スケルツォ倶楽部
架空のシューベルティアーデ
シューベルティアーデ  目次は こちら

(2)弦楽五重奏曲ハ長調D.956      

 ・・・サロンでは、三人の演奏の素晴らしさに、惜しみない拍手が送られています。
ピアニストのガヒーは、さきほどの歌曲の清浄な雰囲気を保持した 小さなピアノ・ソナタを一曲 選んで弾くことにしました。


トヴェルスカヤ「シューベルト:P.ソナタ第13番」
シューベルト
ピアノ・ソナタ第13番イ長調D.664
オルガ・トヴェルスカヤ (フォルテピアノ)
録音:1997年5月録音
原盤:フランス・オーパス111

 幼く遠い記憶の向こうから鳴っている古いピアノの音に耳を澄ますような、そんな美しい曲です。前回のアーメリングデムスによる歌曲の演奏から 続けて この可憐なソナタを聴いてしまうと、なぜソプラノが入ってこないんだろう、と 不思議に思ってしまうほど 曲の持つ雰囲気も似ています。
 この録音に使われたフォルテピアノは、シューベルト存命中である1820年製のグラーフ製。長調のシューベルト固有の温かみのある旋律を活かし、古楽器の美しさも また充分味わえる演奏です。トヴェルスカヤは1968年ロシア生まれの才媛、主にイギリスで学び、1993年には国際古楽コンクール優勝という経歴を持ち 世界各国で その実力に見合った仕事をしています。

・・・続いて ピアニストは 再び伴奏に回り、シューベルトの友人のヴァイオリニストと、ソナチネを合わせ始めました。力強い演奏に、サロンが沸きます。
ビオンディ「シューベルト:Vn.ソナタ」
シューベルト
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ニ長調D.384
ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン.)
オルガ・トヴェルスカヤ(フォルテピアノ)
録音:1995年5月
原盤:フランス・オーパス111

 主にバロックの古楽演奏で、毎回 目の覚めるような先鋭的表現で知られる ファビオ・ビオンディ、昨年2009年にも ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに 手兵エウローパ・ガランテと共に来日し、鮮烈な「四季」を聴かせてくれましたね。これは もう10年以上も前の録音になりますが、この才人がシューベルトを弾いたという事で、発表当時 かなり話題になったレコードでした。ここで使われている楽器は、トヴェルスカヤのは コンラート・グラーフ、ビオンディのヴァイオリンは シューベルト存命中である1820年製のギラルデッリ・モデル(複製)。
 これでもビオンディにしては かなり抑えながら弾いているように聴こえますが、例えば 第1楽章終結部、第3楽章の速い6連符の経過句などで爆発、地金を煌めかせてくれています。

 ・・・さて、今度は若きテノール歌手が よく知られた「水車小屋の乙女」を 友人のギター奏者を伴って歌う、という 極めて興味深い趣向です。サロンは次第に熱気に包まれてきました。
ギター伴奏 水車小屋の娘
シューベルト
歌曲集「美しい水車小屋の娘」D.795(ギター伴奏版)
ハンス・イエルク・マムメル (テノール)
マティアス・クレーゲル (ギター)
録音:1999年3月
原盤:アルス・ムジチ

 この歌曲集をギターで伴奏するという秀逸なアイデアは以前からあり、1980年頃にはペーター・シュライヤーも録音していました。ギターは 曲想にたいへんよく合っており、違和感は まったくありません。第1曲「さすらい」の伴奏音型は 水車のゴトゴト回る川縁を 軽快な足取りで進む主人公の姿を髣髴とさせますし、第13曲「緑色のリュートのリボンをとり」などは、もともと原曲のピアノ伴奏自体が ギターを模倣していますから、その効果たるや 抜群です。実際に この曲がギターで演奏されるのを聴いてしまうと、目から鱗の落ちるような気がしますよ、本当ですよ。

 ・・・次に、シューベルトが卒業したウィーンの音楽学校コンヴィクト(寄宿制神学校)の有志の先生たちによる特別編成の室内楽をお楽しみ頂きましょう。招かれた老先生たちのクインテットは、今宵の目玉のひとつでした。
何じゃ、フランツは。学校を卒業してからも遅刻を繰り返しておるのか。相変わらず 時間にルーズな男じゃな
と、リーダー格の 高名なハインリヒ・ヨーゼフ・ヴァターロート師の 不機嫌そうな、それでいて とても残念そうにつぶやく声が聞こえました。

カザルス「シューベルト:五重奏曲」
シューベルト
弦楽五重奏曲ハ長調D.956
パブロ・カザルス(チェロ) 
シャンドール・ヴェーグ(1st.ヴァイオリン)
シャンドール・ツェルディ(2nd.ヴァイオリン)
ゲオルク・ヤンツェル(ヴィオラ)
パウル・サボ(2nd.チェロ)
録音:1961年7月(フランス・プラード音楽祭におけるライヴ録音)
原盤:フィリップス

 これは、老カザルスが遺した、翁の最晩年期のチェロ演奏が聴ける 貴重な録音のひとつ。
 音質は今ひとつですが、分離の良いステレオ録音。既に80歳を超え、技術的な衰えは否めませんが、音楽の本質を抉るようなたいへん個性的な表現と、現代の古楽器演奏も顔負けの激しい気迫と うなり声は 決して他では聴けないもの と絶賛される熱情の記録です。
 特に終楽章は 全曲のハイライトと言えるものですが、ここでは カザルスの凄まじい気合いが楽員全員に感染したかのように 絶えず楽器に弓を叩きつけ、擦りつける力強さを込めた演奏です。

架空のシューベルティアーデ(3) に つづく・・・
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