元フロリダだったのだ。
 お互い多忙で 故郷に戻ることさえ稀だった二人が、同じ時期 フロリダに滞在することになった・・・。これもジャコの“神さまのお引合せ”かも知れない、というのも ジャコの欲しがっていた情報を提供する人物こそ ロン・トゥーリーその人だったから。

「ハロー?」
「ジャコ、お前、本当に 今フロリダにいるのかい? 」
「(笑 )じゃ どうして電話なんかよこしたんだよ、ロン 」
「だって お前は ウェザー・リポートの活動で L.A.にいるとばかり思ってさ。俺は今 メイナード・ファーガソンのツアーで フロリダに立ち寄る予定だったから、懐かしくなって お前の実家にメッセージを残そうと思ったんだ。まさかジャコ本人が 電話口に出てくれるとはね 」

しばらく電話口で 二人は、互いの近況を語り合った。
「今月いっぱい滞在している予定だから、ロンがトランペット・セクションに座るファーガソン・バンドのコンサートを聴きに行こうかな 」
「ぜひ来てくれよ、ジャコ。そうそう、フロリダ公演のステージでは 新しい若手ドラマーが叩くから、お前にも紹介するよ 」
「若手ドラマー? 」
ジャコの目が光った。そうだ、ウェザー・リポートのドラマーを探していたんだった。
「そいつはインターローケン・アート・アカデミー出身、インディアナ大学でもパーカッションを修めた学究肌だから 正確な譜読みで初見も効く。なかなかの凄腕だよ 」
「へえ、楽しみだな 」

 その夜、コンサート・ホールの客席から ジャコは、ビッグ・バンドでプレイする、その若い白人ドラマーの演奏を聴いた。
 自分より三つほど若いという - 笑顔で 実に楽しそうに演奏する男だ、と思った。同時に、何故かジャコの記憶に呼び覚まされたのは、彼が 20代初めに所属した ウェイン・コクラン率いるR&Bバンド、C.C.ライダーズ での解放的な感覚だった。
 ― この懐かしい気持ちは、一体 何だろう?

 ファーガソンのビッグ・バンドを聴きながら ジャコが気づいたこと、それは かつて共演していたライダーズの名ドラマー、アリン・ロビンソンのプレイを思わせるR&B特有なグルーヴを、なぜかステージ上で叩いている年下のドラムス奏者が四方に放っていることを 鋭く嗅ぎわけたからに他ならなかった。
「そして、上手い・・・」
本能的に ジャコは、この若者と自分のベースとの相性の良さを直感していた。

 休憩時間に入ると、ロン・トゥーリーのほうからジャコに紹介しようと、若き新人ドラマーを引っぱって客席まで連れてきた。
 ジャコは 自分から立ち上がって 手を差し出した。
「初めまして。ええと、ジャコ・パストリアス 」
ピーター・アースキン(ジャコ・パストリアス) (2)
ピーター・アースキンです
額を流れる汗を拭いながら 名乗った相手は、爽やかな満面の笑顔だった。



ハリウッド(1978年イメージ)
 さて、ザヴィヌルのほうも 目下ドラマー探しを続けていたものの、かつてなく人選は難航していた。前作「ヘヴィー・ウェザー 」が大ヒットしたせいで、続くニュー・アルバムへの期待値とハードルは おそろしく大きく上がってしまっていたのだ。CBSに要請された作成期日も間近に迫っている・・・。
 
「おい、ウェイン ! 」
長距離電話の向こうで、ようやく捕まえたウェイン・ショーターに、ザヴィヌルは 内心苛立ちを抑えながら叫んだ。
「君が V.S.O.P. で 今 一緒にツアーしている トニー・ウィリアムスの予定を訊いておいてくれんか、そこに いるんじゃろ? 」
トニー・ウィリアムス(左)とウェイン・ショーター
「え、ニュー・アルバムにトニーを起用? まあ僕から頼めば トニーも協力してくれるとは思うけど・・・ ウェザー・リポートのメンバーとして ツアーに同行するのは、とても無理だと思うよ 」
そんな無理を頼むことをザヴィヌルに強いられたショーターの返答は、精彩を欠いていた。

「ああ・・・! どうして いつも わし独りだけが こんなに苦しまねばならんのじゃ? 」
と、ザヴィヌルの目は 血走っていた。

「そうだ、スティーヴ何とか といった、あの器用そうなセッション・ドラマーは どうじゃろ? 」

スティーヴ・ガッド YAMAHA
スティーヴ・ガッド 「はい、お呼びですか?」


⇒ 次回につづく

♪ 事実に基づいたストーリーですが、登場人物らの会話は “発起人”の創作で 架空のものです。

参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

↓ 清き一票を
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村

クラシックランキング

ジャズランキング
Club Scherzo, since 2010.1.30.

関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)