スケルツォ倶楽部 Club Scherzo 
  全記事一覧は ⇒ こちら All Title List
  ねじの回転 」 もくじは ⇒ こちら


ブリテン : 歌劇 「ねじの回転 」 The Turn of the Screw
(原作:ヘンリー・ジェイムズ )
 - 本当はもっと怖い真相 について、無謀な究明を企てる。

Benjamin Britten DVD ねじの回転
第一幕 第1場「旅 」

 旅装の若い女性(家庭教師 )が、馬車で目指す邸宅に近づく、最初の場面です。
 全二幕十六場から成る 歌劇「ねじの回転 」は、それぞれ各場へ移る繋ぎとして 短い間奏曲が演奏されるようになっています。 驚くべきことに、それらは すべて 共通する 音列変奏 Variation なのです。その重要な音列を提示するのが、第一幕第1場 - すなわち このシーンに先立って演奏される「テーマ 」部分であるという情報は 知っておかれたほうがよいでしょう。
 ▼ 最初に提示される 基本的な音列とは、このようなものです。
ブリテン「ねじの回転 」の音列

 その後、ピアニッシモでリズムを刻むティンパニの鼓動に乗せ、家庭教師が 両親を失った二人の子どもたち(マイルズフローラ兄妹 ) や 目上の家政婦(グロース夫人 ) が自分を受け入れてくれるだろうか、何ごとも誰にも相談せずに判断しなければならないという後見人の指示どおり 無事やりおおせるだろうか など、責任の重圧からくる不安感と心配を吐露しつつも 自分自身を「Be brave ! (勇気を出しなさい、わたし ) 」と叱咤激励する様子は、後のミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック 」で ザルツブルクの修道女マリアが やはり子どもたちの家庭教師を依頼されたトラップ大佐の邸宅を初めて訪問するシーンで 不安を振り払いながら決意を歌う、こんな似たような場面を 連想します。

I Have Confidence

 ・・・と言っても これら二つの物語の主人公を それぞれ待ちかまえている その後の展開は、双方比較のしようもないほど真逆の方向を向いているわけですが。

 もとい。ヘンリー・ジェイムズの原作から補足すると、主人公の女家庭教師は 貧しい田舎牧師の末娘、この時まだ20歳で 男性経験もなく、住み込みの家庭教師の募集広告に応募する形で 初めてロンドンに上京してくる - という設定です。

英国ヴィクトリア朝ガーデン(イメージ )
 面接を受け、依頼された家庭は、ロンドン郊外エセックス州のブライという田園地帯にある広大な庭園をもつ屋敷 ( ダウントン・アビー みたいなイメージでしょうか ) で、そこに住む二人の子どもたち両親(父は職業軍人 )は 二年前、旅行先のインド(当時イギリスの植民地 )で 夫婦ともに揃って事故死(詳細は不明 )しています。
 遺された兄妹叔父からの依頼とは、前述のとおり、屋敷での家庭教師の仕事がスタートしたら 依頼人とは連絡の一切を没交渉にする - という不自然なものでした。その代わり約束された破格の待遇という条件を別にしても、彼女が仕事を引き受けることを決意した動機とは、この独身で若いビジネスマンたる依頼人に対し 無意識に好意を抱いたことにあるのではないか という推察は、多くの研究者の指摘しているとおりです。
 これは、彼女にとって、実は 大きな葛藤です。
 原作を一度読めば どなたも随所に感じることと思いますが、家庭教師は その内心では「自分の仕事ぶりを依頼人に 是非みてほしい 」、「彼に 高く評価してほしい 」と、強く望んでいます。しかし 彼女依頼人の要求するとおりに 努めれば努めるほど、逆にそれは、彼女自身の望みを遠ざけてしまうという皮肉反作用を生むことになっているのです。このヘンリー・ジェイムズの仕掛け、実に 巧妙にできています。
 そして、事実、彼女が その後 兄妹の叔父たる依頼人に再会することは、もう二度となかったのでした。

・・・次回は、【第一幕 第2場「歓迎 」 】

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
blogram投票ボタン
人気ブログランキングへ
Club Scherzo, since 2010.1.30.



関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)