スケルツォ倶楽部 Club Scherzo
「アフター・シュトラウス & “ バイ・シュトラウス ”」
After-Strauss & “By Strauss”
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(9)1910年 クライスラー「愛の喜び 」
   (鬼才イヴリー・ギトリスの凄演 )
  

フリッツ・クライスラー(1875~1962) EAST WORLD(東芝EMI TOCE-3365)
フリッツ・クライスラー 「愛の喜び」
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)Ivry Gitlis
練木 繁夫(ピアノ)
録音:1985年3月 東京、荒川区民会館

併録:「愛の悲しみ」、「美しいロスマリン」、「ウィーン奇想曲」、「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」、「カヴァティーナ(ラフ)」、「歌の翼に(メンデルスゾーン)」、「タイスの瞑想曲(マスネ)」、「踊る人形(ポルディーニ)」、「ロンドンデリーの歌(アイルランド民謡)」、「亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)」、「ホラ・スタッカート(ディニーク)」、「愛のあいさつ(エルガー)」、「感傷的なワルツ(チャイコフスキー)」、「ニーグン(ブロッホ)」、「ユーモレスク(ドヴォルザーク)」、「シシリエンヌ(パラディス)」、「金婚式(マリー)」、「メロディ(チャイコフスキー)」、「ツィゴイネルワイゼン(サラサーテ)」編曲を含む
EAST WORLD(東芝EMI/TOCE-3365)

 ウィーン出身の名ヴァイオリニスト フリッツ・クライスラー(1875~1962)の残した 三部作 「旧きウィーンの舞踏歌」 の中の1曲。ちなみに その三部作の残り2曲は「愛の悲しみ」「美しいロスマリン」。時に快活、時に憂い、文字どおり古き良きウィーンのノスタルジーを伝える、小曲ではあっても 内容の濃い傑作だと思います。いずれも 今さら 説明を加えることもおこがましい、皆さん よくご存知の名曲。
・・・そこで、クライスラーの魅力については、またの機会に (必ず!)させて頂くことをお約束することにして、今回 お話しするのは、実は このディスクの「演奏家」のほうなのです。

 イスラエルの イヴリー・ギトリス(Ivry Gitlis 1922~ )。
 現在 存命の あらゆる偉大なヴァイオリニストの中でも、私が最も好きな奏者のひとりとして、その名を 忘れることは 決して出来ません。
 ロック・ファンの方なら、ストーンズの「ロックンロール・サーカス(1968年)」の中で、ダーティー・マック(The Dirty Mac)のジョン・レノン小野洋子の脇で(ヨーコさん の激しい嬌声の影に隠れてしまい、激しく掻き鳴らしつつも そのヴァイオリンの音は 殆んど聴こえませんでしたが・・・ )、 どこか浮いていた不思議なオジサンをご記憶でしょう。あの人がギトリスです!
若きイヴリー・ギトリス、ミック・ジャガー、小野洋子(後ろに )ジョン・レノン The Dirty Mac

 ギトリスは、極めて奔放で気合いの入った演奏をしますが、恣意的に陥る一歩手前で踏み止まる、そのスリリングな表情によって 常に 鮮度を失わぬ凄み があります。どんな小品でもハッとするような瞬間を築き上げる巧さ、まるで 歌舞伎役者が舞台で見得を切るかのように、一瞬 音楽が止まってしまったかと思われるほど 実に微妙な間(ま)を置き、すぐ次の瞬間 何事もなかったかのように 再び旋回を始める、その得難い呼吸の巧みさには、まさしく「 」という表現を充てたくなります。
 ギトリスの 決して多くはないディスクの数々は、 - 尤も 私は その全てを聴けたわけではありませんが - その殆んど全てが、貴重にして 個性的な 名演ばかり なのです。

 1951年にロン=ティボー国際コンクールに入賞、その2年後に録音されたベルクヴァイオリン協奏曲ウィリアム・ストリックランド指揮/ウィーン・プロ・ムジカ交響楽団 1953年VOX録音)は フランス・ディスク大賞を受賞、大いに絶賛されました。
ベルク「ヴァイオリン協奏曲」(ストリックランド指揮ウィーン・プロ・ムジカ交響楽団 1953年VOX

 ウィーン交響楽団との一連のヴァイオリン協奏曲 録音集 - 指揮者は、ハインリヒ・ホルライザー(チャイコフスキー)、ヤッシャ・ホーレンシュタイン(ブルッフ、シベリウス、バルトークNo.2 )、ハンス・スワロフスキー(メンデルスゾーン)といった(その上 バルトーク「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」も収めた)CD2枚組のお徳用盤(1954~1957年、CDX2-5505 VOX録音)です。
ウィーン交響楽団との一連のヴァイオリン協奏曲 録音集 1954~1957年、CDX2-5505 VOX録音  さすがに後年の演奏より大人しいけど、貴重な記録です

 そして、ギトリス最高傑作である と( 個人的には )断言したいほどの素晴らしさ、パガニーニヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調、第2番 ロ短調「ラ・カンパネッラ」ヴィスロツキ指揮/ワルシャワ国立フィル 1966年ワルシャワ録音 PHILIPS 日本フォノグラム盤 PHCP-3602)、ここでの オーケストラに乗って天空を駆けるような ギトリスのプレイを聴いてしまうと、その凄さに 一刀両断にされるような気がしますよ。
パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番 「ラ・カンパネッラ」(ヴィスロツキ指揮ワルシャワ国立フィル) 1966年PHILIPS これぞギトリス、素晴らしくも強烈な演奏

 パガニーニ無伴奏ヴァイオリンのための24のカプリース(輸入盤 PHILIPS 442 8960)」1976年3月パリ、殺気立つほどの凄まじいソロ・ヴァイオリンが聴けますが、しかし どうしたことか 録音のピッチが高く、演奏もかなり荒れまくりで、これだけは 聴いていて あまり気持ちよくないです。元々楽器のチューニングが高かったのならまだしも(スコラダトゥーラ ですか? って、笑えません!)、もしレコーダーの回転速度に問題があったものだとすれば、やはり音源が修正されないうちに 感想を述べることは、慎まなければなりませんね
24のカプリース(輸入盤 PHILIPS 442 8960) ・・・実に惜しい事をしたなあ

 その代わり・・・ ということではないですが、同じパガニーニの「カプリース」でも 珍しくピアノ伴奏付き の「奇想曲 第13番、第20番、第24番」を録音してくれています。先日 ブックオフ で見つけました! (伴奏はタッソ・ヤノポーロというピアニスト、なお13番と20番の編曲はクライスラー24番の編曲はレオポルド・アウアーです)。Philips 1967年録音
 奇想曲 第13番20番(クライスラー編)、24番(アウアー編曲)Philips 1967 たいへん興味深い仕上がりです

 翌年 1977年 には マルタ・アルゲリッチフランクドビュッシーヴァイオリン・ソナタ をイタリアのリコルディに録音します。これも優れた演奏でしたが しばらく入手困難の時期の長かった名盤でした。その後 リコルディBMGに買収されたため、RCAレーベルで 国内でも容易に聴けるようになったことは朗報です。
ギトリス&アルゲリッチ ドビュッシー&フランク  Vn.ソナタ集(RCA) 素晴らしいよお

 アルゲリッチとの共演なら、大好きな ベートーヴェン作曲 ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」 、1999年 別府での 燃焼度の高いライヴ録音(東芝EMI盤/TOCE-55260)。聴くだけで くたくたになる快い疲労感を味わえます。二人の熱いエネルギーが凝縮したような、前年の音楽祭におけるフランクソナタも併録されてます。
「クロイツェル」 草津での1999年ライヴ録音(東芝EMI手に汗を握ります!

 イヴリー・ギトリスの演奏は、いずれも 聴く前と聴いた後とでは 音楽の印象が一変 してしまうほど 強い感銘を与えてくれる名盤ばかり です。

 ・・・で、もとい。 冒頭 ご紹介させて頂きました 素晴らしいクライスラーを含む このディスクは、いわゆる「ヴァイオリン名曲集」で わが国では 曲順を変えながら何度も再発が重ねられているようなので、国内録音された海外アーティストの企画CDの中では かなりのヒット盤なのでしょう。この「愛の喜び」のように 短い演奏時間の中でも ギトリス個性的表現が次々と開陳されるので、聴いていて本当に面白く、まったく飽きません。大体、ギトリスを聴けるディスク自体 数少ないので、あの一瞬の閃き が聴きたくて、非正規盤にまで手を出してしまう 私のような者にとっては、彼の演奏が聴ける1枚1枚が 貴重な宝物です。

 なお、この「愛の喜び」の演奏の最後で、ギトリス翁は 熱演の勢い余ってか、右手で弓を返す瞬間と左手で弦を押さえるべき呼吸とが一致しなかったらしく(推測ですが、G線でドを押さえるべき指先に力を入れるタイミングが一瞬ズレたためか? ハーモニクスのような倍音が鳴ってしまっている)、にもかかわらず「いいよ、これで。 」と、このテイクでのリリースを平気で許可してしまう、その大物ぶり と言ったら・・・、うーむ、やっぱり「 」です。大好きです、心より 翁のご健康を 祈念します。
イヴリー・ギトリス

1910年  日韓併合条約調印。
      大逆事件、
      カンディンスキーを含む、表現主義画家のグループ「青騎士」結成。

1911年  リヒャルト・シュトラウス、楽劇「ばらの騎士」初演 ・・・に 続く

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