スケルツォ倶楽部 
Club Scherzo
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2017箱根駅伝をTVで観て
 ~ シューベルト作曲 ( ? ) 「走れメロス

スケルツォ倶楽部_シューベルト

 あけましておめでとうございます、“スケルツォ倶楽部発起人です。今年もよろしくお願い申し上げます。
 さて お正月といえば、私にとっては ウィーンからのニューイヤー・コンサート 衛星生中継ですが、敢えて これを除けば、やはり箱根駅伝東京箱根間往復大学駅伝競走 )ですね。
 今年も青山学院大学が圧倒的な強さで優勝。青学大と言えば、毎年監督が仕掛ける “大作戦”に注目が集まっていますね、2015年が「ワクワク大作戦 」、2016年が「ハッピー大作戦 」、そして今年は「サンキュー大作戦 」 ― これは、史上初となる大学駅伝「三冠 」と 箱根「三連覇 」達成という「 」と、監督自身の箱根出場回数である「」に掛け、さらに周囲の人々への感謝の意も込めた命名だったとのこと。 おそらく相当に厳しい鍛錬の末だったでしょうが、そんな中でも 楽しさと余裕をにじませての快挙でした。
 もちろん優勝校に限らず、選ばれた学生の皆さんひとりひとりが各校の伝統を象徴する襷(たすき )を必死につないでゆく 一生懸命な姿に心から感動しました。

 そんな自分は「パドヴァの聖アントニウスに説教される おサカナ」並み のポテンシャルですが(笑 ) 今も 感動に目を潤ませつつ こたつでミカンを剥いていたら、TVに ☆ サッポロビール のタイアップCMが流れ始め - 今度はこちらへと 目がひきつけられます。

「箱根駅伝を駆け抜ける選手を応援する気持ちにフォーカスし、大自然をバックにその心象風景を描いています 」
- 幻想的な映像は 長野県菅平高原美ヶ原高原で撮影されているそうです。


▲ YouTube/ 93回箱根駅伝 届けたい言葉篇 本大会 60秒
 
そのCMは 元SKE48、および 乃木坂46 のメンバーだった 松井玲奈さんが、古い書斎で 太宰治「走れメロス 」の一部を朗読しているところから 始まります。
☆ サッポロビール のタイアップCM 松井玲奈

―  メロスはぶるんと両腕を大きく振って、矢の如く走りでた

と、物語を読みながら 彼女もまた冬の森へと・・・。
併せて、箱根駅伝の過去映像が画面にフラッシュバックされます。

―  メロスは辛かった
―  私はこれほど努力したのだ
―  動けなくなるまで走ってきたのだ
―  情けない


迷いを捨てて立ち上がる選手の姿・・・
沿道で力強く声援を送る仲間たちの姿・・・

―  私は信頼に報いねばならぬ
―  少しも疑わず、期待してくれている人があるのだ


観ているうち 過去の駅伝でのさまざまな感動が甦ります。

―  走れメロス
―  友が待っている。


実写映像が放つ説得力は素晴らしく、揺るぎないです。

「仲間をおもう その力が、僕らの心を熱くする 」

映像は、襷(たすき )が 次なるランナーに渡される 感動的な瞬間を 次々と映します・・・。

そして・・・

「見届けたい物語がある。届けたい言葉がある 」

☆ サッポロビール のタイアップCM 松井玲奈 (2)
☆ サッポロビールは 今年も箱根駅伝を応援しています。 

 うーん、素晴らしい !
 早速、黒ラベルが飲みたくなりました。 ・・・って、何と単純な私(自嘲 )。


 ・・・さて、以上は全部 前置きです。
 実は、この「走れメロス 」のほうが 当 “スケルツォ倶楽部” 新年最初の話題です。
 会員の皆さまは、歌曲「魔王 」シューベルトが「走れメロス」にも作曲していたことをご存知ですか。

シューベルト作曲(?)「走れメロス 」

 ・・・いえいえ、ご安心ください、もちろん太宰治の文章に 作曲したわけはありません。
 太宰の「走れメロス 」を最後まで読んでみると、作者は自分ではっきりと「古伝説とシルレルの詩から 」と明記し、ギリシア神話とドイツの詩人シラーフリードリヒ・フォン・シラー Friedrich von Schiller )の作品を基にして この短編を翻案したことを明かしているのです。

Friedrich von Schiller
▲ フリードリヒ・フォン・シラー(1759 – 1805)
走れメロス 」の原作となった叙事詩(バラード )「人質 」は1798年に書かれました。詩人シラーとは、もうどなたもご存知のとおり、ベートーヴェン第9の終楽章に作曲した原詩「歓喜に寄す 」の作者ですよね。

太宰治
▲ では、文豪 太宰治は、 シラー原作を 何で知ったのでしょうか。
 最近の研究によれば(Wikipedia )、シラーバラードDie Bürgschaft”を 日本で最初に翻訳したのは、独文学者の小栗孝則で、それは 譚詩「人質 」というタイトルで 1937(昭和12 )年に発行された「新編シラー詩抄(改造文庫 )」に収録されています。「走れメロス 」は1940(昭和15 )年 5月「新潮 」に発表された小説ですから、時期的には太宰小栗訳で シラー「人質 」を読んでいた可能性は高いわけです。

シューベルト ◂ 眼鏡を外したシューベルトの肖像画
 
 さて一方、これと同じシラーの原詩にシューベルトが作曲したのは 1815年 8月のことでした。この年、シューベルトは 他に14曲ものシラーの詩に作曲しているそうですから、スゴイですね。
 この叙事詩は、一節七行 × 二十節 という長大なもので、お聴きになればお判りのとおり 叙唱(レチタティーヴォ )と詠唱(アリア )とが交替しながら進行します。これにすべて曲をつけた完成品を、手元にあったフィッシャー=ディースカウ(EMI )盤で あらためて聴いてみたら 16分57秒にもおよぶ長さでした。しかし原作がおもしろいので 冗長さを感じることは殆どなく、シラーの世界にぐいぐい引き込まれます。但し、一気呵成な「魔王」などと比べてしまうと、やはり叙唱部と詠唱部の切り替わりで緊張感が多少途切れがちではありました。
 興味深い情報として、シューベルト自身が「人質 」のオペラ化(!)を計画しており、実際1816年 5月には作曲にも着手していたそうです。が、台本の不備もあり 残念ながら未完成に終わったそう・・・おいおい、また「未完成 」かよ フランツ・・・って感じですが、ああ、もし完成させていたら、ストーリーが良い分、歌劇「アルフォンソとエストレッラ 」なんかより よっぽど成功してた可能性があったのではないでしょうか。 ・・・ シューベルトって 悉く惜しいよー

シューベルト Franz Schubert D.フィッシャー=ディースカウ_シューベルト歌曲のすべて(EMI TOCE-9387~94)スケルツォ倶楽部
D.フィッシャー=ディースカウ
「シューベルト歌曲のすべて 」
音 盤:TOCE-9387~94(東芝EMI ) CD 8枚組
独 唱:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ピアノ:ジェラルド・ムーア
録 音:1955年~1965年
収録曲:
歌曲集「美しき水車屋の娘 」D.795、歌曲集「冬の旅 」D.911、歌曲集「白鳥の歌 」D.957、無限なるものにD.291、ひめごとD.719、夕映えのなかにD.799、憩いなき恋D.139、楽に寄すD.547、悲しみD.772、こびとD.771、月に寄せるさすらいの歌D.870、ヴィルデマンの丘にてD.884、独りずまいD.800、寂滅D.807、十字軍D.932、墓堀人の郷愁D.842、夜のすみれD.752、星D.939、さすらい人D.493、春のおもいD.686、シルヴィアにD.891、春にD.882、ブルックにてD.853、老年の歌D.778、アリンデD.904、恋人の近くにD.162、ノルマンの歌D.846、捕らわれし狩人の歌D.843、夜の曲D.672、魔王D.328、笑いと涙D.777、美と愛がここにいたことをD.775、わが挨拶を受けよD.741、君はわがやすらいD.776、森の夜D.708、幸福D.433、野ばらD.257、きけきけ、ひばりD.889、漁師の愛のしあわせD.933、漁師のくらしD.881、泉のほとりの若者D.300、リュートによせてD.905、ますD.550、リーゼン山脈の頂上でD.611、遠く離れたひとにD.765、水の上で歌うD.774、舟のりD.536、さすらい人D.649、夜の歌D.314、臨終を告げる鐘D.871、若者と死D.545、郷愁D.456、緑野の歌D.917、死と乙女D.531、冬の夕べD.938、怒れる吟遊詩人D.785、流れD.565、連祷D.343
独 唱:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ピアノ:カール・エンゲル
録 音:1959年
収録曲:
タルタルスの群れD.583、ギリシャの神々D.677、期待D.159、あこがれD.636、潜水者D.77、人質 D.246、歌手D.149、漁師D.225、孤独D.620、流れによせてD.539、アルプスの狩人D.524、エルラフ湖D.586、ウルフルーが漁をする時D.525、なぐさめD.671、風の日にD.669、ドナウにてD.553、夕星D.806、歌の終わりD.473、あこがれD.516、ヘリオポリス第2曲D.754、ポンスにD.492、勝利D.805、友にD.654


「新編シラー詩抄 」小栗孝則 訳(改造文庫 ) Friedrich von Schiller
▲ 「新編シラー詩抄小栗孝則 訳(改造文庫 )

 では 最後に、以下は シューベルトが作曲した、シラー作「人質 」です。
 おそらく太宰治も参照したと思われる 当時の小栗孝則/訳を 私の亡き父の書斎に残っていた文庫から見つけた “スケルツォ倶楽部発起人、このたび 読みながら一文字ずつ PCに打ち直しました。
 この長大な詩 すべてに作曲したシューベルト歌曲バラード )を聴きながら 読み合わせるもよし、 あるいは お手元に 太宰の「走れメロス」をお持ちなら シラー原詩と比較されるのもまた ご一興かと思います。

フリードリヒ・シラー  
譚 詩  「人 質」
(小栗孝則 / 訳、1937年 )


暴君ディオニスのところに
メロスは短剣をふところにして忍びよつた
警吏は彼を捕縛した
「この短剣でなにをするつもりか? 言へ!」
険悪な顔をして暴君は問ひつめた
「町を暴君の手から救ふのだ!」
「礫になつてから後悔するな 」―

「私は 」と彼は言った 「死ぬ覚悟でゐる
 命乞ひなぞは決してしない
 ただ情けをかけたいつもりなら
 三日間の日限をあたへてほしい
 妹に夫をもたせてやるそのあひだだけ
 その代り友達を人質として置いてをこう
 私が逃げたら、彼を絞め殺してくれ 」

それを聞きながら王は残虐な気持で北叟笑んだ
そして少しのあひだ考へてから言つた
「よし、三日間の日限をおまへにやらう
 しかし猶予はきつちりそれ限りだぞ
 おまへがわしのところに取り戻しに来ても
 彼は身代りとなつて死なねばならぬ
 その代り、おまへの罰はゆるしてやらう」

さつそくに彼は友達を訪ねた。
「 じつは王が
 私の所業を憎んで
 礫の刑に処すといふのだ
 しかし私に三日間の日限をくれた
 妹に夫をもたせてやるそのあひだだけ
 君は王のところに人質となつてゐてくれ
 私が縄をほどきに帰ってくるまで」

無言のままで友を親友は抱きしめた
そして暴君の手から引き取つた
その場から彼はすぐに出発した
そして三日目の朝、夜もまだ明けきらぬうちに
急いで妹を夫といつしよにした彼は
気もそぞろに帰路をいそいだ
日限のきれるのを怖れて

途中で雨になつた、いつやむともない豪雨に
山の水源地は氾濫し
小川も何も水かさを増し
やうやく河岸にたどりついたときは
急流に橋は浚はれ
轟々とひびきをあげる激浪が
メリメリと橋桁を跳ねとばしてゐた

彼は茫然と、立ちすくんだ
あちこちと眺めまはし
また声をかぎりに呼びたててみたが
繋舟は残らず浚はれて影なく
目ざす対岸に運んでくれる
渡守りの姿もどこにもない
流れは荒々しく海のやうになつた

彼は河岸にうづくまり,泣きながら
ゼウスに手をあげて哀願した
「ああ、鎮めたまへ、荒れくるふ流れを!
 時は刻々に過ぎてゆきます、太陽もすでに
 真昼時です、あれが沈んでしまつたら
 町に帰ることが出来なかつたら
 友達は私のために死ぬのです」

急流はますます激しさを増すばかり
波は波を捲き、煽りたて
時は刻一刻と消えていつた
彼は焦燥にかられた、つひに憤然と勇気をふるひ
咆え狂ふ波間に身を躍らせ
満身の力を腕にかけて流れを掻きわけた
神もつひに憐愍を垂れた

やがて岸に這ひあがるや、すぐにまた先きを急いだ
助けをかした神に感謝しながら―
しばらく行くと突然、森の暗がりから
一隊の強盗が躍り出た
行手に立ちふさがり、一撃のもとに打ち殺そうといどみかかつた
飛鳥のやうに彼は飛びのき
打ちかかる弓なりの棍棒を避けた

「何をするのだ?」驚いた彼は蒼くなつて叫んだ
「私は命の外にはなにも無い
 それも王にくれてやるものだ!」
いきなり彼は近くの人間から棍棒を奪ひ
「不憫だが,友達のためだ!」
と猛然一撃のうちに三人の者を
彼は仆した、後の者は逃げ去つた

やがて太陽が灼熱の光りを投げかけた
つひに激しい疲労から
彼はぐつたりと膝を折った
「おお、慈悲深く私を強盗の手から
 さきには急流から神聖な地上に救はれたものよ
 今、ここまできて、疲れきつて動けなくなるとは
 愛する友は私のために死なねばならぬのか?」

ふと耳に、潺々と銀の音色のながれるのが聞こえた
すぐ近くに、さらさらと水音がしてゐる
じつと声を呑んで、耳をすました
近くの岩の裂目から滾々とささやくやうに
冷々とした清水が涌きでてゐる
飛びつくやうに彼は身をかがめた
そして焼けつくからだに元気をとりもどした

太陽は緑の枝をすかして
かがやき映える草原の上に
巨人のやうな木影をゑがいてゐる
二人の人が道をゆくのを彼は見た
急ぎ足に追ひぬこうとしたとき
二人の会話が耳にはいつた
「いまごろは彼が礫にかかつてゐるよ」

胸締めつけられる想ひに、宙を飛んで彼は急いだ
彼を息苦しい焦燥がせきたてた
すでに夕映の光りは
遠いシラクスの塔楼のあたりをつつんでゐる
すると向ふからフィロストラトスがやつてきた
家の留守をしてゐた忠僕は
主人をみとめて愕然とした

「お戻りください! もうお友達をお助けになることは出来ません
 いまはご自分のお命が大切です!
 ちょうど今、あの方が死刑になるところです
 時間いつぱいまでお帰りになるのを
 今か今かとお待ちになつてゐました
 暴君の嘲笑も
 あの方の強い信念を変へることは出来ませんでした」―

「どうしても間に合はず、彼のために
 救ひ手となることが出来なかつたら
 私も彼と一緒に死のう
 いくら粗暴なタイラントでも
 友が友に対する義務を破ったことを、まさか褒めまい
 彼は犠牲者を二つ、屠ればよいのだ
 愛と誠の力を知るがよいのだ!」

まさに太陽が沈もうとしたとき、彼は門にたどり着いた
すでに礫の柱が高々と立つのを彼は見た
周囲に群衆が撫然として立つてゐた
縄にかけられて友達は釣りあげられてゆく
猛然と、彼は密集する人ごみを掻きわけた
「私だ、刑吏!」と彼は叫んだ「殺されるのは!
 彼を人質とした私はここだ!」

がやがやと群衆は動揺した
二人の者はかたく抱き合つて
悲喜こもごもの気持で泣いた
それを見て、ともに泣かぬ人はなかつた
すぐに王の耳にこの美談は伝へられた
王は人間らしい感動を覚えて
早速に二人を玉座の前に呼びよせた

しばらくはまぢまぢと二人の者を見つめてゐたが
やがて王は口を開いた。「おまへらの望みは叶つたぞ
 おまへらはわしの心に勝つたのだ
 信実とは決して空虚な妄想ではなかつた
 どうかわしをも仲間に入れてくれまいか
 どうかわしの願ひを聞き入れて
 おまへらの仲間の一人にしてほしい 」


☆ サッポロビール のタイアップCM 松井玲奈 (3)

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