スケルツォ倶楽部 
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「新語・流行語大賞2017 」にノミネートされた
アウフヘーベン 」から、
ベートーベン の作曲過程を連想する。


 おはようございます、“スケルツォ倶楽部発起人です。
 今朝は、当ブログにしては ちょっとめずらしく、時事の話題から。
 すっかり年末の風物詩となった「新語・流行語大賞 」ノミネートですが、今年 2017年も 三十の言葉が発表されたそうです 。
 休日の朝食をとりながら、へえ どれどれ ― と、まるで一年間を振り返るように 大賞候補とされる流行語の列を眺めます。

アウフヘーベン
▲ アウフヘーベン

インスタ映え_ニッセイ基礎研究所
▲ インスタ映え

うつヌケ_田中圭一氏
▲ うつヌケ

うんこ漢字ドリル
▲ うんこ漢字ドリル

炎上_神々の黄昏(ショルティ)デッカ盤
▲ 炎上○○

AIスピーカー
▲ AIスピーカー

9.98(10秒の壁 )
▲ 9.98(10秒の壁 )

共謀罪
▲共謀罪

GINZA SIX
▲ GINZA SIX

空前絶後の
▲ 空前絶後の

けものフレンズ
▲ けものフレンズ

35億
▲ 35億

Jアラート
▲ Jアラート

人生100年時代
▲ 人生100年時代

睡眠負債
▲ 睡眠負債

線状降水帯
▲ 線状降水帯

忖度(そんたく )
▲ 忖度(そんたく )

ちーがーうーだーろー !
▲ ちーがーうーだーろー !

刀剣乱舞
▲ 刀剣乱舞

働き方改革
▲ 働き方改革

ハンドスピナー-
▲ ハンドスピナー

ひふみん
▲ ひふみん

フェイクニュース
▲ フェイクニュース

藤井フィーバー
▲ 藤井フィーバー

プレミアムフライデー
▲ プレミアムフライデー

ポスト真実
▲ ポスト真実

魔の2回生
▲ 魔の2回生

○○ファースト
▲ ○○ファースト

ユーチューバー
▲ ユーチューバー

ワンオペ育児
▲ ワンオペ育児


(以上、アイウエオ順 )

 なるほど。 うん、たしかによく目にしたなあ、耳にしたなあ、と実感する「忖度(そんたく ) 」や「インスタ映え 」、果ては「ちーがーうーだーろー ! 」(笑 )もあれば、逆に、え ? こんな言葉ありましたっけ ? と、ただでさえ時事に疎い スケルツォ倶楽部発起人が首を傾(かし )げる言葉もちらほら・・・。

 しかしアイウエオ順で真っ先に挙がっていた「アウフヘーベン 」という言葉の登場には、少しばかり驚きました。こんな古くさい哲学用語が 今年ホントに流行(はや )ったんでしょうか ? 

 調べてみると、何と 小池百合子・東京都知事が 9月25日(新党「希望の党」設立時の )記者会見の場で発していたそうです。しかもその後 一度ならず二度、三度と いろいろな場面で都知事は使われたらしい・・・。

小池百合子 2017
小池知事 「いままでの議論をアウフヘーベンし、国民が希望の持てる政策を投げるべき・・・ 」

小池知事 「ここでアウフヘーベンを使うと何かを思い出すかもしれませんが、国民のニーズというのは、メディアが引いたレールの延長線上にはありません。もっと大きな夢をみんな描きたいと思っていて、それは憲法9条3項の議論などではない、もっと明るく、そして希望を持てるような政策のボールを投げるということが必要であります 」

若狭衆院議員や細野衆院議員との関係について問われ )
小池知事 「これはプッツンするものではございません。アウフヘーベンするものでありまして、(アウフヘーベンという用語の )内容は 辞書で調べてください 」

( 「横文字を多用すると 意味が伝わりにくいのではないか 」との記者からの指摘に対し、)
小池知事 「そこは一つ一つ伝えてまいります 」
       「ワイドショーが解説してくれていますから。それに、この意味は何か? と調べることに 効果があるじゃないですか。知らない人もその言葉を知るようになりますから 」
       「アウフヘーベンアウフヘーベンでしょう 」


 どこか違和感が拭えません。特に「辞書で調べ 」ろって・・・ それ、一体どこまで上からなもののおっしゃりようなのでしょうか。“無教養なあなたがたのことですもの、どうせご存知ないんでしょ ” としか 私には聞こえません。一般に浸透しているとは思えない哲学の専門用語を わざわざ発しておきながら、その同じ口から 「プッツンする 」などという わかりやすい表現を平気で並べてみせるところ、その周りに青臭さが漂います。

アウフヘーベン - って これ、もちろん「新語 」じゃありません、いえ それどころか・・・個人的には懐かしささえ覚える、とても古い言葉です。
 私 “スケルツォ倶楽部発起人の高校時代 - それは遥か昔、35年以上も前のこと - 今 思えば かなり風変わりなキャラクターでだった 世界史の教諭(伊佐先生 ! )が 授業の中で「止揚(しよう ) 」なる訳語ととともに その意味を教えてくださった、ヘーゲルの弁証法を 思い出します。
ヘーゲル Georg Wilhelm Friedrich Hegel(1770 – 1831 )
ヘーゲル Georg Wilhelm Friedrich Hegel
アウフヘーベン Aufheben
(独・動詞 )持ち上げる、拾い上げる
(独・哲学用語 )あるものを、そのものとしては否定しながら、更に高い段階で生かすこと。矛盾するものを更に高い段階で統一し解決すること。 止揚。揚棄。
(Wikipedia )


 そう、古いものが否定されて新しいものが現われようとする時に、敢えて古いほうの要素を 排除することなく 保持し、より高い段階に発展しようとする過程(プロセス )で生かすことです。

 しかし 「アウフヘーベン 」なる言葉は、結局 日本人の日常的な肌感覚には浸透することはありませんでした。それは、たとえば「造反有理 」(笑 )といった特殊な用語のように、そのまんま使うには あまりにもスノッブ臭が強く、口にするにはちょっと憚(はばか )られる、そんな種類の 恥ずかしさ さえ感じる言葉です。 大体 わが国の公的な場面で 誰にもわからない 「アウフヘーベン ! 」などと言う言葉を 発する日本人なんて 全共闘以来(笑 ) 誰ひとり いなかったではありませんか。

 この専門用語について 「問題を棚上げし 先送りにするという意味だ 」などと、したり顔で説明している人もいましたが、小池知事に対する皮肉でなければ(笑 ) もちろん哲学用語の解説としては誤り です。一度止めて寝かせることには 用語本来の主眼はありません、結果的に対象を生かすこと自体が重要なのですから。

 さて、スケルツォ倶楽部では 政治的な話題なんかに触れることを 好みませんので、発起人が言いたいことを言い終えたら、すみやかに音楽の話題へと戻ります。ご安心ください。

 そんな ヘーゲル先生 (1770 – 1831 )と奇しくも 同じ年に同じ国ドイツに生まれ、ほぼ同じ時期に人生を過ごした偉大な作曲家といえば・・・ 誰でしょう ? はい、正解は ベートーヴェン (1770 – 1827 )ですよね。

by Julius Schmid_散策するベートーヴェン

 音楽の世界でさえあれば 私には「アウフヘーベン 」という概念も まったく抵抗なく受け入れられます。
 交響曲第9番 ニ短調「合唱付き 」第4楽章の長大なイントロダクションなど、まさしく「矛盾する諸要素を 対立と闘争の過程を通じて発展的に統一させること(カール・ポパー、1945年「開かれた社会とその敵 」第2巻:予言の大潮 ) 」そのもの ではありませんか。

 第9で、ベートーヴェンは ここまで時間をかけて築いてきた三つの長大な楽章終楽章の冒頭で、すべてあっさりと否定してしまうのです。「(第一楽章 )これではない、私が求めているのは もっと好ましいものだ 」、「(第二楽章 )これでもない 」、「(第三楽章 )これも違う。ちょっと優しすぎる。もっと快活なものが必要なんだ 」・・・
 そして遂に姿を現した、素晴らしい「歓喜のテーマ 」 - 「これだ、とうとう見つけたぞ 」、「おお、友よ。もっと心地よく、もっと喜びに満ちた調べを 歌おうではないか
今年も間もなく 年末の「シーズン 」を迎えますね、さあ皆さま 今年はどんな感慨をもって、あなたは「第9 」を聴きますか ? 歌いますか ?

ベートーヴェン
交響曲第9番 ニ短調「合唱付き 」
ディヴィッド・ジンマン指揮
チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、スイス室内合唱団
ルース・ツィーザク(ソプラノ )
ビルギット・レンメルト(アルト )
スティーヴ・デイヴィスリム(テノール )
デトレフ・ロート(バス )
 
録 音:1998年12月12~14日
音 盤:ARTE NOVA Classics(BVCE-38013 )

ベートーヴェン 第9_ジンマン指揮 チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、スイス室内合唱団(Arte Nova)1998年 Beethoven_部分_Joseph Karl Stieler、1820
 「ベーレンライター版によるモダン楽器による初のベートーヴェン交響曲全集 」ということ以外にも モダン楽器を用いながら 古楽器オケのような軽く透明な響きを追求した、スピード感溢れる仕上がりのベートーヴェンです。
 私 “スケルツォ倶楽部発起人が このディスクを特に愛好する理由は、修正前のベートーヴェン直筆の楽譜を参考にしたとされる第4楽章のオリジナル構想を別トラックで実際に試聴できる( ! ) という点です。 ここは、たいへん興味深い内容です。
 すなわち、第4楽章747小節目(合唱のBrüder ! という歌詞のすぐ後の一小節 )には元々ゲネラル・パウゼ(全楽器の休止 )が記されており、実際にそこで休止が挟まれることによる一瞬の短い沈黙の効果ったら畏怖を感じるほど神秘的ですから。機会があれば ぜひ一度お聴きになってみてください、オススメします。


「アウフヘーベン 」から連想する、ベートーベンの作曲過程

 ヘーゲルが 彼の弁証法の中で提唱した「アウフヘーベン 」には、実はもうひとつ 「あるものをそのものとしては否定するものの 契機としては保存し、より高い段階で生かす 」 という概念もあるのですが、私にとっては これこそベートーヴェンの作曲過程(プロセス )と絶妙に重なっている気がします。

ベートーヴェンは、常に あるいは殆どいつも 複数の作品を同時に着手しており、そのため内部で不断に営まれてゆく形成の過程、および変形の過程に、記憶が常に従っていけるとは限らないということ、それから見つけたものは書きつけて確保しておく必要があった - 

「(楽譜をスケッチのように手帳に書き留める )スケッチ帳を携帯して歩くことは 習慣となり、必要となり - 

ベートーヴェンは自身のスケッチ帳に、書きとめておいた楽想を あとになっても 必ず眼を通したのである。

「(見直した結果 )彼の興味をそそった個所は もう一度書き直され、以前に 一度捨ておかれた楽想も 再び取り上げられ、部分的には仕上げられた - 

ベートーヴェンのスケッチ帳は、彼の作品が断片的に発芽し、ゆっくりと成長していくのを具体的に見せてくれる 」


上記 青字部分 : スケルツォ倶楽部 過去記事 ⇒ 大作曲家のインスピレーション (着想、霊感、天啓より 引用

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