スケルツォ倶楽部 
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シュローダー時計‗Peanuts J.シュトラウスⅡ世:喜歌劇「こうもり 」ハイライツ盤(Decca₋LONDON)ポリグラムPOCL-90066 葛飾北斎の神奈川沖浪裏 壁時計
音楽は「時間芸術
 - 「時計 」を メカニカルに描写した楽曲たち、
そして 「カルメン 」謎の一時間( ? )。
     


 こんにちは、“スケルツォ倶楽部発起人 です。
 さて 今月( 6月 )10日は「時の記念日 」 - 覚えてますか ? 小学校の頃には 毎年この日が近づくと「時間の大切さ 」を教わったものです。でも「記念日 」ではあっても祝日ではないから お休みになるわけじゃないし、年をとるうち 「時の記念日 」って いつだっけ ? なんて 不意に尋ねられても「さあ、忘れちゃったな 」って 腕を組むしかない、そんな今日この頃(笑 )。

 時間とは「誰にでも平等に与えられた、二度と取り返すことのできない大切なもの トレンド速報ニュース ) 」 - なるほど、「過ぎ去りし時間の尊さについても考える日 」としたいものです。

 さて、よく言われるように 音楽は 時間芸術 ですよね。
 音楽を鑑賞するには その最初から最後まで 一定の時間を必要とします。 それはまた 文学作品( 戯曲から派生する演劇、映画までも含む )を鑑賞する際に要する時間にも似ています - 長いオペラが大河小説を、短い小品が一片の詩を思わせるように。
 さらに それらは、しばしば空間を移動する「 」にも たとえられます。スタート地点から最後のゴールまで、時間をかけて移動しなければ(聴かれなければ )対象を正しく理解することは 決してできないでしょう。

 そんな時間の重さについて 考えさせられる音楽といえば、ピンク・フロイドの「タイム 」 - 聴いたことない人を探すほうが難しいんじゃないかっていうくらい 有名な英国プレグレッシヴ・ロックの名曲ですが、この歌詞を - あらためて読み直したこと 最近ありますか ? キャーって叫び出したくなるくらい、かなり怖いですよ。

Time タイム ‗Pink Floyd ピンク フロイド Pink Floyd
Time タイム
Pink Floyd ピンク・フロイド

Roger WatersNick MasonDavid GilmourRichard Wright )


倦怠にまみれた一日を刻む 時計の音
おまえはただ無雑作に 時を浪費していくだけ
故郷のちっぽけな土地から出ようともせず
手をひいて導いてくれる誰かか 何かを待つだけ

陽だまりの中で 寝そべることに飽き飽きして
家の中から降りしきる雨を眺める毎日
若いおまえにとって 人生は長く
どんなに無駄に使っても あり余るほどだ
だが ある日 おまえは
10年が あっという間に過ぎ去ったことに気づく
いつ走りだせばいいのか 誰も教えてはくれなかった
そう おまえは 出発の合図を見逃したのだ


太陽に追いつこうと おまえはひたすら走る
だが太陽は 沈んだかと思うと
やがて おまえの背後から再び姿を現す
相対的に見れば 太陽はいつまでも変わらず
おまえだけが そうして年老いていく
息切れはますます激しく おまえは刻一刻と 死に近づいていく


歳月は年一年と矢のように過ぎ去り おまえは息をつく暇もない
おまえの計画は すべて失敗に終わり
残ったものは 書きなぐった予定表だけ

そして おまえは英国人らしく ひそかな絶望に身をゆだねていく
時は過ぎゆき いつしか歌も終わりを迎える
もっと言いたいことはあったはずなのに……

                        ( 山本安見 / 訳 ) 原詩掲載 自粛




ビゼー「カルメン 」第一幕、
女工の昼休み時間は 異常な( ? )短さ

Georges Bizet (1838‐1875) ゲオルギュー カルメン(EMI )
ビゼー
歌劇「カルメン 」
アンジェラ・ゲオルギュー(Sop. カルメン )、
ロベルト・アラーニャ(Ten. ドン・ホセ )
ミシェル・プラッソン 指揮
トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団
録 音:2000年
音 盤:EMI(TOCE-55556~58 )

 だいたい「お昼休み 」といえば、古今東西 正午(午前12時、または午後0時 )からスタートしますよね。19世紀スペイン、セヴィリアが舞台のオペラ「カルメン 」でも やっぱり同じ。
 昼休みを告げるタバコ工場の鐘が鳴ると、大勢の若い女工たちがやれやれという感じで工場からぞろぞろ出てくる演出が 今日普通でしょう。
 彼女らを待ちかまえているのは、工場に隣接する衛兵詰所に待機している非番の兵隊や暇をもてあましているらしき町の若者たち・・・ って不健全だなあ。そいつらが待っていると間もなく とびきり可愛くて危険なアイドル的存在 カルメンが登場、自己紹介的な「ハヴァネラ 」を歌ってみせる。と、自分に無関心なドン・ホセに気づくと 彼の興味を惹こうとしてか、えいっ とばかりに 花を投げつけてやる。
 そこで再び工場の鐘が鳴って午後の始業を告げると、女の子たちは 工場の中へ戻ってゆくわけですが - ちょっと待って、よく考えてください。「お昼休み 短かすぎませんか ? 」、「女工さんたち、お昼を食べてないんじゃ ?
 ふふん、さてはカルメンが勤めるタバコ工場は 労基警告を免れ得ないブラック企業かも(笑 )。

 ええと、コレは オペラ的な時間経過トリックで、実は カルメンさん、広場で“ハヴァネラ”を 45分間歌っていた - (爆笑 )。そんなこと あり得ないでしょー。。。
もし この問いに正しく答えられたら、
あなたは大変なオペラ通である

と、おっしゃるのは 音楽評論家 増井敬二氏。さて、アナタは いかがですか ?
 その正解は、今日の文章の最後に こっそり置いておきました。どうぞ ごゆっくり、おしまいまで(辛抱して ? )お読みください(笑 )。


Claude Achille Debussy 葛飾北斎の神奈川沖浪裏 壁時計 エリック・サティ
 1905年、エリック・サティドビュッシー交響詩「海 」(の初演 )を聴いて、その第1楽章「海の夜明けから正午まで 」を 評していわく、
「とてもよかった。特に 11時15分のところが 気に入ったよ 」。



レオンカヴァルロ Ruggero Leoncavallo_スケルツォ倶楽部 ドミンゴ 1985 ウィーン「道化師 」(Orfeo dor )
レオンカヴァルロ
歌劇「道化師 」
プラシド・ドミンゴ(カニオ )
アダム・フィッシャー 指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
録 音 : 1985年6月 ウィーン
音 盤 : Orfeo d'or(C756 081B )

 1892年初演、自身で台本も書いたレオンカヴァルロの傑作オペラ「道化師 I Pagliacci 」第一幕で、村に到着した旅芸人の一座を歓迎する人々に 座長のカニオが芝居を始める時刻を「今宵23時 "A ventitre ore" 」と告げる場面があります。
 23時 ? さすがに午後11時からって遅いんじゃないの と思っていたら、宮沢縦一氏の解説によると 当時の南イタリアでは カトリックの聖務日課として日没時の祈り(ヴェスペレ )をもって 一日の終わりとする習慣があったのだそうで、すなわち 今の午後 6時から 7時頃を指すんだとのこと。 なるほど。


砂時計の思い出を語る
 「砂時計 」に落ちてゆく残砂を 逝ける主人公グスタフ・フォン・アッシェンバッハに残された僅かな生命の時間の象徴として表現した、ヴィスコンティ監督の映画「ヴェニスに死す 」(1971年公開 ) - この素晴らしさについては、すでに触れました。
 こちら ⇒  「ヴェニスに死す 」 の意味 ~ 39年ぶりの謎解き と マーラー 「アダージェット 」。


La Traviata Netrebko 2005
 2005年 ザルツブルク音楽祭、当時 新進気鋭だったアンナ・ネトレプコヴィオレッタ役に起用された ヴェルディの歌劇「ラ・トラヴィアータ(椿姫 )」は、その個性的な演出(ウィリー・デッカー )にも話題が集まりました。
 舞台には 意味ありげに「大時計 」が置かれ、死すべき運命にあるヒロインの余命を指し示しています。オペラ開幕の前奏曲から、この「大時計 」と対になって現れる医師グランヴィル(本来は第3幕にしか登場しない端役 )が、無言でヴィオレッタを見つめ続けます。その不気味な存在に 象徴的な意味を与えた、ちょっと不思議な演出でした。



メカニカルな時計のリズムは 音楽に似て。

 原始的な日時計から 水時計、砂時計、一定の長さの火縄を燃やして距離を計る燃焼時計など、有史以来 様々な「時間のものさし」が世界中で考案されてきました。ガリレオ発案の振り子時計、ニュールンベルクのマイスター錠前職人が発明したゼンマイの原理を利用した懐中時計。スイスの鳩時計。精度も日進月歩で正確になってゆきました。
 規則的にカチカチ鳴り続ける時計のメカニカルなリズムは やはり音楽を連想させるもの。古今 様々な作曲家が 時計のリズムを描写した音楽作品を試みていますが、時計そのものが標題にされたことは、必ずしも多くはありませんでした。


ハイドン ハイドン アバド ヨーロッパ室内管弦楽団
ハイドン
交響曲第101番 ニ長調Hob.1-101「時計」
クラウディオ・アバド 指揮
ヨーロッパ室内管弦楽団
併 録:交響曲第93番 ニ長調Hob.1-093
録 音:1988年11月、ウィーン コンツェルトハウス
音 盤:ドイツ・グラモフォン(POCG-1072 )

 第2楽章アンダンテの規則的なリズムが 時計の振り子を連想させるところが この秀逸なニックネームの由来であることはどなたもご存知のとおり。尤もハイドン先生がご自身で名づけた愛称でない以上、厳密に「時計 」を描写したわけじゃないのか ? っていう感じですが、もはや「未来人 」たる私たちの耳には それとしか聞こえなくなってしまった「振り子 」リズムに乗せて オーボエが 長ーく 属音(レ )を引っぱるところなんか まるで「時計 」とともに 一定の時間が経過してゆく様子を 連想しないではいられないではありませんか(って 二重否定の肯定文です )。
 ハイドン先生のシンフォニーとなると、お気に入りのミンコフスキ(Naïve )盤ばかりをいつもご紹介している気がするので、たまにはクラウディオ・アバド / ヨーロッパ室内管弦楽団(D.G. )盤を聴きましょうね。颯爽とした鮮やかな佳演です。


George Szell Szell Conducts Two Musical Fables
コダーイ
組曲「ハーリ・ヤーノシュ 」から
第2曲「ウィーンの音楽時計 」
ジョージ・セル 指揮
クリーヴランド管弦楽団
併 録:組曲「キージェ中尉 」(プロコフィエフ )
録 音:1969年1月、クリーヴランド
原 盤:CBS-SONY(SRCR-9870 )

 たいへん親しみやすい秀曲、大好きです - と思って調べてみたら やっぱり「変ホ長調 」(笑 )。アレグレット、原題は A bécsi harangjáték - 「音楽時計 」という訳を充てられるのが一般的ですが、実は オルゴールのような ゼンマイ仕掛けの機械であるとの説(属啓成氏など )もあって、たしかに精巧でメカニカルな作風は「時計 」を思わせるものの そのリズムは行進曲のようでもあり、機械仕掛けの玩具の運動だと言われれば そうかなと思わなくもありません。
 この曲は 有名なのに意外と録音が少なく、作曲者コダーイと同じハンガリー出身の巨匠ジョージ・セル(上の写真左 )が 良好な音質でクリーヴランド管弦楽団とレコーディングを残してくださっていたことに、深く感謝。
 主人公のハーリハンガリー版「ほら男爵 」。"ナポレオンに勝って捕虜とした" とか "オーストリア皇帝フランツの娘(マリー・ルイーズ )から求婚されたが 断った" などといった荒唐無稽な冒険談が原作です。1926年、これにコダーイが劇音楽をつけたジングシュピール『五つの冒険 』ブダペスト王立歌劇場で上演され、大成功。この中から6曲を抜粋して演奏会用の組曲にまとめたものが組曲「ハーリ・ヤーノシュ 」です。


ルロイ・アンダーソン ルロイ・アンダーソン(冨田勲 )シンコペイテッド・クロック 冨田勲_スケルツォ倶楽部
ルロイ・アンダーソン(冨田勲 / 編 )
シンコペイテッド・クロック
冨田勲(シンセサイザー )
プラズマ・シンフォニー・オーケストラ
リリース:1982年
音  盤:RCA(BVCC-37412 )
併  録:組曲「大峡谷」(グローフェ )

 ルロイ・アンダーソンの人気曲「シンコペイテッド・クロック 」 - 今回は、冨田勲氏のシンセサイザー編曲ヴァージョンで聴きましょう。
 原曲ではウッドブロックによってカッコン・カッコン叩かれていた単調なリズムが 冨田版では心地よい電子クリック音に代えられ、時計の目覚ましベルが鳴り出すところなどもトミタ・サウンドらしい多彩な音色が幅広く膨らんで 聴き手のイマジネーションを刺激します。
 しかし、楽曲の主要なテーマを演奏するサウンドカラーは 意外なことに 殆ど「口笛 」一色に終始します。正直 過剰な期待の裏返しとは判っていますが、そこに新鮮さや驚きを感じることはできませんでした。「冨田勲 」だったら、この程度のことは演(や )ってくれるだろうという 予想の高いハードルを軽々と超えてしまうサムシングを( かつて 「惑星 」や「イーハトーヴ交響曲 」などには それがありました )過度に期待してしまうほうがワルイのかもしれませんが。
 ちなみに、この作品は1982年LPでのオリジナル・リリース当初は US盤にのみ収録されていたボーナス・トラックだったそうです。とはいっても、すでに国内盤では 前年にリリースされていたベスト盤「冨田勲 / ISAO TOMITA / A VOYAGE THROUGH HIS GREATEST HITS 」(RCL-8044 )の中に 収められていたという記憶がありますが。

 ・・・しかし冨田勲氏の「シンコペイテッド・クロック 」が、単なる実験に過ぎなかったことに気づいたのは、氏がJ.S.バッハ作品のアレンジを集大成させた1996年リリースのアルバム「バッハ・ファンタジー 」に収められた「目覚めよと呼ぶ声あり 」を聴いた時でした。

Johann Sebastian Bach (1685 - 1750) 冨田勲 「バッハ・ファンタジー 」RCA BMG‗BVZC-601 冨田勲_yamaha.co.jp
J.S.バッハ(冨田勲 / 編 )
「時計の幻想 」(原曲:コラール「目覚めよと呼ぶ声あり 」
録 音:1995~1996年
音 盤:「バッハ・ファンタジー 」から RCA / BMG(BVZC-601 )
併録曲:カンタータ第208番「楽しき狩りこそ わが喜び 」、「アヴェ・マリア 」(グノー ) / 平均律クラヴィーア曲集第1巻~ 第1番ハ長調、カンタータ第78番「イエスよ、わが魂を 」~ 二重唱、カンタータ第147番「心と口と行いと生活で 」~ コラール「主よ、人の望みの喜びよ 」、 三声のシンフォニア第2番ハ短調BWV788およびコラール「われ汝に呼ばわる 主イエス・キリストよ 」BWV639(「惑星ソラリスの海 」 )、二声のインヴェンション第13番イ短調BWV784、カンタータ第36番「喜んで舞い上がれ 」、「G線上のアリア 」(管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068~ アリア )、トッカータとフーガ ニ短調BWV565

 冨田氏は 1982年の「シンコペイテッド~ 」で試したアイディアを10年近くも温めた上、このアルバムの「目覚めよと呼ぶ声あり 」に昇華させたのでした。バッハ傑作コラールが なんとも可愛らしいアラーム時計に変身して、私たちを優しく揺り起こしてくれます。
ワルター・カーロス_スイッチト・オン・バッハ ワルター・カーロス_スイッチト・オン・バッハ (2)
▲ 思い起こせば、冨田氏が モーグ・シンセサイザーの音に初めて触れた契機が、ワルター(ウェンディ )・カーロスによるLP『スイッチト・オン・バッハ 』でした。J.S.バッハを題材に 冨田氏もまた一枚のアルバムを制作しようとお考えになられたとしても 不思議はありません。
 尚、「三声のシンフォニア第2番 」と「われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ 」のメドレーは1977年にリリースされた冨田氏の名盤「宇宙幻想 COSMOS 」における 神秘的な「ソラリスの海 」の再演であり、名曲「主よ、人の望みの喜びよ 」もまた1984年のアルバム「ドーン・コーラス 」に収められていた「コズミック・コラール 」の再演となるものです。


ヨハン・シュトラウス 2世 J.シュトラウスⅡ世:喜歌劇「こうもり 」ハイライツ盤(Decca₋LONDON)ポリグラムPOCL-90066 
ヨハン・シュトラウスⅡ
喜歌劇「こうもり 」
(上記写真は ハイライツ盤のジャケット )
カール・ベーム指揮 
ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
エバーハルト・ヴェヒター(アイゼンシュタイン )
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ロザリンデ )
録 音:1971年
音 盤:Decca / LONDON (ポリグラムPOCL-90066 )

 喜歌劇 「こうもり」では ご存知のとおり「時計 」が重要な小道具として登場しますよね。
 その経緯や詳細は省きますが、主人公アイゼンシュタインは 翌朝の午前 6時には刑務所へ出頭しなければならぬ身であり、第2幕(舞踏会のシーン )のフィナーレでは 舞踏会場となったオルロフスキー公爵邸の大時計が時報を 6回打つのを 自分が収監される刑務所の所長とは知らずに親しくなったフランクと仲よく「時刻 」をカウントする場面の音楽は、「序曲 」にも登場する印象深さです。
 この舞踏会には、仮面をつけて「ハンガリーの伯爵夫人 」に変装した アイゼンシュタインロザリンデも来ています。彼女は が刑務所に行かず 夜遊びしていることに気づいて腹を立て、をヘコませてやろうと決意。そんなとは全く気づかず 浮気者のアイゼンシュタイン、いつも女性の口説き用にとひそかに携帯している婦人用の「懐中時計 」を取り出すと、「ハンガリーの伯爵夫人 」のことも本気で口説き出す可笑しさ。「そうだ、この時計を 夫の浮気の証拠にしてやろう 」と思いついたロザリンデ、歌いながら巧みにからこれを取り上げてしまう、まるで狡猾なローゲのような手際の良さまで - この二重唱の楽しさったら ちょっと比類ないオモシロさです。

ヨハン・シュトラウス二世(Wiki ) 79年ニュー・イヤー・コンサート
ヨハン・シュトラウスⅡ
「チクタク・ポルカ 」Op.365
ウィリー・ボスコフスキー指揮 
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録 音:1979年1月1日、より
音 盤:Decca / LONDON (ポリグラムPOCL-90066 )

 上記「こうもり 」第二幕「時計の二重唱 」のエッセンスをクリスタルグラスにギュッと絞ったような 素晴らしい「時計のポルカ 」がコレです。ボスコフスキーがコンダクターを長年務めてきた ウィーンフィルニューイヤー、最後の指揮台に立った1979年、白熱のライヴ・レコーディングから聴いてください。
 このポルカには、オペレッタ「こうもり 」から とりわけ印象的な旋律 - アイゼンシュタインロザリンデが互いの胸に手を置きながら「懐中時計 」の刻む音に合わせて相手の鼓動を確かめ合う時のアップテンポな音楽、若い家政婦アデーレ 第3幕フランクに歌って聞かせる「田舎出の無邪気な娘を演じる時には 」の魅力的なメロディなど - が 次々と、これでもかとばかりに 楽しく接続されます。


60年代のカラヤン カラヤンオペラのバレエ音楽 歌劇イーゴリ公から ダッタン人の踊り歌劇ジョコンダから 時の踊り歌劇エウゲニ・オネーギンから ポロネーズとワルツ 他
ポンキエルリ
歌劇「ジョコンダ 」から バレエ音楽「時の踊り」
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
併録曲:歌劇「イーゴリ公 」~「ダッタンの娘たちの踊り 」、「ダッタン人の踊り 」(ボロディン )、歌劇「エウゲニー・オネーギン 」~「ポロネーズ 」、「ワルツ 」(チャイコフスキー )、歌劇「アイーダ 」~「巫女たちの踊り 」、「若い奴隷たちの踊り 」、バレエ音楽、歌劇「オテロ 」~バレエ音楽(ヴェルディ)
録 音:1970年12月~1971年1月 ベルリン、イエス・キリスト教会
原 盤:ドイツ・グラモフォン(POCG-90518「オペラのバレエ音楽 」 )



森の水車~楽しい描写音楽
オールト
「時計屋の店先 」
オーケストラ・グレース・ノーツ
併録曲:森の水車(アイレンベルク )、カッコー・ワルツ(ヨナソン )、小鳥屋の店先(レイク )、シンコペイテッド・クロック、タイプライター(アンダーソン )、鉛の兵隊の行進(ピエルネ )、ペルシャの市場(ケテルビー )、森のかじ屋(ミヒャエルス )、クシコスの郵便馬車(ネッケ )、おもちゃの兵隊(イェッセル )、アメリカン・パトロール(ミーチャム )、ウィーンの音楽時計(コダーイ )、軍隊行進曲(シューベルト )、くまばちは飛ぶ(リムスキー=コルサコフ )、汽車(プロコフィエフ )、雷鳴と電光、ポルカ「狩り 」(J.シュトラウス2世 )
原 盤:RCA(BVCC-38073 )

 このアルバムは、良い意味で、お子様向けの音楽入門のための一枚。 わかりやすい描写音楽を集めた セミ・クラシック名曲集です。途中 唐突に鳩時計が鳴り出して音楽は中断、しかし鳩が時刻を告げ終われば止まっていた場所から 几帳面に音楽が再開する可笑しさ。
 その後 テーマが再現するとテンポは徐々に遅くなり、とうとう時計は止まってしまいます。指揮者がゼンマイをねじで回してみせるリアルな効果音は、オペラ「ホフマン物語(オッフェンバック ) 」におけるオランピアコミカルなアリアも連想しますね。
 静かな夜の星空を表現するオルゴールによる短いパートを経てのち 三度(みたび )元気にチクタク刻むテーマが姿を現します。 エンディングは タイトルどおり「時計屋の店先 」を思わせる複数の時計たちが 一斉に騒がしく鳴り出す描写で - まるでピンク・フロイド「タイム 」のカオスな冒頭のよう - 慌ただしく締めくくられます。

ケテルビー_Albert William Ketèlbey_スケルツォ倶楽部 ペルシャの市場にて~ケテルビー作品集
ケテルビー
「時計とドレスデン人形 」
ジョン・ランチベリー 指揮
フィルハーモニア管弦楽団
併録曲:「ペルシャの市場にて 」、「修道院の庭で 」、「ジプシーの少年 」、「エジプトの秘境にて 」、「牧場を渡る鐘 」、「中国の寺院の庭で 」、「月の光に 」、「心の奥深く 」
録 音:1977年 6月13~14日 ロンドン、アビロード・スタジオ
音 盤:EMI(TOCE-59039 )

 誰でも知ってる「ペルシャの市場にて 」の作曲者ケテルビー Albert William Ketèlbey(1875 – 1959 )は、イギリス中部バーミンガムの出身。幼少時から発揮した音楽の才能を認めたのは 何とエドワード・エルガーで、13歳でウィンブルドンのセント・ジョン教会オルガニストに就任したそうです。
 ケテルビー作品を聴くなら、個人的には エリック・ロジャース / ロイヤル・フィル(Decca/London 1968年録音 )盤のほうに思い入れが大きいのですが、意外なことに ロジャース盤には この「時計とドレスデン人形 」は 入っていないのですよ(残念 ! )。
 これもまたメカニカルな機械時計の動きを描写した音楽で、その標題は 豪華な応接間の飾り棚に置かれた 美しい置時計のオルゴールの調べに乗せて踊る陶器のドレスデン人形です。その原曲は、意外なことに 近衛騎兵連隊の楽長に献呈された軍楽隊のための作品だったそうです。
 でも 時計の唐突な故障によってストップしてしまう、というコミカルなエンディングは、私にとっては 少し残念な終わり方です、わざわざ こんなこと しなくてもよかったのになー。


ラヴェル Maurice Ravel _ ラヴェル LHeure espagnole スペインの時(NAXOS) 
ラヴェル
歌劇「スペインの時 」から イントロダクション
イサベル・ドゥルエ(トルケマダの妻、コンセプシオン )
ルカ・ロンバルド ( 時計屋の主人トルケマダ )
フレデリック・アウトゥーン (独身の若い男 ゴンサルヴェ )
マルク・バラッド (らば曳きの男ラミロ )
ニコラス・クールジャル (銀行家ドン・イニーゴ・ゴメス)
レナード・スラットキン (指揮 )
リヨン国立管弦楽団
録 音:2013年1月22-26日 
フランス、リヨン(モーリス・ラヴェル・オーディトリウム )
音 盤:Naxos(8660337 )

 ラヴェル最初の歌劇「スペインの時 」 - ご存知のとおり、巨大な置き時計オペラの中で重要な大道具として登場します。最近では原タイトル L'Heure espagnoleを そのまま「スペインの時計 」と 和訳表記することも増えているようですね。
 トレドの時計店が舞台となる一幕物で、オペラは12時を打つ小さな仕掛け時計の音とともに開幕します。その冒頭から流れる精密で静かな序奏は、「小さな音をたてる時計たちの合唱 」 - 時計屋の店先にはこれでもかとばかりに時計があふれており、窓の両側に置かれた巨大な置き時計機械仕掛けの鳥、無数の小時計自動人形などがある、という設定です。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(ロバート・ゼメキス監督、1982年 )
▲ そう言えば、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(ロバート・ゼメキス監督、1982年 ) 」冒頭シーン、科学者ドクの雑然とした研究所もやっぱりこんな感じでした、あれを連想して頂いてよいと思います。同じように、たくさんの時計たちが 一斉にカチコチ刻む機械音が 実にリアル。
 オペラ冒頭 その時計の音に限って傾聴すれば、上記 スラットキン / リヨン国立管弦楽団(Naxos )盤以上に・・・ 
ラヴェル作品全集(14CD)DECCA_Universal Music Company 478 3725 アンセルメ ‗ラヴェル二大歌劇(LONDON)
ロリン・マゼール / フランス国立放送管弦楽団(D.G. )盤、次いで エルネスト・アンセルメ / スイス・ロマンド管弦楽団(Decca/London )盤に聴けるメカニカルな時計の音に囲まれる感いっぱいなサウンドで ゴンサルヴェの気持ちも理解できる(笑 )。
 作品は、ラヴェルが イタリアのブッファ(喜劇 )オペラの再生を意図したコメディ。時計屋の若い妻を囲む男たちとの人間関係は、実はビゼー「カルメン 」パロディとも言われます(「カルメン 」を囲む男たちはドン・ホセ、エスカミーリョの他に 原作者メリメのオリジナルを読むと、ガルシアという隻眼の凶暴な盗賊が 何と カルメンの夫で、こいつがホセと対立することになるのです )。
 エンディングで ゆったりと炸裂する 「ハヴァネラの五重唱 」は、ヴェルディ歌劇「ファルスタッフ 」大詰めのフィナーレで 主要人物が全員登場して歌うシーン(こちらは フーガ )をも想起させる 素晴らしさ。

 ああ、ラヴェルといえば もうひとつの歌劇「子どもと魔法 」の中にも、子どもに振り子を外されてしまった「大時計(バリトン ) 」が登場、「ding,ding,ding,ding … 」と、狂ったように歌いだす 凄まじい場面があるのですが、こちらはまた次回の「アンラヴェル“ラヴェル”ラヴェルメント 」で 話題にしようかなと思います。
小澤征爾 ラヴェル 「子どもと魔法 」 小澤征爾_子供と魔法(ラヴェル )エリオット・マドア as 大時計_スケルツォ倶楽部
▲ ラヴェル 歌劇「子どもと魔法 」
エリオット・マドア (バリトン )の 「大時計 」は 最強 !
小澤征爾 / サイトウ・キネン・オーケストラ(Decca )盤


― 「モーリス・ラヴェル氏のビロードのチョッキの下には 皮肉っぽくやさしい心臓が鼓動 」していますね、チクタクと。


カルメン 」工場の短い昼休み - 解答
ゲオルギュー カルメン(EMI )
 はい、今宵も 拙文を最後までお読みくださり、誠にありがとうございました
 最後に - お待たせしました、 「カルメン 第一幕における 女工の昼休み時間が短すぎる謎について、増井敬二氏の文章から 以下 引用(青字 )させて頂きましょう。

 - もとのオペラ・コミック版の楽譜で 現在は通常カットしている部分まで調べると、はっきり状況が説明されている。即ち 最初に鳴る鐘は、昼休みの始まる鐘ではなく、昼休み終了の予鈴 なのである。つまり幕開きの場面(情景と合唱「広場を往来する通行人… 」 )とミカエラの訪問は、まだ昼休み真っ最中のできごと。女工たちは全員 食事するために各自の家に帰っている。
 やがて鐘の合図を聞いて、女工たちが 町のあちらこちらから広場に現われ( 「空まで昇るタバコの煙… 」 )、最後に登場するのがカルメン、というのが正解なのである。食後のタバコを一服した女たちは、その後の始業の鐘で 工場の中へと入っていく。 
(以下略 )

青字 )文章の出典:
「オペラを知っていますか、愛好家のためのオペラ史入門 」(増井敬二著、音楽之友社
▲ オペラを知っていますか、愛好家のためのオペラ史入門 」(増井敬二/著、音楽之友社 )


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