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短期連載 
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made

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ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made

10.ザヴィヌル

 恩師アイラ・サリヴァンの推薦によって 週二回、学生向けにエレクトリック・ベースの個人レッスンを授講する立場になっていたジャコは、翌年(1975年)1月、マイアミ大学の学生たちで結成されたビッグ・バンドの発表会の会場にいた。
 学生オーケストラの指導は ジャコの仕事ではなかったため、はっきり言って、生徒らの演奏に関心はなかったが、その同じ会場であるガスマン・シアターの大ホールで その日の宵、エレクトリック・ジャズの最高峰ウェザー・リポートのマイアミ公演が催されることを初めて知ったジャコは 思わず目を瞠(みは)った。
 発作的に コンサートの当日券を購入、大学まで戻る予定だった送迎バスへの乗車を断ると、彼は 独りホールのロビーに残った。

 エレクトリック時代のマイルス・デイヴィスによる歴史的な名盤「ビッチ'ズ・ブルー 」セッションに 参加したミュージシャン - ウェイン・ショーター と ヨーゼフ・ザヴィヌル - を中心に、まだ 4年前に結成されたばかりのグループ、ウェザー・リポートは、すでに 5枚のアルバムを CBSレーベルからリリースした 全米で最注目を集めるエリート集団だった。
 発足時のメンバーだった アコースティック・ベース奏者 ミロスラフ・ヴィトウスは すでに脱退し、エレクトリック・ベースのアルフォンソ・ジョンソンに交替していた。これは、グループが 確実にエレクトリック楽器を主体とする演奏方針に移行しつつあることを象徴していた。そんなバンドの進むべき方向線上で、彼らは また ひとつの壁にぶつかっていた。
 ・・・リズム・セクション、特に ドラムス奏者が、定着しなかったのだ。イシュマエル・ウィルバーン、レオン・チャンクラー、ダリル・ブラウン、スキップ・ハデン、チェスター・トンプソン - と、多くの名ドラマーが 入っては出て行った。

 その晩のステージも メインの専任ドラマーと思われるプレイヤーと、パーカッションを兼ねるもう一人のサブ・ドラマーとのコンビネーションが なかなか しっくりとこない様子で、彼らの散漫なプレイに釣られ 名ベーシストのアルフォンソ・ジョンソンでさえ 思わずその手元を もたつかせてしまう瞬間が 少なからずあった。
1974 Weather Report
 ジャコの優れた耳は、一流バンドのリズム・セクションのウィーク・ポイントを 客席から いちはやく見抜いていた。
「俺なら もっと別のアプローチで、今の二倍は演奏効果を上げてみせる。
「ドラマーとパーカッション奏者と 事前の打ち合わせを完璧にしておけば、 もっと良くなるのになあ。
「あんなちょっとしたブレイクさえ呼吸を合わせないって、あれはないだろ 」

 そんなバンドに僅かでも瑕が生じる度、ステージ上で しかめ面を作ったり、メンバーに苛立たし気に 檄を飛ばしたりするザヴィヌルの所作・表情から、ジャコは グループの中心となっている男が かつてキャノンボール・アダレイのバンドで「マーシー、マーシー、マーシー 」をプレイしていた、このキーボード奏者であることを、見抜いていた。
小 Joe Zawinul (1)小 ザヴィヌル-2小ザヴィヌル-4小ザヴィヌル-5

 そして、もっと以前からマイルスのブレインだった筈のウェイン・ショーターが、このグループでは 指揮官を 務めていないことを 意外に思ったものだ。

「挨拶するなら、ザヴィヌルのほうだな 」
と、ジャコは 友人のパット・メセニーが ゲイリー・バートンの楽屋へ飛びこんだというエピソードを思い出しながら、終演後 楽屋のほうへ足を運んでみる。
 その途中 バックステージ専用通路の出入口から運搬クルーらと連れだって外へ向かおうとする、お目当てのキーボード奏者の後ろ姿を発見した。
 彼を追って、ジャコが関係者出入口から出てみると 器材運搬用のトラックの荷台に 大きなシンセサイザーのケースやフェンダー・ローズのスーツケースを積みこもうとしているクルーのメンバーに 矢継ぎ早に指示を出しているジョー・ザヴィヌルに追いついた。
「ミスター・ザヴィヌル?」
ジャコの声に、ウェザー・リポートの司令塔は ゆっくりと振り向いた。


⇒ 次回につづく

事実に基づいたストーリーですが、ドラマの文章は“発起人”創作で 架空のものです。

参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

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