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Getz Children Of The World (CBSソニー 25AP-1696 )
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午後のジャズ喫茶 「カフェ ソッ・ピーナ」から
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ジェイムス・テイラー 72歳のバースデイに アメリカン・スタンダードを聴く
ジェイムス・テイラー James Taylor 72歳のバースデイに、
新作「アメリカン・スタンダード 」American Standard を聴く。


 今晩は、“スケルツォ倶楽部発起人(夫のほう )です。
 三日前の 3月12日は 現代アメリカの偉大なシンガー=ソングライター、JTこと ジェイムス・テイラー(1948- )72歳の誕生日でしたね。
 タイムリーなことに、JTは つい先月 久々に新作をリリースしたばかり。
 その夜、私は 彼の健康を祝い乾杯しながら、そのニュー・アルバム「アメリカン・スタンダード 」American Standard を ここ カフェ ソッ・ピーナで、独り静かに聴こうと考えていました。しかし そこへ・・・。

(店の入口のカウベルが鳴り、ドアが開く )

 「今晩は マスター! ね、ジェイムス・テイラーの新譜 聴かせてー 」

 「何だよ、またオマエか。騒々しいな、今宵は せっかく静かに 独りでJT(ジェイムス・テイラー )の歌声を聴こうと思っていたのに 」

 「あ、何よ、その態度は? 先月 ソッ・ピーナのマスターの正体が アナタ自身(=発起人 夫 )だったという真相 には ちょっと驚いたけど、でも それが何だっていうのよ。一歩この店に入ったら、今までどおり 非日常な“大人の関係”を続けようね ♡ ということで、その後 夫婦で意見が一致したことをお忘れでないこと? 」

 「え? そ、そうだっけ? 」

 「ほら、お店では 言葉使いにも気をつけないと ! 」

 「すみません、忘れてました 」

 「ここは どこかしら? 」

 「(メガネをかける )はい、いつものように“マスター”とお呼びください 」

 「(笑 )ハイボールを 濃いめでお願いね 」

 「かしこまりました 」

 「あ、おつまみのカプレーゼも 一人前追加で。ちゃんとオリーヴ・オイルを垂らしてよ、“マスター” 」

 「≪タメイキ≫ JTの繊細なアコースティック・ギターの爪弾きには、男の哀愁を感じるなあ 」

以下は、そんな 私“発起人”(=マスター )の独り語りとなります。

(小)ジェイムス・テイラー アメリカン・スタンダードJames Taylor American Standard
ジェイムス・テイラー James Taylor
「アメリカン・スタンダード 」American Standard

収録曲:マイ・ブルー・ヘヴン、ムーン・リヴァー、ティーチ・ミー・トゥナイト、 アズ・イージー・アズ・ローリング・オフ・ア・ログ、オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ、シット・ダウン・ユー’アー・ロッキン’ザ・ボート、ニァネス・オヴ・ユー、ユー’ヴ・ゴット・トゥ・ビー・ケアフリー・トート、ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド、ペニーズ・フロム・ヘヴン、マイ・ハート・ストゥッド・スティル、オール・マン・リヴァー、イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン、飾りのついた四輪馬車
リリース:2020年 2月28日
レーベル:Fantasy/Concord Records(国内ユニバーサルミュージック UCCO-1219 )


 届いたばかりのアルバムを 最初に手にとって、印象的だったのは やはりジャケットに映るジェイムス・テイラーの年輪を重ねたポートレイトでした。私が連想したのは、アメリカの画家アンドリュー・ワイエスが描いたリアリズムな肖像画 - 偉大な老シンガーの顔に 深く刻まれた皺は、そのまま彼の人柄と これまでの長い道のり、重ねてきたキャリアを物語っているようです。

 アルバムのプロデュースは、おなじみデイヴ・オ’ドネル Dave O'Donnellとジェイムス・テイラー自身、さらに 今回は ギタリスト、ジョン・ピザレリ John Pizzarelli が加わっています。
(左から )ジェイムス・テイラー、デイヴ・オ’ドネル、ジョン・ピザレリ
▲ (左から )ジェイムス・テイラー、デイヴ・オ’ドネル、ジョン・ピザレリ

レコーディングに参加したミュージシャンの顔ぶれ
Steve Gadd
スティーヴ・ガッド(ドラムス )Steve Gadd
 ジェイムス・テイラーとの共演歴も長きに渡り、今や比類なき存在となった偉大なガッド。その功績の一端は スケルツォ倶楽部、スティーヴ・ガッドを讃える。 をご参照ください。
 以下、参加メンバーのうち ジミー・ジョンソン Jimmy Johnson(ベース )とラリー・ゴールディングス Larry Goldings(キーボード )、ウォルト・ファウラー Walt Fowler(フリューゲルホーン )らは、同時に御大スティーヴ・ガッド・バンドの中軸メンバーでもあります。もとより彼らはジェイムス・テイラーとの活動を通して音楽的ネットワークを構築したもので、今や互いに切っても切れない関係に至っています。
⇒ 過去記事 アルバム「ガッドの流儀 」Gadditude - 感想の回 でも詳しく。

John Pizzarelli Jimmy Johnson Larry Goldings
ジョン・ピザレリ(ギター、兼プロデュース )、ジミー・ジョンソン(エレクトリック・ベース )、ラリー・ゴールディングス(キーボード )

Stuart Duncan Jerry Douglas Viktor Krauss
スチュアート・ダンカン(フィドル )Stuart Duncan、ジェリー・ダグラス(ドブロ・ギター )Jerry Douglas、ヴィクター・クラウス(アコースティック・ベース )Viktor Krauss(は、アリソン・クラウスの兄!だそう )

ウォルト・フォウラー(フリューゲルホーン )Walt Fowler Lou Marini Luis Conte
ウォルト・ファウラー(フリューゲルホーン )、ルー・マリーニ(クラリネット、サックス )Lou Marini、ルイス・コンテ(パーカッション )Luis Conte

James taylor コーラス Andrea Zonn
▲ ヴォーカル(左から )アーノルド・マッカラー Arnold McCuller、ケイト・マルコウィッツ Kate Markowitz、ドリアン・ホリー Dorian Holley & アンドレア・ゾン Andrea Zonn(彼女は、フィドルの腕前も大したもの )


James Taylor Youve Gat A Friend_Warner Bros. Records James Taylor_スケルツォ倶楽部 JT_James Taylor CBS 
 さて、ジェイムス・テイラーは、どなたもご存知のとおり 今や現代アメリカを代表するシンガー=ソングライターです。その基本的スタイルは、多様性に富むアメリカ伝統音楽のもつ広範な特性をバランスよく網羅した素晴らしい個性・・・。
James Taylor (Live)CBS ジェームス テイラー クリスマスアルバム モンタナ ジェイムス・テイラー
 すなわちフォーク、ロックはもちろん、ジャズ、カントリー、ブルース、R&B、ゴスペル、ポップ、さらには中南米音楽のリズムまで、アメリカの音楽の要素をほぼすべてバランスよく消化(昇華 )し、良酒が時間を経て熟成の香りと味わいを増すように その音楽的成長に洗練の度も深め、今日に至っています。全米で幅広い世代から絶大な支持を得ているのも 当然でしょう。

ジェイムス・テイラー スウィート・ベイビー・ジェイムス WB Stephen Collins Foster
▲ JTことジェイムス・テイラーは、その記念碑的名盤「スウィート・ベイビー・ジェイムス 」(1970年)の一隅に “アメリカ音楽の父” とされるフォスターの「オー、スザンナ 」をさらりと採り上げていましたが、誰をもハッとさせる意外なコードワークをギターで爪弾きながら、よく知られた民謡調のメロディを事もなげに口ずさんでみせる姿・・・ 一例を挙げれば、そういうことです。

 そんなJTのずっと変わらぬ魅力を挙げるとしたら、やはり、あの印象的な声の質ですね。暖かく包容力のあるヴォーカル・・・。もちろんメインで歌う場合は 言うまでもなく、聴いていて その上手さを一層実感するのは、他のシンガーと合わせたときでしょう。

James Taylor and JD Souther Her Town too CBS (左から )ポール・サイモン、アート・ガーファンクル、ジェームス・テイラー(ワンダフル・ワールド )
▲ J.D.サウザーとのデュエット曲“Her Town Too”「憶い出の街 」とか、サイモン&ガーファンクルとの共演「(ホワット・ア)ワンダフル・ワールド 」とか・・・ 憶測ですが、後者のレコーディング・スタジオで JTは 初めてスティーヴ・ガッドと出会ったのではないでしょうか?

そしてまた、他のシンガーの歌唱を支援するバッキング・コーラスに回った場合も これが・・・また素晴らしいんですよ。

キャロル・キング カーネギーホール、ライヴ CBS ジェイムス・テイラーとキャロル・キング
▲ キャロル・キングの歴史的な「1971年 カーネギー・ホール・コンサート 」の大詰めにサプライズ・ゲストとして登場、「ユー’ヴ・ガッタ・フレンド 」と「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー 」に始まるキング=ゴフィン・メドレーで共演、比類なき立ち位置で主役をサポートしました。

カーラ・ボノフ 囁く夜(CBS) 
▲ カーラ・ボノフの透明な名唱が忘れがたいトラッド・ナンバー「ウォーター・イズ・ワイド 」で背景に立つJTの優しい歌声とギターの存在感は - もはや大自然そのものです。

愛をいつまでも カーリー・サイモン&ジェイムス・テイラー Devoted To You
▲ そうそう、忘れちゃイケナイ。元妻だったカーリー・サイモンと まだラブラブだった頃(1978年 )のデュエット名曲「愛をいつまでもDevoted To You  - ここに醸し出される まろやかな味わいのハーモニーは忘れ難く、これに先立って ヒットした同じコンビによるシングル曲「モッキン'バード 」よりも 個人的には遥かに好きですね。尚、この個性的なドラムスが刻む さり気ないマーチング・リズムは、誰が聴いても スティーヴ・ガッド のプレイだと判るでしょう。

Livingston Taylor Life Is Good Livingston James Taylor (1992)
▲ さらに実弟リヴィングストン・テイラーとのデュオ・ナンバー「シティ・ライツ 」から無限に滲み出してくるような無類の暖かさ - JTのヴォーカルは決して出しゃばることなく、常に複数の声のアンサンブルの中へ自然に溶けこむと、あたかも複数のカラーが一本の虹の色を構成するように ひたすらサウンドを美しく仕上げることに貢献します。

 その活動のかなり初期から、JTは 自身のオリジナル・アルバムの中(に限らず、セッション企画盤も含めるとさらに数多くの )スタンダード曲を 今までカヴァーしてきました。

James Taylor Thats Why Im Here CBS James Taylor - HOURGLASS James Taylor Other Covers
▲ ランダムに思いつくだけでも、前述のフォスター歌曲の他、リチャード・ロジャース(=ハート )の「マイ・ロマンス 」、ディーン・マーティンナット・キング・コールらの歌唱で知られる名曲「ウォーキング・マイ・ベイビー・バック・ホーム 」、ロジャース(=ハマースタインⅡ )によるミュージカル「オクラホマ ! 」開幕一曲目「美しき朝 」といった選りすぐりの歌唱が浮かびます。

ディズニー・トリビュート「眠らないで」
▲ クルト・ワイルモンクの企画盤に続いて1988年に鬼才ハル・ウィルナーが放ったディズニー映画音楽トリビュート・アルバムStay Awake”(邦題:「眠らないで 」 )。JTは「ピーターパン 」から“Second Star To The Right”(邦題:「二番目の星は右に 」 )で参加、巧みに口笛も披露していましたね。

Sound Track from The Motion Picture “A League Of Their Own” CBS
▲ JTの注目すべきスタンダード曲レコーディングは、1992年公開の映画 A League Of Their Own(邦題「プリティ・リーグ 」、ペニー・マーシャル監督、出演 / トム・ハンクス、ジーナ・デイヴィス、ロリー・ペティ、マドンナetc. )のオムニバス・サウンド・トラック盤の中にも発見しました(JTのほか、キャロル・キング、アート・ガーファンクル、ビリー・ジョエル、マンハッタン・トランスファーという錚々たる顔ぶれが 1930~40年代の米名曲を持ち寄って歌います )。そこでJTは、「ペーパー・ムーン 」と“I Didn't Know What Time It Was”「時さえ忘れて 」の二曲を歌っています。
 当時のJTの片腕だった名ピアニスト、ドン・グロルニックのほか、ジェイ・レオンハート(ベース )、デヴィッド・スピノザ(ギター )、ロニー・ツィト(ドラムス )というジャズ系のプレイヤーの他、「ペーパー・ムーン 」では 後にアルバム「アパラチアン・ジャーニー 」でフィーチャーされることになるマーク・オ’コナー(ヴァイオリン )も参加していました。
 この演奏は、今日聴く「アメリカン・スタンダード 」企画を 20年近くも先取りする秀逸なもの。こんな(って、失礼? )サントラ盤の中に埋もれ忘れ去られてしまうとしたら、あまりにも惜しいレコーディングだと思うものです。

 はい、そうなんです。正直に告白すると、私 “スケルツォ倶楽部発起人ジェイムス・テイラーが歌うスタンダード曲を聴くことが 実は 何よりも好きで、特に最近は JT自身が作曲する新しいオリジナル・ナンバーを聴くよりも楽しみにしている・・・ と、すみません、そんな「邪道な 」ファンを自認する者の一人です。
 愛用のウォークマンにも、上記の音源たちを集めては「ジェイムス・テイラーが歌うスタンダード&カヴァー集 」をプレイリストにまとめて日常持ち歩き、好んで聴いているほどw
 そんなJTの新譜が、スタンダード・ナンバーのカヴァーだけで まるまる一枚 - と聞いて、そんな待望久しい企画盤の到来に、私 発起人、もはや歓喜の涙に咽ぶしかないではありませんか。はい、それでは いよいよニューアルバム 「アメリカン・スタンダード 」 American Standard を ご一緒に聴きましょう。

「・・・ ここに収められているのが アメリカが誇る、“アメリカのスタンダード”楽曲であることは疑いようがない。そしてもう一つ、僕らの子ども時代、台所の白いホーロー製流し台の蛇口と蛇口の間には、クールなブルーの文字で こう書かれていたではないか、American Standard と。(ジェイムス・テイラー / 訳 丸山京子さん - 国内盤CDライナーより )

ウォルター・ドナルドソン Walter Donaldson(マイ・ブルー・ヘヴン)
1. マイ・ブルー・ヘヴン
My Blue Heaven

 「メイキン’フーピー 」や「ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー 」を作曲した ウォルター・ドナルドソン Walter Donaldson(1893 - 1947 の1927年作品。彼は、アーヴィング・バーリンの音楽出版社の出身だそう。
 「これ “私の青空”よね。アルバムのオープニングに相応しく、晴れやかで快活 」
 「そう、榎本健一(エノケン )から大滝詠一まで、わが国でも幅広い歌手がカヴァーするスタンダードJTヴァース から丁寧に歌う。終始スチュアート・ダンカンのフィドルがオブリガート的に絡み、巧みにソロもとる ノスタルジックな趣向 」
妻 「スティーヴ・ガッドのブラッシュが サクサク控えめに刻むリズムが気持ち良いね 」


ヘンリー・マンシーニ Henry Mancini(1924 - 1994 )
2. ムーン・リヴァー
Moon River

 名曲「ムーン・リヴァー 」は1961年、映画「ティファニーで朝食を 」の主演を務めるオードリー・ヘプバーンの 実は 狭い声域に合わせて ヘンリー・マンシーニ Henry Mancini(1924 - 1994 がつくった屈指の名旋律。
詳しくは、スケルツォ倶楽部の過去記事(アフター・シュトラウス
⇒ 1961年 ヘンリー・マンシーニ 「ムーン・リヴァー  をお読みください。

 「JTのアコースティック・ギターが 静かに打ち寄せる波のように B♭→A♭をくり返すイントロを聴いていたら、わたし“Something In The Way She Moves”を 思いだしちゃった 」
 「たしかに、いかにもJTらしい 聴き慣れたコードワークがうれしい 」
 「途中、鍵盤ハーモニカで ソロをとっているのは ラリー・ゴールディングスね 」
鍵盤ハーモニカJames Taylor - Live at iHeartRadio 2020 NYC 1080p_Larry Goldings
▲ ライヴ iHeartRadio 2020 NYC で ソロを吹く ラリー・ゴールディングス


ジーン・デ=ポール Gene Vincent de Paul (1919 – 1988 ) Teach Me Tonight James Taylor
3. ティーチ・ミー・トゥナイト
Teach Me Tonight

 名曲「四月の思い出 」や「ユー・ドン'ト・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ 」の作曲者 ジーン・デ=ポール Gene Vincent de Paul (1919 - 1988 ) が1953年に作曲、翌年ジョー・スタッフォードの歌唱でヒットした名曲。ダイナ・ワシントンからフランク・シナトラ、フィービ・スノウまで、幅広く非常に多くのシンガーにカヴァーされています。
 「ここでのウォルト・ファウラーのフリューゲルホーン・ソロは、(おそらく)彼自身によるミューテッド・トランペットの音をオーヴァーダビングでわざわざ重ねてレコーディングされているように聴こえるんだが、果たして? 」
 「どうかしら。今年1月、JTのニュー・アルバムがリリースされるとの予告に伴って、ネット上でも最初に公開されたミュージック・ヴィデオが、コレだったわね。すでにもう何十回観たことか・・・ 」


M. K.ジェローム M. K. Jerome(1893-1977 )
4. アズ・イージー・アズ・ローリング・オフ・ア・ログ
As Easy As Rolling Off A Log

 ハリウッドで活躍したティンパン・アレーの作曲家 M.K.ジェローム M.K.Jerome(1893-1977 が アニメーション映画用に作った唄が オリジナルです ↓ 」

 彼の作曲で 今日残っている作品は少ないですが、映画「カサブランカ 」の“リックの店”で黒人ピアニスト“サム”を演じるドゥーリー・ウィルソンがピアノを弾きながら陽気に歌っていた、あの賑やかな 「ノック・オン・ウッド 」を ご記憶の方は多いのではないでしょうか(注*『アズ・タイム・ゴーズ・バイ 』のほうではありません )。
 「腕利きの名手ジョン・ピザレリが刻むエレクトリック・ギターとJTのアコースティック・ギターとのコンビネーションが 気持ち良いね 」
 「ルー・マリーニのクラリネット・ソロが旧き良きスウィング時代のノスタルジーを再現するのに貢献しているよね。特に、エンディングでJTの口笛とユニゾンで重なるところなど、狙いも秀逸 」


フレデリック・ロウ Frederick Loewe(1901- 1988 )
5. オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ
Almost Like Being In Love

 フレデリック・ロウ Frederick Loewe(1901 - 1988  はオーストリア系の作曲家。作詞家アラン・ジェイ=ラーナーとのブロードウェイ・ミュージカルの傑作「マイ・フェア・レディ 」で知られます。
 「この歌は、1947年のミュージカル『ブリガドゥーン 』の中に登場する、知る人ぞ知る名曲だ 」
 「ロウが ウィーンで音楽教育を受けたと聞かされれば、なるほど独墺の伝統を感じさせる、とてもクラシカルで素敵なメロディ・ラインだわ。JTったら、よくぞ こんな素敵な一曲を探し出してきたものだなあと感心しきり 」


フランク・レッサー Frank Loesser(1910 - 1969 )
6. シット・ダウン、ユー'アー・ロッキン'ザ・ボート
Sit Down, You're Rockin' The Boat

 才人フランク・レッサー Frank Loesser(1910 - 1969 )もドイツ系移民の出身。ティンパン・アレーで非常に多くの作品を残しています(一説では700曲以上 )。JTクリスマス・アルバムの中でナタリー・コールとデュエットした「外は寒いよ 」、マイルスの演奏が有名な「イフ・アイ・ワー・ア・ベル 」、コルトレーンの演奏で有名な「インチ・ワーム 」、フィル・ウッズの名演で知られる「オン・ア・スローボート・トゥ・チャイナ 」、チェット・ベイカーのドキュメンタリー映画のタイトルにも使われた「レッ'ツ・ゲット・ロスト」など、名曲も数多いです。
 「これは ユーモラスな夢の唄なのね 」
 「とてもめずらしい楽曲構成に注目。正直 初めて聴いた時、穏やかなヴァースから始まったんだと思っていたら、実はそうじゃなかった。天国へ向かう静かなボートを描く前半パートこそゆっくり歌われるが・・・ 」
 「舟の上で立ち上がってボートを揺らす男の存在に、他の乗客たちが慌てて『転覆するから座ってくれ 』と頼みこむ描写が、後半のスウィンギーなロッキン'パート(笑 )というわけ 」
 「これを三度繰り返すという、クルト・ヴァイルの『アラバマ・ソングブレヒト/詞 )』とか、クレイジーキャッツの『ハイそれまでョ 』の 曲づくりを先どりしたような 類例も少ないユーモラスな変則構成の曲だったんだ。実に楽しい 」
 「JTも 歌い分けが巧いよね 」


ホーギー・カーマイケル Hoagy Carmichael(1899 - 1981)
7. ザ・ニアネス・オブ・ユー
The Nearness Of You

 ジャズ・スタンダード「スターダスト 」、「わが心のジョージア 」、「スカイラーク 」、「ロッキン'チェア 」などで知られる 偉大なメロディ・メイカーの一人、 ホーギー・カーマイケル Hoagy Carmichael(1899 - 1981による名曲です。

 「このアルバム中で 最も傾聴すべき曲のひとつ 」
 「ジェイムス・テイラーが、ワーナーBros.時代に放ったヒット曲『寂しい夜 』で 見事なサックス・ソロを吹いていたテナー奏者マイケル・ブレッカーが、白血病で亡くなる 7年前 - 今度は逆に - ジェイムス・テイラーのことを 自己のアルバム『ニアネス・オブ・ユー 』のタイトル・ナンバーを歌うゲスト・ヴォーカリストとして スタジオに招いたのよね 」
 「ブレッカーJT・・・ あれこそ記憶に残る素晴らしい共演だったなあ。それから早20年が経過、想い入れもひとしおだったろう。ブレッカーのアルバムにおけるJTの歌唱も もちろん素晴らしかったけど、その思い出のナンバーを 今回ここで 再び採り上げたことには 注目せざるを得ない 」
 「じっくり聴き比べると、イントロのリフはまったく新しいものだけど、シンコペーションを活かす独特なリズムは ブレッカー盤と共通するところもあるよね 」
 「ソロ奏者を、敢えてサックスではなく、ウォルト・ファウラーフリューゲルホーンを選ぶなど、細部にこだわりも感じる 」


リチャード・ロジャース Richard Rodgers(1902 - 1979 )
8. ユー'ヴ・ゴット・トゥ・ビー・ケアフリー・トート
You've Got To Be Carefully Taught

 リチャード・ロジャース Richard Rodgers(1902 - 1979 は、作詞家ロレンツ・ハートオスカー・ハマースタイン二世とのコンビによる創作で知られ、特にミュージカル「オクラホマ ! 」、「南太平洋 」、「王様と私 」、「サウンド・オヴ・ミュージック 」は傑作。
 「ミュージカル『南太平洋 』は、『魅惑の夜 』、『バリ・ハイ 』、『ハッピートーク 』など全編名曲が目白押し。当ナンバーは、白人に差別される側にとっての『用心深い教え 』という邦題によって従来知られてきたけど、これをアコースティック・ギターがリズムを刻む、穏やかなワルツにしてしまうというJT版アレンジの斬新さには 驚かされる以上に、気持ちが和(なご)むなあ 」
 「オリジナルのミュージカル・サントラ盤の同曲と比べたら、ホント全然違うアレンジよね 」
 「単音で音数も少ないオルゴールのような響き(シンセサイザーか、フェンダー・ローズか不明)が印象的だ 」
 「もうひとつ、オブリガートをプレイしている弦楽器の音、他にクレジットがないので 多分スチュアート・ダンカンのヴァイオリンしかないと思うんだけど、いくつかの音域が ヴィオラ並みに低いのよね。音数も少ないし、もしかしたら意図的に弦のチューニングを緩めて音程を下げるスコラダトゥーラ(変則調弦 かも・・・って? 」



ビリー・ホリデイBillie Holiday(1915 – 1959)
9. ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド
God Bless The Child
 
 酷い人種差別と貧困との負荷に生涯苦しみ抜いた ビリー・ホリデイ Billie Holiday(1915–1959 のオリジナル曲。彼女がテーマにした「持てる者はさらに与えられて ますます豊かに、持たざる者は持っているものまでをも取り上げられるであろう 」とは、新約聖書の中の言葉です。キリスト・イエスの数ある言葉の中でも、私にとっては難解な部類で、宗教関係のかたは いろいろな解釈をしておられますが、今まで納得できるものに出会ったことはありませんし、正直 私自身も この聖句の真意はわかりかねます。
 麻薬中毒と医療機関からの治療拒否、逮捕にキャバレーカード(免許 )の失効と、絶望的な環境のどん底で、恐らく最後まで自分自身を「持たざる者」と意識せざるを得なかったであろうビリーの祈りの声は、果たしてキリスト教の神の身許にまで届いたのでしょうか。ただ少なくとも彼女には、神から与えられし音楽的な才能はあった筈ですから「わたしにはわたしのものがある 」と、自分の足で立ってみせてほしかったです。
 ブルージーなジョン・ピザレリのエレクトリック・ギターが支配するサウンドに対し、JTの曇りのない歌声は 大地に光を差すような明るさで、救われます。


アーサー・ジョンストン Arthur Johnston(1898-1954 )
10. ペニーズ・フロム・ヘヴン
Pennies From Heaven

 アーサー・ジョンストン Arthur Johnston(1898-1954 が1936年、ジョニー・バークの歌詞に作曲、同年最優秀オリジナル・ソング・アカデミー賞にノミネートされるなど、高い評価を得ました。ビング・クロスビー、ビリー・ホリデイ、ルイ・アームストロング、フランク・シナトラなどがカヴァーしています。
 JTは、ここでもヴァースから丁寧に歌い始めます、「スタンダード曲がカヴァーされる際には このイントロ部分ヴァースを指す )はカットされることが多い。しかしむしろ目新しいと思い、僕らは出来る限り、それらを入れることにした(CDライナーより - ジェイムス・テイラー / 丸山京子 訳 )」
 アルバム冒頭の「マイ・ブルー・ヘヴン 」にも繋がる雰囲気、ガッドが刻む抑制されたリズム、途中ラリー・ゴールディングスによるオルガンの軽妙なサウンドはワルター・ワンダレイを思い起させる爽やかさです。


リチャード・ロジャース Richard Rodgers(1902 - 1979 )若い頃
11. マイ・ハート・ストゥッド・スティル
My Heart Stood Still

 「ケアフリー・トート 」に続き、再び リチャード・ロジャース Richard Rodgers 作品、ロレンツ・ハートの歌詞につけられた1927年の楽曲です。
 ビル・エヴァンススタン・ゲッツと共演した録音、チェット・ベイカーのリヴァーサイド盤などが印象に残っています。
 この曲も短いヴァースから始まります。 コーラスに入るとギターで何度も繰り返される、シンコペートが特徴のリフ・パターンが気持ちよく、どこか催眠効果まで魅力的。スチュアート・ダンカンによるフィドルのオブリガートも一緒に動きます。さらに、ルイス・コンテのコンガが南米風の温かいリズムを漂わせてくれます。最後に聴こえてくるJTの口笛も素敵。


ジェローム・カーン Jerome Kern(1885 - 1945 )
12. オール'マン・リヴァー
Ol' Man River

 「オール・ザ・シングス・ユー・アー 」、「煙が目に染みる 」などで有名な ジェローム・カーン Jerome Kern(1885 - 1945 が、オスカー・ハマースタイン二世の歌詞(脚本も )に作曲したミュージカル「ショウ・ボート 」中の一曲で、老いた黒人荷役が独り ミシシッピ川岸で歌う 流れゆく川を 老人の歩んできた人生に譬えた、深みを感じさせる名曲です。
 ヴァースのイントロから始まりますが、この曲に限っては 殆どJTはアコースティック・ギター一本だけで、語るがごとく歌います。クルーナー・ヴォイスの低音で入ってくるって、JTには めずらしい歌唱ですよね。
 コーラスに入ると、JTが爪弾くギターの低音パートのフレーズに、かつての「ウォーキングマン 」を思わせるベース・フレーズを さらりと挿入しているのも聴きとれます。最後の最後で、再び口笛がちょっぴり登場・・・。

 そういえば、2012年タングルウッド音楽祭で、ジョン・ウィリアムスが指揮する ボストン・ポップス管弦楽団をバックに従えた ジェイムス・テイラーが、この「オール'マン・リヴァー 」を、「シャル・ウィ・ダンス?」や「オーヴァー・ザ・レインボウ 」などと熱唱したことがありましたっけ、あれも 素晴らしかったですね。


ハロルド·アーレン Harold Arlen(1905 - 1986 )
13. ペーパー・ムーン
It's Only A Paper Moon

 「絶体絶命(Between the Devil and the Deep Blue Sea )」、「ブルース・イン・ザ・ナイト 」、「降っても晴れても(Come Rain or Come Shine )」、「イル・ウインド 」、「ストーミー・ウェザー 」、「ワン・フォー・マイ・ベイビー 」、そして「虹の彼方に(Over the Rainbow )」など、数多くの名曲を量産した ハロルド·アーレン Harold Arlen(1905 - 1986 が、1933年ビリー・ローズエドガー・Y.ハーバーグ共作の歌詞に作曲したスタンダード・ナンバーです。
 この曲の題名をタイトルに据えた映画「ペーパー・ムーン 」が1973年に公開され、劇中で挿入歌としても使われたため、当時 歴史的にも異例のリヴァイヴァル・ヒットとなりました。
 前述した映画「プリティ・リーグサウンド・トラック盤(1992年)でJTはすでに一度 このナンバーを採り上げていますから、今回は約28年ぶりの再録音ということになります。かつてのサントラ盤では、フィドルを加えたピアノ・トリオに 4ビートでスウィングするリズムでしたが、本アルバムではJT自身のヒット曲「シャワー・ザ・ピープル 」を思わせる横ノリで南国的なムードに溢れた、また素敵なアレンジです。
 ところで、この間奏で使われているハープのような(?)サウンドが 何の楽器を使っているのか謎です。CDライナーには それらしい楽器のクレジットも奏者の名前も見当たらず、一緒に鳴っているのはギターだけではありません、エフェクターは浅くディレイがかかってるようですが・・・ このアルバム自体アコースティック楽器を中心に ここまで来ているので、このナンバーにだけ突然シンセサイザーを使うとは考えにくく、気になって仕方ありません。どなたかご存知のかた、いらしたらヘルプ !

追記 / 3月20日
その後、真相判明 ⇒ やっぱりシンセサイザーでした。
James Taylor - Live at iHeartRadio 2020 NYC 1080p-2_Larry Goldings James Taylor - Live at iHeartRadio 2020 NYC 1080p-3_Larry Goldings
▲ はー、深読みし過ぎw 上掲ライヴ映像は iHeartRadio 2020 NYC より


リチャード・ロジャース Richard Rodgers(1902 - 1979 )
14. 飾りのついた四輪馬車
The Surrey With The Fringe On Top

 「ケアフリー・トート 」、「マイ・ハート・ストゥッド・スティル」に続いて、三たび登場、リチャード・ロジャース Richard Rodgers です。作詞はオスカー・ハマースタイン二世による1943年のミュージカル「オクラホマ ! 」収録のナンバーです。私“発起人”が個人的に愛好してきた作品だったので、この度JTヴァージョンが聴けることが うれしくてたまりません。
 予想どおりJTヴァースから ちゃんと歌ってくださいます。基本的にアコースティック・ギターが中心、控えめなジョン・ピザレリのエレクトリック・ギターが必要最小限なサポートで入ってくるのみ。
馬車の飾りはシルクなの?」「馬は雪のように白いの?」って、無邪気に尋ねるパートを可愛らしく歌う、JTの愛妻キャロライン・テイラーの声が聴けるのも貴重品です(!)。

以下、二曲は 日本盤ボーナス・トラック (国内盤を買いましょう )

フレデリック・ロウ Frederick Loewe(1901- 1988 )
15. アイ'ヴ・グロウン・アカスタムド・トゥ・ハー・フェイス
I've Grown Accustomed To Her Face

 もう一曲 フレデリック・ロウ Frederick Loewe(1901- 1988 ) のナンバーを。傑作ミュージカル「マイ・フェア・レディ 」のエンディング近く、孤独をかみしめるヒギンズ教授イライザへの想いに気づき、その心情を屈折した婉曲な歌詞でつぶやくように歌う名曲。JT ヒギンズ教授を演じるのもワルくないんじゃないかなと、想像してしまいます。舞台では、この歌の後 イライザ教授の許に帰ってきて、ドラマはハッピー・エンドとなります。
Don’t tell me, I’ve grown accustomed to that face. < Don't Tell Me, I've Grown Accustomed To That(Her ) Face
 

ジュール・スタイン Jule Styne (1905-1994)
16. ネヴァー・ネヴァー・ランド 
Never Never Land

 8歳の時 ウクライナから移住、ハリウッドで活躍した天才 ジュール・スタイン Jule Styne(1905 - 1994 ) は、クリスマス・シーズンの名曲「レット・イット・スノー 」をはじめ、「イッ'ツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム 」、「アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージーリー 」、「涙が乾くまで Guess I'll Hang My Tears Out to Dry 」など数多くのスタンダード・ナンバーで有名です。マリリン・モンロージェーン・ラッセルで映画化されたミュージカル「紳士は金髪がお好き 」の作曲によっても知られ、この「ネヴァー・ネヴァー・ランド 」も 名作ミュージカル「ピーター・パン 」の中に登場する逸品です。



ジェイムス・テイラー、ライヴ at iHeartRadio 2020 NYC より
演奏曲:Carolina In My Mind、Almost Like Being In Love、Teach Me Tonight、How Sweet It Is、You Can Close Your Eyes、Something In The Way She Moves、My Blue Heaven、It's Only A Paper Moon、Mexico、Shower The People

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