スケルツォ倶楽部 
Club Scherzo
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NHK-FMきらクラ ! ( 5/7放送回 )
ふかわりょう
氏の 「耳憑き 」の正体は、
メンデルスゾーンロバのいななき

ろば ふかわりょう氏

ある日、NHKきらクラ ! のパーソナリティを務めるD.J.ふかわりょう氏の頭の中で 突然 音楽が鳴りはじめた。

♪ こればっかりは、こればっかりは、iaah ! iaah !

インパクトある このフレーズばかりが 頭の中でループしつづける。

しかも鳴り止まない。

♪ こればっかりは、こればっかりは、iaah ! iaah !

・・・「耳憑きクラシック 」である。

この曲、何だっけ - 必死に脳内検索を駆使すれど タイトルが思い出せない。
こういう場合は 誰でもそうだろうが、ふかわ氏も苦しんだ。

♪ こればっかりは、こればっかりは、iaah ! iaah !

ああ、おかげで今日も眠れなかった、そんな明け方のベッドの中 ふかわ氏は きらクラの番組スタッフのひとり、こだまっちのことを ふと思い出した。博識な彼には 今まで尋ねて知らない曲はなかった。

そうだ、彼に訊けばいいじゃないか・・・
疲労困憊しつつ ふかわ氏は、藁にもすがるおもいで スマホに手を伸ばした。

こだまっち 「はい、もしもし ? 」
ふかわ   「おはよう、ふかわだけど。いつもの曲名探してくれるヤツ、頼むよ。 ♪ こればっかりは、こればっかりは、iaah ! iaah !
こだまっち 「ふ、ふかわさん ? どうしたんですか、しかも今朝はテンション低いですね。それ、葬送行進曲ですか ? 」
ふかわ   「ちがうちがう、もっとテンポ速いの。 ♪ こればっかりは、こればっかりは、iaah ! iaah !
こだまっち 「うーん、わ、わかりました。ちょっと時間ください

こだまっちは、ふかわ氏の鼻唄の録音を聴き直すと そのメロディをさらさらと楽譜にした。いつもどおり正解は 苦もなく判明するだろうと思っていた。
だが・・・
ふかわ鼻唄 (1)
あれーっ ? よくある単純なメロディみたいだけど - 何だったっけ、これ ?

♪ こればっかりは、こればっかりは、iaah ! iaah !

今度は こだまっちの頭の中で、ふかわ氏の鼻唄がループを始めてしまった。
今回は苦戦だな、こりゃ・・・

その日、多忙なこだまっちだったが、気分転換にと立ち寄った 都内某輸入CDショップ店頭で、棚から降ろされセール・ワゴンに放り込まれたディスクたちを無念そうに眺めている片山杜秀氏に たまたま出くわした。
片山杜秀 TOWER渋谷【7F】CLASSICAL、NEW AGE RELAXATION、AMBIENTELECTRONICAAVANT-GARDE
「こんにちは、片山先生 」
こだまっち片山氏とは 以前から昵懇(じっこん )の間柄である。

片山氏   「おや、NHKのこだまっちさん じゃありませんか 」
こだまっち 「特売品コーナーに 何か掘り出し物がありましたか。先生 ? 」
片山氏   「いえいえ、こういう マイナーなCDでも良心的な制作で、けっこう聴き所も多い名盤ばかりなんですよ。私も随分と雑誌やパンフレットに紹介記事を書いてきたものですが・・・ 結局売れなかったんですね 」
⇒ ここの会話部分、 nailsweetさんのLangsamer Satzレコード芸術 創刊800号に思う 」から 一部引用させて頂きました。

こだまっち 「ところで片山先生、このメロディって 何の曲でしたっけ 」
片山氏   「何ですか、クイズですか 」
こだまっちふかわ氏の鼻唄を口ずさんでみせる -
片山氏   「あー、それは メンデルスゾーン作曲の劇中音楽真夏の夜の夢 』の、ほら『序曲 』の中にも登場する、ベルガマスク舞曲のテーマじゃないでしょうか 」
片山氏、その場でさらりと正解を即答する。
ふかわ鼻唄 (2)
殆ど同時に こだまっち も膝を叩いていた。 - しまった、そういうことか。ふかわさんの鼻唄のメロディ - 頭から拍子をとってしまったから 判らなかったんだ、 一拍早くシンコペートさせてりゃよかったんだ !

こだまっち 「さすが先生、シェイクスピアの原作劇中で素人芝居の稽古をする村人たちの粗野な踊りのメロディですよね ! 」
片山氏   「そうそう、跳躍するユーモラスな音型は、妖精パックの魔法で 頭だけをロバに変身させられた(笑 ) 登場人物、職人ボトムの嘶(いなな )きを 模倣してると言われてますよね 」
こだまっち 「なるほど、あそこって ・・・ロバの鳴き声なんだ - 」
片山氏   「ところで、何かあったんですか ? 」


王様の耳はロバの耳
映画「パガニーニ・・・愛と狂気のバイオリニスト」 ろば
(ヴァイオリンで )実音の模倣をやってみせるのはパガニーニの十八番で、聴衆があまり上等でないときなど、サービスにやってのけて喝采を博していた。
あるとき(イタリア北部の街 )フェラーラでこのサービスをやった。彼はいろいろな鳥の鳴き声から始めて、雌鶏のコッコッコや雄鶏のコケコッコー、犬の吠える声、豚が鼻を鳴らす音、と ここまでは大受けで爆笑を買っていたが、ことのついでにと 調子に乗ったパガニーニはロバの鳴き声をやってのけたのである。彼は何も知らなかったが、当時フェラーラの人たちは他の町の人から“ロバ”と呼ばれていた。ロバとは「バカ 」のことである。とたんに怒った聴衆がステージめがけて突進してきた。“ロバ”は禁句であった。その人たちの前でこれ見よがしにロバの鳴き声をやってみせたのでは命がいくつあったとしても保たないであろう。
パガニーニは命からがら逃げ出して宿にたどりついたが、翌朝フェラーラから出てゆくときは神父に変装していかなければならなかった。
▲ 石井宏 / 著 「誰がヴァイオリンを殺したか 」(新潮社 )より
引用(青字部分 )させて頂くに際し 一部文章を整えました(“スケルツォ倶楽部発起人


 どなたもよくご存知、楽しい「動物の謝肉祭 」には 実にいろいろな動物が登場しますよね。ライオン、雄鶏と雌鶏、騾馬、カメ、象、カンガルー、水族館から森の奥のカッコー鳥かご、挙句の果てに 「化石 」まで・・・。
 この組曲の中でサン=サーンスが具体的に名前を明示していない動物が第8曲 「耳の長い登場人物 」 - これ明らかに「ロバ 」の鳴き声なんですが、上に引用した逸話どおり 昔からヨーロッパでは「バカ 」の同義語ゆえ 賢明な作曲者は 敢えてわかりきった呼び名をタイトルとするリスクを避け、ユーモラスななぞなぞに昇華させたものでしょう。
アルゲリッチ、フレイレ、クレーメル、マイスキー(PHILIPS) ギドン・クレーメル
▲ サン=サーンス 組曲「動物の謝肉祭 」
アルゲリッチ(ピアノ )、フレイレ(ピアノ )、グラーフェナウアー(フルート )、ブルンナー(クラリネット )、マイスキー(チェロ )、など オールスター・メンバー。
ギドン・クレーメル(Vn. )による 超粘着質な「ロバのいななき 」が聴けますよ。
録 音:1985年4月、ドイツ
音 盤:PHILIPS (416 841-1 )
現在は デッカDECCA

 
 ギリシャ神話にも「王様の耳はロバの耳 」という寓話がありました。民衆の声を聞こうとしない為政者の耳が なぜ「ロバ 」の耳なのか。 ― その理由は、もう明らかですよね。「ロバ 」でなければダメなんです。念仏を聞かせる「 」の耳でも、真珠をもらう「ぶた 」でも、そして小判をもらう「ねこ 」でも ダメなんです ! (笑 )。
ビックリ顔のにゃんこかと思ったら…出典httpstwitter.com


メンデルスゾーン:劇中音楽「真夏の夜の夢 」(全曲 )
~ 序曲、スケルツォ、アレグロ・ヴィヴァーチェ、歌と合唱(アレグロ・マ・ノン・トロッポ )、アレグロ・アパッショナート、コン・モート・トランクィロ、結婚行進曲、葬送行進曲、ベルガマスク舞曲(道化たちの踊り )、フィナーレ
フランス・ブリュッヘン(指揮 )18世紀オーケストラ
オルランダ・フェレツ、モニカ・モーニッツ(独唱 )
グルベンキアン合唱団
録 音:1997年 6月、ユトレヒト
音 盤:Glossa(GCD-921101 )

メンデルスゾーン、少年時代の肖像 (1) Felix Mendelssohn Frans Bruggen Orchestra of the Eighteenth Century - A Midsummer Nights Dream Frans Bruggen
 ブリュッヘン18世紀オーケストラによるGlossa(グロッサ )レーベルから最初にリリースされた、記念碑的ライヴ録音。最初に作曲された「序曲 」はメンデルスゾーンが 何と17歳の時の作品ですが、この当時の楽器編成と 初演時の感動の再現を目指すブリュッヘン18世紀オーケストラの「想いが結実した 」名演と絶賛されたレコーディングです。
 ロバの鳴き声が聴ける(笑 )メロディ「こればっかりは」だけで一曲出来てる「ベルガマスク舞曲 」 - ティンパニのとどろきとともに その低音部で強烈なリズムをとっているのが、同時代のベルリオーズも『幻想交響曲 』で使用していたチューバの前身「オフィクレイド 」(ステファン・ヴィック )、この音盤では そのオリジナルなサウンドも ご自分の耳で確かめられますよ。



おはなしのつづき
ふかわりょう氏 遠藤真理
・・・さて、その翌週、「正解 」を得て すっきりしたふかわ氏は、 NHK-FM きらクラ ! の収録スタジオで、マイクロフォンをはさんで差し向かいに座る もうひとりのパーソナリティ遠藤真理さんと、この一件を話題に 独特なトークに花を咲かせていた。

ふかわ 「あのメロディーったら、“こればっかりは、こればっかりは”って、空耳にも聞こえるじゃないですか 」
真理   「 - それにしても ふかわさんったら 曲の頭からじゃなかったのに、どうやって メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢 』までたどり着いたんですか 」
ふかわ 「そんな時はねー、真理さん、スマホに便利なアプリがあるんですよー 」
真理   「ハナウタ検索ですか ? 」
ふかわ 「いえ、もっと簡単。 こだまっち 』 っていうアプリを起動させるんですよ 」
真理   「(爆笑 )わたしも ちょっとダウンロードしてみよーっと 」

♪ NHK-FM きらクラ ! ⇒ NHK公式 番組HPは こちら

♪ 過去記事 NHK-FM 「きらクラ ! 」 - 番組パーソナリティ 遠藤真理さんの選曲センスは Very Good ! 


以上、本日の記事は
NHK-FMきらクラ ! ( 2017年 5月 7日放送 )
石井宏 / 著 「誰がヴァイオリンを殺したか 」(新潮社 )、
および nailsweetさんのLangsamer Satz「レコード芸術 創刊800号に思う 」から ヒントを頂きました。ここに感謝して報告申し上げます。


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