本記事は 4月19日「 注目記事ランキング クラシック音楽鑑賞 」で 第1位 となりました。
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走馬灯のように ~ フィナーレで 回想される 楽想
クラヴィーアを弾くモーツァルト(エッチング、G.A.Sasso ) 散策するベートーヴェン(部分) Gustav Mahler

 こんにちは、“スケルツォ倶楽部発起人 です。
 今日 4月17日(日曜日 ) - はあー、やっと久しぶりの休日。 遅い朝食をとりながらTVのスイッチを入れると、日曜の朝なら いつもの 「題名のない音楽会 」(テレビ朝日出光興産 提供 )。つい観てしまう。
 今日のタイトルは「短調のモーツァルト 」とのこと。 30分のクラシック番組としては、とても良いテーマですね。

題名のない音楽会 題名のない音楽会 
 
 指揮者の沼尻竜典氏が ピアノで ソナタ第8番イ短調K.310 の冒頭を弾きながら、短調と長調を交錯させるモーツァルトの工夫と才能を 巧みに解説されていました。
 興味深かったのは、この日 登場した若いピアニスト、反田恭平(そりた きょうへい )さん。アゴの丸いところ 浅田真央に似てるかも(笑 )。誠に粒立ちの揃った 美しいタッチには耳が魅き寄せられました。このピアニストの才能は 日本から世界へ大成する器ではないでしょうか。
反田恭平
 そんな反田さんがソロをとったのは、沼尻先生が率いる トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアをバックに、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466 の 第3楽章。
 そういえば 番組冒頭で 交響曲第25番を 聞かせてくださっていたので、モーツァルトが好んだ シンコペートするリズムを聞き比べるなら 終楽章より 第1楽章のほうがいいのになあ などと思いながら、 反田さんが全身全霊を込めた ピアノの滝滴が降り注ぐような打鍵に 耳を打たせていると、やがてカデンツァ - 技巧的なソロの途中 突然 よく聞き慣れた楽想が流れ出しました。 思わず耳をそばだてます。それは、同じ協奏曲の第2楽章、あの柔和なロマンツェの一部 ではありませんか( ! ) 番組ではそこで 「(カデンツァは ) ベネデッティ=ミケランジェリが かつて弾いたフレーズを参考にした 」 とのテロップが流れましたが、それ 一体 いつ どこでの演奏だったのでしょうか。萌えました。

 これに連想して、同じくわが国の女流ピアニスト 原口摩純(ますみ )さんが 2001年頃 マテウス・アンドレアス・シュタイン(1820年製 )のフォルテピアノを使用してレコーディングした ベートーヴェンピアノ・ソナタ第8番「悲愴 」 の第3楽章においても 注目すべき個所があったことを思い出しました。
原口摩純 Willibrod Josef Mahler, Portrait of Beethoven with Lyre, c. 1804(部分 )
▲ 原口摩純 (hf )
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴 」

(併録曲 )第17番 ニ短調「テンペスト 」、第23番 ヘ短調「熱情 」
録 音:2001年11月 新潟
音 盤:アレー(AIAK-001 )
 
 「悲愴 」の終楽章、最高音から ff で駆け降りてきた三連符は その果てに十六分音符となって砕け散ると V7(G7 )に落下しますが、そこに ベートーヴェンは この楽章で二回目のフェルマータを用意しています。その地点で、原口さんは ご自分の創意による 短いカデンツァを加えているのですが、そのフレーズは 「悲愴第1楽章 第2主題の引用なんです。これが、第3楽章ロンド主題と 同じ音列である ということを 私たち聴者に気づかせてくれる、そんな素敵なアイディアを、初めて聴いたときには このフェルマータ部分で ピアニストが 自由なカデンツァを挿入するという意外性と そこに引用された旋律との同一性に 思わずハッとして驚いた記憶があります。

▲ 原口摩純さんの「悲愴 」 - 注目の第3楽章 カデンツァは、 02:25以降。

 協奏曲であれば尚のこと、カデンツァで 前楽章のフレーズを このように引用する演奏(作品 )は、探してみれば まだあるかもしれませんね。
 作曲者自身が 前楽章の部分や旋律をフィナーレで引用する作品といえば その多くはソナタ、特に交響曲になるでしょうが、他にも 思いつくまま挙げてみましょう。

 モーツァルトなら - 最初から ちょっと特殊な例になりますが - あの名曲「レクィエム 」(ジュスマイヤー版 )がそうです。ご存知のとおり作曲者の死によって 未完に終わってしまった作品ですが、最後のパート「コンムニオ 」は モーツァルト自身の遺志によって 楽曲冒頭の「イントロイトゥス 」19小節以降と「キリエ 」を そのまま転用することによって 劇的に その円環を閉じることになりました。
モーツァルト「レクィエム 」ベーム(DG) モーツァルト
 これによって 奇しくも「レクィエム 」全体には 古典作品らしからぬ循環性が生じ、あるいはその後のロマン派の作曲家たちへの目に見えぬ影響もまた 考えられなくもないのでは( って ココ、二重否定の肯定文です )。

by Johann Stefen Decker in 1824 ベートーヴェン第9 ワルター盤(ソニー・クラシカル SICC-1069 )
 何と言っても有名なのは、ベートーヴェン交響曲第 9番ニ短調「合唱」終楽章でしょう、「歓喜のテーマ 」を 導き出す産みの苦しみを聴衆とともに体験するように 第1楽章、次に 第2楽章スケルツォ、続いて 第3楽章アダージョ の楽想が それこそ走馬灯のように回想されては打ち消されます。ここは もう多く語る必要もない有名な場所です。

シューベルトの肖像画 インマゼール ビルスマ:ピアノ・トリオ第2番 SONY
 はい 次。 シューベルトピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調D.929 第2楽章 アンダンテ・コン・モートの主題として登場する、スウェーデン歌謡「太陽は沈み 」のメロディが、終楽章ロンドの中で もう一度再現されることについては、以前「架空のシューベルティアーデ 」でも触れましたね。 ⇒ こちら を ご参照

ブルックナー カラヤン ブルックナー 第8交響曲_UCCG-90378
 ちょっと意外に思えるところでは、実は ブルックナーにもあるんですよ。
 第8交響曲 ハ短調フィナーレも大詰めに近い個所で 第2楽章スケルツォ主題をホルンが吹奏して終楽章ファンファーレ動機とともに金管が多方向から複雑に混ざり合うところです。そこは まるで教会で聴いているような神々しい音響、初めて聴いたときには その凄さに もう呆気にとられるくらい感動していました。さらに楽曲は、第1楽章に登場した半音階的な動機を全楽器がトゥッティで一斉に下降して終わるという、そんな意外性にも唸ります。うーん、ホント名曲だなー。

 この手のアイディアは やっぱりマーラーが上手に活用していましたね。
マーラー 交響曲第1番 Titan_0004 小澤征爾_マーラー第1番 ボストン(D.G.)
▲ 第1交響曲では 終楽章において マーラー第1楽章の動機を繰り返し再現させ 効果的に大自然の雰囲気に回帰させていました。

CBSーSony ワルター、ニューヨーク・フィル『復活(マーラー ) 小澤征爾 サイトウキネン マーラー 交響曲第2番「復活」(Sony)
▲ 第2交響曲でも「復活 」と「最後の審判 」が描かれる長大なフィナーレは「現世の絶叫 」から始まるのですが、その音響って 実は第3楽章スケルツォトリオで一度登場していたもの。

テンシュテット_マーラー第5_FM東京 小澤征爾_マーラー第5番 ボストン(Philips )
▲ 第5交響曲でも 終楽章フガートバロック風ロンドにおいて 第4楽章アダージェットに登場した美しい旋律が再現されていました。しかしフィナーレのテンポは倍速まで高められていますから、その旋律は まるで よく見慣れた親しい風景を 列車に乗って 窓から眺めていると まるで次々と吹き飛ばされてゆくような、そんな 既視感を 伴った 異化効果でした。
 そうそう、第2楽章では 残念にも挫折していたホルン隊によるファンファーレが、終楽章のクライマックスで 再びマウンドに登板、「今度こそ ! 」 不屈の挑戦状を叩きつけ( って 誰に ? ) 見事 リベンジを果たすのです。これによって まるで シンフォニー自体が輝かしい勝利を収めるような効果も 相当 カタルシス度 高いですよね。

クラリネット・ソナタ_0002 サン=サーンス
 サン=サーンスクラリネット・ソナタ 変ホ長調 の素晴らしさについても すでに以前 話題にさせて頂きました。これも終楽章の最後で、当時としては ちょっとあり得ない形で第1楽章のテーマが戻ってくるのですが、詳しくは こちらを ⇒ 「最高齢のスケルツォ、 サン=サーンス『クラリネット・ソナタ 変ホ長調

 他にもまだたくさんあるかも知れませんよね。ハイドンとかショスタコーヴィチあたりに ? もし 思いつかれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ 教えてくださいませ。
 
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 ・・・もとい、ひとつのテーマ楽想を 全楽章にわたって登場させる例 - ベルリオーズ「幻想交響曲 」とか チャイコフスキーの第5番 とか - もありますが、これらは 今日のテーマとは また別の効果かなとも思いますので、今回は 除いておきました。

Good Bye
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