本記事は、1月 15日 「人気記事ジャズ ランキング 」 で 第1位となりました。
皆さまのおかげです、これからも 何卒よろしくお願い申し上げます。
   

Getz Children Of The World (CBSソニー 25AP-1696 ) スケルツォ倶楽部 ⇒ 全記事 一覧は こちら
午後のジャズ喫茶 「カフェ ソッ・ピーナ」から
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マイケル・フランクス流 “新年の祝い方”
~ 冬のコンセプト・アルバム
ウォッチング・ザ・スノー 」Watching The Snow

Michael Franks - Watching The Snow 2003 マイケル・フランクス近影_スケルツォ倶楽部

 あけましておめでとうございます、“スケルツォ倶楽部発起人のほう )です。そして 皆さまには ご無沙汰のお詫びもしておかなくっちゃ。
 さて、久方振りに 近所のお気に入りのジャズ喫茶「カフェ ソッ・ピーナ 」までぶらぶらと歩いていけば - あ、開いててよかった、お正月も変わらず営業中ね。そして 変わらぬのは いつもと同じ閑散とした店内・・・。

わたし    「マスター、あけましておめでとー ! 今年も元旦から営業、エライわねっ 」
マスター   「おめでとうございます、奥さん。随分久しぶりのご来店じゃないですかー。以前もお正月においでになった時、同じような会話をした記憶ありますけど(笑 )、なにしろボクはオヤジの代から譲り受けたこの建物で寝泊まりする以外には 大好きな音楽を聴くことしか能がない、気楽な独り身ですからね 」
わたし    「そうだったわねー、お正月もクリスマスも、お店の営業には関係なかったわけね 」
マスター   「はい、ソッ・ピーナは お盆も バレンタインも 独立記念日も イースターも、年中無休です。ただこの時期だけは 問屋も銀行もお休みになるんで、さすがに食材の仕入れと釣り銭の確保だけは ちょっと心配ですけどね 」
わたし    「なるほど、少しは苦労もあるのね。 」
マスター   「・・・ムッ・・・ ご注文をどうぞ 」
わたし    「そうね、それじゃ 苦くないエスプレッソください。 」
マスター   「はあ ? 濃くて苦いのがエスプレッソですよ。そんな味覚がコドモな(笑 )そんな奥さんには・・・そうですね、ブラジル風 カフェ・コン・レイテレイチ )Café com Leite がおススメですね 」
わたし    「 ? 」
マスター   「エスプレッソに多めの砂糖と熱いミルクを加えた飲み方です。さ どうぞ、ラテカプチーノにも似てるでしょ 」
わたし    「ふーふー(一口飲む )違いはわかんないけど・・・うーん、でも美味しいー。ブラジル風かー。そういえば 店内に流れている今日の音楽も、季節外れのボサノヴァね 」
マスター   「ミュージシャン、誰だか わかります ? 」
わたし    「もちろんよ。この洗練されたシティ・エレガンス(笑 )を感じさせる、ゆったりしたボサノヴァの快適なリズムで 呟くように囁く男声ヴォーカルったら、マイケル・フランクス以外いないでしょ 」
マスター   「ご明察 !(拍手 ) 」

わたし    「でも、これ・・・ ええっとー『ブルー・パシフィック 』じゃないよね 」
Michael Franks‎– Blue Pacific 1990 Michael Franks - Abandoned Garden 1995 
マスター   「違います、もう少し最近のアルバムです 」
わたし    「うーん、わたし マイケル・フランクスのアルバムって、名盤『アバンダンド・ガーデン(1993年)』以降は、実は 聴いてないんだ。ね、ディスクのジャケットを見せてよー、マスター 」

マイケル・フランクス 初めてのウインター・アルバム『ウォッチング・ザ・スノー 』・・・ (2)
マスター   「はい、これです 」
わたし    「 ! ええっ、意表を突いて 雪景色・・・ 」
マスター   「さすが奥さん、驚くところ 正しいです。夏男マイケル・フランクス、初めてのウインター・アルバム『ウォッチング・ザ・スノー 』
わたし    「(興奮しながら )最初から聴かせて頂戴。 」

Michael Franks - Watching The Snow 2003 (2)マイケル・フランクス Michael Franks ウォッチング・ザ・スノー Watching The Snow コロムビアミュージックエンタテインメント(COCB-53124 )
マイケル・フランクス Michael Franks
ウォッチング・ザ・スノー Watching The Snow

リリース:2003年
音 盤:コロムビアミュージックエンタテインメント(COCB-53124 )

参加ミュージシャン:
  Michael Franks (Vocal )
  Jay Anderson (Acoustic Bass )
  Jay Azzolina (Guitar )
  Charles Blenzing (Producer、Piano、Keyboards )
  Café (Percussion )
  John Clark(French Horn )
  Chris Hunter (Saxophones & Flutes )
  Billy Kilson (Drums )
  Romero Lubambo (Guitar )
  Veronica Nunn (Vocal )
  Alex "Sasha" Sipiagin (Trumpet & Flugelhorn )
収録曲(全曲マイケル・フランクス 作詞/作曲 ):
The Way We Celebrate New Year's、Watching The Snow、Christmas in Kyoto、My Present、I Bought You a Plastic Star、Said the Snowflake、The Kiss、When the Snowmen sings、Island Christmas、My Present(reprise )


Charles Blenzig Charles Blenzig with Michael Franks at studio Young Michael Franks
▲ プロデュース:チャールズ・ブレンツィング(左 ) & マイケル・フランクス

ライナス(雪の日)
1:ザ・ウェイ・ウイ・セレブレイト・ニューイヤー'ズ
The Way We Celebrate New Year's (06:22)

マスター   「一曲目、マイケル・フランクス流 “新年の祝い方 ”とでも訳しましょうか 」
わたし    「冒頭にこのタイトルということは、たとえばビング・クロスビーの『メリー・クリスマス 』や山下達郎の『シーズン’ズ・グリーティングス 』のような いわゆる“クリスマス・アルバム”ではない、という主張ね 」
マスター   「“冬のアルバム”というコンセプトなので クリスマス・キャロルや聖夜にちなんだスタンダード曲などは 一切無し。その代わり 全曲オリジナル構成ですから 短いクリスマス時期に限定されず、年が明けても流せるアルバムです 」
わたし    「クラベスやマラカスなどとともに、歯切れの良いボサノヴァのリズムを刻むガット・ギターに合わせ、そーっとマイケル・フランクスが囁く、その背後にクラウス・オガーマン風なストリングスがふわーっと降りてくる・・・ もう最高のスタートね 」
マスター   「リフレインの各節を締め括る歌詞“The Way We Celebrate New Year's”とマイケルが歌う部分ったら、まるで読んでいた本のページを折り返してしおりを挿む - みたいな、そんな独特で不思議なメロディ・ラインでしょ
わたし    「いいねー。その歌詞の中に チャーリー・パーカーサリンジャーが登場するところも、良い意味で いつものマイケル・カラー全開だし、Alex "Sasha" Sipiagin のフリューゲルホーンのソロや ジェイ・アッツォリーナのリラックスしたアコースティック・ギター ソロなんかも最高ね 」。


Snoopy Woodstock in Snow(1) Snoopy Woodstock in Snow(2)
2:ウォッチング・ザ・スノー
Watching The Snow (05:40)

マスター    「暖かい部屋で恋人と二人っきり、毛布にくるまって窓外の雪景色を眺める - そんな満ち足りた気分を歌う、アルバム・タイトル曲です。フリューゲルホーン、サックス、フルートの三管にピアノ・トリオという楽器編成。リズムはゆったりとした4ビート、アコースティック・ジャズのサウンドも魅力的なナンバー・・・ 」
わたし    「キーはE♭変ホ長調。歌詞の中に 画家フェルメール、詩人フロストが顔を出しているわね 」
マスター   「マイケルお気に入りのモダンジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクの名前も登場してますよ 」
わたし    「ね、この曲の途中 マイケルが“Surprised their outer branches seem snow-lost, As in a poem by Frost ( 木々はフロストの詩のように雪に埋もれている )”って歌うリフレインの後、アコースティック・ピアノが単音のドミナントをオクターヴ下降( B♭ B♭ )で繰り返し静かに打つところ・・・
楽譜  Watching The Snow
 - まるで空から舞い落ちてくる雪片を音で表現してる気がする・・・ ! 」
マスター   「おーっ ! 確かに、そこは要注意ポイント、ぼくも同意します(この後でまた詳しく述べます ) 」


マイケル・フランクス氏、日本で挙式
3:京都のクリスマス
Christmas in Kyoto (04:48)

マスター   「親日家で有名なマイケル・フランクス、若い頃 来日時に赤坂の日枝神社で神前結婚式を挙げた逸話は よく知られていますよね 」
わたし    「なにしろワーナーBros.のファースト・アルバム『アート・オブ・ティー 』Art of Tea は、わが国の茶道 - 幽玄、禅、侘び寂び - への深い関心の表明だったし、『鹿の園で会いましょう 』Meet Me in the Deerpark(アルバム『バーチフィールド・ナインズ 』に収録 )も奈良公園のことだし、さらに 傑作曲『東京の夜は雨 』 Rainy Night in Tokyo(アルバム『パッションフルーツ 』に収録 )など、日本をテーマにしたマイケルの楽曲なら いくつもすぐに思いだせるなー 」
Michael Franks - Art of Tea 1975 Michael Franks - Burchfield Nines 1978 Michael Franks - Passion Fruit 1983
マスター   「ここでは愛妻と過ごした冬の京都での楽しい思い出を綴ります。トランペット、サックスの二管とギター・トリオ、これにアコースティック・ピアノがオブリガートで割り込むという編成、ごく控えめに加わるストリングスも効果的です 」
わたし    「素晴らしい一曲、アルバム中でも 特にわたしのイチ押し 」
仁和寺
▲ 京都の雪景色は © 2016 京都フリー写真素材集 からお借りしました。 感謝申し上げます。

京都のクリスマス
Christmas in Kyoto


キョートですごした
クリスマスが忘れられない
小さなホテルの部屋からは五重塔
見おろしたら
たくさんの仏像が並んでた
それらはひとつとして同じものはなくて
まるで あの監督の映画みたいだった、
って、誰だっけ ?  ええと・・・アキラクロサワ !

キョートですごしたぼくたちの
クリスマス、忘れっこないよね ?
きみがまとったキモノに施された
絹のオーナメントのなんと素敵だったことか
おかげでツリーはなくてもよかった
覚えているだろう
きみの優しい指と高揚した想いが
ぼくの心をとらえた

あのときキョートですごしたクリスマス
あのときキョートですごしたクリスマス
きみとすごした
キョートでの、それはパーフェクトなクリスマス

キョートで祝ったクリスマス
すべてが望遠写真のよう
きみとぼくのふたりだけ
心の底から与え合うことが
どれほど素晴らしいかを
教えてくれた

そして忘れてはならないのが
ホテルからもらった おサケと
クリスマスのごちそう
カッパマキ with ワサビ

窓の外を見ると
いつのまにか雪が降り始めていたね
まるで台本どおりに
ぼくたちのために降ったようだった

あのキョートでのクリスマスを
ずっと忘れないだろう
あの日 煙突を上り下りしていたのは
サンタときみだけだった


(国内盤所収 田中まこ訳詩に 発起人、少し手を加えさせて頂きました )


My Present
4:マイ・プレゼント
My Present (04:28)

マスター   「ぼくが一番欲しかったプレゼントこそ きみだった、という歌詞の ゆったりした美しいボッサ・バラード。左右のスピーカーに大きく振れるトレモロを深くかけたエレクトリック・ピアノ (チャールズ・ブレンツィング )とウッド・ベース (ジェイ・アンダーソン )の太いアコースティックなサウンドとが一つに溶け合い、さらに遠景からストリングスが音のキャンバスを淡く縁(ふち )どる、そんな精妙さです 」
Charles Blenzing Jay Anderson Chris Hunter
わたし    「出色なのは、フレージングも音色もウェイン・ショーターのプレイを連想させるソプラノ・サックスね。一体誰が演奏しているのかと思ってパーソネルを調べてみたら - 」
マスター   「晩年のギル・エヴァンススイート・ベイジルを拠点に率いていたビッグ・バンド(マンデイ・ナイト・オーケストラ )で活躍していた、名手クリス・ハンター Chris Hunter ですよ。彼は、マイケル・フランクスが2003年に来日した際のツアー・メンバーにもその名を連ねていました 」
わたし    「へー、本当にクリス・ハンター ? しばらく名前を聞かなかった気がするけれど、今もしっかり活躍していたのね。かつて彼のアルト・サックスのプレイを聴くと、そのエモーショナルな音色と過剰なヴィブラートが似ているせいで デヴィッド・サンボーンと比べられて批評されることが多く、ひどく割を食ってたという気の毒な印象しかないけど、ここで聴けるソプラノの抒情的プレイは文句なく素晴らしいわね 」
マスター   「この曲は、アルバムの掉尾に もう一度再登場します 」


Michael Franks_ I Bought You a Plastic Star
5:アイ・ボウト・ユー・ア・プラスティック・スター
I Bought You a Plastic Star (03:34)

わたし    「オルゴールの音を模したシンセサイザーと、休符で立ち止まるたびに 律儀に一度ずつ鳴らす鈴の音がなんとも可愛らしいイントロ。レイジーな 4ビートのリズムに乗せ、アルミ製のクリスマス・ツリーに飾るプラスチック製の星のオーナメントに想いを託す、歩く速度のスケルツォ的ブルース(笑 ) 」
マスター   「アルバム中 この曲だけが1997年にワーナー・レーベルのクリスマス・アルバムジャズ・X’masパーティ 』でも聴かれた既発曲。97年盤は、マット・ピアソンのプロデュースのもと、ボブ・ジェームス、ジョシュア・レッドマン、ブラッド・メルドー、アル・ジャロウ、ベラ・フレックなど ワーナーBros.レーベルのジャズ系アーティストが集い、全曲ニュー・レコーディングを収録したディスクでした 」
Warner Bros. JAZZ X’mas Party 1997 マイケルとカーク・ウェイラム(Warner Bros.)
▲ ワーナー Bros. ジャズ・X’masパーティ
 マイケル・フランクスは、一曲のみ「ア・プラスティック・スター 」 I Bought You A Plastic Star For Your Aluminum Tree を携えて参加。アルバム「ウォッチング・ザ・スノー 」に収録されたヴァージョンと聴き比べるのも、興味深いですね。
 この97年盤の『ア・プラスティック・スター 』におけるバッキング・ミュージシャンは、短いながらも豪快なソロを聴かせるカーク・ウェイラムKirk Whalumのテナー・サックス、ラリー・ゴールディングス Larry Goldings(アコースティック・ピアノ )、ピーター・バーンスタイン Peter Bernstein(ギター )、ラリー・グリナディエール Larry Grenadier(ベース )、ジェフ・バラード Jeff Ballard (ドラムス )、ラフなヘッド・アレンジだけで一気呵成にレコーディングしてしまったような、草書的な良さを残した演奏です。
アルバム収録曲(ミュージシャン名 ):
Santa Claus Is Coming To Town(Joshua Redman And Brad Mehldau )、 Celebrate Me Home(Al Jarreau )、A Cradle In Bethlehem(Kirk Whalum )、 I Bought You A Plastic Star For Your Aluminum Tree(Michael Franks )、 Our First Christmas(Gabriela Anders )、Silent Night(Brad Mehldau )、 Have Yourself A Merry Little Christmas(Boney James )、I'll Be Home For Christmas(Kevin Mahogany )、Pure Imagination(Mark Turner )、Christmas Time Is Here(Brad Mehldau )、Personent Hodie、Sing Aloud On This Day(Bob James )、White Christmas(Bela Fleck )
リリース:1997年
音 盤:ワーナーミュージック・ジャパン(WPCR-1680 )



最初に降りた雪片_by C.シュルツ
6:セッド・ザ・スノーフレイクス
Said the Snowflake (04:49)

マスター   「フロントをトランペット、サックスの二管が務め、これにピアノ、ベース、ドラムスというリズム・セクションが4ビートで支えるアコースティックなクインテット編成、60年代ブルーノートの典型的なサウンドを連想します。さらに この詩の中には、旧き良き時代に活躍した映画監督フランク・キャプラビング・クロスビーの名前まで登場 - 」
わたし    「クリスマス・イヴの夜、舞い降りてくる一片のスノーフレイク(雪片 )が主人公にささやきかける - なんともドリーミーな設定ね 」
マスター   「この詩はホント魅力的です。スノーフレイクが舞い落ちながら『ねぇねぇ、わたしを見て 』、『山ほど降ってくる雪片の中で、最初に空から落ちてきたのは、わたしなのよ田中まこ 訳 ) 』と主張する、そんな歌詞ったら もう比類のない可愛らしさ 」
わたし    「スノーフレイクが、『わたしを見て(Look-at-Me )』って歌う部分、 ミ・ファ・ソ”って上昇する短い音型なの 」
楽譜 Look at me, Little me
マスター   「そ、その ミ・ファ・ソ”の スノーフレイク音型とは・・・ もしや 」
わたし    「あ、やっぱりマスターも気がついた ? それも この後で また詳しく述べようかなと思ってます(笑 ) 」


(3)和解 ?
7:ザ・キッス
The Kiss (04:40)

マスター   「大晦日の晩 - 11時57分 - 一年を振り返りつつ 来年まで 愛する恋人(妻 )を抱きながら 至福の会話キス - を交わせば、時間も止まる・・・と歌う、美しい内省的なモノローグ 」
わたし    「“あえて言うなら 君は僕の生きがい”とか“この旅がどこで終わろうとも 君がそばにいる限り 僕は心の中に幸せを抱えて 生きていける”(田中まこ 訳 )なーんて・・・ああ、こんな台詞を 誰か格好いい男性に耳元で言われてみたいものだわー、シチュエーションによっては わたしきっと泣いてみせる 」
マスター   「イケメンのご主人(“スケルツォ倶楽部発起人 )様に今晩あたり 耳元で言ってもらえばよいじゃないですか、奥さん ? 」
わたし    「あはは、ダメダメ、笑っちゃいそう(すでに笑 ) 」
マスター   「そ、それじゃ・・・ ぼ、ボクじゃ どうですか ? 」
わたし    「(あっさりと )想定外ね、マスターじゃ 」
マスター   「くーっ、クリス・ハンターの切ないソプラノサックス・ソロ、素晴らしくてもう泣けますから 」


Snoopy Snowman
8:ホエン・ザ・スノーマン・シングス
When the Snowmen Sings (04:18)

わたし    「それで、こんどは 雪だるま が主人公なのね(笑 ) 」
マスター   「はい。庭で雪だるまの歌う声が“ピアニッシモ”ならぬ“スノーイッシモ”っていう歌詞にも笑えますし、そんな雪だるまが“僕にも連れあいのスノーウーマンを作ってくれないかなー”なんて頼んでくるところもユーモアたっぷりですよね 」
わたし    「雪だるまくんったら マスターと同じ独り身だったわけね 」
マスター   「そう。“氷点下の風に吹かれて 幸せな気分で一緒に凍りたい”なんて もう身につまされて 悶絶ですよ 」
わたし   「この曲に限らないけど、どれもすごく細部にこだわった音楽づくりよね。たとえば、雪だるまが“ 氷柱(つらら )のヴィブラフォンを叩く Play his icical vibraphone”って描写する歌詞のバックでは、わざわざ几帳面にヴァイブが鳴ってるの ! 」
マスター   「よく気づきましたね、奥さん。そこだけのために動員されたヴァイブの音を除けば、この曲の楽器編成も 6曲目“Said the Snowflake”と ほぼ同じ、モダンでアコースティックな60年代ブルーノート風です 」
わたし    「たしかに、ハービー・ハンコックの『ドルフィン・ダンス 』(ブルーノート 4195 『処女航海 』ラスト曲 )あたりの、趣味のよいモダンジャズ・サウンドを再現しているようにも聞こえる 」
ブルーノート4195 ハービー・ハンコック 処女航海 1965 Michael Franks sleeping gypsy 1977 
マスター   「きっとマイケル自身、ジャズでもこの辺りが好みなんでしょうね。名作『淑女の想い 』Lady Wants To Know(アルバム『スリーピング・ジプシー 』一曲目 )の歌詞の中にもマイルス(・デイヴィス )コルトレーンの名前を織りこんでいましたっけ 」
楽譜 When it snows then the Snowman Sings
わたし    「この歌のサビの歌詞にも『雪が降りだすとWhen-it-Snows )』って歌うところで ミ・ファ・ソ”のスノーフレイク音型が 繰り返し出てくるんだよ 」
マスター   「 おお、本当だ ! 」


Snoopy Island Christmas
9:アイランド・クリスマス
Island Christmas (05:43)

マスター   「ヴェロニカ・ナン Veronica Nunn とのデュエット曲です 」
わたし    「ヴェロニカ・ナン・・・ って、彼女は誰なのかしら ? 」
マスター   「ツアーメンバーの一人で、93年以来 長らくバック・コーラスを務めてきた実力派の歌手です。マイケル・フランクスの、現在(いま)のところ最新作となるアルバム“Time Together”(2011年 )にも参加、そこでもJazzyな“My Heart Said Wow”という短い曲ですが、マイケルとデュエットしていますね 」
Veronica Nunn Michael Franks - Time Together 2011
わたし    「マイケルのお気に入りなのね 」
マスター   「 - そのようですね。同年(2011年 )リリースされた 彼女自身のリーダーアルバムもマイケル・フランクス作品のカヴァー集 The Art of Michael Franks(TACM-20 )ですが、そこにもマイケル自身が一曲 Leading Me Back To You でゲスト参加しているほどですからね 」
ヴェロニカ・ナン_The Art of Michael Franks(TACM-20)
わたし    「とうとう冬のコンセプト・アルバムも この最後の曲『アイランド・クリスマス 』にきて 完全に夏のボサノヴァ・ナンバー全開といったところね 」
マスター   「それにしても 振り返ってみたら やっぱり夏のイメージが強いマイケル・フランクス、『ウォッチング・ザ・スノー 』以前に 冬をテーマにした曲の少なさったら ホント際立っています 」
わたし    「そうよねー・・・ 1978年『バーチフィールド・ナインズ 』の裏ジャケット写真くらいじゃないかしら(笑 )。寒い季節のニューヨークを恨めし気に睨みながら 両手をスタジャンのポケットに突っ込んでるマイケルの ニット帽が忘れられない ― 」
Michael Franks - Burchfield Nines[Back] 1978 (2)  くー、寒(さぶ )っ

マスター   「思い出した ! 奥さん、マイケル冬の歌、ありましたよ ! 1979年のアルバム『タイガー・イン・ザ・レイン 』に収録されてる 『ジャルダン・ボタニコJardin Botanico を お忘れではないですか ? 」
Michael Franks - Tiger in the Rain 1979
わたし    「あー、そうだ ! “ニューヨークの厳しい12月の冷気から逃げ出して ケネディ空港から暖かい南半球までひとっ飛び、ブラジルのクリスマスに勝るものはないよね、あそこは気候が完全に逆さまなんだから ”っていう歌詞を、すでにマイケルは1979年に書いていたじゃない ! 」
マスター   「『ジャルダン・ボタニコ 』というタイトルは リオボタニコ植物園の呼称ですし、なにしろあそこは マイケルが尊敬するアントニオ・カルロス・ジョビンに所縁(ゆかり )の場所でもあるわけですからね 」
わたし    「発想が『アイランド・クリスマス予告篇だったのね 」


バレンタインのあずにゃん
10:マイ・プレゼント(リプライズ )
My Present(reprise ) 04:28

わたし    「最後に置かれたのが、このアルバム4曲目にも聴いた佳曲『マイ・プレゼント 』My Presentのリプライズね 」
マスター   「この2曲、よく聴き比べると判るんですが、マイケル・フランクスのヴォーカル・トラック、実は 二つとも 全く同じ録音です 」
わたし    「ホント ? 」
マスター   「はい。ここからはボクの推察が混ざりますが、最初マイケルはアコースティック・ピアノとウッド・ベースだけを伴奏に『マイ・プレゼント 』を録音し、これをガイド的なベーシック・トラックとしていたのではないでしょうか 」
わたし    「ふんふん 」
マスター   「・・・で、その上へ塗り重ねるように パーカッション、ソプラノ・サックス、エレクトリック・キーボード、ストリングスなどをオーヴァーダビングしながら加えてゆき、『マイ・プレゼント 』を完成させたものと考えます。で、当初ガイダンス・プレイとして弾いていたアコースティック・ピアノの音ヴォリュームは、最終的に絞ってしまった - 」
わたし    「たしかに アルバム 4曲目の『マイ・プレゼント 』には、生ピアノの音、聴こえないわね 」
マスター   「しかし 誰もがリプライズを聴いて感じるとおり、加えられた音を拭い去ったオリジナル・ヴァージョンのほうにも捨てがたい魅力があり、そこで結局アルバムのエピローグ的に加えたものではないでしょうか 」
わたし    「オモシロイ考察だけど、もともと最初から意図的に二種類のアレンジをそうやって併録する計画だったかもしれないよ 」
マスター   「まあ、その可能性がないとは言えませんけどね、でも そうだとしたら、なぜマイケルのヴォーカルを両ヴァージョン同じにする必要があったんだろ ? っていう疑問が、ボクの想像の旅の出発点でした 」


マイケル・フランクスが参加したクリスマス・アルバム

 かつてマイケル・フランクススタンダードなX'masナンバー少なくとも二曲、過去にレコーディングしてます。
 その一曲は、1996年にデヴィッド・ベノワ David Benoit のアルバム「リメンバリング・クリスマス 」Remembering Christmas (GRP/ MVCR-242 )に収録された「クリスマス・タイム・イズ・ヒア 」Christmas Time Is Here(TV「スヌーピーのメリー・クリスマス 」タイトル曲として知られる )です。
David Benoit_ Remembering Christmas 1996 Tom Mark, David Benoit and Michael Franks recording Christmas Time is Here during a heat wave(Photo by Claudia Franks )
 こちらについては、 当スケルツォ倶楽部スヌーピーの音楽 」で、すでに以前 話題にしました。
 こちら ⇒ 「ピーナッツ 最初のTVアニメ 「チャーリー・ブラウンのクリスマス 」 (邦題 「スヌーピーのメリークリスマス 」 )の音楽


 もう一曲のほうが、より重要なレコーディングです。
 それこそが 上記D.ベノワ盤リリースの一年前、再生ブルーノートに関係したジャズ=フュージョン系の多数のミュージシャンたちがレーベルの枠を超え、一堂に集結したクリスマス・アルバム“Jazz to the World” の中に収録された、冬の名曲「レット・イット・スノー ! レット・イット・スノー ! レット・イット・スノー ! 」です。
Jazz to the World_Blue Note Records
マイケル・フランクス
レット・イット・スノー ! レット・イット・スノー ! レット・イット・スノー !
Let It Snow ! Let It Snow ! Let It Snow !
リリース:1995年
アルバム“Jazz to the World”に収録
アルバム収録曲(ミュージシャン名 )
Winter Wonderland(Herb Alpert and Jeff Lorber )、Baby, It's Cold Outside(Dianne Reeves and Lou Rawls )、It Came Upon A Midnight Clear(Fourplay )、Have Yourself A Merry Little Christmas(Diana Krall )、O Tannenbaum(Stanley Clarke、George Duke and Everette Harp )、Let It Snow ! Let It Snow ! Let It Snow !(Michael Franks )、The Christmas Waltz(Tha Brecker Brothers )、The Little Drummer Boy(Cassandra Wilson )、I'll Be Home For Christmas(Herbie Hancock and Eliane Elias )、O Come O Come Emmanuel(John McLaughlin )、Christmas Blues(Holly Cole )、Angels We Have Heard On High(Steps Ahead )、The Christmas Song(Anita Baker )、What Child Is This ?(Chick Corea )、Winter Wonderland(Dave Koz )、II Est Ne, Le Divin Enfant(Dr. John )
音 盤:Blue Note : CDP-7243 8 32127 2 9 (ユニバーサル TOCJ-6730 )

 このディスク“Jazz to the World”について 少し触れておくと、J.F.ケネディの妹 ユーニス・ケネディ=シュライヴァーがその創設に尽力した、知的障害者のためのスペシャル・オリンピックス基金への支援を目的としたチャリティ・アルバムでした。キース・へリングのオリジナル・アートワーク・ジャケットによっても知られています。
 ミュージシャンたちは 各自いずれも、クリスマスにちなんだ楽曲を、この新録音のために特別編成したメンバーによってレコーディングしたのです。チック・コリア、ジョン・マクラフリン、ハービー・ハンコックイリアーヌ・エライアス、ブレッカー・ブラザーズ、ステップス・アヘッド、ダイアナ・クラールなど、たいへん豪華なメンバーが参加しました。
 マイケル・フランクスが、サミー・カーン作詞 / ジュール・スタイン作曲による 冬のスタンダード曲「レット・イット・スノー ! ~ 」を手がけた際、サポートに集まったメンバーの凄さに、リリース当時 目をみはったものです。
Michael Franks ArtieTraum.jpg Carla Bley-1989 Steve Swallow Danny Gottlieb Veronica Nunn - American Lullaby
▲ (左から ) マイケル・フランクス(ヴォーカル )アーティ・トラウム(録音プロデュース、アコースティック・ギター )、カーラ・ブレイ(ピアノ )、スティーヴ・スワロー(ベース )、ダン・ゴットリープ(ドラムス )、そして録音当時はまだ無名でしたが ヴェロニカ・ナン(バック・コーラス )・・・。

 このレコーディングを重要であると考えるようになったのは、やはり冬のコンセプト・アルバム「ウォッチング・ザ・スノー 」を聴いてからです。
 「レット・イット・スノー ! ~ 」は、当時パット・メセニー・グループのドラマーだった ダン・ゴットリープが叩くブラッシュワークの優しいアウフタクトで始まります。すぐに ECMカーラ・ブレイが アコースティック・ピアノで単音ドミナントのオクターヴ( C ↘ C )打鍵を繰り返します。
楽譜 Let it snow! Intro
▲ ここは、まさしく「ウォッチング・ザ・スノー 」の同名タイトル曲でも用いられていた、空から舞い落ちて雪片を表現するピアノ奏法ではありませんか。
 そしてマイケルが、彼独自の節回しにアレンジした歌唱法で “Let It Snow ! Let It Snow ! Let It Snow ! ”と歌います。素晴らしい叙情性。
楽譜 Let it snow!
▲ ここもまた アルバム6曲目「セッド・ザ・スノーフレイクス 」Said the Snowflake や 8曲目「ホエン・ザ・スノーマン・シングスWhen the Snowmen Sings に登場した ミ・ファ・ソ音型が そのまま曲頭からはっきりと聴こえてきます。これこそ「ウォッチング・ザ・スノー 」の中に 繰り返し現れた、雪の舞い落ちる様を描写する「スノーフレイク音型 」に他なりません。
 うーん、素晴らしい 冬のマイケル・フランクス も ! 
Michael Franks_Anthology - The Art Of Love Michael Franks_THE DREAM 1973-2011
 これほど重要なレコーディングが、ワーナーWarner Bros./ライノRHINO編集によって 2005年にリリースされた マイケルの2枚組ベスト盤 Anthology - The Art Of Love(アルティメイト・ベスト )にも、また同じく 2012年の 5CD BOX セットTHE DREAM 1973-2011の“RARITIES & PREVIOUSLY UNRELEASED TRACKS + DUETS & SOME COVERS ”と題された レア音源集にも収録されなかったのは、異なるレーベル間の契約のせいなのでしょうけれど やはり納得いきません。


・・・さて、最後に わたしは言いたい。

 マイケル・フランクスさん、貴方は 本当に素晴らしいヴォーカリストです。
 かつてボブ・ミンツァービッグ・バンド アルバム(Departure、1993年 dmp )に 貴方が参加されて 一曲だけ歌った「マイ・フーリッシュ・ハート 」My Foolish Heart の 淡麗な美しさに 背筋が冷たくなるほど感動したものです。
ボブ・ミンツァー Departure、1993年 dmp

 貴方の歌い方は、どことなくジョアン・ジルベルトにも似ていますね。
 思索の末に つぶやく人のように、
 愛しいあの人の耳元に ささやくように、
 決して声を張り上げず、
 決して徒に 伸ばすことなく、
 ヴィブラートも用いず、
 それでいて 常に正確なテンポと音程・・・、

 マイケル・フランクスさん、わたしは貴方に言いたい。

 なぜ、貴方は ご自分が敬慕する 偉大なアントニオ・カルロス・ジョビンの遺したナンバーを、わたしたちに聴かせてはくださらないのでしょうか。

 ユーミンの「あの日にかえりたい 」を歌うことを 決してワルいとは申しません、あれは・・・あれで 十分素晴らしかったから。
マイケル・フランクス「あの日にかえりたい 」カヴァー

 でも マイケルさん、モノには順序というものがあるのではありませんか ? 優先順位というものが ?
 あなたほどの才能をお持ちなら、わたしだけではなく、おそらく世界があなたに期待している ご自分の使命を自覚なさいませんか。

 わたしは、貴方の声で ぜひ聴きたいのです -

 貴方が歌う ジョビンの作品を - 「三月の水 」を、「 」を、「コルコヴァード 」を、「ヂサフィナード 」を、聴きたいのです。
 ・・・ さぞや 素晴らしいのではないでしょうか。

 わたしは、貴方が歌う 「シェガ・ヂ・サウダージ 」を、「イパネマの娘 」を、「フェリシダーヂ 」を、そして 「ダブル・レインボウ(チルドレン'ズ・ゲーム 」を、ぜひとも聴いてみたいのです -


マイケル・フランクス と アントニオ・カルロス・ジョビン
▲ 若きマイケル・フランクス と 晩年のアントニオ・カルロス・ジョビン

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