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「気分がふさいでいるときは、いつも 新しいレコードを何枚か買うことにしてるんだよ 」 

ロジェストヴェンスキー最期のブルックナー第5番”が
シャルク版 」なのは、何故?

ブルックナー ロジェストヴェンスキー ブルックナー「第5」Altus 
ブルックナー
交響曲第5番 変ロ長調(シャルク版 )

  第1楽章 26:02
  第2楽章 19:26
  第3楽章 11:44
  第4楽章 22:23(拍手含む )
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮 )
読売日本交響楽団
録音:2017年05月19日 東京芸術劇場、第568回定期演奏会(ライヴ )
音盤:Altus(ALT-411 )


 私 “スケルツォ倶楽部発起人が、中学生時代 初めて接したブルックナー 交響曲第5番のレコードが、クナッパーツブッシュ / ウィーン・フィル(デッカ/ロンドン)による、まさにこの「シャルク版 」だったことは 以前 話題にしました。

過去記事 ⇒ 初めてのブルックナー 第5番は 改訂シャルク版(クナッパーツブッシュ / ウィーン・フィル / 1956年 )から

 かつてモスクワ放送交響楽団と来日して ショスタコーヴィチ「第15番 」の日本初演を振った、ロシア“爆演系”の代表的な指揮者ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが その最晩年に来日、読売日響を(もともと指揮台に立つ予定だったスクロヴァチェフスキが 2月に亡くなったため 代役として招かれ )指揮したプログラムの目玉が ブルックナー第5番、それも何と、20世紀には改悪・改竄版としてさんざん非難されてきた「シャルク版 」だ( ! )という驚愕な情報を 翌年 御大が逝去した後に初めて知り、ああ、そりゃさぞ素晴らしいコンサートだったろうなあ、と聴けなかったことを少し悔やんでいた矢先、このディスクがリリースされたとのニュースを聴いた 私 発起人、早速とりよせ、今日12月最初の日曜日の午後、じっくりと聴いてみたものです。

 派手に鳴るよう改変されたとされる「シャルク版 」の演奏効果が上がる特徴を 単純に「 」である、と決めつけてきた二十世紀の風潮が ここ最近になって ようやく見直されるようになり、そんな「改訂版再評価 」の兆しは、最晩年のロジェストヴェンスキー翁が 2017年、極東の地に残した演奏に 大きな歴史的意義を見出しつつあるようです。

 しかし二十世紀の風潮にどっぷり浸かってきた旧世代の私“スケルツォ倶楽部発起人、ことブルックナー第5に限っては、開始冒頭をクナッパーツブッシュ盤の あの あまりにも個性的なテンポで刷り込まれてしまったため(泣 )他のどの演奏も受け容れることができぬまま 今まで生きてまいりましたw ゆえに「シャルク版」でしか“ブル5”を知らぬ、そんな哀れな身の上(笑 )には 心中複雑なものが去来します。
 
 そんな私にとっては特別貴重な「シャルク版 」“のブル5”を、最新の演奏で聴くことができる、しかも そのライヴ盤が、かつて 19種の異稿・異版を並べた ブルックナー交響曲全集旧ソ連国立文化省交響楽団でレコーディングした実績をもつ ロジェストヴェンスキー師の“生涯の置き土産”だったことを知ってしまった以上、もはや興奮を抑えられません。
 「シャルク版 」であれば( ? ) 抵抗なく 聴き通す自信があります。真剣に聴くうち、もう嬉し涙です。ああ、特に第2楽章・・・ バッハの「アリオーソ 」を連想させる、弦セクションがよく歌う第2主題、そのバロック風な美しさ、解放弦特有のナチュラルな響きの素晴らしさったら・・・ あれ? ヴァイオリンとチェロによる経過句を わざわざソリストに弾かせていますね、これは繊細な効果も極まります。もしやチェリストは NHK-FMきらクラご出演の 遠藤真理さんでしょうか? (すみません、未確認 )

 ところで、なぜロジェストヴェンスキーは、“ブル5”を指揮するにあたって わざわざ「シャルク版」を 指定してきたのでしょうか。
 その前に、金子建志氏の執筆による解説文から一部引用させて頂きましょう(青字の文章 )。ねこけん氏の解説は、常に信頼度抜群です。

 文化省響との全集に際してロジェストヴェンスキーは、第1番のように複数の版がある場合は、「リンツ版」と25年後に全面改定した「ウィーン版」の両方を録音。そうしたこだわりは、ブルックナー・ファンの注目を集めた。さすがにすべての異稿を網羅するまでには至らなかったが、複数の版が錯綜する第4番「ロマンティック」では、一般的に演奏される「ノヴァーク版第二稿」だけでなく、「第一稿(1874年)」、および それを部分改訂した「第4楽章異稿(1878年)」、さらには対極に位置する「マーラー編曲版」にも挑戦。
 そうした姿勢からすれば、第5番は「原典版」と「シャルク改訂版」の二つを録音してもおかしくなかったのだが、文化省響との全集盤は、実は原典版をベースに 少しだけシャルク版を採り入れた独自の折衷版だった。「改訂版」とする記述も見かけたが、軸足は95%以上が原典版で、シャルク版を部分採用したのは、第4楽章最後のコラール(原典版だと583小節~、シャルク版だと465小節~ )のみ
だった。
(以上、解説文から引用 - 青字 - )

 どれどれ・・・ト CD棚を漁って探し出してきた、私 発起人の手元にあった国内(メロディア/BMGファンハウス BVCX-38009~10 )盤は、たしかに一種のみ収録された版「原典版 」との表記が・・・そう、そもそも第5番ブルックナー にはめずらしく、改訂の手を加えなかったことでも 知られていますよね。
 が、金子氏の情報に頷きつつ 旧文化省響盤も聴き比べてみたら、たしかにメロディア盤は「原典版」を基礎としながら 第4楽章コーダに限っては 金管の別動隊とティンパニが重要なコラール主題を補強、ブルックナーの「ダイナミックスを修正 」することに成功しています(金子氏も指摘されているように、目立つシンバルトライアングルが用いられなかったため、単に改訂版 」=「原典版 」と判断された面もあるのでしょう )。
 
 私 発起人の、相変わらず勝手な想像をふくらませるのをお許し頂ければ、もしロジェストヴェンスキー旧文化省響との ブルックナー全集 では録音しなかった 第5番の「シャルク版 」を、 実は 長年 自身のやり残した沢山の仕事のうちのひとつと考えていたとしたら・・・ Mr. Sの代役打診に応じるついでに 事務局にダメ元で訊ねてみたゲンナ爺、返ってきた回答は、何と「読響のライブラリーには 1966年 3月に購入以来 未使用だった シャルク版 のパート譜セットが揃っております 」 だと? おお、神よ ! その瞬間、極東のオーケストラを振って 今まで秘めていた課題を遂に実現できる幸運が - まるで天からのプレゼントのように - 降ってきたことを悟ったゲンナ爺、自身の健康状態が許す限り このチャンスを逃すようなことは 決してしなかったのです。
 これこそ 御大が、“ブル5”を わが国で指揮するにあたって、わざわざ「シャルク版」を 指定してきた真相( ! )ですw 
 ・・・ って、百歩譲って もしそうだったとしたら( ? )東京芸術劇場大ホールに響く “ブル5” - その終楽章、多層立体的にそびえ立つ大オーケストラに重ねて、大詰めに再現される冒頭「原旋律 」に合わせて 大見得を切ってみせるティンパニのとどろきと、最後列に居並ぶバンダを立奏させ シンバルトライアングルが炸裂するフィナーレ - その最後の音が消えゆく残響を追いつつ、指揮台のロジェストヴェンスキー師の身内いっぱいに溢れたに違いないカタルシスの大きさたるや もう筆舌に尽くせぬものだったことでしょう。それは 同じく演奏を聴くことを許された、幸運な私たちもまた。

 この一枚は、古今東西のブルックナー演奏史に、「名盤 」として残る予感が します。


関連記事
⇒ ロジェストヴェンスキー逝去 - 忘れがたきレニングラード・フィルとの「幻想交響曲」BBCライヴ(1971年 )を聴く。

⇒ ブルックナー 交響曲第9番第3楽章は「十字架上のキリストの七つの言葉 」ではないか  


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