訃報・追悼
スケルツォ倶楽部
午後のジャズ喫茶「ソッ・ピーナ」から
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名ジャズ・ピアニスト、ハンク・ジョーンズを悼む。(2010年5月16日 逝去 )

 こんにちは、スケルツォ倶楽部“発起人” 妻 のコーナーです。
 自宅から 徒歩 約10分ほど 公園そばに建つオレンジ色のビルの2階に入っている ジャズ喫茶 「ソッ・ピーナ」 が、わたしのお気に入りの場所。ここは、音楽オタクで独身の二代目マスターが 選んでくれるジャズジャズ周辺のディスクを 大音量のオーディオ・セットで聴かせてもらいながら 美味しいコーヒーを傍らに(出てこない時もあるケド・・・)、マスターのウンチク談議を楽しめる場所です。

 さて、今日も 全席カラッポなのを横目で眺めつつ、カウンター席へ座ろうとすると ・・・おや? いつもなら だらしない格好のマスターが、今日は 黒いネクタイを締めて神妙な面持ち。
わたし   「どうしたの? 」
マスター  「名ピアニスト、ハンク・ジョーンズ が亡くなったのをご存知でしたか 」
わたし   「えー、知らなかった! いつ? 」
マスター  「5月16日だから、今週の日曜日でしたね。91歳でした 」
Hank Jones(1918-2010)193×145 
ハンク・ジョーンズ Hank Jones ( 1918年 7月31日~2010年 5月16日 )

わたし   「そうだったの、残念ねー。それでマスター、今日は 黒ネクタイなのね」
マスター  「弔意を表して、今週はずっと正装を通しています」
わたし   「・・・でも厨房の中、それじゃ暑いでしょ」
マスター  「暑いです」
わたし   「暑苦しいわよ。はっきり言って 似合わないし」
マスター  「みてくれじゃないんです、弔意ですから。オーダーをどうぞ」
わたし   「うーん、それじゃ やっぱり ハンク・ジョーンズのピアノが聴きたいかな」
マスター  「承りました。ついでに お飲み物も」
わたし   「暑いから、アイス・コーヒーください 」

 レコードの針音が聴こえてきました。
 あ、これは 名曲「枯葉」・・・  ハンク・ジョーンズのソフトタッチのピアノが サム・ジョーンズのベースと ユニゾンで低音のリフ・フレーズを繰り返す、耳タコなほど有名なイントロダクション

Somthin Else Blue Note‐1595
キャノンボール・アダレイ Julian“Cannonball”Adderley
サムシン・エルス Somethin' Else (ブルーノート )
  キャノンボール・アダレイ(アルト・サックス )Julian“Cannonball”Adderley
  マイルス・デイビス(トランペット )Miles Davis
  ハンク・ジョーンズ(ピアノ )Hank Jones
  サム・ジョーンズ(ベース ) Sam Jones
  アート・ブレイキー(ドラムス )Art Blakey
  収録曲:Autumn Leaves、Love For Sale、Somthin' Else、
  One For Daddy-O、Dancing In The Dark (Alison's Uncle、LP 未収録 )
  録音:1958年 3月 9日、ニューヨーク
  ブルーノート(Blue Note 1595)

 
・・・それが、マスターの選んだディスクだった。(って、なぜか突然 ここだけハードボイルド風の文章に )。その あまりにも直球のチョイスに わたしは膝が震えだすのを禁じ得なかった。それは 泣く子も黙る、超のつく名盤「サムシン・エルスSomethin' Else 」、A面1曲目「Autumn Leaves 枯葉 」だったからだ。穏やかな4ビートのリズムに歩を合わせながら、マスターがグラスの氷を鳴らして ゆっくりと近づいてきた・・・。

マスター  「はい、アイス・コーヒーです。ガムシロップはこちら。おや? 奥さん、膝が震えてますね。さては ボクの絶妙なチョイスに感動されたんですね 」
わたし   「ちがいます。店内のエアコンが強すぎるから寒くて震えてるの。設定温度 上げて頂戴 」
マスター  「暑いんです、ボクは。」
わたし   「その黒いネクタイ 取りなさいよ。ホント 暑苦しいなあ」
マスター  「それではクールダウンしましょう、1958年のマイルスのサウンドで。」
わたし   「あ、うまいわね」
マスター  「アイス・コーヒーがですか」
わたし   「まだ飲んでいません。違うってば、わたしは寒いの。そして暑苦しいのは マスターのネクタイなんだってば!」
・・・もう暑いんだか寒いんだか わけわからなくなり。わたしは「サロメ 」のヘロデ王か(って、クラヲタにしか わかるまい )。

マスター  「 “サムシン・エルス”は、豪快な鳴らしっぷりが気持ちいいアルト・サックス奏者キャノンボール・アダレイ唯一の ブルーノートのリーダー・アルバムですが、実は 珍しくサイドメンとして参加した形になっているマイルスが 編曲も楽曲構成も取り仕切っていた実質リーダーだった という事実を知らない人は いないでしょう。マイルスの話は またいつかゆっくりさせて頂きますけど・・・」
わたし   「モダン・ジャズ史上に残る、この有名な“枯葉”で、デリケートなピアノのバッキングに徹していたのが、渋い名手ハンク・ジョーンズだったのね」
マスター  「このセッションで、ピアノを務めたのが紳士ハンク・ジョーンズだったからこそ、これだけの名演・名盤になり得たんだとさえ思いますね。代わりに 他のどのピアニストがこのパートを弾き得たでしょう。レーベルがブルーノートですから、起用される可能性のあったピアニストと言えば、ソニー・クラーク、デューク・ジョーダン、トミー・フラナガン、バリー・ハリス・・・どれもちょっと違いますよね。ホレス・シルヴァーなんか 絶対あり得ないし 」
わたし   「人選の妙と言えば、この録音から20年後くらいの1980年頃に、ハンク・ジョーンズが 突然 有名になっちゃったレコーディングがあったじゃない? 」
マスター  「あー、グレイト・ジャズ・トリオね。あれは1977年です。ハンク・ジョーンズは、名手ではあっても わが国ではベニー・グッドマンとの共演やJATPへの出演などで名前を覚えられていた世代の存在でしたから、ロン・カーターや息子世代のトニー・ウィリアムストリオを組んでのライヴ録音という意外性が大いに受けたんでしょうね。ピアノは判りやすいバップの伝統に則ったプレイでしたし、若いリズム・セクションもヴェテラン・ピアニストへの敬意を表して、堅実なサポートに徹していましたから、とにかく一般にも聴きやすくて、当時は大評判になりましたよね。その頃 おいくつでした?
わたし   「 まだ 小学校低学年だよ(憮然 )。 ・・・でも“意外性”っていうマスターのキーワードは 言い得て妙よね。プレイヤーの人選はもちろん、とにかく選曲が秀逸だったし。かつてマイルスキャノンボールに贈与した名曲“ナーディス”のほか、コルトレーンの神秘的な“ネイマ”とか、トニー・ウィリアムス自身も V.S.O.P. でとりあげていた“ローラ”など、抑制の効いたハンクの端正な鍵盤から ひとひねりした楽曲の数々が、モダンなリズム・セクションを伴って流れ出す時の、これを 初めて聴いた新鮮さといったら、今も忘れられないわよね 」

The Great Jazz Trio At The Village Vanguard Vol.1 The Great Jazz Trio At The Village Vanguard Vol.2
ザ・グレイト・ジャズ・トリオ The Great Jazz Trio
At The Village Vanguard Vol.1 & 2
  ハンク・ジョーンズ(ピアノ)Hank Jones
  ロン・カーター(ベース)Ron Carter
  トニー・ウィリアムス(ドラムス)Tony Williams
  録音:1977年2月、ニューヨーク ヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライヴ
  イースト・ウィンド(PHCP-4115)
  収録曲:Moose The Mooche、Naima、Favors、12+12 (Vol.1 )
       Confirmation、Wind Flower、Nardis、Lawra (Vol.2 )


 ・・・ハンク・ジョーンズさんの 音楽への大きな功績を讃え、
心より、ご冥福をお祈りいたします。
 弟の サド・ジョーンズ(トランペット )、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス )との 兄弟セッションを、天国で 久しぶりに楽しんでくださいね・・・。
 
ハンク・ジョーンズの 名言
Hank Jones
「 (ピアノの )練習は、一日サボれば 自分に判る。三日サボれば カミさんにも判る、そして 七日サボったら もう仕事は無くなると思え 」

ハンク・ジョーンズの トリヴィア
 1962年5月19日、ジョン・F・ケネディの誕生パーティ(マディソン・スクエア・ガーデン )で、マリリン・モンローが大統領に歌った、有名な「ハッピー・バースデイ、ミスター・プレジデント 」で、モンローの歌の伴奏を務めていたピアニストが 何をかくそう ハンク・ジョーンズだった・・・(出典:Wikipedia )。
The Complete Recording Marilyn Monroe(SLCS‐5008~9)
Marilyn Monroe The Complete Recording(日本コロムビア SLCS‐5008~9 ) 

次回は こちらへ・・・

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