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短期連載 
ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made

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ジャコ・パストリアス ~ A Remark You Made

5.ウェイン・コクラン、アイラ・サリヴァン、ピーター・グレイヴズ・・・

 さて、20歳になったジャコが 次に加入したのは、当時フロリダを拠点に60年代から活躍していたR&Bの大御所ウェイン・コクラン(1939~2017 )率いる一流のR&Bバンド、C.C.ライダーズだった。
 すでにフロリダでは注目される存在となっていたジャコは、1972年 実力で入団を勝ち取った。その後 9カ月の間、ライダーズではベース・プレイヤーとしてばかりでなく、バンドのアレンジャー、チャーリー・ブレントから 読譜・採譜やアレンジの基礎、さらに作曲に必要な知識とテクニックまで学ぶことによって その音楽的才能を飛躍的に成長させた。
 自分のエレクトリック・ベースからペンチでフレットを外してしまったのもこの時期のこと。神の啓示があったかどうかは・・・ 定かでない。
ジャコ・パストリアウス ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング The Early Years Recordings ウェイン・コクラン Wayne Cochran the C.C. Riders
▲ ウェイン・コクラン & C.C.ライダーズ
Wayne Cochran & C.C.Riders
「ジャコ・パストリアス / ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング 」The Early Years Recordings から
収録曲:Ming of Mings、Amelia、Rice Pudding、Do You Like the Sound of Music
録 音:1972年頃、フロリダ
音 盤:キング・インターナショナル(HP-002 ) 

 ウェイン・コクランとC.C.ライダーズ在籍時の1972年ライヴ音源からは四曲(上記 )が収録されている。中でも やはりジャコ作曲/編曲「アメリア 」は資料的価値が高い、しかし演奏が難しいのだろうか、アンサンブル精度は意外に高くなく、曲調のほうもファンキーさが売り物であるべきライダーズの雰囲気に合っているとは言えない。


ポートレート・オブ・ジャコ Portrait of Jaco
▲ 少し脱線するが、ジャコの死後になって、友人/関係者らの努力(?)により企画盤「ポートレート・オブ・ジャコ 」(2002年 )がリリースされた。が、これは 私“発起人”が期待していた内容とはかなりの隔たりがあることに、入手してから気づいた。もう20年近く前のこと 何を今さらだが(笑 )、このCD二枚組は センチメンタルなドキュメンタリー的制作方針から、若きジャコの貴重な録音の数々が、あろうことか、細かく切り貼りされ、その多くがフェイドアウトされていたり、演奏の上から関係者らのスピーチが被されてしまっていたりという 唖然とする内容だった。そんな編集内容にもかかわらず かなり高価だったこともあって、当初から賛否は分かれた(私個人は、とても受け容れ難かった )。
ジャコ・パストリアウス ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング The Early Years Recordings
▲ 「ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング 」は、その後になって 初めてリリースされることになったディスクで、ジャコの瑞々しい初期(1969-1974 )演奏が途中で切られるようなこともなく(って、本来当然だが)ちゃんと通して聴ける音源集として、当初はおおむね歓迎されていた記憶がある。
 けれど(!)その後になって ウッドチャックやトミー・ストランド在籍時のライヴ、さらにはジャコ最重要の「フロリダ・デモ 」などが、少しずつ時間をおいては それら各コンプリート音源が順次リリースされるという(「それ、なんだよ?」 )とても巧い商売の実体が徐々に明らかとなり、私“発起人”を含め ジャコの音楽を愛してきた世界中のファンたちは、その都度 彼らに身代金を払わされるようなシステムに、正直 抑え難いむかつきも耐えてきたのである。まあ、偉大なジャコの業績には直接関係ない話ではあるけれど。


ジャコ・パストリアス グリーン・ライト The Green Light アイラ・サリヴァン Ira Sullivan
▲ ジャコ・パストリアス名義
実体 アイラ・サリヴァン Ira Sullivan Quintet
ザ・グリーン・ライト The Green Light Is Always On
収録曲:Ballye De Nina、Lonely Dreams、Las Olas、Call It Sunshine,I’m A Rainbow,Dance With Her Father
録 音:1973年頃、フロリダ
音 盤:キング・インターナショナル(KKJ-012 )

 ジャコに本格的なジャズをマスターさせた恩師アイラ・サリヴァン Ira Sullivan(1931~ ) - この人は ジャズの名門ブルーノート1536番:J.R.モンテローズ J.R.Monterose に トランペットで参加していることで知られる  - との共演が聴けるライヴ・レコーディング。音質良好。
 ジョー・ディオリオ(ギター )、アレックス・ダーキ(フェンダー・ローズ )、スティーヴ・バグビー(ドラムス )による(R&Bではない )ジャズ的なアプローチによる、貴重なクインテット編成。最初期のジャコ・オリジナル「バリー・デ・ニーナ 」、「ラス・オラス 」がとりあげられている。
 当初アイラは、彼自身のグループ内では「ベースはアコースティックしか認めない 」と堅く言い張っていた。が、ジャコがチャーリー・パーカーの「ドナ・リー 」をエレクトリック・ベースで巧みに披露するのを聴いて以来、すっかり偏見が解けてしまった、という逸話がある。同時代のエレクトリック・ベース奏者が多用していたスラップ奏法(チョッパー )をジャコが殆ど使うことなく、フレットレス・ベースでアコースティックなサウンドを真摯に追求する姿勢もアイラがそのプレイを受け容れた理由のひとつだったと思われる。


ジャコ・パストリアウス ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング The Early Years Recordings ピーター・グレイヴズ Peter Graves
▲ ピーター・グレイヴズ・オーケストラ
Peter Graves Orchestra
「ジャコ・パストリアス / ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディング 」The Early Years Recordings から
収録曲:Between Races、Domingo、Wiggle Waggle
録 音:1973年頃、フロリダ、バチェラー・スリー
音 盤:キング・インターナショナル(HP-002 )
  
 C.C.ライダーズを退団後、次にジャコが係わりをもったジャズのビッグ・バンド(地元フロリダではよく知られた)ピーター・グレイヴズ(推定1940頃~ )のオーケストラに参加していた時期のスタジオ・レコーディングから三曲(上記 )を収録。音質良好。
 コルトレーンを想起させるモード風なナンバー「ビトウィーン・レイシズ 」、ジャコのオリジナル曲「ドミンゴ 」、ハービー・ハンコックのワーナー時代のアルバム「ファット・アルバート・ロトゥンダ 」(1969年 )収録のナンバー「ウィグル・ウァグル 」。いずれもスピード感と切れのある素晴らしいアンサンブルで、R&Bバンドと比べたら演奏精度には雲泥の差がある。ジャコのオリジナルも グレイヴズ・オーケストラにおけるパフォーマンスのほうが、遥かに引き立って聴こえる。
 ピーター・グレイヴズとの接触は、その後のジャコに多くの音楽的な人脈を築くことになった点で、たいへん重要である。所属していた時期こそ異なるものの かつてこのビッグ・バンドにはパット・メセニー(ギター )、マーク・イーガン(ベース兼トランペット奏者として ! )、ダン・ゴットリーブ(ドラムス )という(ライル・メイズこそ出会う前だが )そのまんま “パット・メセニー・グループ”の主役とバッテリーが 在籍していたことは よく知られている、さらにまた ジャコが彼のビッグ・バンド“ワード・オヴ・マウス”を 後に結成する際には 何とバンドのリーダーであるピーター・グレイヴズ自身を含む 何人ものバンド・メンバーがジャコの才能を慕ってニューヨークへ駈けつけることになるのだった。

⇒ 次回につづく

事実に基づいたストーリーですが、ドラマの文章は“発起人”創作で 架空のものです。

参考文献
「ジャコ・パストリアスの肖像」ビル・ミルコウスキー(湯浅恵子/訳)リットー・ミュージック
「ワード・オブ・マウス / ジャコ・パストリアス 魂の言葉」(松下佳男)立東舎文庫
季刊ジャズ批評118号「特集ジャコ・パストリアス」ジャズ批評社
ジャズベース・プレイヤー Vol.4「オール・アバウト・ジャコ・パストリアス」シンコーミュージック・エンタテイメント
「NO BEETHOVEN ウェザー・リポート&ジャコ・パストリアスと過ごした日々」ピーター・アースキン(川嶋文丸/訳、松下佳男/監修)アルトゥス・ミュージック
「ALL ABOUT WEATHER REPORT」シンコーミュージック・エンタテイメント
「ザヴィヌル ウェザー・リポートを創った男」ブライアン・グラサー(小野木博子/訳)音楽之友社

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