本記事は、6月12日の「人気記事ジャズ ランキング」で 第1位となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。


クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
メニュー画面は ⇒ こちら

 Dave Grusin(the NY-LA Dream Band) 1984_GRP          Steve Gadd(Out of The Shadows)1982_GRP
「それ スティーヴィ、もうワン・テイク! 」 「・・・ちょっと待ってくれ、デイヴ。そろそろ疲れたかも 」

「 One of a Kind (ジェントル・サウンド ) 」
 (デイヴ・グルーシン )1977年


■ もったいぶった前置きは、映画の話題から
 1981年のアメリカ映画『 黄昏(On Golden Pond) 』(マーク・ライデル監督)は、名優ヘンリー・フォンダの生涯最後の出演映画でした。人生の黄昏を迎えた高齢の老夫婦(妻の役はキャサリン・ヘプバーン)と その娘(ヘンリーの実娘でもあるジェーン・フォンダが演じる)との 関係(わだかまり、心の交流、和解まで)を描いた静かなる佳作で、実に美しい湖畔の風景とともに音楽も際立つ作品でした。かつてLPで出ていたオリジナル・サウンドトラック盤には、音楽だけでなく 映画の台詞や自然の音が散りばめられていて 実に素晴らしかったです(なぜか未CD化。何か理由でもあるのでしょうか)。
映画「黄昏(On Golden Pond)」パンフレット 1982 映画「黄昏」パンフレット(1982)

 絶賛されたこの映画の音楽を担当していたのが、才人デイヴ・グルーシンDave Grusin 1934年~ )でした。グルーシンは、コロラド州リトルトンの出身。コロラド大学音楽科を卒業、兵役を経てニューヨークを 活動の拠点とします。1960年代に入ると 数々のショウ番組、ドラマ、映画等に楽曲を提供するようになりました。世間一般の人にとっては どちらかというと「映画音楽の作曲家」として知られているのではないでしょうか。

? Dave Grusin_映画「卒業」サウンドトラック(CBS) ? Dave Grusin_映画「愛すれど心さびしく」 ? Dave Grusin_映画「Three Days of the Condor」 ? Dave Grusin_映画「天国から来たチャンピオン」 ? Dave Grusin_映画「ザ・チャンプ」 ? Dave Grusin_映画「黄昏 On Golden Pond 
 
 なにしろ音楽を提供した映画は、1967年 「卒業 The Graduateサイモン&ガーファンクル以外の部分)」を皮切りに、1968年 「愛すれど心さびしく The Heart Is a Lonely Hunter 」、1975年 「コンドル Three Days of the Condor 」、1978年 「天国から来たチャンピオン Heaven Can Wait 」、1979年「チャンプ The Champ 」、1981年 前述の「黄昏 On Golden Pond 」、
? Dave Grusin_映画「トッツィー」 ? Dave Grusin_映画「恋におちて Falling in Love」 ? Dave Grusin_映画「グーニーズ The Goonies」 ? Dave Grusin_映画「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカーボーイズ」 ? Dave Grusin_映画「Havana」 ? Dave Grusin_映画「ザ・ファーム 法律事務所」
1982年「トッツィー Tootsie 」、1984年「恋におちて Falling in Love 」、1985年「グーニーズ The Goonies 」、1989年「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ The Fabulous Baker Boys 」、1990年代以降も「ハバナ Havana 」、 「ザ・ファーム 法律事務所 The Firm 」などなど(これらは ごく一部)、膨大な仕事量を精力的にこなしています。

 1964年にCBSに残したレコード「カレイドスコープ(Kaleidoscope)」が、グルーシン最初のジャズ・ピアニスト名義のリーダー録音と思われます。ここでの参加ミュージシャンの顔ぶれは ベース奏者ボブ・クランショウ Bob Cranshaw、トランペット奏者サド・ジョーンズ Thad Jones、テナー・サックス奏者フランク・フォスター Frank Fosterという堅実な一流どころですが、中身はブルーノートのようなハード・バップで、今日あるグルーシンの個性などは ここでは殆んど聴く事が出来ません。しかし 後にビジネス・パートナーとなるラリー・ローゼン Larry Rosenのドラムスが聴けることが注目です。
Dave Grusin「カレイド スコープ」(CBS)
 かつてアンディ・ウィリアム Andy Williams のサポートバンド時代からの古いつきあいだったデイヴ・グルーシンラリー・ローゼンの二人は、1976年にGRP(Grusin-Rosen Productions )を共同設立、アリスタ Aristaと契約し、1982年にはGRPレコードとして独立、1987年には大手MCAと契約、良質のコンテンポラリー・ジャズの演奏家を数多くプロデュースすることになります(1994年以降は、同社社長はトミー・リピューマに交替しているそうです)。思いつくまま挙げてみても、トム・ブラウン Tom Browne、デイヴ・ヴァレンティン Dave Valentin 、ダイアン・シューア Diane Schuur、 もちろん70年代からのバックアップ・アーティスト(アール・クルー Earl Klugh、リー・リトナー Lee Ritenour 、フュージョン時代の渡辺貞夫など)を含めると、グルーシンが育てた演奏家は相当な人数に上ることでしょう。
 グルーシンは、ほぼ同年代の ボブ・ジェームス(1939年生まれ)としばしば比較されてきましたが、ピアニストとして以上に、作曲家としての顔、指揮者・アレンジャーとしての顔、プロデューサーの顔、そして 実業家(ラリー・ローゼン と共にコンテンポラリー・ジャズのレーベルGRPの創設者)としての顔など 確かに 桁外れの多芸多才さという面では、二人とも共通項の多い成功者です。

 「 One of a Kind(ジェントル・サウンド)」(デイヴ・グルーシン)1977年
 デイヴ・グルーシンが、総合的なジャズ=フュージョン・ミュージックのオルガナイザーとして高く評価されるようになった最初のリーダー・アルバムが、1977年の傑作“ One Of A Kind ”(当時の邦題“ジェントル・サウンド ”)であることには決して異論は出ないでありましょう。
デイヴ・グルーシン 「ジェントル・サウンド」旧LPジャケット(polydor) ← LP(polydor) Dave Grusin_One Of A Kind(GRP) ← 現行のGRP盤
デイヴ・グルーシン ONE OF A KIND(ジェントル・サウンド)
  グローヴァー・ワシントンJr.(ソプラノ・サックス)Grover Washington Jr.
  ロン・カーター(アコースティック・ベース) Ron Carter
  アンソニー・ジャクソン(エレクトリック・べース)Anthony Jackson
  フランシスコ・センティーノ(エレクトリック・ベース)Francisco Centeno
  スティーヴ・ガッド(ドラムス)Steve Gadd
  ラルフ・マクドナルド(パーカッション)Ralph MacDonald
  デイヴ・ヴァレンティン(フルート)Dave Valentin ほか
録音:1977年ニューヨーク(Polydor ~ GRP)

1. Modaji (07:42)
2. The Heart Is A Lonely Hunter (06:13)
3. Catavento (04:04)
4. Montage (09:20)
5. Playera (08:44)
 
(オリジナルLPでは A面 4-5、B面 1-2-3、という配列順でした)

 今回、あらためて全5曲を 久しぶりにじっくりと聴き直してみると、もー震えがくるほどの名曲・名演の詰まった名盤であることを再認識しました。
 CD 1曲目「モダージ Modaji」、独特の間(ま)を生かした 浅い呼吸が全曲を支配するサスペンス・タッチの音楽です。映画音楽的と呼べるかも知れません。聴き手は何らかの映像イメージを喚起されます。グルーシンのフェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノによる長いソロ、しかし音数の少ない語り口の効果は傾聴です。この種の音楽の緊張感が全くダレずに持続するのは やはりガッドの刻む最小限のリズムの斬れが貢献している、と言って良いでしょう。突然 思い出したかのようにバスドラが名手センティーノのエレクトリック・ベースの動きとユニゾンで邂逅したかと思うと、次の瞬間 互いにサッと離れては浮遊してゆく緊迫感。そうかと思うと 一発の鋭いスネア・ドラムの強打が息詰まる空気を祓うかのような効果をあげたり、とにかくガッド以外には考えられない 決められた枠の中での自由自在な柔軟プレイには脱帽です。
 2曲目「愛すれど心さびしく The Heart Is a Lonely Hunter 」には、ガッドは参加していないのですが、演奏の素晴らしさを是非語らせてください。これはグルーシンが音楽を担当した1968年の映画の主題曲です。たいへん美しい旋律のバラードで、かつてユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(RCA)のレコードさえ出ていました。当レコード録音のためにグルーシン自身が新しく施したアレンジ・ヴァージョンですが、グルーシンの硬質なアコースティック・ピアノの響き、控えめな弦楽オーケストラ、ロン・カーターによるピッツィカート・ベースが三位一体となって、見事に調和の計られた名演です。コーダに入って、緩やかに音楽が終わるかというところで、曲はゆっくりと転調し、ニ長調から変ニ長調へと半音下がるのですが、その効果たるや、あたかも清冽な小川の支流が大河へと流れ込んでゆくような新鮮さです。底無しの深さに沈みゆくロン・カーターのアコースティック・ベースの音が極めて印象的に鳴り響きます。
 CDでは3曲目に置かれている 楽しいサンバ「カタヴェント Catavento 」。原曲がミルトン・ナシメントMilton Nascimento だったとは意外。わたしにこの名盤を紹介してくれた恩人のドラマー次郎さんが「この1曲が聴きたくて、レコードを買ったんだ」と学生時代に語っていたのを思い出します。この手のサンバ・リズムを叩かせたら、ガッドの右に出る者はいません。ぐいぐい前に進む推進力でバンドを引っ張ってゆきます。デイヴ・ヴァレンティンのフルートソロも爽やか。最後、すわドラムス・ソロか、と思わせる間もなく まったく未練気なくスパッと断ち切るように終わらせる効果に、唖然とさせられます。
 LPではA面冒頭に置かれていた、「モンタージュ Montage 」。16ビートを基調に猪突猛進に進むかと思いきや、刻々と変わるリズムをリードするガッドのドラムスの切れには、やはり注目させられます。この曲では オーバー・ダビングによるグルーシンのシンセサイザーのソロが楽しめます。彼のお気に入りのプリセットの音色は、後年になるまで あまり変わっていないことがわかりますね。あ、ちなみに ここで一生懸命トライアングルを叩いているのは、ラリー・ローゼンですよ。
 そして、本ディスクのハイライトプレイエラ Playera」の原曲は、言うまでもなく スペインの作曲家グラナドスEnrique Granados(1867~1916)の「スペイン舞曲第5番 ホ短調“アンダルーサ”」ですね。哀愁に満ちた6/8拍子の原曲をほぼ忠実になぞるように、中間部 ホ長調へ転調する美しい部分まで 抑制を効かせた編曲で、グローヴァー・ワシントンJr.ロン・カーターによるソロも 必要にして最小限に留められているのが好ましいです。ガッドのドラムスは繊細なスネアの絶妙なリズムが素晴らしく、グラナドスの原曲がアンダルシア地方の舞踏音楽であることを思い出させてくれます。CTIの一連のクラシック編曲ジャズとは また一線を画する、グルーシン独自の世界が楽しめます。原曲を聴き直してみたくなってしまいますよ。

 ふたたび 映画「黄昏(On Golden Pond)」の音楽・・・
 「黄昏(On Golden Pond)」は、現在 オリジナル・サントラ盤がCDでは出ていないので( GRP盤「シネマジック Cinemagic 1987 」でなら再演が聴けますが・・・)残念に思っていたところ、DVDでなら入手が容易であることがわかり、早速購入。
DVD「黄昏」1982(Henry Fonda)Universal
 今 映画を観ながら(というか、音を聴きながら)打っています。これだ、これだ・・・ 映画の冒頭、湖に棲む鳥たちのさえずり、この音にピアノが被さるんだった。やっぱりこうでなきゃ ・・・。良い映画だなあ、途中で登場する 明るい躍動的な音楽「ニューハンプシャー・ホーンパイプ New Hampshire Hornpipe」、やはりグルーシンの書いたもうひとつの名曲「マウンテンダンス Mountain Dance」に曲調、なんか似てるなあ・・・。
 ガッドが大活躍する グルーシンの名盤「アウト・オヴ・ザ・シャドウズ Out Of The Shadows(1982) 」、「NY-LA Dream Band(Live 1984) 」などについては、またいつか 必ず・・・。

次回、(9)「恋人と別れる50の方法」(ポール・サイモン)・・・  に続く

にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村
blogram投票ボタン
人気ブログランキングへ


関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)