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「気分がふさいでいるときは、いつも 新しいレコードを何枚か買うことにしてるんだよ 」 
 
ワーグナー
楽劇「トリスタンとイゾルデ
イゾルデ歌唱と フランス語ナレーションによる
室内楽 編曲版 Tristan et Yseult

ワーグナー(小)トリスタンとイズー物語 ジャン=ピエール・アルノー クリスティーヌ・シュヴェツェール ランベール・ウィルソン
編  曲:ジャン=ピエール・アルノー
ソプラノ:クリスティーヌ・シュヴェツェール(歌唱ドイツ語 )
語  り:ランベール・ウィルソン(フランス語 )
指  揮:ジャン=ピエール・アルノー 
演  奏:アンサンブル・カルペ・ディエム Ensemble Carpe Diem

     カトリーヌ・モンティエ(ヴァイオリン)
     クリストフ・ゴーグ(ヴィオラ)
     エリック=マリア・クチュリエ(チェロ)
     イーゴル・ボラニアン(コントラバス)
     ダヴィド・ロートヴー(ハープ)
     マリーヌ・ペレ(フルート)
     ジャン=ピエール・アルノー(オーボエ / コーラングレ)
     ジャン=ベルナール・ボーシャン(トランペット)
     フィリップ・ブレアス(ホルン)
     ニコラ・マルティンチョフ(ティンパニ)
収録曲 :Prelude(前奏曲)、Philtre(媚薬)、Passion(情熱)、Lumiere(光)、Reve(夢)、Avertissement(警告)、Renaissance(再生)、Trahison(裏切り)、Confidence(秘密:第3幕への前奏曲 )、Pastorale(牧歌)、Soleil(太陽)、Sacrifice(犠牲)、Amis(愛する者同士)、Mort d'Yseult(イズーの死)
録  音:2006年12月6-7日、パリ、ボン-スクール・ルター派教会
2011年6月8日、パリ、セーヌ・スタジオ
音  盤:Indésens !(INDE-035)


 “スケルツォ倶楽部発起人です。
 今日は 個人的な思い出ばなしから。ええと、たしか10年ほど前まで 千葉市の住宅街の中にひっそり佇む 華奢な喫茶店のような、しかし凄まじい品揃えが魅力的な、クラシック専門の輸入CDショップがありました。

CDハウス ブレーメン(千葉市稲毛区) ブレーメン(千葉市稲毛区)
▲ その店名を ブレーメン と言いました(惜しくも 現在閉店 )。
 オーナーは、音大卒の穏和な紳士 仲田さん・・・ お元気かな? ホント お世話になりました。
 仲田さんに勧められ、購入した 忘れられぬ一枚が これです。

 それが、私 発起人のテイストにドハマりした、ワーグナー作品とは言っても変化球的な企画盤、すなわち「イゾルデ歌唱(オリジナル・ドイツ語)と男性俳優(フランス語)ナレーションによる室内楽版トリスタンとイズー” 」です。ワーグナーの台本以外のフランス語ナレーション部分では、12世紀ブリテントマによる「イズーの死 」などが使われ 違和感なく挿入されています。

 しばらく通勤に使うマイカーにCDを積んで 半年以上 車内オーディオで - 主に帰路(朝はさすがに聴く気になれず )- 疲れを癒してくれる 耳によく聴く「妙薬」でした。

 他に類を見ない(聴けない)、おそらく前例もない 独特なアレンジで編まれた一枚ですが、楽劇「トリスタンとイゾルデ」原曲の香りを損なうどころか、むしろワーグナーの新しい魅力を彫りだしてくれる、とても好ましい仕上がりなのです。

 もし これを初めて聴こうとする人にご安心頂きたいことは、ワーグナーの原曲を オーケストラ編成から 特殊な室内楽(上記ご参照 )編成へ忠実に移し換えただけの好ましい編曲であること、旋律や和声を勝手に変えたりもされてはいませんし、演奏家が勝手に即興演奏を広げるような余地も許していない、という点です。
 演奏は、室内楽的な親密さが活かされた美しさで、少人数の弦セクションは腕利きで 生々しい迫力を失うことなく、ホルン奏者は遠くまで音響を広げることに貢献し、煌めくハープの撥弦はサウンドに鮮やかな彩りを添え、ティンパニも楽想にスケールとメリハリを与えています。
 その中でも、編曲と指揮を兼ねた オーボエ奏者ジャン=ピエール・アルノーのコーラングレ(牧人の縦笛)が醸し出すニュアンスの豊かさについては 特筆すべきでしょう。

 著しく珍しい点と言えば、歌唱パートがイゾルデのソプラノ(オリジナル独語)パートだけであること、さらにトリスタン役の歌唱パートが(メロディは) すべて器楽奏者に振り当てられ、台詞はフランス語で語る俳優(ランベール・ウィルソン)の演技に委ねられることです。
 演者が台詞を朗読する背景で 器楽合奏が音楽を演奏するという形式は、編曲を務めたジャン=ピエール・アルノーの新奇な創造などではなく、18世紀ジャン=ジャック・ルソーの時代にフランスで生まれた「メロドラマ」という列記とした伝統があってのことだそうです。

 尚、楽劇の全曲ではなく、聴きどころを巧みに拾い集め 編み直された「抜粋」であることは 断っておかねばなりませんね。その結果、このディスクの全体は 約53分という短さに切り削がれ、濃縮されています。

 第一幕への前奏曲から、ブランゲーネが毒薬を所望するイゾルデへ咄嗟にすり替えた「愛の妙薬」を渡すと、それに答えるトリスタンの語りは第二幕のそれです。彼の台詞の背景へ沿うように トリスタンのメロディ・ラインは雄弁なチェロ独奏が受け持ち、イゾルデの歌唱と巧みにコミュニケートするところなどは、恋人同士が リアルな美しい会話を交わすように生々しく聴こえます。
 ブランゲーネの警告からメロートの裏切りによる急転直下な音楽の変化、この力強さには 思わず手に汗を握ります。
 そして苦痛に満ちた第3幕への前奏曲から 牧人の奏でるコーラングレのメロディを経て、恋い焦がれるイゾルデとの再会に胸が高鳴るトリスタンの歓喜が激しく増水して溢れ、そんな音楽の頂点で突然 息絶えてしまう儚(はかな)さ、そしてイゾルデの「愛の死」は 透明に澄んだ冷たい泉のような室内楽に支えられ、これにティンパニがとどめを刺すように縁(ふち)どってくれる、何とも素晴らしい流れなのです。

 わずか 53分間、何の違和感もなく、いえ、むしろ短い時間にもかかわらず 全曲盤を 聴き通した時に勝るとも劣らぬ満足感を得られることを、私 発起人が 保証いたしましょう。

 ちゃんとした解説と読みやすい対訳を付けて 国内盤として発売していれば、きっと・・・ いえ、そこそこ かな(?)売れたのではないでしょうか。
 今宵は 短かめに 切り上げます。おやすみなさい!

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