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短期連載 
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made

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ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made

6.フロリダ・デモ

 1974年 3月、ジャコは それまでに書き貯めていたオリジナル曲の数々 - 「バルーン・ソング」、「ハヴォナ」、「コンティニューム」、「クル」、「オーパス・ポーカス」といった作品 - を、すでに当時からフレットレス・ベースの技巧を披露するショーケース・ナンバーだった「ドナ・リー 」とともに、最良な状態でデモ演奏を残しておくことを考え、エンジニアのアレックス・サドキンの厚意で 彼のクライテリア・スタジオを借り切って、フロリダの友人たちとともに11曲をレコーディングした。
 言うまでもなく、これが 翌年エピック・レーベルで録音されることになるセルフ・タイトルを冠した 彼のデビュー・アルバムのリハーサル的骨格となる、通称「フロリダ・デモ 」 - たいへん重要な一枚である。
 
JACO PASTORIUS Modern American Music The Criteria Sessions MSIG-0941 若きジャコとベース・ケース
▲ ジャコ・パストリアス
クライテリア・セッションズ The Criteria Sessions
(モダン・アメリカン・ミュージック Modern American Music ・・・ Period ! )
パーソネル:ジャコ(ベース、フェンダー・ローズ )、ボブ・エコノモウ(ドラムス )、アレックス・ダーキ(ピアノ、フェンダー・ローズ )、オセロ・モリノウ(スティール・ドラムス )、セドリック・ルーシャス(スティール・ドラムス )、ドン・アライアス(パーカッション )
収録曲:ドナ・リー、バルーン・ソング(12トーン)、パンズ #1、ハヴォナ/コンティニューム、クル、コンティニューム、オーパス・ポーカス(パンズ #2)、タイム・ラップス、バルーン・ソング(別テイク)、タイム・ラップス(別テイク)、忘れ去られた愛
録 音:1974年 3月、フロリダ
音 盤:MSI(MSIG-0941 )

 “発掘”とされる 2014年のオフィシャル公開まで、関係者以外には聴かれることのなかった私家盤「フロリダ・デモ 」音源の全貌。正確に書き留めておくと、オリジナル・クライテリアのアセテイト盤に収録されたナンバーは 上記のうち 6曲 - 「バルーン・ソング(12トーン)」、「パンズ #1」、「クル」、「コンティニューム」、「オーパス・ポーカス(パンズ #2)」、「タイム・ラップス」 - だったそうだが、ここに聴ける別テイク・未発表だった録音も併せ すべてが 同じセッションで レコーディングされた演奏である。
 ジャコが初対面のジョー・ザヴィヌルに 自分自身を売り込もうと手渡した「コンティニューム 」、「ドナ・リー 」を収めたカセット・テープの中身が、正にこれである。こちらの「ドナ・リー 」は、ドン・アライアス抜きの純粋なベース・ソロ・パフォーマンス。
 このディスクによって 私たちが 初めてコンプリートに聴けることになった 若きジャコの才能の炸裂 - 鍵盤上の十二音を巧みに再構成してみせた「バルーン・ソング」は ビル・エヴァンスの成功作「T.T.T.」(Twelve Tone Tune )を連想させる試みとして特筆すべきナンバーであるし、超絶技巧的なベース「タイム・ラップス 」(2ヴァージョン )と関連の深い「パンズ #1」の素晴らしさも聴き逃せない。後にウェザー・リポートで大爆発することになる「ハヴォナ」の原型など、すべてが興味深い。

 何度も聴き直すうち 個人的感想だが、友人アレックス・ダーキというピアニストの個性が、良くも悪くも セッションのサウンド・カラーに与えている影響が大きいように感じた。
アレックス・ダーキ
 ダーキは、技巧こそ高いものの フェンダー・ローズに座ると、おそらく意図的に、ペダルを深く踏みっ放しにする傾向があり、そうすると ただでさえ不必要に音数が多いフレーズ打鍵に入ると トーンの一つ一つがみんな繋がってしまい、肝心の輪郭がぼんやりしてしまうところなど、聴者の好き嫌いを分けると思う、私は後者だ。せっかく良いフレーズを弾いても粒立ちを潰しているようで もったいない。ペダルとキーボードのタッチはフェンダー・ローズの両輪である。楽器のトレモロ設定も適切と感じられない。たとえばリチャード・ティーなど名手の演奏と比べてしまうのは、ご本人には気の毒かもしれないし そもそもジャコが許容していたのなら、私ごときが素人コメントを述べるのは 所詮愚であるが。

 すでに紹介した、初期ジャコの演奏を集めたコンピレーション・アルバム「ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング 」の中には 先立って三曲(「コンティニューム 」、「オーパス・ポーカス 」、「バルーン・ソング 」 )だけが抜粋されていたわけだが、ことこのセッションに限っては 全曲に耳を傾ける価値がある。音質良好。


Jaco Pastorius The Criteria Sessions Full Album!(音量レベルにより やや音割れあり )
1. 00:00 Donna Lee 2. 2:55 Balloon Song (12-Tone) 3. 11:03 Pans #1 4. 15:50 Havona/Continuum 5. 26:13 Kuru 6. 31:51 Continuum 7. 35:56 Opus Pocus 8. 42:04 Time Lapse 9. 46:17 Balloon Song (12-Tone) (Alternate Take)
10. 59:09 Time Lapse(Alternate Take) 11. 1:04:25 Forgotten Love


⇒ 次回につづく

事実に基づいたストーリーですが、ドラマの文章は“発起人”創作で 架空のものです。

参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

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