クラヲタに捧ぐ、ジャズ=フュージョンの名盤 ランダム辞典
スケルツォ倶楽部、
スティーヴ・ガッド Steve Gadd を讃える。
   
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Steve Gadd_from Sailing Wonder Eric Gale
 
「デ・ラビット 」(エリック・ゲイル )1977年    
Best Stuff(WPCP‐4207) Ginseng Woman(Eric Gale) sony.
 スティーヴ・ガッド が参加していた 最高のセッション・グループ“ スタッフ ”が わたしは大好きで、これについては 今まで たびたび触れてきたとおりです。スタッフのメンバーでキーボード奏者 リチャード・ティーと共に、特異な個性を持った二人のギタリストについても わたしは忘れることができません。今日は そのひとり、エリック・ゲイル のエレクトリック・ギターを聴きましょう。
Eric Gale(Columbia Legacy) 鏡の前のエリック・ゲイル

 エリック・ゲイル(Eric Gale 1938~1994)ほど 個性的なプレイをするジャズ・ギタリストを わたしは知りません。ジャズ・ミュージシャンとは即興で勝負する演奏家ですから、そのプレイに個性が表れるのは当然ですが、一聴して「あ、これは誰々だ」と すぐに当てられるほどの キャラクターは希少です。
 エリック・ゲイル独特の ブルージーで朴訥な語り口は、ジャズ・ギタリストの系譜上 どのカテゴリーにも共通項を見いだしにくい、極めて特異な位置に存在しています。たとえば ウエス・モンゴメリーオクターヴ奏法 など、意図的に使うことを避けているようです。その理由をわたしは1982(昭和57)年に発行された「ジャズ批評(特集アルト・サックス)」( ・・・かつて わたしに初めて 「ハッスル」を聴かせてくれた従兄弟 から譲ってもらった一冊)の中に見つけることが出来ました。
季刊「ジャズ批評」No.40(1982年)表紙 季刊「ジャズ批評」No.40(1982年)の表紙

エリック・ゲイル そのオリジナルな奏法の秘密
 それは、音楽ジャーナリストの竹村淳氏がお書きになられた 興味深い記事でした。「ギタリスト訪問」という連続掲載らしいレポートのひとつなのですが、この回が まさに「エリック・ゲイル」であり、その副題「サックス奏者になれなかった偉大なギタリスト」というタイトルが目を引きました。
 竹村氏の取材によると(竹村氏がエリック・ゲイル本人と人間関係を深めてゆく過程の友情の記録は感動的ですが、ここでは割愛させて頂きます)、もともとゲイルはサックス奏者を志し、1967年初頭から7月まで 最晩年のジョン・コルトレーン(!)からも 教えを受けていたほどでしたが、技術的な理由で 断念してしまいます。
John Coltrane1964(Swing Journal Nov.2002) ゲイルに多大な影響を与えた ジョン・コルトレーン

 その後 紆余曲折あったものの、ゲイルギターに転向したことは幸いでした。その時に 彼が目指したことは「ミュージシャンは 自分の音で勝負しなければ話にならない」というもので、それから 他のギタリストの演奏は一切聴かず、「ラジオから聞こえてくると消した」というほど徹底して その信念を貫いていたのだそうです。
 彼の オリジナルな奏法の発想 が、チャーリー・パーカーコルトレーン など 「サックス奏者のフレージングをギターで表現する」ことにあった、という情報は 特筆すべきです。竹村氏の文章に記されたゲイルの言葉を引用させて頂きますと「サックス奏者から一番学んだのは、その間(ま)の取り方さ。ピアノやギターは呼吸と関係なくコードからコードを追って弾くことも出来るが、サックスは呼吸しなければ吹けない。そのサックスの呼吸法とフレージングの関係をギターに取り入れて、俺は 自分自身のサウンド を創ったんだ」。
・・・そうだったのか!と、あの個性的なシングル・ノートが 試行錯誤の果ての 信念の到着点であった事実を知ると、思わず両手を叩くような想いで納得してしまいます。

名曲「デ・ラビット De Rabbit(うさぎ)」
 スティーヴ・ガッド が参加している エリック・ゲイルのリーダー・セッションの曲に「デ・ラビット De Rabbit」があります。
Easter Rabbit by Charles M.Schulz ウサギになって、踊りながらイースターエッグを配るスヌーピー

 「ベスト・スタッフ」に収録された、1978年11月20日 東京郵便貯金ホールにおける“ スタッフ ”の 来日公演からの 貴重なライヴ(ということは、あの激越な「ライヴ・スタッフ」の未発表音源!)の演奏が、わたしの聴いた 最初の「デ・ラビット」体験 でした。
Best Stuff(WPCP‐4207) Best Stuff (WPCP‐4207)

 カリビアン風のカリプソ・リズムを軽快に叩くスティーヴ・ガッドのリズムに乗せ、リチャード・ティーのリズミカルなアコースティック・ピアノと一緒に エリック・ゲイルのギターは、タイトルどおり跳ね回るような旋律を繰り返しますが、そのギター・フレーズは、たしかにサックスのブロウイングを模している ことが判ります!
 同じ曲は、ゲイルのオリジナル・リーダー・アルバム「ジンセン・ウーマン Ginseng Woman (1977年発表、プロデューサーは ボブ・ジェームス)」で、すでにスタジオ録音・収録されていたのでした。
Ginseng Woman(Eric Gale) sony. ジンセン・ウーマン Ginseng Woman 1977年(CBS)
 エリック・ゲイルスティーヴ・ガッド の他、リチャード・ティー(ピアノ)、ボブ・ジェームス(編曲、フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノ、シンセサイザー)、アンソニー・ジャクソン(ベース)、ラルフ・マクドナルド(パーカッション)などが参加の、こちらの「デ・ラビット」には ぶ厚いブラス・セクションと女声コーラスが加えられた、いかにも当時のボブ・ジェームス!っていう盛大なアレンジが施されています。
 ここでのゲイルのギター・サウンドは最高で、特にイントロや間奏で用いられてるリフ・フレーズを転調しながら繰り返すブラス・セクションを背景に、思いきり弦を弾(はじ)いてぐーんと伸ばして聴かせるところなど 切なくなるほどの素晴らしさです。メリハリを利かせたガッドのドラムス、見事にサウンドの縁取りをしています。カリブのスティール・ドラムを模したボブ・ジェームスのシンセサイザーの音は、今聴くとさすがに時代を感じます。ここまで演るのであれば、後年の ジャコ・パストリアス のようにオセロ・モリノウ など本物のスティール・ドラムと奏者を起用してもよかったのではないでしょうか。
 なお 余談ですが、この翌年(1978年)エリック・ゲイルは「マルチプリケーション Multiplication」という名盤(CBS)を発表することになります。ガッドもしっかり参加していますし、その活躍は「ジンセン・ウーマン」を凌いでいます。でも残念ながら 今回この内容に触れる余裕はありませんでした、また次の機会にお話しさせて頂こうと思います。ちなみに この「マルチプリケーション」のジャケットうさちゃん なんですよー。ね、ゲイルさん?
エリック・ゲイル 談 「 ・・・オレには、これが うさちゃん なのかどうか わからない 」 (
Multiplication (2)Multiplication (1)
Multiplication 1978年(CBS )また いつか詳しく

増尾好秋 の「トレジャー・アイランド Treasure Island 」
 ところで、ほぼ同時期に録音された音源で わが国のギタリスト 増尾好秋 のリーダーアルバム 「セイリング・ワンダー Sailing Wonder (キングKICJ-2201) 1977年11月録音」に収録された、「トレジャー・アイランド Treasure Island 」という、やはり明るいカリプソ風の曲があります。
増尾好秋 Sailing Wonder (キングKICJ-2201) 増尾好秋「Sailing Wonder(キングKICJ-2201)」 好きでした!

 ここにはエリック・ゲイルスティーヴ・ガッドリチャード・ティー といった、スタッフ主要セッション・メンバー の他、当時やはり売れっ子だった デイヴ・グルーシン、そして珍しくも マイク・ノック の二人が シンセサイザー担当として参加しています。“ ガッド砲から次々と発射されるドラムスのフィル・インの炸裂を聴くのは やはり快感。増尾の曲中で 女声コーラスが歌うカリブ風のフレーズと、ゲイルの作曲した「デ・ラビット」におけるコーラス部分の雰囲気、少し似ています。両者共通のリズム・セクションも含め、機会がありましたら 一度ぜひ聴き比べをお楽しみください。

Eric Gale
 ・・・エリック・ゲイル父方の祖先は、カリブ海バルバドス島の出身だったそうです。
 カリプソレゲエなど 南洋系の音楽に回帰する傾向もあったゲイルの 音楽的な発想のオリジナリティ は、自分自身のルーツでもある祖先の血 に呼ばれたものだったのかもしれないなあ、などと ホール&オーツの「サラ・スマイル」を レゲエのリズムで料理した演奏などを 聴くにつけ、考えてみたりしているところ・・・なのです。

 次回 (6)「ラヴ・プレイ」(マイク・マイニエリ)1977年 ・・・ に 続く


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