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Getz Children Of The World (CBSソニー 25AP-1696 )
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午後のジャズ喫茶 「カフェ ソッ・ピーナ」から
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美味しんぼSALT PEANUTS が、
スケルツォ倶楽部の カフェ「ソッ・ピーナ 」店名の由来? 
 

スケルツォ倶楽部 美味しんぼ ソルトピーナッツ

今日の文章は、前回カフェ ソッ・ピーナのマスターは 発起人(夫 )が演じる一人二役だったの続きです。
未読の方は まず ⇒ こちらから


    「『美味しんぼ 』 知ってる? 」

わたし 「また突然ね。グルメ漫画だっけ? アニメでならTVで観たことあるよ、「Dang Dang 気になる」でしょ 」

   「実は ここ、カフェ ソッ・ピーナの店名は、その『美味しんぼ 』初期の某回に 敬意を表しての命名だったんだ 」

わたし 「(きわめて冷静に )ふんふん 」

   「オイオイ、驚きもなく 興味も薄いって反応だな。店名の由来を 自分で訊ねておきながら? 」

わたし 「わたし、もうしばらく 何を聞かされても、前回以上にびっくりすることは 多分ないと思うわ 」

   「・・・ ええと、そういうわけで ここから以下は、カフェ ソッ・ピーナマスター改め、私 “スケルツォ倶楽部発起人のほう )の ひとり語りとなります ― 」   

 さて、「美味しんぼ 」は、雁屋哲(原作 )と花咲アキラ(作画 )による、わが国の代表的なグルメ・コミックでした。たいへん有名な作品なので、多くの方が ご存知と思います。
 1983年頃から 小学館「ビッグコミック・スピリッツ 」誌に連載されていた人気漫画で、私 発起人は 当時まだ学生でしたが、大学の部室に立ち寄れば 常に誰かが買ってきた新しい漫画雑誌が置いてあり、おかげで リアルタイムで 第一回から毎週 目を通すことができた、そんな記憶があります。

美味しんぼ-9美味しんぼ-8
 ドラマは、大手新聞社の若い文化部記者 ▲ 山岡士郎、栗田ゆう子 が主人公。
 社の記念事業「究極のメニュー 」作りを 命じられた彼らが、毎回 日本料理から西洋料理、中華料理まで幅広く 食に関するテーマに関連する 何らかの騒動に巻き込まれます。うんちくや技術的な料理法にとどまることなく、食品添加物を含む食材の選択から 物語に登場する人物が食文化への認識をあらためるといった 人の心に及ぼす影響に至るまで、毎回ドラマティックな解決に向かうまでの流れを 無駄のない構成で とてもわかりやすく描かれていました。

 累計発行部数1億3000万部(Wiki情報に拠る )・・・って、凄い大ヒット作ですよね。その後 アニメ化され、TVドラマ、果ては 映画化までされたそうですから、この勢いは推して知るべし。素晴らしい作品でした。
 今回 調べてみたら、惜しくも現在は休載状態だそう。もしや描き尽くしちゃったんでしょうか? 事情は詳しく存じませんが、残念ですね。

 その「美味しんぼ 」連載 比較的初期の頃の作品に、SALT PEANUTS 」(ソルト・ピーナッツ ) という一篇がありました(単行本の発売日:1986.12.17 - 第8巻「飲茶」- 第2話 )。
美味しんぼ(8巻)小学館美味しんぼ ソルトピーナッツ 表紙-1美味しんぼ ソルトピーナッツ 表紙-2

 これは めずらしくも、モダン・ジャズを題材にした回でした。
 その前に、これが描かれた背景に 当時のわが国における ジャズ・ブームの再燃があったことを 知っておかなければなりません。

 1980年代に入ると、70年代を席巻していた電化ジャズロックのリズムを採り入れたフュージョン・サウンドが 徐々に飽きられる風潮になっていました。その頃 偉大なマイルス・デイヴィスが(一時的に )引退に近い隠遁状態だったため、本来ジャズ・シーンを牽引すべき 重要な旗頭を失ったような、ある意味 空白状態にありました。
 そんな中、昔からのモダン・ジャズを愛好する層は 潜在的に多く存在していました。
 たとえば 60年代マイルスに育てられた ハービーハンコックウェイン・ショーターらによるV.S.O.P.や、初めのうち フュージョン畑の演奏家だと思われていた マイケル・ブレッカーマイク・マイニエリらが その本領を発揮したストレート・ジャズのグループ ステップスが大歓迎されたり、 チャーリー・パーカーの孫弟子を標榜するリッチー・コールが 一部で大受けしたりしていたように etc.・・・ かつてのアコースティック・スタイルのジャズ回帰が 熱烈に待ち望まれていた空気を、当時を生きていた私 発起人、肌で感じております。

 そんな、まさしく機が熟していたところへ、ニュー・オーリンズ出身の 天才ウィントン・マルサリス(トランペット )が颯爽と登場。80年代、一気にオーソドックスなフォービート・ジャズ再興への追い風に吹かれたと言えるでしょう。
Wynton Marsalis ジャズ・メッセンジャーズ
▲ 若き日のウィントン・マルサリス、右は 80年代初頭のアートブレイキー & ジャズ・メッセンジャーズ

 50年代クリフォード・ブラウン以来、80年代当時は 若手ミュージシャンの登竜門的な老舗バンドになっていた アート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズから、この時期 注目すべき多くの若手ミュージシャン(マルサリス兄弟を筆頭に、テレンス・ブランチャード、ドナルド・ハリソン、ボビー・ワトソン、マルグリュー・ミラー、ジェイムス・ウィリアムス、ロニー・プラキシコ etc. )が華々しく巣立ってゆきました。
 彼らは、先人たる偉大なジャズ・ミュージシャンが築いた 文化としてのモダン・ジャズの伝統継承することを自覚していました。その他 ウォレス・ルーニーケニー・ギャレットといった若手の活躍も忘れられません、彼らによって80年代当時のジャズ・シーンは、大いに活況を呈していたのです。

▼ 以上が、最初の一コマの背景です。
美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー01

 主人公 山岡が 友人の三谷栗田らを連れだって、渋谷のライヴハウスで モダン・ジャズの生演奏を楽しんだ後、昔 通った路地裏の古いジャズ喫茶SALT PEANUTS(ソルト・ピーナッツ ) 」に ふらりと立ち寄るところから 物語は始まります。
美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-02

 ジャズ喫茶を経営する初老の主人 喜多は 久しぶりに来店した山岡らを歓迎、彼は常連だった昔なじみの客の顔は名前ばかりか 音楽の趣味まで すべて記憶しています。

美味しんぼ 追加-1 美味しんぼ 追加-2
▲ これが 店名にして 店の名物ソルト・ピーナッツ

 昔からの この店の名物こそ、香ばしいソルト・ピーナッツ(バタピー )を盛った一皿でした。
 店主 喜多は、常に無農薬の新鮮な落花生を仕入れることに気を配ってきました。彼は、山岡らを厨房に招くと 目の前で手際よく調理してみせます。喜多は、客に出すソルト・ピーナッツは 作り立てにこだわっており、時間の経ったソルト・ピーナッツが有害であるというアメリカの食品医薬品局の情報まで知っています。さりげない、そんな台詞が 彼の料理に対する真摯な姿勢を 読者に伝えます。

 この店の名物が、一般に浸透しているバタピーという呼び名ではなく 「ソルト・ピーナッツ 」である理由、また それを店名に冠する こだわりのうんちくが、山岡 三谷によって、初めて来店した栗田らに語られる、重要なコマです。
美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-03

バド・パウエル チャーリー・パーカー ディジー・ガレスピー チャーリー・ミンガス マックス・ローチ
▲ (左から )バド・パウエル(ピアノ )、チャーリー・パーカー(アルト・サックス )、ディジー・ガレスピー(トランペット )、チャーリー・ミンガス(ベース )、マックス・ローチ(ドラムス )

ジャズ・アット・マッセイホール(DEBUT) 美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-04
ジャズ・アット・マッセイ・ホール
演奏曲:ウィー(アレンズ・アレイ )、ホット・ハウス、チュニジアの夜、パーディド、ソルト・ピーナッツ、オール・ザ・シングス・ユー・アー ~ 52丁目のテーマ
実況録音:1953年5月15日 トロント、マッセイホール
音盤:Debut(ビクター VDJ-1680 )
 
 L.P.でオリジナル・リリースされるに際し、困ったことに チャーリー・ミンガスが 自分のベースの音を大きくオーヴァーダビングしてしまったため 聴けるサウンドは いびつで劣悪なものになってしまいました。現在 私の手元に残っているCD は、後から加えられた音を払拭して補正された - という うたい文句で再発されたディスクです。が、やはり冴えないことに変わりはありませんが、今となっては ミンガスの主張を聴ける貴重な版という意味で、懐かしい L.P.の音を もう一度聴き直してみたくなります。
 そんな音質の問題も乗り越え、「ソルト・ピーナッツ 」は迫真の名演。紹介のアナウンスも兼ねたパーカーがブロウする素晴らしいアルト・ソロの背後で、おどけたガレスピーの衝動は止まらなくなり、舞台上をオフ・マイクなのにジャンプしながら狂ったように「ソッ・ピーナッ ! 」、「ソッ・ピーナァーッ ! 」、「イエーッ ! 」って絶叫してるところ・・・ 完全にイッちゃってます。自分のソロになると 多少落ち着きを取り戻しますが。続くパウエルのピアノ・ソロ、もう少しで往年の輝きを取り戻せる勢いなのになあ、惜しい・・・ 今ひとつ まとまりがないんだよなあ。ローチの凄味のあるドラムス・ソロは いつもながら絶好調です。

 しかし、喜多は、何を思ったか 山岡三谷に そんな店の大事なレコード・コレクションを 譲ると言いだすのです。

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-05 美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-06

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-07

バド・パウエル Vol.2 Blue Note バド・パウエル Vol.1 Blue Note
 山岡には バド・パウエル(ピアノ)トリオによる ブルー・ノートのLP 2枚が渡されます。特に、Vol.2 のジャケット(左 )は レーベルを象徴する フランシス・ウルフ(写真)による最高傑作との声も高い、有名な一枚。

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-08  美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-09
 ここに出てくる 三谷に渡されたコルトレーン(ディジー・ガレスピー名義 )のレコードは、マニアックすぎて マスター改め 私 発起人 )も 今まで 見たことも聴いたことも ありません。

jazz of the forties capitol
キャピトル(1949年)盤:基本的にアルト・サックスでアンサンブル要員の一人に過ぎず、ソロの出番は無し という定説の一方で、「コースト・トゥ・コースト 」という曲で 短いテナーのソロが 若きコルトレーンによる演奏なのではないか という意見も 昔から根強くあります(未聴ゆえ未確認 )。

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー-10 ジャズ・アット・マッセイホール(DEBUT)
 ・・・もとい。喜多は、貴重な「ジャズ・アット・マッセイホール 」のレコードまで手放してしまおうとしています。さすがに理由を尋ねる山岡三谷

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー -11

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー -12
 喜多の口から 苦しい店の経営事情が語られます。
 聞けば 止むを得ない理由に、山岡たちは 知恵を絞ります。

美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー -13
 
 以下、ドラマ後半の画像引用は 自粛しますが、その後 山岡らが一肌脱いで 喫茶店を立て直す、そのきっかけとなるのが 店の名物メニュー「ソルト・ピーナッツ 」だったという・・・ 一癖も二癖もある 新たな登場人物まで現れ、いかにも「美味しんぼ 」らしい 楽しい展開がみれますよ。

 ここで、若き日のが、作者 雁屋哲先生に深い敬意を感じたのは、主人公の山岡らが 一方的に喜多と 喫茶「SALT PEANUTS」を救済してあげるという、下手すると お仕着せなストーリーには 決してしなかったところです。もともと喜多が、自分で培ってきた店の名物によって お店ばかりか、彼自身をも救う、というところが この物語に深みを与えているのです。まさに「天は自ら助くる者を救う」といったところ。

マル・ウォルドロン レフト・アローン(ベツレヘム) 1595 Miles=Cannonball Something Else ソニー・クラー・ク・トリオ(ブルーノート)
 さらに秀逸な注目点を もう一つ、ドラマの中で「レフト・アローン 」(ジャッキー・マクリーン )や「サムシン’エルス 」(キャノンボール・アダレイ=マイルス・デイヴィス )、「朝日のごとくさわやかに 」(ソニー・クラーク MJQ? それとも ロリンズ? )など、ジャズスタンダード・ナンバーのタイトルが さり気なく(でもなかったか )山岡や店主の台詞の中に 織り込まれていたところも 実は、見逃せない工夫です。
バド・パウエル シーン・チェンジス(BLUE NOTE)
 特に、店主の喜多が「今となっては『クレオパトラ’ズ・ドリーム 』(バド・パウエル )だねえ 」と寂しく呟く台詞に、敢えて「はかなく美しい夢 」と いう読み仮名を わざわざ振ってみせるところ、原作の雁屋先生も 実はかなりのモダン・ジャズ愛好家でいらっしゃったのではと、深く感じ入った次第。ご興味を覚えた方は、ぜひご一読ください。

Miles Davis - Kind Of Blue 美味しんぼ ソルトピーナッツ・ストーリー -14
▲ 画像の引用:ビッグコミックス「美味しんぼ第8巻「飲茶」より
雁屋哲(原作 )花咲アキラ(作画 )小学館 BC-758



Peanuts Comics
 さて、拙ブログ スケルツォ倶楽部を (10年前のこと )始めるにあたり、この自由な空間の中に 私 発起人が愛好する世界(カテゴリー )を 勝手気ままに いくつも 創造しました。
 「架空のジャズ喫茶 」という世界も そのひとつでした。店名を考えていた時、若い頃に読んだ 雁屋哲先生の「美味しんぼ 」の 忘れられぬ一作 「ソルト・ピーナッツ」のことを ふと思い出したのです。
 さらに、私 発起人が愛好する トイピアノを弾くキャラクター、シュローダーくんが登場する スヌーピーの作者、チャールズ・シュルツ氏が 連載していたコミックの正式なタイトルも 実は ピーナッツ だったことを思い出し、その 素敵な シンクロニシティ に、啓示を得たような気になりました。
 これらに肖(あやか)って、尚且つ 「マッセイ・ホール」ライヴ盤に聴ける ディジー・ガレスピーの絶叫の発音に より近くなるようなニュアンスも込め、 カフェの店名を ソッ・ピーナ 」 としたものです。

♪ おまけ
バド・パウエル Vol.2 を手にしてご機嫌な発起人(妻)
▲ ブルーノートバド・パウエル Vol.2(復刻盤 ) を手にして、ご機嫌な発起人(妻)♪ るん

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