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映画「イノセント The Innocents 」マーティン・スティーヴンス as マイルズ 映画「イノセント The Innocents 」フローラ
「ねじの回転 」  番外編
映画 The Innocents(1961年 )邦題「回転
~ 節度をわきまえた新解釈を 原作に付加した古典


 「ねじの回転 」は、名作ゆえに何度か映画化されています。
 中でも真っ先に指を折るべき作品は、繰り返し鑑賞に足る古典、ジャック・クレイトン監督によるモノクロ映画 The Innocents(1961年 )邦題「回転 」でしょう。

ねじの回転 the Innocents(1961 ) (2)
 映画の原題 The Innocents イノセントとは (子どもの )純真、無垢、罪・けがれのなさ - といった意で、重要な登場人物である 二人の幼い兄妹を指していることは、言うまでもありません。

映画「イノセント The Innocents 」 (2) フローラ(パメラ・フランクリン )とマイルズ(マーティン・スティーヴンス )_映画「回転」より
▲ 妹フローラ(パメラ・フランクリン )と 兄マイルズ(マーティン・スティーヴンス )

 ヘンリー・ジェイムズの原作を美しく忠実に映像化してみせるだけにとどまらず、映画的手法を巧みに駆使して 作品に新たな要素を 不自然なく付加してみせています。これは「ティファニーで朝食を 」の原作者としても知られるトルーマン・カポーティを含む、ウィリアム・アーチボルド、ジョン・モーティマーといった 複数の優秀な脚本作家の顔ぶれに負う所も大きかったことでしょう。
クレイトン監督Claytonとデボラ・カー kerr トルーマン・カポーティ
▲ (左から )クレイトン監督とデボラ・カー、脚本のひとり トルーマン・カポーティ

 クレイトン監督は、「ねじの回転 」の映画化にあたっては 常に最も問題となるポイント - ピーター・クイントミス・ジェスルという二人の 「死霊 」の存在を 観客の「目に見える 」方法で「出演 」させるかどうか - を、かつてオペラ化にあたってベンジャミン・ブリテンが選択した方法と同じように「 存在するもの 」として画面に登場させることを選んでいます。もちろん「生きている 」登場人物とは違和感なく区別できるよう、その出番のシーンにおいては 幻想的な視覚効果を生かすような映像が配慮されたことは、言うまでもありません。
ねじの回転 第一幕 第7場「湖 」

 また、ギデンズの前任者だった家庭教師ミス・ジェスル遺品(と思われる )古いオルゴールから流れ出す ワルツ 柳の歌 」のメロディ( フランス6人組の一人、ジョルジュ・オーリックによるオリジナル作曲 )に 生前のミス・ジェスルの苦悩と悲しみを託させるというアイディア - 

ジョルジュ・オーリック(1945年)Pierre JahanRoger-Viollet
▲ ジェスル先生のワルツ「柳の歌 」を作曲した、ジョルジュ・オーリック

 - そして 亡き クイントジェスル先生 について 子どもたちは一切口にしないにもかかわらず、この トーチソング の旋律を フローラは 湖畔で口ずさんでみせたり、マイルズも屋敷のピアノで 家庭教師に弾いてきかせたりするのです ・・・。 
 亡き男女の霊と 子どもたち との間には やはり今も 何らかの絆(きずな )があるのではないか - などと ギデンズ先生が抱く 不審感さえも 私たち観客に 暗示してみせる、そんな巧みな聴覚的演出に クレイトン監督の感性が冴えわたっています。死霊が 「目に見えない 」のと同様、音楽もまた「目に見えない 」 神秘的な小道具たり得るのです。

映画「イノセント The Innocents 」マイルズ
▲ 映画の冒頭、主人公の家庭教師「ギデンズ 」が 彼女自身の心の裡を象徴するかのように暗闇の中で子どもたちの救済を願いながら真摯に祈りを捧げるシーンの映像美。

ねじの回転_旅路
▲ 初めて屋敷に到着したギデンズが 広大な敷地を歩いていると 湖のほうから「フローラ ・・・」と幼女の名を呼ぶ若い女の声を耳にしますが、彼女以外は他の誰にもその声が聞こえてはおらず、当のフローラ本人も 聞いたことを肯定しない という、さり気なく提示されたエピソードの中に 隠された怖さ に徐々に気づくような仕掛けが・・・。

ねじの回転 第一幕 第7場「湖 」 (3)
▲ また、ギデンズ家庭教師として屋敷に到着した時点では まだマイルズは学校の寄宿舎で生活しているにもかかわらず、この直後 理由不明の放校処分の手紙とともに 夏休み開始前からが屋敷に戻ってくるということを フローラがすでに予知していた、という不思議な挿話。
 
 ・・・などと、挙げてゆけば限(きり )がないほどですが、そんな原作にはないものの 原作を補強するかのように説得力ある要素を自然に付加し、一層強く観客を魅きつける、そんな魅力が この映画「イノセント The Innocents 」には宿っているようです。
 もし まだご覧になっていない会員さん、原作をお読みになられたら、ぜひ一度 映画のほうも ご視聴ください。おススメします。 ブリテンオペラは 一番最後にとっておかれたほうが よいと思います。

デボラ・カーDeborah Kerr 映画「イノセント The Innocents 」 (3)
 主人公のギデンズ先生を演じるのは 往年の名女優 デボラ・カー Deborah Kerr (1921 – 2007 )で、彼女は スクリーンの中でこそ若く見えますが、実は 撮影当時はすでに40歳近くでした。原作の「家庭教師 」は、「世間慣れしてない 20歳くらいの若い女性 」という設定ですから、ここでも映画は原作とは異なります。
 それでもジャック・クレイトン監督が デボラ・カーの起用にこだわったのは、やはり彼女最大の成功作、ゴールデングローブ賞 主演女優賞を受賞した ミュージカル映画「王様と私(1956年 )において「アンナ先生 」(シャム国王宮に招聘されたイギリス人家庭教師 )役を務めた実績のとおり、正義感ある「女性家庭教師 」という 一般のイメージを大事にしたためではないでしょうか。

映画「王様と私 」デボラ・カーとユル・ブリナー(左 )
▲ ミュージカル映画「王様と私 」における「シャル・ウィ・ダンス ? 」のデボラ・カー(右 )


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