スケルツォ倶楽部 
Club Scherzo
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音楽に、鳥のさえずりを聴く。
シュローダーとウッドストックシュローダーとウッドストック-2シュローダーとウッドストック-3

 良いお天気ですね、“スケルツォ倶楽部発起人です。
 まだ朝夕は多少冷えるけど 休日には春を迎える野鳥のさえずりでも聴こうかと思いつき、ぶ厚いコートも一枚脱いで外出すれば 長かった冬とのお別れも体感できる - そんな今日この頃。

 “スケルツォ倶楽部”の更新をサボっていたら、ランキングも急降下中 (>_<)
 うーん、ブログ執筆だけじゃなく、仕事も勉強も練習も稽古も - やらなければ やらなかった分だけ 何ごとにも「結果 」は表れるものですね。
 とりあえず 何かの話題でつないでおかないと・・・ そうそう、前回の 短い回想談 「 初めての『田園 』交響曲 」の中で、第二楽章「小川のほとりの情景 」における 木管楽器(野鳥 )のさえずりについて少し触れましたが、そうだ 今日は これでいきましょう。 今の季節にちなんで「音楽に聴く 野鳥のさえずり 」をテーマに、軽くランダムに 思いつく端から並べてまいります。
 

Holland Baroque meets Jeremias Schwarzer イェレミアス・シュヴァルツァー
ヴィヴァルディ
フルート協奏曲第3番ニ長調 RV.428「ごしきひわ 」
イェレミアス・シュヴァルツァー (リコーダー )
オランダ・バロック
リリース年:2015年10月
併録曲:協奏曲第1番ヘ長調「海の嵐 」、第2番 ト短調「夜 」、協奏曲第6番 ト長調(以上 ヴィヴァルディ )、委嘱曲「ヴェネツィアの歌う庭 」(細川俊夫 )
音 盤:「音と雲 」Channel Classics(CCS-37615 )

 干支が酉(トリ )年ということもあってか 年始以降 NHK-FM「きらクラ 」では 毎回 をモティーフにした 何かしらの音楽が選曲され続けています。同番組のお気に入りパーソナリティ、チェリストの遠藤真理さんも 3月12日放送回で 「(鳥のさえずりは 古今の作曲家にインスピレーションを与えてきましたね 」、「鳥にちなんだ曲、たくさんありますよ 」とのナイスコメントともに リクエストを 紹介されていたのが、こちらの一曲でした。
 放送時間の都合で 第3楽章のみでしたが、ヴィヴァルディがお得意とする 野鳥のさえずり“生態模写”(そういえば、協奏曲集「四季 」の中にも - 「 」は言うまでもなく - 「 」のソロ・ヴァイオリン山鳩、かっこう、ひわの鳴き声を派手に模すパート、ありましたよね )が聴きどころなのは、むしろ第1楽章アレグロなんです。メリハリあるパーカッシヴな刻みも出色な若き古楽集団オランダ・バロック盤では シュヴァルツァーのソプラノ・リコーダーによる 生き生きと飛びまわる奔放なソロが素晴らしいです。

コロムビア‐デンオン・アリアーレ(COCQ-84176~7) 有田正広 ( コロムビア‐デンオン・アリアーレ ) 
フランソワ・クープラン
「恋のうぐいす 」Le rossignol en amour
有田正広(ピッコロ )
有田千代子(チェンバロ )
録 音:1998年12月、横浜みなとみらい小ホール
音 盤:コロムビア‐デンオン・アリアーレ(COCQ-84176~77 ) 
併録曲:
ドビュッシー「パンの笛:シランクス(1913年 )」、ヴィルジリアーノ「トラヴェルサ・ソロのためのリチェルカータ(1600年頃)」、テレマン「フランス風サンフォニー(1728年)」、モーツァルト「魔笛」~アリア「わたしにはわかる、愛の消え失せてしまったことが(1791年)」、フェルー「3つの小品(1921-22年)」、チーマ「ソナタ ニ調(1610年)」、ウッダール「セレナード(1870年頃)」、ドンジョン「3つのサロン・エチュード op.10 (1865年)」、クーラウ「ロンド ホ短調 op.10-7 (1810年頃)」、テュルー「グラン・ソロ 第13番イ短調 op.96(1846年頃)」、クヴァンツ「組曲 ホ短調(1750年頃)」、ランベール/オトテー“ル・ロマン”「ブリュネットとドゥーブル『ある日ぼくのクロリスは・・・ (1720年頃)』」、ブラヴェ「3つの小品(1750年頃)」、カー「イタリア風グラウンドによるディヴィジョン(1686年)」、福島和夫「冥(1962年)」

 鳥のさえずりを模した音楽といえば、歴史的にも この名曲を外すわけにはまいりません。
 本来は 1722年に作曲されたチェンバロ独奏曲(「クラヴサン曲集第14組曲~第1曲 )でしたが、クープラン自身が「フルートにとてもよく合います 」などというお墨付きのコメントを残してくださったおかげで、チェンバロ独奏のみならず フルートや この有田盤のように ピッコロを加えて演奏されることが多いのも ご存知のとおり。
 ベートーヴェンの「田園第二楽章 結尾(コーダ )に登場することになる うぐいすのさえずりの原点が ここで聴けます。澄んだフレーズの繰り返しに耳を傾けていると、楽譜の中から 一羽ずつ羽化した音符たちが順に起き上がっては優雅に飛び立ってゆく錯覚に襲われます。
 有田正広氏は 18世紀パリの名匠トマ・ロットによって製作された1キー バロック・ピッコロ(1735年 )を使用、歴史楽器で素晴らしい「うぐいす 」の谷渡り が楽しめます。早く目覚めた日曜日の朝、窓外でさえずる野鳥の声を“ライヴ”で 重ね合わせながら 有田盤でクープランの装飾音を聴く、そんな ぜいたくなひとときの至福。
クッションの上で寝る(2)
パンの笛フルート、その音楽と楽器の400年の旅 」については、以前も紹介しましたね。
⇒ スヌーピーまどろむ 「牧神の午後への前奏曲


Haydn_portrait_by_Thomas_Hardy_(Public Domain) Haydn String Quartets The Lark D.G.
ハイドン
弦楽四重奏曲第67番 ニ長調「ひばり 」Hob.3-63
ハーゲン弦楽四重奏団
併録曲:
弦楽四重奏曲第1番変ロ長調、同第74番ト短調「騎士 」
録 音:1988年、ケルン
音 盤:ドイツ・グラモフォン(UCCG-3202 )

 ハイドンには、その第1楽章第2主題のオーボエのリズムが「コッコ、コッコ 」と鳴きながら前後に細かく首を振って歩く 鶏の様子にしか聴こえなくなってしまう「めんどり 交響曲第83番ト短調 )もありますが、この話題は また別の日の話題にとっておきましょう。
 こちらは エステルハージ侯爵家のお抱え楽団時代からの盟友だったヨハン・トーストの依頼でハイドンが作った弦楽四重奏曲の中でも屈指の銘品。その「ひばり The Lark 」というタイトルは(またしても ? )ハイドン自身が名付けたものではありません。でも“未来の聴き手”たる 私たちにとっては、もはや第1楽章冒頭の旋律を ひばりのさえずり以外に聞こえてくることは ありません。「めんどり 」同様、困ったものです(笑 )。
 発起人オススメのディスクは、若き日のハーゲン四重奏団による - 第2ヴァイオリンがライナー・シュミットに代わった頃の - ムダのない快速テンポも心地良い、80年代の忘れられぬ一枚です。


ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」ブリュッヘン Beethoven_Public domain
ベートーヴェン
交響曲第6番 へ長調 作品68「田園 」
フランス・ブリュッヘン指揮 / 18世紀オーケストラ
録 音:1990年11月、オランダ
音 盤:PHILIPS / DECCA
 

 第2楽章「小川のほとりの情景 」 - 前回は 個人的に懐かしい パウル・クレツキ / フランス国立放送局管弦楽団 (コンサートホール )盤の思い出を 話題にしましたが、今日はベートーヴェン時代の木管楽器にスポットライトが当たる、フランス・ブリュッヘン / 18世紀オーケストラによる旧PHILIPS盤を。うーん、発起人 久しぶりに 空想のハイリゲンシュタットを散歩したくなります。


若きリヒャルト・ワーグナー ワーグナー 楽劇「ジークフリート 」~「森のささやき 」
ワーグナー
楽劇「ジークフリート 」~「森のささやき 」
ジョージ・セル指揮 / クリーヴランド管弦楽団
収録曲
:「ニーベルングの指環 」から 「ワルハラ城への神々の入城 」、「ヴァルキューレの騎行 」、「魔の炎の音楽 」、「森のささやき 」、「夜明けとジークフリートのラインへの旅 」、「ジークフリートの葬送行進曲 」、終曲「ブリュンヒルデの自己犠牲 」
ジョージ・セル指揮 / クリーヴランド管弦楽団
録 音:1968年
音 盤:CBS(ソニー クラシカル SRCR-9863)

 ショルティ / ウィーン・フィル = カルショーによる 楽劇「ニーベルングの指環 」全曲デッカ )盤には、イギリスの音楽学者デリック・クックによる「指環 」を理解するためのガイド「耳で聴く ライト・モティーフ分析 」が付いていました。国内盤には NHKアナウンサー篠田英之介のナレーションによって制作された日本語版(これだけでL.P.三枚組 ! )が特別に収録、ワーグナーの世界に心酔していた高校生時代の“スケルツォ倶楽部発起人、これを一体何度繰り返し聴いたことでしょう、本当にお世話になりました。
 この中で、Dr.クックは「ジークフリート第2幕の「森のささやき 」で、風にゆれ動く木々がざわめきながら 高い枝葉の隙間からキラキラ陽射しが届く様子を表す弦セクションの動きに乗せて さえずる「森の小鳥 」の動機が、実は 楽劇「ラインの黄金 」で最初に発せられる自然の声 = ラインの乙女ヴォークリンデの 下降し上昇する 伸びやかな五音音階の旋律に 小鳥の鳴き声の性格を帯びて ワーグナーが発展させた形である、ということを指摘しています。
 私 発起人が 中学生の時 最初に触れた「指環 」関連の音源が、このセル / クリーヴランドO.による名盤でした。今でも この楽劇のオーケストラル・ハイライトを聴こうと思ったら - マゼール / ベルリン・フィル(TELARC )盤を別格とすれば - やはり このセル盤がベストであろうと思います。
 中でも「森のささやき 」のアレンジは、これを手がけた編曲家名は不明ですが、白眉です。なにしろ実際の楽劇では 途中ジークフリートは葦笛を削ったり ファーフナーと決闘したり ミーメを倒したりと とにかく忙しく、せっかく美しい「森のささやき 」で小鳥のさえずりをじっくり聴きたいと私たちが内心願っても、ドラマの進行はともかく 音楽の停滞は避けられません。そこへ行くと、セル盤なら ジークフリートが森の奥深く独り佇む場面から美味しいところだけを拾い集めると 巧みに第2幕の終結部まで飛んでクライマックスを築くまでの工夫がとにかく秀逸で、かつてトスカニーニが晩年まで使用していた楽譜に、 さらにセルが手を加えた版を用いているようでした。


Andre Rieu in Concert Mercury(534 266-2)“ スケルツォ倶楽部「クラップフェンの森で」
ヨハン・シュトラウス二世
ポルカ「クラップフェンの森で 」
アンドレ・リュウ(指揮 & ヴァイオリン )Andre Rieu
ヨハン・シュトラウス・オーケストラ Johann Strauss Orchestra
録 音:1996年 アムステルダム、コンセルトヘボウにおけるライヴ
音 盤:Mercury(輸入盤534 266-2 )“Andre Rieu in Concert” 

 この賑やかなディスクは 以前にも紹介しましたが ⇒ こちら 今回は ポルカ「クラップフェンの森で 」における お祭り騒ぎ的な盛り上がりを話題とします。とにかく森の中をマウンテンバイクで疾走するようなスピード感にあふれ、オカリナのように可愛い音色のカッコー笛や鳥の擬音笛も活躍するかと思えば、挙句の果てに ニワトリまで鳴くというカオス(笑 )。。。
 カッコーの擬音と言えば もちろん「 ソ ↘ ミ 」ですが、本盤では 奏者が楽譜通り何度も繰り返した末に、一度だけ ドヤ顔で 「 ミ ↗ ソ 」と 逆走やらかすので、会場はもう大爆笑。
 その他、ヨハン・シュトラウス二世の舞踏曲の中で「鳥のさえずりが聴ける 」楽曲と言えば、やはりワルツ「ウィーンの森の物語 」、「春の声 」あたりがダントツに有名ですが、他にも ポルカ「ナイチンゲール 」とか、演奏される機会は少ないですが「おとり鳥 」というタイトルの独創的なワルツ(作品118 )もあります。 弟ヨーゼフポルカ「オーストリアの村つばめ 」が有名ですが、あ そういえば 父ヨハン一世には「クラップフェンの森 」というタイトルのワルツ(作品12 )も( ! )あったんですよー。


ケテルビー_Albert William Ketèlbey_スケルツォ倶楽部 ケテルビー作品集_エリック・ロジャーズ指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(デッカ )
ケテルビー
間奏曲「修道院の庭で 」
エリック・ロジャーズ指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、男声合唱団
併録曲:
ウェッジウッドの青、エジプトの秘境で、牧場を渡る鐘、中国寺院の庭で、心の奥深く、楽しいハムステッド地区、ファントム・メロディ、ペルシャの市場にて
録 音:1968年頃、ロンドン
音 盤:デッカ原盤(キング KICC-8222 )

 なぜか「ペルシャの市場にて 」だけが突出して有名な そんな作曲者による 隠れ名曲。ケテルビー自身の楽曲解説は 以下のようなものです - 古びた修道院の静かな中庭で 美しく花が咲きみだれ 緑濃い木々の枝には小鳥が集まって囀っている。礼拝堂からは修道僧によるミサの合唱「キリエ・エレイソン 」が聴こえてくる、鐘の音、荘厳なオルガンの響き・・・。
 ここで描写される小鳥は フルートによってさえずる以外には 擬音笛(バードホイッスル )と呼ばれる水笛が使われています。以前は 多くが竹製でしたが、最近では金属製、プラスチック製のものもあるとのこと。筒状あるいは球状の本体となる容器部分に水を差して管を吹くと 小鳥の鳴き声に似た音がするというものです。オーケストラの中で乱用するとオモチャっぽくなってしまう危険性も孕みますが、抑制を効かせて適度に鳴らせば、実に爽やかです。


RVW.jpg ヒラリー・ハーン_ヴァイオリン協奏曲 ロ短調(エルガー )DG
ヴォーン・ウィリアムズ:あげひばり
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン )
コリン・デイヴィス 指揮
ロンドン交響楽団
録 音:2003年12月、ロンドン
音 盤:D.G. 00289 474 5042
併録曲:
ヴァイオリン協奏曲 ロ短調(エルガー )

 原題は The Lark Ascending 舞い上がるひばり。もはや定訳となった この「揚げひばり 」なんていう言葉、日常ほとんど使いませんよね。コレ何なんだろうなー と 調べてみたら、俳句の季語 - もちろん「 」 - だそうです。
 独奏ヴァイオリンによる ひばりのさえずりを模倣するようなカデンツァが 曲の最初と最後に置かれているわけですが、とりわけ素晴らしいのは エンディングなんです。完全に無伴奏になってからのソロ・ヴァイオリンの音色は、どこまでも空高く舞い上がり どんどん小さくなってゆく野鳥の姿を 目を細めながら見上げるときの気持ちを体感できます。飛翔するひばりが視界からすっかり消えてゆくまでの美しい約2分間・・・ やがて徐(おもむろ )にヴァイオリン奏者が弓を降ろすと同時に 最後まで空を見上げていた 私たち聴者は、深いため息をつきます。
 ・・・はい。それでは 作曲者からこの名曲を献呈され 初演でもソロを務めた女流ヴァイオリニスト マリー・ホールに重ね合わせ、ご一緒に ヒラリー・ハーンによる美技を聴きましょう。


グスタフ・マーラー マーラーの戯画化
 マーラーの音楽にも鳥のさえずりは 豊富に登場します、ちょっと思いつくだけでも 交響曲第1番、第2番「復活 」、 第3番(スケルツォ楽章 )、第4番、第7番、「大地の歌 」、あるいは歌曲「さすらう若人の歌 」、「お高い知性への賛美 」、「夏の歌い手交代 」、さらに初期のカンタータ「嘆きの歌 」など、随所に登場しますよね。マーラー作品については、また別の機会に 詳しく書きたいと思ってます。


ラヴェル Maurice Ravel _ ラヴェル、ストラヴィンスキー、ロリン・マゼール ニューヨーク・フィル DG
ラヴェル:
「ダフニスとクロエ 」組曲第2番から「夜明け 」
ロリン・マゼール指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
録 音:2007年4月、ニューヨーク エイヴリーフィッシャー・ホール、ライヴ
併録曲:
ラヴェル スペイン狂詩曲、ストラヴィンスキー 交響詩「ナイチンゲールの歌 」、「火の鳥 」組曲 1919年版
海外盤:D.G.(00289 477 7175 )

 この演奏は 素晴らしい。 夜明け - まるで温かい湧水が滾々(こんこん )と溢れ せせらぎとなって流れ続けるようなフルートによる分散和音の不思議な繰り返しとハープの繊細なグリッサンドが効果的で、徐々に白んでくる空に 美しく歌いだす弦と木管の小鳥たち、羊飼いの笛、そして遂に朝日が昇って光輝く大自然を描写する ニューヨーク・フィルの色彩感は もう言葉を失うほどの眩しさ。 このディスクは、いかにもライヴ録音らしく マゼールの煽情的なタクトが オケを “ノせている” - そんな一瞬が 見事に切り取られています。
 このレコーディング当時(2007年前後 )ドイツ・グラモフォンは“DG コンサーツ”シリーズ という試みに着手していました。世界の名だたるオーケストラの定期コンサートの実況録音をオンライン限定で販売するというもので、その中から評判の良かった演奏を厳選CD化し、市場へ出していくという企画でした - たしか、そんな記憶があります。このディスクのカップリング選曲は、ストラヴィンスキーバレエ組曲「火の鳥 」、交響詩「うぐいすの歌 」と づくし(笑 )。


「鳥たちの時代 」吉松隆 作品集(カメラータ・トウキョウ 25CM-178~9 ) 吉松隆
吉松 隆:「チカプ 」Chikap
青木 明(指揮 )/ 東京フルートアンサンブル・アカデミー
録 音:1982年2月15日、石橋メモリアルホール
音 盤:「鳥たちの時代 」吉松隆 作品集 (カメラータ・トウキョウ 25CM-178~9 )

 自作のモティーフに「 」を偏愛し 多用する吉松隆氏。タイトルの「チカプ 」とは、アイヌ語で「 」の意だそう。
 ピッコロ2、フルート8、アルト・フルート2、バス・フルート2、コントラバス・フルート1 - という、フルート15人編成アンサンブルのために書かれた「鳥たちの歌の点描だけで出来た音楽 」 - これは 記念すべき初演のライヴ・レコーディングですが、そのステージ上で 左右3本ずつ計6本の独奏フルート群 = と、後方9本の中低音フルート群 = 胴体が離れて配置され、鳥の形を形成するという秀逸なアイディアも 耳で確かめられます。
 この曲との出会いは たまたまでしたが その衝撃が忘れられません。何気なくスイッチを入れたFM放送の途中から流れ出してきた音楽 - それは 深い自然の森の中をあちこち自由勝手にさえずる、たくさんの鳥たちが、ふと ある一点を境に - まるで偶然のように - 一つにまとまったかと思いきや 全員が 同じ上昇を描くカーヴで静かに翼を広げると ふわーっと止まってみせたのです - うわ 何だろ、この音楽は ?  私は その瞬間の神秘的なまでの美しさに 圧倒されました。その日から、私も 吉松作品には注意するようになったものです。
 ここにオススメするカメラータ・トウキョウの2枚組ディスクは、そんな吉松氏による 鳥たちの音楽を中心にまとめられた ロングセラー・アルバム。管弦楽曲「朱鷺に寄せる哀歌 」、「鳥たちの時代 」、フルートとピアノのための「デジタルバード組曲 」、クラリネットとピアノのための「鳥の形をした4つの小品 」、2台のピアノのための「ランダムバード変奏曲 」の他、交響曲第2番「地球(テラ )にて 」が収録されています。


レスピーギ作品集_クラウディオ・シモーネ指揮 イ・ソリスティ・ヴェネツィ レスピーギ Respighi
レスピーギ
組曲「鳥 」
併録曲:
ボッティチェリの三枚の絵、リュートのための古風な舞曲とアリア 第1組曲、同第3組曲
クラウディオ・シモーネ 指揮
イ・ソリスティ・ヴェネティ
録 音:1987年3月 ヴェネツィア、コンタリーニ宮
音 盤:エラート(WPCS-10339 )

 ローマ三部作で有名な イタリア近代の作曲家オットリーノ・レスピーギ(1879~1936 ) - 「リュートのための古風な舞曲とアリア 」のように イタリアを中心とした中世からルネサンス、バロック期にかけて 埋もれてしまった音楽作品を拾い集め、これらをマテリアルにして自由な編曲の手を加えるという 新古典主義的な試みによっても知られています。
 そのタイトルも ズバリ「 」は、新古典主義の成功作で 17~18世紀イタリア、イギリス、フランスのチェンバロ(クラヴサン )作品が素材になっています。弱音器を付けたヴァイオリンが描写するの鳴き声の原曲は ジャック・ド・ガロー、「雌鶏(めんどり ) 」の原曲は ジャン・フィリップ・ラモー、全曲中でもさえずりの描写性が秀逸な 第5曲「かっこう 」の原曲は ベルナルド・パスキーニの「かっこうの鳴き声を持つトッカータ 」、フルートが三度で古典的なかっこうの鳴き声を再現します。

 さて、レスピーギと「鳥のさえずり 」から連想される曲と言えば、クラヲタの皆さまなら やっぱり交響詩「ローマの松 」(1924年 )でしょうね。
レスピーギ ローマの松(マゼール)デッカ ロンドン K35Y-1009
レスピーギ:交響詩「ローマの松 」
ロリン・マゼール / クリーヴランド管弦楽団(1976年、デッカ/ロンドン K35Y-1009 )

 第3曲の「ジャニコロの松 」終盤、あの静寂のクラリネット・ソロに続いて、録音された「小鳥の声 」を レコードGramophoneでコンサートホールに流せ、という指定があるのはご存知のとおり、斬新で 素晴らしいアイディアですね。これは 私が知る限り 音楽史上初の試みではなかったかと思います。

blackbird paul mccartney ミニー・リパートン_ラヴィング・ユー(epic )
▲ レスピーギのアイディアは、その後、生録の「鳥のさえずり 」を 楽曲にオーヴァーダビングする 音響効果によって知られる、たとえば ザ・ビートルズ(ポール・マッカートニー )による「ブラックバード 」や ミニー・リパートンの「ラヴィング・ユー 」といった、それら「未来の名曲 」たちに影響を与えた、遥か先触れとなったものでしょう。


ウィンナ・ホルンの饗宴 (2) ウィンナ・ホルンの饗宴
「ウィンナ・ホルンの饗宴 」 In Honour of St.Hubert
ウィーン・ヴァルトホルン合奏団 Wiener Waldhorn Verein
録 音:1969年5月、ウィーン・ゾフィエンザール
収録曲:
「自然における神の栄光(ベートーヴェン ) 」、「聖フーベルト・ミサ(シュティーグラー ) 」、狩猟開始の合図(シャントル )、森のこだま(シュティーグラー )、アウホーフ狩りの行進曲(シャントル )、短い狩猟の合図(オーストリア狩猟儀礼法 )、集合の合図(ゴラー )、陽気な前奏曲(フライベルク )、古風な舞曲(ペーク )、歌劇「魔弾の射手 」~ 狩人の合唱(ウェーバー )、小ポルカ(ゼイフリート )、森の住民の挨拶(モーツァルト )、リューツォーの荒々しい大胆な狩り(シュティーグラー )、歌劇「タンホイザー 」~ 狩りの合図(ワーグナー )、獲物くらべ(シャントル )、オーストリアの狩りの歌(ヴンデラー )、森の喜び(リフテ )、狩りの終りの合図(シャントル )、歌劇「ヘンゼルとグレーテル 」~ 夕べの祈り(フンパーディンク )
音 盤:LPロンドン/キングSLA-1026、CDデッカ/タワーレコードPROC-1080

 - 「ホルン・アンサンブルのレコード 」といったら、少しでもホルンに触れたことのある人なら おそらく真っ先に この一枚を挙げるのではないでしょうか、70年代初頭 デッカ / ロンドンの名盤です。L.P.時代にはA面を占めていた“ウィンナ・ホルンの父シュティーグラー作曲「聖フーベルト・ミサ 」も もちろん素晴らしいのですが、ハプスブルク帝政時代の王侯貴族による狩りの一日を再現したB面を最後まで聴いたら もう誰しもウィンナ・ホルンの魅力的な響きにハマってしまうこと請合いです。魅力的な自然倍音も 当たり前のように炸裂。そんな「狩猟開始の合図 (シャントル ) 」が始まった途端、リスニングルームは 野鳥のさえずりS.E.(効果音 )でいっぱいに満たされ、私たちを一瞬でウィーンの森に連れ去ります。

モーツァルト:歌劇「魔笛」(RIAS室内合唱団/ベルリン古楽アカデミー/ヤーコプス) モーツァルト
モーツァルト
歌劇「魔笛 」
ルネ・ヤーコプス指揮
ベルリン古楽アカデミー、RIAS室内合唱団
ダニエル・ベーレ(タミーノ )Daniel Behle
録音:2009年11月、ベルリン
音盤:Harmonia Mundi HMC-902068.70

 第1幕、森の中に建つ神殿の前で「パミーナはまだ生きている 」という啓示を受けたタミーノが 神に感謝しつつ オカリナのように柔らかな響きの魔法の笛を吹き鳴らすと、獣や鳥が平和的に集まってきて 王子を歓迎してくれるという、メルヘンチックな場面に使われる音楽です。
 このヤーコプス盤では「何という不思議な笛の音だ 」という個所で 鳥がさえずる「生録音 」がフェイド・インしてきます。レスピーギの場合と違って、モーツァルトがこれを指示したわけではありません(笑 )が、とにかく このディスクはすべてが新鮮で 好印象です。いや 待てよ ? この鳥のさえずり って、電子音かも ?


 あー、その他、ドヴォルザーク交響曲第8番とか サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭 」の「大きな鳥かご 」、あるいは ディーリアスの「春 初めてのかっこうを聴いて 」、さらには オーヴェルニュの歌バイレロ 」とか カザルスの あの感動的な「鳥の歌 」など・・・ についても 本当はもっと触れたいところでしたが、今宵は 少し疲れちゃいました。 残りは またいつかの次回に延期させて頂きましょう。 ここまで読んでくださり、どうもありがとうございました。

メシアン 鳥のカタログ_ウゴルスキ_DG
▲ こちら 以前話題にした アナトール・ウゴルスキのピアノ・ソロによるD.G.盤 メシアンの「鳥のカタログ 」全曲盤 CD 3枚組、60ページ以上の解説書・・・  未聴のまま いまだにCD棚のこやしに(笑 ) なっております。


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