スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(10 )1911年 リヒャルト・シュトラウス 
  楽劇「ばらの騎士 」 のワルツ
 

John Barbirolli バルビローリ_ウィーンの夕べ_EMI(東芝EMI_TOCE-1212)Richard Strauss
ジョン・バルビローリ指揮 John Barbirolli
ハレ管弦楽団 Halle Orchestra
録音:1966年8月 ロンドン
 
(注 * 国内盤には 「1978年録音 」 との誤記あり )
EMI (東芝EMI/TOCE-1212)
(「美しき青きドナウ 」、「雷鳴と稲妻 」、「『ジプシー男爵 』序曲 」、「常動曲 」、「ラデツキー行進曲 」、「金と銀(レハール ) 」、「シャンペン・ポルカ 」併録 )


 ジョン・バルビローリは、1953年以来 ロンドンの夏の風物誌として知られるプロムナード・コンサートプロムス)に、手兵ハレ管弦楽団と共に毎年登場し、毎回「ばらの騎士ワルツによって締め括られる 名物プログラム「ウィーンの夕べ」のタクトを振ることで知られていました。
 バルビローリの「ばらの騎士」の演奏には定評があり、EMIでは カラヤン盤(1956年)以来 久しぶりに この楽劇の全曲盤を 彼の指揮によって新録音する計画があった とさえ言われていたそうですが、マエストロの急逝により 惜しくも実現に至らなかった ということなのでしょう、残念でしたね。もし実現していたら その配役はどうなっていたでしょうか、たいへん興味深いところです。
 このディスクの オリジナルのLPタイトルは、「ウィンナ風プロムナード・コンサート “ Viennese Prom Concert ” 」。ジョン・バルビローリハレ管弦楽団を率いてスタジオ録音した、ウィーンのワルツを中心としたプログラムです。
 「ばらの騎士 」のワルツでは、冒頭から低弦のピッツィカートも 思いきり弾(はじ)け飛び、バルビローリの気合の入った唸り声と共に きわめて精力的に始まります。オックス男爵 の “ お約束の ” ワルツ が始まるのは、04:24頃からですが、 個性的な節回しも素晴らしく、有名な「銀のばら献呈」の音楽をはさんで、蜜のように甘いワルツが延々と楽しめますよ。

▼ こちらはプロムス 「ウィーンの夕べBBC - Legends(ライヴ )盤
1969年プロムス ‐ ジョン・バルビローリ最後の指揮(BBC‐Legend)
 1969年のプロムス ジョン・バルビローリ最後の出演の年となった 貴重なライヴ録音が聴ける幸運な日が来ようとは、このディスクを手にするまでは 思ってもいませんでした。上記 スタジオ録音盤に比べると、音質こそ 若干遠め(客席の真上に吊ってあるマイクロフォンで録ったのでしょうか )に感じますが、名演「ばらの騎士 」ワルツの他にも ロイヤル・アルバート・ホール聴衆のハミングで 歌声喫茶 と化してしまう(!)レハールの「金と銀 」、超低速・急停止・急発進が繰り返される 抱腹絶倒の「トリッチ・トラッチ・ポルカ 」など、決して他では聴けない演奏が目白押しです。

 さて、リヒャルト・シュトラウスの楽劇「ばらの騎士 」は、1911年1月26日、ドレスデン宮廷歌劇場エルンスト・フォン・シューフの指揮、マックス・ラインハルトの演出によって初演され、空前の大成功を収めた、と伝えられます。
 オペラが大評判になっていたため、コンサート用に編まれた 管弦楽による編曲作品(組曲、ワルツなど )も多数存在しています。何種類もあるので、以下 整理させて頂きましょう。

 「ワルツ第1番 」・・・1944年に R.シュトラウス自身が、第1幕と第2幕の素材から編纂したワルツで、演奏時間 13分ほどの音楽です。
 「ワルツ第2番 」・・・編曲者「不詳 」というのも、これだけの有名な音楽に対しては奇妙な話ですが、「第1番」より10年前の1934年に成立した、演奏時間 8分ほどの曲です。冒頭から木管楽器による長いトリルで始まるのが特徴で、主に第3幕からの音楽が素材として使用されています。
 上記「ワルツ第1番 」「ワルツ第2番 」が聴ける代表的なCDは、ハインツ・レーグナー指揮 ベルリン放送交響楽団下左 1977年 ドイツ・シャルプラッテン TKCC-15037)、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団下右 1996年 Decca UCCD-1133)などでしょうか。
TKCC‐15037_Heinz Rogner_Runffunk_Sinfonie_Orchester_Berlin  UCCD‐1133_Herbert Blomstedt_Gewandhausorchester Leipzig
 私は 後者 ブロムシュテット盤をおススメしたいです。これは、特に「第1番 」で ワルツが本格的に始まってから、低音弦の刻む豊かな音響を見事にとらえた、実に素晴らしい録音です。

 シンプルに「ワルツ 」とタイトルされた、フリッツ・ライナー Fritz Reiner による編曲もよく知られていますね。これを収めたライナー自身による指揮/ シカゴ交響楽団による音盤は1957年に録音されたもので、演奏時間は 約8分と 比較的短いです。冒頭の 前奏曲の部分など ちょっと 刈り込み過ぎ だろーって思うほど 端折られています。
Fritz Reiner_Chicago so.(RCA)
 それでも このレコードは エリーザベト・シュヴァルツコップフが「無人島に持っていきたい1枚のレコード 」として選んだ(!)という伝説的な逸話によって、たいへん有名になりました。彼女の選んだディスクが、夫であるウォルター・レッグ(EMI )のレコードではなかったことに とても真実味を感じたものです。
 オリジナル・カップリングは、これに ヨハン・シュトラウス二世の「朝刊 」、「皇帝円舞曲 」、「美しく青きドナウ 」、ヨーゼフ・シュトラウスの「オーストリアの村つばめ 」、ウェーバーの「舞踏への勧誘(ベルリオーズ編曲 ) 」という 魅力的な選曲でした。

 「ばらの騎士組曲・・・初演された直後に ナンブアトNambuat(この名はペンネームであり、本名は逆さ綴りの タウブマン N.Taubman と伝えられている )が編纂した組曲。これは 第1曲「銀のばらの授与 」、第2曲「オックス男爵のワルツ 」、第3曲「朝食の情景と三重唱 」、第4曲「終幕の二重唱 」という、全4曲から構成されているものです。
1931年6月録音 EMI新星堂SP復刻盤
 これが聴ける貴重なCDは 古いSP録音からの復刻盤カール・アルヴィン指揮/ウィーンフィル 1931年6月録音)になりますが、EMI新星堂の「栄光のウィーンフィルハーモニー管弦楽団 初録音集 」というシリーズ・・・実に素晴らしい企画盤でした。

 「ばらの騎士組曲・・・R.シュトラウス自身が1945年に編纂したものとされますが、一説によると 当時ニューヨーク・フィルの常任指揮者を務めていたアルトゥール・ロジンスキーが、オペラの全曲から選んだ素材を切れ目なく繋ぎ合わせ、あたかも一曲の交響詩のように再構成した作品に対し、多忙な作曲者が これに公認を与えたもの、とも言われます。
 概ね 「第1幕の前奏曲 ( - これは かつて レナード・バーンスタインによって、『トリスタンとイゾルデ 第2幕のパロディである、と見事に看破された、32歳の元帥夫人マルシャリンと 17歳の少年オクタヴィアンとの 一夜のメイキング・ラヴを表現する濃密な音楽 ) 」 ~ 「第2幕のオックス男爵によるワルツR.シュトラウス自身、このメロディの原曲が、実はヨーゼフ・シュトラウスの作曲したワルツ『ディナミーデン Dynamiden Op. 173 』 であることを告白してます ) 」 ~ 「第3幕最後の(マルシャリン、オクタヴィアン、ゾフィによる 極美の )三重唱」という流れまでは 基本的に必須です(但し、終幕の三重唱は、指揮者の判断によって バッサリと落とされることも多いので 要注意 )。
 これを基に、コンサートレコーディング )で 演奏する指揮者によって 原曲のオペラからの場面が 任意に 付け足される ことが多く、それぞれの 指揮者による 工夫の違いを聴くのも 楽しみのひとつ ですよね。冒頭にご紹介した2種類のバルビローリ盤の演奏も これに準じています。
 これには名盤が目白押しですが、私の所蔵している手近なディスクで注目盤を探してみると、まずアンドレ・プレヴィン最初のグラモフォン・レコーディングとして話題になった 1992年10月録音の 端正な ウィーンフィル盤写真下左 D.G. POCG-1699 これはカップリング選曲が 実に絶妙で、「インテルメッツォ 」からの4つの交響的間奏曲、「カプリッチョ 」から序奏と月の光の音楽、「サロメの7枚のヴェールの踊り 」が併録されています )、
プレヴィン ウィーンフィル D.G. POCG-1699  マゼール ニューヨークフィル D.G. B0007890-02
 それから 比較的近年の録音では、ロリン・マゼール指揮/ニューヨークフィル写真上右 エイヴリー・フィッシャーホールにおける2005年ライヴ DG )盤の、今にも止まってしまいそうなほど 濃厚な「オックス男爵のワルツ 」の 出だしのテンポと表情、 機会があったら 話のネタに ぜひ一度お聴きになってください。さすがマゼール悶絶の一語です(「ドン・ファン 」「死と変容 」「サロメの7枚のヴェールの踊り 」を併録)

 うーん、 でも やっぱり「ばらの騎士 」なら オリジナルの全曲盤を堪能したくなってしまいました。本日は 意図的に オーケストラ演奏によるばらの騎士ワルツ を話題にしておきながら、結局 とうとう最後の最後で オペラの全曲盤という 正論の反則技を持ち出してしまい・・・。お許しください。
 今宵は 私にとって「初めての マルシャリン 」だった、エリーザベト・シュヴァルツコップフ に 深い敬意と感謝を捧げる意味で、久しぶりに カラヤンの旧盤第2幕 を聴いてから 寝ることといたします。

カラヤン_シュヴァルツコップフ 「ばらの騎士」TOCE-11396~98
R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士 」全曲
  エリーザベト・シュヴァルツコップフ (元帥夫人マルシャリン )
  クリスタ・ルートヴィヒ (オクタヴィアン )
  オットー・エーデルマン (オックス男爵 )
  テレサ・シュティヒ=ランダル (ゾフィ )
  エバーハルト・ヴェヒター (ファニナル )
  リューバ・ウェリッチ (マリアンネ )
  パウル・クーエン (ヴァルツァッキ )
  ニコライ・ゲッダ (テノール歌手 )
ヘルベルト・フォン・カラヤン (指揮 )
フィルハーモニア管弦楽団 & 合唱団
録音 :1956年 EMI(TOCE-11396~98 )


1911年  第一次バルカン戦争勃発。
       辛亥革命。
      アムンセン、南極点に到達。
      ラヴェル、「ダフニスとクロエ」。
      マーラー 没(5月18日)
      ストラヴィンスキー: バレエ音楽「ペトルーシュカ 」
 に、続く
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コメント

Oh, なるほど!

メタボパパさまの 詳細な調査内容に 参りました。
特に 「 両社の利害が一致 」 という点には、
まさしく 膝を叩いて 納得ですーっ。
米マーキュリーを通して バルビローリの演奏が紹介されていた だけでなく、実は イギリスでも マーキュリー音源が紹介されていた可能性も高いですよね!

URL | 発起人 ID:-

間違っているかも知れませんが

おはようございます。

発起人さんの情報入手の凄さ、感服しました。

米マーキュリーはマイナーレーベルながらモノラル時代から録音がいいのは有名で、パイとしては、マーキュリーのステレオ録音技術が欲しく、マーキュリーにしてみれば、ヨーロッパ進出をしたかったため、両社の利害が一致し、TVの中継者のような録音用バンでウィルマ・コザート、C.R.ファインといったマーキュリーの録音部隊がマンチェスターにて録音し、英国における発売がパイなのだと思います。
同様のレコードは8枚ほどあって、そのうち6枚はバルビローリのものだそうです。
私は他にはエルガーのエニグマ変奏曲を持っていますが、こちらも”音がいい”と思います。

もしかすると間違っているかも知れませんが...

URL | メタボパパ ID:-

マーキュリー盤 を追う!

メタボパパさま
当方 発起人の愚問に 超早速のご回答、重ねてお礼を申しあげます!

貴「メタボパパのオーディオ奮闘記」“ マーキュリーの音~バルビローリ/シュトラウス・ファミリー ”(2010年3月12日の記事)を
http://analo9love.seesaa.net/article/143401448.html
拝見して、今 結構 興奮しています。

バルビローリのマーキュリー盤とは、これ ↓ ですね。
http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?VISuperSize&item=200448305934

バルビローリとハレ管弦楽団は、主にイギリスのEMIとパイ(PYE)レーベルに 演奏を録音していましたが、アメリカでは マイナーな後者の音源を、マーキュリー・レコード(Mercury Records)によって配給されていた と推測出来ます。
このレーベルは アメリカのレコード会社で、特定の専門ジャンルはなく、カントリーからクラシックまで幅広く扱っていたようです。
・・・ 当方 “ スケルツォ倶楽部 ” にとりましては ジャズ・ピアニスト エロール・ガーナーや ジャズ・ヴォーカリスト ダイナ・ワシントン、そして ボブ・ジェームス 幻のデビュー盤「ボールド・コンセプション」(これについては 当方 http://scherzo111.blog122.fc2.com/blog-entry-29.html の中で、本文ではなく 一部ですが、 記述させて頂いてます) など、「ジャズのレーベルとして」実は 注目していたレーベルでありました。

メタボパパさま 所蔵のマーキュリーの貴重盤と、おそらく同音源と思われる内容は、CD(Dutton Laboratories CDSJB-1010  
http://www.hmv.co.jp/product/detail/638637 )
でも入手可能で、特に 併録されている「A Strauss Fantasy (arr. Landauer)」という13:52 の不思議な編曲が興味深く、「こうもり」「アンネン・ポルカ」「ウィーンの森の物語 」「ピッツィカート・ポルカ」「春の声」など、次々とシュトラウスのメロディが繰り出される、楽しくも また フラストレーションも溜まるメドレーです。
この曲で ラヴィッチとランダウアーという二人のピアニストがフィーチャーされている理由は、この録音日1954年2月11日に サン=サーンスの「動物の謝肉祭」の録音が行われていたから(!)というトリビア情報もあります。

メタボパパさまには すでにご存知で 余計な情報だったかも・・・と心配しつつ、しかし 私たちにとっては、おかげさまで これで半日 楽しませて頂きました。
ありがとうございます! またご教示のほど よろしくお願い申しあげます。長文すみません。

URL | 発起人 ID:-

マーキュリー盤について

おはようございます。

マーキュリーはアメリカのレコード会社で後にフィリップスに合併吸収されてしまいましたが、残されたレコードの音がいいので細々と集めています。

あまりためにはなりませんが、拙ブログで紹介した記事があります。
http://analo9love.seesaa.net/article/143401448.html
ご興味があれば覗いてみてください。

シュヴァルツコップの無人島にもっていきたい一枚はこっちだったんですね。
今までもう一枚の方だと勘違いしていました。

これからも楽しみにしていますのでよろしくお願いします。

URL | メタボパパ ID:-

メタボパパさま

コメント、どうも ありがとうございます!

1.バルビローリのEMI盤の件 
→ 私の所蔵品も 廉価盤のトホホなジャケットです。掲題のディスクは、ぜひ オリジナル・ジャケットで 復刻してもらいたいものですよね。
マーキュリー盤 って・・・?  気になる、気になる・・・
何かのついでがありましたら、教えてくださいね。

2.ライナー盤カップリングの件
→ そうなんです。現CD(BMG 09026-68160-2)には、オリジナル盤から3年後(1960年)に 録音された「ウィーン気質」「南国のばら」「宝のワルツ」「雷鳴と稲妻」の4曲がオマケのように収録されてますね。
今回 久しぶりに全部通して聴いていたら、「雷鳴と稲妻」のティンパニとパーカッションの音が あまりにも騒がしいのに参ってしまって、思わず 音楽 止めてしまいました。

これからも どうぞご支援 よろしくお願い申し上げます。
貴ブログも時々 拝見させて頂きます!

URL | 発起人 ID:-

はじめまして

はじめまして

バルビローリのEMI盤は欲しいのですが、まだ手に入れられず、代わりといってはなんですが、マーキュリー盤を愛聴しております。
また、ライナー盤はCDではカップリングが変わっているんですね。知りませんでした。
シュトラウス・ファミリーの曲は好きなのでまた、お邪魔しますのでよろしくお願いします。

URL | メタボパパ ID:-

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