本記事は、5月28日の「人気記事ジャズ ランキング」で 第1位となりました。
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クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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リターン・トゥ・フォーエヴァー
「第7銀河への帰還 Return to the 7th Galaxy 」
 (チック・コリア )1973年

RTF ガッド加入時期の貴重なショット(Verve) 
(左から )チック・コリア、ミンゴ・ルイス(後 )、スタンリー・クラーク、
ビル・コナーズ、スティーヴ・ガッド
( ヒゲが ない! )


 スティーヴ・ガッドが、チック・コリアの 伝説的なグループ、リターン・トゥ・フォーエヴァー( RTF )に 短期間ながら 所属していた(!)という 衝撃の事実を知ったのは、1996年にリリースされていた ヴァーヴ・クロニクルス 「第7銀河への帰還 Return to the 7th Galaxy (リターン・トゥ・フォーエヴァー・アンソロジー 2枚組)」に収録の、23年間 未発表だった 貴重なライヴ録音3曲の存在を 行きつけのジャズ喫茶 ソッ・ピーナ マスターに 教えてもらったおかげです。
 当時 これが事実だったことを知らされるまでは、まさか ガッドRTF に在籍していた時期があったなんて 夢にも思いませんでした。 ・・・そんなのは根拠もない噂話、たとえば ウェザー・リポート解散直前のザヴィヌルのソロ作「ダイアレクツ」には 実は マイルスが参加した未発表テイクがある、とかいう類の 「 ジャズ “都市伝説 ” 」の ひとつなんだろう などと思ってました。 「えー? ガッドRTF にー?」 「あり得ない、それだけは あり得ない」 なんて言っていたものです。 ・・・ でも そんなことが「あり得た」のでした!
「第7銀河への帰還:リターン・トゥ・フォーエヴァー、アンソロジー」Verve Polydor
リターン・トゥ・フォーエヴァー「第7銀河への帰還 Return to the 7th Galaxy」から
ガッド参加ナンバーは 「スペイン 」「アフター・ザ・コスミック・レイン 」「ベース・フォーク・ソング 」
  チック・コリアChick Corea (キーボード )、
  スタンリー・クラーク Stanley Clarke (ベース )、
  ビル・コナーズ Bill Conners (ギター )、
  スティーヴ・ガッド Steve Gadd (ドラムス )、
  ミンゴ・ルイス Mingo Lewis (パーカッション )
1973年 データ詳細不明 
ニューヨーク、ロングアイランドのクワイエット・ヴィレッジにて ライヴ収録
ポリドール、ヴァーヴ・クロニクルス (POCJ-1344~5)

併録曲 (第1期RTFから : 「500マイルズ・ハイ 」、「キャプテン・マーヴェル 」、「ライト・アズ・ア・フェザー 」、第2期RTFから : 「第7銀河の讃歌 」、「キャプテン・セニョール・マウス 」、「母船のテーマ 」、「ヴァルカン・ワールズ 」、「第7銀河の彼方 」、「アース・ジュース 」、「シャドウ・オブ・LO(これも未発表ライヴ ) 」、「ホエア・ハブ・アイ・ノウン・ユー・ビフォー 」、「ソング・トゥ・ザ・ファラオ・キングズ 」、「デイライド 」、「ノー・ミステリー 」、「フライト・オブ・ザ・ニューボーン 」、「セレブレイション組曲 」


■ その前に 「リターン・トゥ・フォーエヴァー 」について、おさらいを。 
 私たちの この 文字数の多いブログ を読んでくださっている方なら、RTFについては いまさら 説明不要と思いますけど、これは 敢えてクラヲタの夫に読ませるという 私の目的もあるため なので、何卒 おつきあいくださいね。
 リターン・トゥ・フォーエヴァー Return to Forever は、20~21世紀にかけて存在した( 今も )世界最高のジャズ・ピアニストのひとり チック・コリア(ピアノ、キーボード奏者)と スタンリー・クラーク(ベース奏者)を中心に結成された、1970年代のジャズのグループです。構成メンバーバンド・カラーの変化によって、ざっくりと三期に分けることが出来ます。

● 第1期
リターン・トゥ・フォーエヴァー Return to Forever (1972 ECM ) 』、
ライト・アズ・ア・フェザー Light As A Feather(1973 Polydor)』 )

Return to Forever (1972 ECM )  『ライト・アズ・ア・フェザー Light as a Feather (1973 Polydor)』
 チック・コリア(キーボード)、
 スタンリー・クラーク(ベース)、
 ジョー・ファレル(サックス、フルート)、
 アイアート・モレイラ(ドラムス、パーカッション)、
 フローラ・プリム(ヴォーカル、パーカッション)

 このグループ結成の直前まで、チック・コリアは、サックス奏者 アンソニー・ブラクストンなどと一緒に なんと 超ハードなフリージャズ( 「サークル」 )を手掛けていたのでした。それが180度の大転換をして、実に聴きやすい この作品 RTF を世に問い、圧倒的な支持を得たことは よく知られています。
 特に、スタンダード名曲となった「ラ・フィエスタ La Fiesta 」、素晴らしい「スペイン Spain (2作目のアルバム 「ライト・アズ・ア・フェザー Light As A Feather 」に収録 ) 」、ドライヴに連れていってほしくなっちゃう「ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ? What Game Shall We Play Today?」 の ワクワクするほどのポップな楽しさなどが 超有名ですよね。
 演奏スタイルや取り組み姿勢の急激な変化は、ボブ・ジェームスハービー・ハンコックらと少し似ています。頭の良いジャズ・ピアニストは、理屈をこねた頭脳プレイに飽きると、次は突然 開き直り 才能に任せて 商業主義的に奔って売りまくる という ・・・ 決して悪意で書いてるつもりじゃないんですけど、すみません、こんな書き方で。

● 第2期の初期
第7銀河の賛歌 Hymn to the Seventh Galaxy (1973 Polydor ) 』
 
『第7銀河の賛歌 Hymn to the Seventh Galaxy (1973 Polydor)  ≪ ガッドは この直前の過渡期に 在籍していたことになります ≫ 
 チック・コリア(キーボード)、
 スタンリー・クラーク(ベース)、
 ビル・コナーズ(エレクトリック・ギター)、
 レニー・ホワイト(ドラムス)
 
 第1期のブラジル系南洋イメージを 担っていたアイアート・モレイラフローラ・プリム(二人は夫婦)が脱退し、ジャズっぽい音色を象徴する記号として存在していた サックスの名手ジョー・ファレルが退き、チック・コリアは、代わりにソロ楽器として エレクトリック・ギターを導入します。やはりマイルスの影響でしょうか。第2期最初の1枚「第7銀河」ビル・コナーズというロック・ギタリストが参加していますが、彼は この直後 グループを脱退しています。
 
● 第2期
銀河の輝映 Where Have I Known You Before (1974 Polydor ) 』、
ノー・ミステリー No Mystery (1975 Polydor ) 』、
浪漫の騎士 Romantic Warrior (1976 CBS ) 』
 

『銀河の輝映 Where Have I Known You Before (1974 Polydor) 』  『ノー・ミステリー No Mystery (1975 Polydor) 』  『浪漫の騎士 Romantic Warrior (1976 CBS ) 』
 退団した 前任のギタリスト ビル・コナーズに代わって、いよいよ名手アル・ディ・メオラが登場。これによって、パーマネントなRTFメンバーは定着します。ディ・メオラのギターは 恐ろしいほど正確でありながら スピード感も併せ持ち、よく伸びる美しい音色です。 しかし 何より重要なことは、彼の保有している音楽的コンセプトチック・コリアの相性とばっちり一致していたことでしょう。それが グループ内で ディ・メオラが 可愛がられた理由だったと思われます。 また、この辺りから スタンリー・クラークエレクトリック・ベースも凄みを増してきます。グラミー賞も受賞した名盤 「ノー・ミステリー」が、個人的にも最もよくまとまった最高傑作ではないかなーと 評価してます。
 うーん、それにしても テクニシャン揃いの凄いフュージョン・グループでした。ジャズなのに、ステージの聴衆は まるで技巧系プログレッシヴ・ロック・バンドエマーソン、レイク、&パーマー のライヴのオーディエンスみたいな大盛り上がりでした。アルバム1枚、真剣に聴き通すと もー くたくたに疲れてしまうほど。でも本当に良い時代でした・・・。

 ・・・ついでに やはり第3期にも触れておきましょう。
● 第3期
ミュージックマジック Musicmagic (1977 CBS )』、
コンプリート・コンサート Live Complete Concert ( 1977 CBS )』

『ミュージックマジック Musicmagic (1977 CBS )』 『コンプリート・コンサート Live Complete Concert ( 1977 CBS )
 これほどになると、ちょっとしたビッグ・バンド規模の大所帯です。
 チック・コリア(キーボード)、
 スタンリー・クラーク(ベース)、
 ゲイル・モラン(ヴォーカル、キーボード)、
 ジェリー・ブラウン(ドラム)、
 ジョー・ファレル(サックス)、
 ジョン・トーマス(トランペット)、
 ジェイムズ・ティンズレイ(トランペット)、
 ジム・ピュー(トロンボーン)、
 ハロルド・ギャレット(トロンボーン)、
 ロン・モス(トロンボーン)

 第1期RTFに参加していた名手で、チック・コリアの盟友でもあった テナー・サックス奏者のジョー・ファレルがここで再登場。補助的なキーボード演奏と 主にヴォーカルを務めるゲイル・モランは、言うまでもなく チック・コリアの奥さまですよね。
 RTF第3期 ライヴ(CBS)裏ジャケはピカソさ ← 裏ジャケットは、ピカソ三人の楽師 
 このライヴ・ステージを まるごとパッケージした実況録音盤は(オリジナルLP初出時は、なんと4枚組でした!)イマジネーション溢れるブラス・セクションの効果も素晴らしく、複雑な決めを ビシバシ こなしまくる完璧なるアンサンブルにも脱帽ですが、感興豊かな主要奏者たちの即興演奏には感動します。個人的には、最後のアンコール・ナンバーとして演奏される、チック・コリアスタンリー・クラーク ふたりのリーダーによる、アコースティック・ピアノ & ベース・デュオでの モダン・ジャズ・スタンダード・ナンバー 「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート」の演奏、まさしく 一服の清涼剤のような爽やかさで、大好き! です。

■ もとい。ガッドが参加した第2期RTFのライヴ 3曲を聴く。 
 おさらいが 長くてすみませんでした、・・・毎度のことですケド。
 やはり注目のスペイン もう聴く前から 興奮してしまいます。
 これは 残されていた音源がFM放送のものだったらしく、音質も若干高音がキツく、時々ハウリングが生じるのが気になります。楽器バランスもあまり良くありませんが、しかし 聴き進むうち、演奏の素晴らしさに 音の不都合など殆ど気にならなくなります。
 1分50秒ほどのイントロダクションは、有名な ロドリーゴ作曲の「アランフェス協奏曲第2楽章のメロディを基にした、コリアによる フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノの抒情的なインプロヴィゼーションです。
 で、ようやく このイントロが終わって、ガッドがリズムを刻み始めると、第1期RTFの演奏による オリジナルの「スペイン 」とは 明らかに異なる 力強いラテン・リズムのビートに耳を奪われます。キメのフレーズの部分、オリジナル演奏ではユニゾンによる合奏に、手拍子のオーバーダビングが施されていましたが、ガッドは しっかりと踏み込んでクローズさせたハイ・ハットで 思い切り16ビートを叩いています。音楽の推進力は、間違いなく前進していますが、ここは 好みの分かれるところでしょう。あのガッドにしては 期待に反して 今ひとつ 芸が無い・・・などという人がいるかも知れません。だって のちに アル・ジャロウの「スペイン」でバッキングを叩く時には、もっと複雑な ビートを 刻むことになるからです(注目の アル・ジャロウ盤における ガッドのプレイについては、またいつか 触れさせて頂きたい と思っていますが )。
 主観的な印象 ですが、わたしには ビル・コナーズのエレクトリック・ギターのプレイは、どうも音色が暗く、音程も甘いので、何度聴いても好きになれないの。これが好い という人もいらっしゃるでしょうが、ここはむしろ コリアガッドの がっちり四つに組んだ二人三脚のバッキングの妙を楽しむべきだと思います。
 特に、03:42以降のピアノとドラムスとの背後からの「会話 」は 実に凄まじく、ソリストのギターを置いてきぼりにして、二人だけで 自由に会話を楽しんでいるようにさえ聴こえます。
 けれど「スペイン 」で最大の聴きどころは、やはり 06:09 から始まる、コリアのエレクトリック・ピアノ・ソロスタンリー・クラークのベース、そして ガッドのドラムスによる 「ピアノ・トリオ 」 が聴ける部分です。ここは思いっきり凄い! エフェクターをかけ まるで管楽器のように歌うコリアのエレクトリック・ピアノが シングルトーンで これでもかと繰り出すフレーズは 次々と新しいメロディを無尽蔵に湧き出します。まったく尽きぬ 豊かな楽想、素晴らしいです。
 これを鼓舞するガッドのドラムスもドンドン派手になってゆき、特有のタム転がしも聴けて、完全に満足です。コリアのピアノ・ソロ・パートの間は、ミンゴ・ルイスの パーカッションは大人しくしていますが、それは きっと事前に「オレのソロのときには パーカッション叩くな」とでも 言われていたのでしょう。なにしろ ミンゴパーカッションときたら、ちょっと顰蹙(ひんしゅく)ものです。特に、この後に続くスタンリー・クラークアコースティック・ベースのソロになると、せっかくガッドが意識的に音量を落として、ベースの小さな音量が引き立つように 間(ま)を生かした効果的なリズムを刻んでいるというのに、あまりにも抑制なく 執拗なほどカウベルを叩き続けるもんだから、「ちょっと、静かにしてよーっ」ていう感じです。そんな 問題を秘めたソロ・パート後、アンサンブル部分からエンディングに至るパートでは、ガッドのフィル・インが 大爆発してます。うーん、格好イイ!
 アフター・ザ・コスミック・レイン も 力いっぱいで素晴らしいですね。
 この曲は 演奏家の自由度が広い音楽で、アレンジされたアンサンブル部分さえ しっかりキメていれば、演奏によって かなり聴き応えのある音楽になるに違いありません。揺れるギターソロのバックで炸裂しまくるガッドのドラムスの凄さ、やはり最高です。最後のユニゾンの大事なフレーズを ビルくん、落としちゃダメでしょう。やっぱり キミは 今ひとつ 楽曲を 消化していなかったんじゃないのかなー。
 さて、続くベース・フォーク・ソング も リズムの凝った曲で オモシロイ。
 とりわけ 05:06以降のピアノ・ソロ部分の猛烈さ と これを煽り立てるドラムスの激打が やはり最高のハイライトでしょう。コリアが噴出させまくる ソロ・フレーズの とめどなさ、これは ホント ちょっと 他では聴けない熱さ です。
 
 ・・・しかし、何ということでしょう ガッドRTFで全米ツアーに同行することを 潔しとしなかったので、結局 グループには 在籍しなかったということだったそうです。
 後任のドラマー レニー・ホワイトドラムスも バシャバシャいう 独特の迫力を持っていて 技巧的には もちろん まったく悪くはありませんが。 けれど、ガッドが叩き、ディ・メオラが駆け回り、スタンリー・クラークが弾(はじけ)けまくる上に チック・コリアのピアノが思いきり翼を広げていたかも知れない もうひとつの「 第2期 RTF 」 を想像すると、やはり興奮して 叫びたくなっちゃいます 「惜しい! 」って。
 けれども 1973年と言えば、ちょうどガッドの偉大なキャリアがスタートする最初期でもあり、翌年以降から その腕を評価されて 猛烈に忙しくなるわけですから、彼はやはりニューヨークに残っていて 正解だったのではないでしょうか。
 RTFのメンバーすべてが ガッドの腕を高く買い、その後の ソロ活動・レコーディングでは チック・コリアも、スタンリー・クラークも、ディ・メオラも、まるで 競うようにガッドを起用している という事実は、特に チック・コリアの無念もよく表している と思うのです。それらの名盤の数々のご紹介は、 また次の機会に。

■ ジャズ“都市伝説”?
  ガッド参加の 正規スタジオ盤「第7銀河~ 」が録音されていた?!
 
 最後に ひとつ。聞けば 極めて残念なあまり ちゃぶ台 ひっくり返したくなるような実話を ご紹介します。
 RTFは アルバム「第7銀河の賛歌 」を ガッドのドラムスで 全曲録音していた のだそうです。しかし ガッドがグループを脱退すると、メンバーはレニー・ホワイトのドラムスで アルバムの録音をやり直したのです。 で、発売されたのは もちろん後者で、わたしたちにとっては「 肝心の 」 ガッドがドラムスを叩くオリジナル・ヴァージョンの音源は、なんときれいに消去されてしまった! ということでした。 ぐえ~っ! なんて モッタイナイことを 。。。(号泣 )

次回「One Of A Kind (ジェントル・サウンド)」(デイヴ・グルーシン ) に続く 。。。 

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