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スケルツォ倶楽部 
Club Scherzo
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最終回を迎え、NHK-FM「きらクラ !ロスに襲われているのだが。
きらくらHP

 “スケルツォ倶楽部発起人です。
 いつも日曜日の午後、あるいは再放送の月曜朝のひととき、オイゲン・キケロだなんて もうすっかり忘れ去られたヨーロッパのジャズ・ピアニストによる軽快な「小犬のワルツ 」がオープニングに流れてくる「きらクラ ! 」 - 聴く度に、きっと この調子で いつまでも この番組は終わることなく 続くのだろうなー などという気に 何となく なっていたFM放送の貴重なクラシック番組が、何と 今回をもって 「終了 」だと・・・。

NHK-FM きらくらHP ロゴ
「独特の感性を持つタレントふかわりょうと、気鋭のチェリスト遠藤真理が繰り広げる お気楽クラシック音楽バラエティ・ラジオ。極上の音楽と まったりトークや、さまざまな企画コーナーによって、気楽にクラシック音楽に触れることのできる キラキラした日曜の午後をお届けします 」(NHK-FM 番組H.P.の紹介文より )

 つい昨日までは 当たり前だった「日常」が終わる時とは、常に 突然やってくるものであることを、すでに、私もよく知っています。
 五十代も後半にさしかかる年齢になれば - それだけ人生経験を積んできた以上 - どなたであれ 多かれ少なかれ、「今まで大事にしていた美しいものを失ったり、諦めたり、手放したり、あるいは 愛着のある土地や住まいを 離れたり、両親や 心から愛する人と 別れたり ・・・ 」(映画「ヴェニスに死す 」感想の回より )そんな挫折の経験をお持ちでしょう。不本意な別れの辛さに涙腺がゆるくなったのは 年齢のせい(笑 )、涙は勝手に頬を伝って流れ落ちるだけのこと、私自身は全然 大丈夫です。

 本日は、そんな「きらクラ ! 」の最終回・・・ いつもどおり日常の姿勢を崩すことなく、ふかわさんの普段にも増して元気な「今週も 始まりました ! 」といういつもの第一声で、スタート。
 私 “スケルツォ倶楽部発起人、この番組は 八年間、たとえ聴けない場合でも できるだけ録音するなど、初回から ほぼ大部分を聴いてきました。考えてみれば 八年間とは、この時間枠のNHK-FMのクラシック番組(「おしゃべりクラシック」、「気ままにクラシック」 )の中では 何気に歴代最長ではないでしょうか。しかし、恥ずかしながら白状しますと、今日という回ほど パーソナリティお二人の声に じっくり真剣に耳を傾けたことは、かつて無かったかも知れません。知らず知らず、いかに自分がこの番組を愛していたかに気づかされ、我ながら驚かされているほど。
 そんな、専ら「聴くだけ」リスナーだった 私“発起人”など以上に、この番組への愛着(いや、もはや哀惜? )深いたくさんのリスナーの皆さんから おそらく怒涛な量のお便りが NHK-FM には届いていた筈で、それらが冒頭から順々に読まれてゆきます。

「四月からは もう『きらクラ ! 』が聴けなくなることが 本当に寂しい 」

「『きらクラ!』は、毎週クラシック好きが集まってくるカフェのようでしたね 」

「八年間の放送の - 今日 最終回は - “オン・エア”卒業式です ! 」

「ふかわさん、今日は泣いてもイイんですよ ! 」

「来週から番組名が変わるだけだよ― なんて、サプライズは無いでしょうね 」


 ・・・ 一枚一枚、ご尤もです。同感です。おっしゃるとおりです。

 中でも 特に印象深かったお便りは、この番組に 一緒に“参加”していたリスナーさんたちにも宛て、丁寧なお礼を述べておられた方(世田谷区“いつも生きていてくれてありがとう”さん )からの素敵なお便りでした。

「各コーナーで紹介されるリスナーさんからのお便りの数々、そこに描かれた喜怒哀楽なメッセージは、それぞれ感銘深く拝聴しました。音楽の知識を得るだけでなく、日常にある素敵なドラマにも数多く気づかせて頂きました。本当にありがとうございました。
「窓から眺める桜の花が静かに散る季節を迎えておりますが、八年もの間 咲き続けてくれた『きらクラ ! 』の、きらきらと花弁を舞い躍らせる姿の美しかったこと、それらは春風にのって、ちゃんと私たちの許に届きましたよ、『きらクラ ! 』をみんな大好きでした ! 」
(以上、要約 )

 ・・・・はい。「きらクラ ! 」というプログラムは、音楽への感動や想いという、どちらかといえば切り捨てられがちで情緒的な面を とても大事にし、慈しみ、のびのびと育ててくださるような、そんな稀有で 飛び切りな良番組でした。

 スケルツォ倶楽部では 以前、遠藤真理さんへの賛辞を書いたことがあります( こちら 遠藤真理さんの選曲センスは Very Good ! )。

 また番組の“とある回”の些事を題材に 記事にしたこともありました( こちら ふかわりょう氏の「耳憑き」の正体は、メンデルスゾーン 」。

 最後は、ふかわりょうさんに、労(ねぎら)いの大拍手を 贈らせてください。
 ふかわさん、本当にお疲れさまでした。
 「きらクラ ! 」記念すべき初放送は、2012年04月14日 - 今回、貴重な最初のオンエアの音源を少しだけ聞かせてもらえましたが、かなり鮮明に思い出しました。当時、私は 旧番組「気ままにクラシック 」の笑福亭笑瓶師匠と幸田浩子さんが醸し出していた空気感 が殊のほか 気に入っていたので、こちらが終了してしまうことへの不満も手伝って、ふかわりょう氏への第一印象は、正直 あまり良くありませんでした(当初のうちは、ですよ )。なにしろ遠藤真理さんを、初回から気安く「真理ちゃん 」呼ばわり、何度も小犬の鳴きマネをさせたり、さらには上から目線も満々な「化けの皮が剥がれたね 」発言とか。ちょっと いかがなものだったでしょうか(笑 )。
ふかわりょう
 そんなふかわ氏でしたが、この 8年の間、きっと誰も見ていない所で 実は 自己研鑽に一生懸命取り組んでいたのではないでしょうか。だって、ここ最近の貴方の、また何と謙虚になられたことでしょう。
 よく知っていたつもりの名曲に対して、誰も気づかなかったような新しい一面を鋭く突くコメントをふかわさんが発し、ああ そういうことも一理あるなー とショックを受けたことも一度ならず・・・。もはや誰も貴方のことを「独特の感性」の持ち主なんて “微妙な”紹介を したりはされないでしょう。
 ピアノの腕前も上達されましたよね。間違いなく「きらクラ ! 」が、貴方を大きくしたのではありませんか。私ごときが 僭越な物言いになりますが、お許しください、とても成長されましたね。って、失礼 !


 さて、今日 最終回の開幕に流れたオープナーは、前々回の特集(ジャパ・コンw )を引っ張ってきたような邦人作曲家、團伊玖磨の「祝典行進曲 」 - この曲は、当時皇太子でいらっしゃった現上皇ご夫妻の成婚を祝して作曲された一曲で、ふかわさんもお気に入りな定番曲だった筈です。
 それにしても この曲にフィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブルのレコーディングが存在したとは・・・。やはり音盤チョイスは、こだまっちさんでしょうか? さすがです。

 ・・・やはり どうしても今日の放送は、今までとは異なる感慨を抱いてしまいますね。
世界は宝物 Look At The World(ジョン・ラター )」、「ベルリンの風 Berliner Luft(パウル・リンケ )」、「鏡の中の鏡 Spiegel im Spiegel (アルヴォ・ペルト ) 」 ・・・ かつて番組で流されたことのある、懐かしい音楽を回想するリスナーからのメッセージも 次々登場、その度に思わず うんうんと頷きながら 聴いてる自分が ここにいます。

 そして 「きらクラDON ! 」最後の解答曲には、何と ヴァージャ・アザラシヴィリの「無言歌 」が選ばれ、サンクト=ペテルブルク・チェロ・アンサンブルによる演奏が 流れました。
 「無言歌 」 - サン=サーンスの「白鳥 」を思わせる この曲は、静かな祈りにも似たオスティナートを繰り返す美しいシャコンヌで、反復され転調される度に 異なる表情を何層にも重ねてゆく 逸品です。
 “番組的”には、過去ゲストとして招かれた 若き指揮者山田和樹氏がリクエストされてから 多くのリスナーに認知されるようになった特別な一曲で、私“スケルツォ倶楽部”発起人も この「きらクラ ! 」で聴いたのが、初めてでした。
ヴァージャ・アザラシヴィリ Vaja Azarashvili(1936~ ) ドヴォルザーク チェロ協奏曲 遠藤真理 小林研一郎 読売日本交響楽団ドヴォルザーク チェロ協奏曲 遠藤真理 小林研一郎 読売日本交響楽団-2
▲ ヴァージャ・アザラシヴィリ Vaja Azarashvili(1936~ )
 この曲が流れてきた以上、「きらクラ !」パーソナリティを務める遠藤真理さんが 2017年に読響小林研一郎/指揮 )をバックに ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 」のソリストを務められた際、そのアンコールで演奏された宵の素晴らしいライヴ・レコーディングに触れないわけにはいきません(って、二重否定の肯定文です )。上掲のアルバムでは 真理さんのソロ・チェロと読響チェロ・アンサンブルによる素晴らしい演奏を(小林幸太郎編曲版で )聴くことができます。


ふかわりょう 遠藤真理
 クラシック音楽イントロ当てクイズの名物コーナー「きらクラDON ! 」以外にも この番組中には、興味深いお題が たくさんありましたね。
 たとえばクラシック音楽に勝手にサブタイトルを付けるコーナー「勝手に名づけ親 」、名曲の音程以外のリズムだけを口三味線で歌って(表記して )曲名を当てる「まりさん、たのもう ! 」、オペラやミュージカルの中から 日本語の発音に聞こえるレコーディング部分を紹介するコーナー「空耳クラシック 」などなど。
 「はじまりはクラシック 」は、クラシック名曲にインスピレーションを得て作られた、ジャンルを超えた名曲を 原曲とともに紹介する不定期なコーナーで、たとえば比較的最近では、ニール・ダイアモンド1972年のヒット曲「ソング・サング・ブルーSong Sung Blue の原曲が、何とモーツァルトピアノ協奏曲第21番 ハ長調第2楽章だった( ! )という回は、両者の関連を 全く知らなかった私は かなり驚きました。
Song Sung Blue_Neil Diamond モーツァルト
 ええと、実は 拙ブログ“スケルツォ倶楽部”にも 以前から同趣向な話題のコーナーがございました。
 よろしければ、こちらから ⇒ 「音楽ジャンルの障壁を飛び越えるメロディ ♪


「BGM選手権 」
 ・・・ 最後に、私が「きらクラ ! 」の企画の中でも 最注目の試みが「BGM選手権 」だった、と高く評価する根拠について述べます。
 「BGM選手権 」は、パーソナリティによって 朗読された文章(その多くは小説、詩の一部でしたが、題材に制限はなく、百人一首、ニュース原稿を読む回も過去ありました )の録音に合うBGMを、参加者は クラシック名曲の中から選んで応募します。翌週、番組の中で 当該録音を再生しつつ 音楽を充てながら聴き比べ、選曲の巧拙を競うというゲームです。
 題材の「朗読」は、常に録音された同じマテリアルが使われるため、応募者にとっては条件を揃え、公平な競争が出来ることは、当然ながら重要なことですね。

 ロゴス=「お題 」となる「言葉 」を発する人間は、実はパトス=「BGM 」たる「音楽 」に支えられている、故に両者のバランスについて考える行為は、この上なく知的で楽しいゲームでした。それは、聴く側である私たちにとっても。
 高村光太郎「冬の詩」の厳しさにベートーヴェンピアノ・ソナタ第30番 ホ長調第2楽章 スケルツォを充てたり、吉川栄治「宮本武蔵 」佐々木小次郎との緊張感漲る巌流島の場面に ホルスト「火星」を充てたり、さらに三遊亭円朝の短い落語「吝ん坊(しわんぼう )」に シチェドリンの「ユモレスク 」を充てて 絶妙のタイミングで落としてみせる呼吸など、忘れられません。
 中でも私が 特に印象深く記憶に残っている二編は、山村暮鳥の詩「風の方向がかわった 」に ディーリアス「フロリダ組曲」から「河畔にて 」を充てた回 - これは 本当に素晴らしく「北風がぴたりと止んで 」、「どこかで揺れてる海草の匂いが~ 」という個所では、爽やかに転調を遂げた音楽が まるで風と潮の香りが切りかわった瞬間を 言葉以外の方法で私たちに伝えてくれたかのような、そんな目も覚める効果を上げていたことが忘れられません。
 それは、もう一つ別の回で試みられた 蔵原伸二郎の詩「五月の雉 」に描かれた自然の景観に ブルックナーの第2交響曲 ハ短調の美しい緩徐楽章エルガーの「ため息 」、ウォルトンの穏やかな「弦楽のための小品 」を充てるという、その あまりにもレベルの高い選曲の競合に 思わず心がふるえた時と同じくらい・・・ いずれも 放送で 初めて聴いた日には、その素晴らしさのあまり 背筋に冷たいものが走ったほどの感動を覚えたものです。
 惜しいことに、これらは 放送された瞬間から(録音でもされていなければ )二度と誰にも聴かれることもなく - ロゴスパトスが 絶妙なバランスで釣り合った瞬間の行程が跡形もなく - ただ大気へと消えゆく無念さに匹敵するものを世の中に探してみても 音楽のもつ儚(はかな)さ以外には見当たらぬでしょう。

▼ 「愛の挨拶エルガーに始まり、エルガーに終わりました。
最終回「愛の挨拶」
ふかわりょう 「(もう今日で 番組は終わってしまうけれど )たとえば 夜寝る前、目を閉じて 心の周波数を合わせれば、きっと聞こえてくるでしょう、真理さんの笑い声が・・・ 」
遠藤真理   「はぁ? わたしですか(爆笑 )」

 パーソナリティのお二人、そして見えない(聞こえない )場所で たくさんの汗を流された裏方の皆々さま、素敵な時間を、本当にありがとうございました、誠に素晴らしい番組でした。私は決して忘れません。
 これからも 皆さまが それぞれの畑で、大いにお力を発揮されることを祈念しております。どうぞご自愛ください。
NHK-FM きらクラ !

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