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アンラヴェル “ラヴェル” ラヴェルメント
Unravel RAVEL Ravelment 
  もくじは ⇒ こちら
ravel[1] Unravel RAVEL Ravelment (5) Unravel RAVEL Ravelment (2) unravel RAVEL ravelment
 “unravel
─  【 vt. 他動詞 】 解明する、 (もつれた糸などを ) ほどく、
    (物語の筋を )解決させる; (話し言葉 )破綻させる.
 “Ravel
─  【 n. 固有名詞 】 モーリス・ラヴェル Maurice Ravel
    (1875-1937 )フランス印象派の作曲家.
   “ravelment
─  【 n. 名詞 】  紛糾、混乱、もつれ
                      三省堂「EXCEED 英和辞典 」より


お座敷「ボレロ 」 
- 和楽器中心の邦楽アンサンブル、
   池辺晋一郎による 緻密なアレンジに瞠目 !

池辺晋一郎 「ボレロ・ジャパネスク 」キングレコード (K32X-4002 )  
ラヴェル原曲 「ボレロ 」 (14:31 )
編 曲:池辺 晋一郎 (写真 左 )
演 奏:
日本音楽集団

  藤崎 重康  (笛 )
  西川 浩平  (笛 )
  宮田 耕八朗 (尺八 )
  坂田 誠山  (尺八 )
  竹井 誠  (尺八、笛 )
  米澤 浩  (尺八 )
  水川 寿也  (尺八 )
  福田 輝久  (尺八 )団友
  太田 幸子  (三味線 )細棹
  田中 悠美子 (三味線 )太棹
  半田 淳子  (琵琶 )薩摩
  田原 順子  (琵琶 )筑前
  花房 はるえ (箏 )
  木村 玲子  (箏 )
  滝田 美智子 (箏 )
  熊沢 栄利子 (箏 )
  大畠 菜穂子 (箏 )
  吉村 七重  (二十絃箏 )
  宮越 圭子  (十七絃 )
  久東 寿子  (十七絃 )
  尾崎 太一  (打楽器 )
  高橋 明邦  (打楽器 )
  黒坂 昇  (打楽器 )
  前田 文男 (打楽器 )
  望月太喜之丞(打楽器 )
特別参加:
  大窪 永夫  (篳篥 )十二音会
  池邊 五郎  (篳篥 )十二音会
  宮田まゆみ (笙 )
  姜 建 ○  (胡弓 )北京中央音楽院副教授
  杜 菊 衷  (胡弓 )北京歌舞団
指 揮:
  荒谷 俊治

録 音:1987年 6月29~30日、千葉県浦安市文化会館ホール
音 盤:「ボレロ・ジャパネスク 」 キングレコード (K32X-4002 )
併 録:ジムノペディ第1番(サティ )、グノシェンヌ第1番(サティ )、夢のあとに(フォーレ )、ベルガマスク組曲(ドビュッシー )、シチリアーノ(フォーレ )


 知る人ぞ知る、池辺晋一郎編曲、和楽器を中心とした邦楽アンサンブルによる、ある意味 歴史的な「ボレロ 」の名演。 和楽器の「飄々とした唄い回しや 間の取り方が、フランス近代音楽の歌謡性に絶妙にマッチし、ツボにはまって実にエキサイティング 」、「信じられない調和砂川しげひさ氏 ) 」などと、とにかく絶賛されたものだ。
 池辺先生ご自身も この 「お座敷ボレロ 」の編曲作業と録音工程とが いかに印象深かったかということを、かつて解説者として 「N響アワー 」 にレギュラー出演されていた折り、番組司会者だった女性に - それが 壇ふみさんだったか 若村真由美さんだったか、もう今は忘れてしまったが - 懐かしそうに語っておられたご様子だけは、鮮明に 私の記憶に残っている。

レコーディング風景 (千葉県浦安市文化会館ホール )
和楽器 ボレロ_0002
 最初、演奏団体である「日本音楽集団 」という名前を聞かされても 当時はピンとこなくて、何も知らなかった私などは、この企画のために動員された臨時団体なのであろうなどと勝手に想像していたものだったが、よく調べてみたら トンデモナイ、1964年に創立、各流派から正会員として邦楽器演奏家が参加した、歴史ある 邦楽器演奏グループであった。

和楽器 ボレロ_0001日本音楽集団
 Wikipediaの記載を信頼すれば 同団体は、「1964年4月に14名の同人をもって設立、11月に第一回定期演奏会を開いた。定期演奏会は現在年に四回開かれている。1976年から機関誌『邦楽現代 』を発刊。1977年 - 1978年のNHK連続テレビドラマ『鳴門秘帖 』の音楽(三木稔作曲 )で広く一般に知られるようになった。三代目市川猿之助のスーパー歌舞伎では、1986年の『ヤマトタケル 』と1991年の『オグリ 』の音楽を担当した(いずれも長沢勝俊作曲 )。1997年からは伝統文化放送(現・歌舞伎チャンネル )に出演。日本以外の団体・演奏家との共演も行っている。三木稔の 『急の曲 』(『鳳凰三連 』より)をライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1981年 - 世界初演、1983年 )、ニューヨーク・フィル(1994年 )と演奏した。他にも共演した団体・演奏家としては、北京中央民族楽団、韓国中央国楽管絃楽団、アイザック・スターン、ヨーヨー・マらがいる 」 とのこと。

エリック・サティ フォーレ Claude Achille Debussy
▲ (左から )サティ、フォーレ、ドビュッシー
 さて、「ボレロ・ジャパネスク 」と題された この企画盤に 収めるべき楽曲を選曲する段階で、池辺晋一郎先生(以下、池辺 )は 「どうせやるなら、いっそ“ フランス近代名曲選 ”で統一したら 」という秀逸なアイディアを捻出、白眉のラヴェル以外にも、サティ「ジムノペディ 」、「グノシェンヌ 」、フォーレ「夢のあとに 」、「シチリアーノ 」、そして ドビュッシー の 傑作 「ベルガマスク組曲 ( 最初に耳にする衝撃度という点では、この「前奏曲 」イントロの音響のほうが ラヴェルを 上回っているかもしれない ? ) 」といった フランス近代の名作が 邦楽合奏のマテリアルとして使われることになったわけだが、この時代のフランス楽曲こそ 池辺自身が 自己の「修業時代に最も愛し、最も多くを学んだ 」音楽であり、「耳にしみついた それらの音色感、様式感を断ち切るつもりで挑戦してみた 」のだという。
 池辺は、これら原曲にアレンジを施す際、以下 二つの基本ポリシーを設定している。

1.原曲のスコアを尊重すること。たとえば原曲の「おいしいところ 」だけを 使用する、「よくある 」ような編曲などは しない。

2.邦楽器の特性を生かし、編曲されたものを「邦楽 」として考えること。すなわち、表情やアゴーギク(速度法 )などについて、オーケストラやピアノである「もとの形 」にはとらわれない、新しい発想を掴(つか )む。


 たしかに、その仕事は、オリジナル作品への深い敬意まで察せられる、極めて良心的なもので、池辺自身が自己に課した 上記の基本ポリシーどおり、原曲スコアの構成は 厳に尊重されている。
 但し、「ボレロ 」においては 旋律の反復が一回程度だがカットされている部分が。 これは、邦楽器の種類と数とが 原スコアに指定されたオリジナル・オーケストラと比べると少なかったための やむを得ぬ最小限の割愛であると説明されている。その他、幾つかの楽曲では移調が施されている ( 「ベルガマスク 」組曲の 「月の光変ニ長調 ) 」と「パスピエ嬰ヘ短調 ) 」 )という、原曲の調性が和楽器にそぐわぬために必要な わずかな移調である。それら「違反点 」でさえ「そうした方がより良くなることを信じての違反 」であったと、池辺は 良い意味で 開きなおる。事実、仕上がりを聴いて 納得せぬ者などいないだろう。それほどの説得力なのである。

Unravel RAVEL Ravelment (3) 和楽器 ボレロ_日本音楽集団
 では 和風「ボレロ 」を、じっくりと聴こう。
 原曲でリズムを刻む小太鼓ヴィオラチェロピッツィカート締太鼓二十絃筆のリズムに代わり、同じくフルート篠笛、クラリネット尺八に、ファゴット竜笛に、オーボエ・ダモーレ篳篥(ひちりき )に、チェロ胡弓に、ハープに それぞれ絶妙に代える工夫が 「音色のヴァリエーションという原理自体は、その旋律、魅力とともに池辺の編曲に十分生かされている石田一志 )」。
 中でも 凝っている - と言えば、「ボレロ 」原曲中でも有名な、パイプ・オルガンの倍音の音響効果が採り入れられた、ホルン(基音 )チェレスタ(第2倍音 )ピッコロ(第3倍音 )並行音程で重ねるという、あの不思議なサウンドを 推定篠笛・横笛・尺八という和楽器コンビネーションで しっかりと再現していることが聴き取れる、池辺の音楽家としての矜持には瞠目せざるを得ない (そこは 08:13辺りから、ご傾聴のほど )。
 クライマックスでは (つづみ )が 宙に ぽんぽんと舞い上がり (但し、ココだけは絶対に合いの手が入ったほうが良かったのに、と強く思う。クラウディオ・アバド / ロンドン交響楽団DG.盤を見習うべし。 ) その独特の高揚感は 日本人であれば共通認識の「もういくつ寝るとお正月 」的な 胸躍る懐かしさ。
 ホ長調に転調するラストで 巨大な和太鼓どすんと聴衆の腹の底にまで響いた瞬間、この企画の成功は約束されたと言い切ってよいものだが、しかし残念なことに、これほど素晴らしいディスクにもかかわらず、初リリース以来 今日に至るまでずーっと廃盤で、昨今は入手も困難な様子。 うーむ、もったいない。一人でも多くの愛好家の方々に この労作は聴いて頂きたいものだなー。 では「売れるのか」と訊かれでも、そこは だけど、この音源を保有する権利を持つ関係者には 公開する義務があると思う。無責任な場所からの物言いで 恐縮だが(笑 )。
 では、また・・・。

▶ 尚、今回の文章は 初出時 キングレコード (K32X-4002 ) のライナー解説を 参考にしました。
  そこからの引用部分は、文中 青字で表示してます。

▼ 貴重この上ない レコーディング音源が、何と ニコニコ動画に投稿されていたのを 見つけました。

間違いなく、日本音楽集団による 録音(キング )盤と同一音源であることを確かめました。
いつまで有効なのか わかりませんが、正式再リリースされるまでは こちらで偲びましょう。
音質は やや難ありですが、投稿主さまには 感謝して お借りします。

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コメント

いつも ありがとうございます !

「ポルタメントをかけたような和楽器による表現 」 !  って、さすが~ 常連の会員 たつさま、私も同じ個所で萌えましたよ。絶妙な胡弓のプレイですよね、ホント 聴くべきところにしっかりと耳を傾けておられますね。
池辺アレンジの本盤、文中でも書かせて頂きましたけれど、ドビュッシーの 「ベルガマスク 」組曲が また のけぞるような名演なんですよ。オリジナル盤を手にされる機会があったら ぜひ ご傾聴くださいね !

URL | “スケルツォ倶楽部”発起人 ID:-

和楽器ボレロ

 おじゃまします

 和楽器によるボレロを聴かせていただきました。
色彩感があるボレロに和楽器は馴染まないかと思っていましたが、とんでもありません和楽器による芸術として十二分に楽しませていただきました。
装飾音符らしきところやポルタメントをかけたような和楽器による表現にも感銘をうけました。
ウイキによると4分の3拍子となっていますが、私には2拍子系に聴こえます。私はリズム音痴なのかなと思っています。
 こういう機会がないと聴かれません。
ボレロを配信していただき、ありがとうございました。
 次を楽しみにしています。

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