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ブリテン : 歌劇 「ねじの回転 」 The Turn of the Screw
(原作:ヘンリー・ジェイムズ )
 - 本当はもっと怖い真相 について、無謀な究明を企てる。

Benjamin Britten ブリテン ねじの回転_0001

第一幕 第6場「授業 」

 第6場への前奏を担う 生き生きとした間奏曲「第5変奏 」は、フガートな動きが耳に心地よい 擬バロック風舞曲で、五拍子という めずらしい変拍子が特徴です。この部分、ブリテン自演(デッカ / ロンドン )盤も秀演ですが、手元にある ダニエル・ハーディングVirgin ) 盤で聴く疾走感は 格別です。細かい動きのアンサンブルに ホルンやティンパニが加わって 小さなクライマックスを築いたところで 幕が上がります。
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 その第6場は 勉強部屋、家庭教師マイルズにラテン語の授業をしているという 日常的な風景が描かれます。妹フローラは 兄の傍(かたわ )らに座って「お手伝い 」しているところ。おススメのハーディング盤は、ラテン語を唱える ふたりの子どもの歌唱が とにかく自然で可愛らしいです。
 兄マイルズは、授業の中で ラテン語の「男性名詞 」に 多くみられるという「語尾に is が付く単語 」を 次々と暗誦してみせます。 - amnis(海流 )、axis(軸 ) 、caulis(茎 )、collis(丘 )、clunis(臀部 )、crinis(髪 ) 、facis(束 )、follis(ふいご )、fustis(棒 )、ignis(火 )、orbis(世界 )、ensis(剣 )・・・ 
 片や 歴史好きであるらしい 彼の妹フローラは、マイルズのラテン語につきあうことに とうとう飽きてしまったらしく・・・

ブリテン_ねじの回転_Boadicea ねじの回転_Boadicea
▲ 「わたしったら チャリオット(戦闘馬車 )に乗った ブーディカ Boadicea( 古代ケルトの好戦的な女王で ブリテン国先住民の諸族を率い、ローマ帝国の支配に抵抗したヒロイン として イギリスの子どもたちにも有名 )だよ ! ほら 見て見て ! 」 などと 突然 おてんば丸出しで騒ぎ出し、「先生 」に たしなめられる始末(タメイキ )。

 ラテン語の男性名詞、かたやは 騎乗する女騎士・・・ これらテキストには、些細なことを装いながら 実は 原作者ヘンリー・ジェイムズの意図するところを汲んだ 台本メアリー・マイファンウィ=パイパーによる 用意周到なる仕掛け が隠されているのではないか - と、スケルツォ倶楽部発起人、また勝手には 深読みします。
 即ち マイルズフローラの兄妹が 今は まだ幼いながら 「男性 」 と 「女性 」 という 異なるセックス(性差 )を有しているという事実を、歌劇の聴衆は潜在的なレベルで意識させられることになるからです ( え、それって どういう意味 ?  - はい、これ要注意ポイントなんです。 今後 さらに詳しく述べてまいるつもりです )。

 ここまでの 楽しい音楽の快活さによって、場の後半 マイルズが静かに歌いだす 「マロ の歌 マロ Malo とは、ラテン語で“”の意 malusの単数奪格だという ) 」の幽玄さが、より対照的に際立ちます。 その歌詞は下記のとおりですが、その意味するところは 一筋縄では解けない難解さです。 尚、 二行目の in an apple-tree と 四行目の in adversity とは、同じ韻を踏んでいることなどは わざわざ申すまでもないでしょう。  

ねじの回転 Maloの歌
「 Malo… I would rather be  ( ぼくは むしろ… )
 Malo… in an apple-tree  ( リンゴの木の中に居たいんだ )
 Malo… than a naughty boy
 Malo… in adversity  ( 不幸な腕白小僧でいるよりも… ) 」

 マイルズによる この不思議な「マロの歌 」 - あまりにも唐突に歌いだされた感 なきにしもあらずですが、実は この歌劇のエンディングにおいても たいへん印象的な形で再登場することとなる、最も重要な旋律のひとつなのです。
 しかし これもまた ヘンリー・ジェイムズ原作には一切登場しない、ブリテンの歌劇だけに独自創作されたエピソード - これを、作曲家で音楽評論家でもある 柴田南雄氏は、「クイントによって 不自然に覚醒された悪の証拠として(家庭教師は )受け取った(名曲解説全集第20巻 - 音楽之友社 ) 」と解釈しておられます。たしかに そのようにブリテンが意図していた可能性も高いと思いますが、スケルツォ倶楽部発起人の考える解釈は、柴田氏とは少し異なります。但し、私の管見のほうは、これも今後 別の回にて 詳しく 述べさせて頂くことを お約束します。

次回は・・・ 【第一幕 第7場「湖 」 】

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