Getz Children Of The World (CBSソニー 25AP-1696 ) スケルツォ倶楽部 ⇒ 全記事 一覧は こちら
午後のジャズ喫茶 「カフェ ソッ・ピーナ」から
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「暑い、水の中へ飛びこみたいっ 」 
 ~ 水まわり ディスク ジャケット・コレクション

オリヴィア・ニュートン-ジョン 水のなかの妖精 Early Takes Volume 1 Music From The Martin Scorsese Picture Living In The Material World 中島みゆき_寒水魚_スケルツォ倶楽部

カフェ ソッ・ピーナ
 重いドアを開ければ 入口にぶら下がったスイス製のカウベルが がららんと爽やかに鳴る )


わたし   「ひゃー、今日も 外は暑いわねー 」
マスター  「うわ、”スケルツォ倶楽部”の奥さん、久しぶりのご来店じゃありませんか。暑中お見舞い申し上げます 」
わたし   「ふふん、(指を立てて )ちっちっちっ。マスター、もう立秋を過ぎたから 今は 残暑お見舞い申し上げますっていうものなんだよ 」
マスター  「残暑お見舞い申し上げます 」
わたし   「まあ どうでもいいけど ごめんね、なかなか来れなくってさ 」
マスター  「いえ、とんでもない。さあ、どうぞ こちらのお席で、ゆっくりお寛ぎください 」
わたし   「(腰掛けながら )って、あいかわらず お客さん 入ってないね 」
マスター  「(自嘲の微笑を浮かべ )ふふん、余計なお世話ですよ。 ・・・ええと、冷たいアイス・コーヒーでよろしいですよね 」
わたし   「ううん。今日はね、わたし 冷たいアイス・レモンティーな気分なの 」
マスター  「 (タメイキ )音楽も替えましょうか 」
わたし   「そうね。涼しくなる音楽にして頂戴。 」
マスター  「・・・って、また そんな無茶ブリを 」
わたし   「だってホントに暑いんだもん。もー 水に飛びこみたいくらい 」
マスター  「うーん、水の中へ ― ですか。そういえば こんなジャケットの有名なレコード、ありましたよね 」

アンダーカレント_ビル・エヴァンス ジム・ホール アンダーカレント_ビル・エヴァンス ジム・ホール_東芝CJ28-5152
ビル・エヴァンス(ピアノ )& ジム・ホール(ギター )
「アンダーカレント 」 Undercurrent
(左 )オリジナル ユナイテッド・アーティスツ(U.A. )盤
(右 )1988年リリース国内(ブルーノート )盤
録 音:1962年 4月~ 5月、ニューヨーク


わたし   「久しぶりに聴き直したけど、やっぱり このレコード素晴らしいわね 」
マスター  「ビル・エヴァンスの硬質なピアノの音色と ジム・ホールが刻むギターとのクールなインタープレイ・・・ 」
ジム・ホール(左 ) ビル・エヴァンス(右 )S.S.
ジム・ホール(左 ) ビル・エヴァンス(右 ) S.S.

わたし   「未発表4曲を加えたブルーノート(国内東芝 )盤のほうで聴ける『マイ・ファニー・ヴァレンタイン My Funny Valentine 』の別テイクったら、テーマが提示される前に 突然ビル・エヴァンスによる 目が覚めるように跳躍するピアノのイントロが2小節入ってるし、これにジム・ホールの絡みつくようなギター・アプローチも 本テイクとは 全然違うのよね 」
マスター  「オリジナル・ヴァージョンに聞き慣れてしまった耳にとって、この別テイクを 初めて聴いたときのぶったまげるほど驚いたことが 忘れられません 」
わたし   「他に、『スケーティング・イン・セントラルパーク Skating In Central Park 』の まるで静寂の水底に沈んでゆくような感覚ったら、これも格別ね 」
マスター  「ホント 名曲の名演だと思います。どうですか、涼しくなりました? 」
わたし   「まあ かなりね。それでも やっぱり今日は暑いのよ 」
マスター  「うーん、それじゃ これはどうですか 」


Stan Getz Dolphin(Concord ) Stan Getz Dolphin-6
スタン・ゲッツ(テナーサックス )
「ドルフィン 」
ゲッツ(テナーサックス )、
ルー・レヴィ(ピアノ )、
モンティ・バドウィック(ベース )、
ヴィクター・ルイス(ドラムス )
収録曲:The Dolphin、A Time For Love、Joy Spring、My Old Flame、The Night Has A Thousand Eyes、Close Enough For Love
録 音:1981年 3月、カリフォルニア
音 盤:Concord CCD-4158

マスター  「サン・フランシスコのキーストーン・コーナーにおけるライヴ・レコーディング。水族館のプールサイドで イルカたちと戯れるゲッツのご機嫌な写真がジャケットです 」


Stan Getz Dolphin-1 Stan Getz Dolphin-4 Stan Getz Dolphin-5
わたし   「わたし、ゲッツ大好き。ディスクの冒頭一曲目、魅力的なボサ・ノヴァ・リズムによる 『ドルフィン 』から、いかにもゲッツらしい こんこんと溢れ出すようなアドリブが聴けるのね 」
マスター  「ここでのゲッツのプレイは かつてのVerve時代を思わせる素晴らしさです。と言ったら、集められたサポート・メンバーも ドラムスのルイスを除けば、往年の共演者が二人も揃ってるわけですから、ゲッツにとっては 良い意味で 気楽な演奏環境だったに違いないです 」
わたし   「これと同じ時期にコンコード・レーベルでスタジオ録音された 『 ピュア・ゲッツ 』 のほうも傑作よね 」
マスター  「涼しくなりました ? 」
わたし   「まだ 全然ド暑いわよ。他にはないのかしら 」
マスター  「・・・高飛車ですね 」


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チック・コリア Chick Corea
リターン・トゥ・フォーエヴァー Return To Forever
チック・コリア(エレクトリック・フェンダー・ローズ・ピアノ )
ジョー・ファレル(フルート、ソプラノ・サックス )
スタンリー・クラーク(ベース )
フローラ・プリム(ヴォーカル )
アイアート・モレイラ(ドラムス、パーカッション )
収録曲:Return to Forever、Crystal Silence、What Game Shall We Play Today、Sometime Ago ~ La Fiesta
録 音:1972年 2月、ニューヨーク
音 盤:ECM

マスター  「さあ、この名盤で ようやく涼しくなるでしょう? 」
わたし   「この有名なレコードの中身 - 音楽の素晴らしさ - については、もうすでに 今まで 何度も触れてきたので、今回は 大胆なアルバム・ジャケットのデザインのほうに注目を 」
マスター  「大海に飛翔するカモメ一羽、シンプルなのに 深遠に広がるイメージを喚起する、このセンスの良さ 」
わたし   「マスターも このレコードを聴く度に 自分がこのカモメになり切って 空を飛翔しちゃう人でしょ ? 」
マスター  「ふん、ワルイですか。そのとおりですよ 」
わたし   「エレクトリック・ピアノ中心のサウンドなんだけど、名手スタンリー・クラークが力強く爪弾くウッドべースの重厚な響きによる貢献なのか、聴き終わった後 一枚のアコースティック・ジャズ・アルバムを聴き通したような感覚がしっかりと残る - 」
マスター  「 - 不思議なサウンドですよね、いつまでも古くならない 」
わたし   「イイこと言うじゃん、そのとおりだわ、色褪せないっていうか - 」
マスター  「どうです、涼しくなったでしょう 」
わたし   「いいえ(きっぱり )。ソッ・ピーナは もう音楽ジャンルの壁に拘(こだわ )るのを 止めたんでしょ。他にもマスターのコレクションに 涼しくなるレコード・ジャケットがあったら、ここに持ってきて頂戴。 」
マスター  「よーし、それじゃ ここから先は 一気に端折(はしょ )りましょうか 」


Grover Washington Jr_Mister Magic_CTI
グローヴァー・ワシントン Jr. Grover Washington jr
ミスター・マジック Mister Magic
収録曲:Earth Tones、Passion Flower、Mister Magic、Black Frost
グローヴァー・ワシントン Jr(サックス )、ボブ・ジェームス(キーボード、編曲 )、エリック・ゲイル(エレクトリック・ギター )、ゲイリー・キング(エレクトリック・ベース )ハーヴェイ・メイソン(ドラムス )、ラルフ・マクドナルド(パーカッション )etc.
音 盤:CTI (ポリドール POCT-5509 )

 G.W.Jr.の おそらく最も有名な傑作「ワインライト 」(ワーナー Bros. )に先立つ 7年前、CTI レーベル から作品を発表していた頃のアルバムで、リリース当時 ビルボード誌のジャズ・アルバム1位、1974年度年間チャートでも第2位という好セールスを記録しています。
 アーシーでソウルフルなG.W.Jr.のバンド・サウンドに 才人ボブ・ジェームスによる ストリングスを含むオーケストレーションの筆が加わると、その途端 都会的で洗練された音色へと豊かに変貌を遂げる、これは 文字どおり 「マジック 」!


増尾好秋_セイリング・ワンダー Sailing Wonder 増尾好秋 (エレクトリック・バード_キング )
増尾好秋
セイリング・ワンダー Sailing Wonder
増尾好秋(エレクトリック・ギター )、エリック・ゲイル(エレクトリック・ギター )、スティーヴ・ガッド(ドラムス )、リチャード・ティー(ピアノ )、デイブ・グルーシン(キーボード )、マイク・ノック(シンセサイザー )、ゴードン・エドワーズ(エレクトリック・ベース )、T.M.スティーヴンス(エレクトリック・ベース )、ハワード・キング(ドラムス )、アル・マック(ドラムス )バシリ(コンガ )、ウォーレン・スミス(パーカッション )、シャーリー増尾、ジュディ・アントン(コーラス ) 
収録曲:セイリング・ワンダー、トレジャー・アイランド、シューティン・ザ・ブリーズ、自然への賛歌 Nature's Anthem、カーク船長、クラッカー・ジャック、豪風(ロリンズに捧ぐ )
録 音:1977年11月
音 盤:エレクトリック・バード/キング(KICJ-2201 )

 このジャケット・デザイン、30㎝L.P.レコードのサイズであれば、まるで波を切り取ってきたかのような 斬新なデザイン効果も大きかったのですが、さすがにCDのサイズでは 小さ過ぎますね。
 増尾は、ソニー・ロリンズのグループでレギュラーを務めた経歴を誇る名手で、この当時 キング系エレクトリック・バードから上質のフュージョン作品をリリースしてました。
 セイリング・ワンダー Sailing Wonder 関連する過去記事は こちら ⇒ スティーヴ・ガッドを讃える 「エリック・ゲイル 」 


ザ・スクェア メイク・ミー・ア・スター ザ・スクェア メイク・ミー・ア・スター (2)
ザ・スクエア The Square
メイク・ミー・ア・スター Make Me A Star
安藤まさひろ(エレクトリック・ギター )、伊東 毅(アルト・サックス、リリコン )、
宮城純子(キーボード )、中村裕二U(エレクトリック・ベース )、マイケル河合(ドラムス )、仙波清彦(パーカッション )
収録曲:ミスター・ココズ・ワン、メイク・ミー・ア・スター、ライフ・イズ・ア・ミュージック、スティック・ネイルズ、ラヴ・フォーエヴァー、アイ・ウィル・シング・ア・ララバイ、テキサス・キッド
録 音:1979年
音 盤:CBSソニー(20AH- 1697 )

 ザ・スクエア THE SQUAREは、T-SQUAREの前身。
 個人的には 和泉宏隆が加入する以前のスクェアには あまり思い入れありませんでした。ただ 初期のアルバムでも この魅力的なジャケットは大好きだったので、中身をろくに聴きもしなかったのに 学生時代から L.P.だけは 部屋に飾っていましたっけ。


ドナルド・フェイゲン Donald Fagen_サンケン・コンドス Sunken Condos  “スケルツォ倶楽部” Donald Fagen_Sunken Condos  “スケルツォ倶楽部” インナー・イラスト - 2Donald Fagen_Sunken Condos  “スケルツォ倶楽部” インナー・イラスト-1
ドナルド・フェイゲン Donald Fagen
サンケン・コンドズ Sunken Condos
収録曲:スリンキー・シング、アイム・ノット・ザ・セイム・ウィズアウト・ユー、メモラビリア、ウェザー・イン・マイ・ヘッド、ザ・ニュー・ブリード、アウト・オブ・ザ・ゲットー、ミス・マーリーン、グッド・スタッフ、プラネット・ドロンダ
録 音:2012年
音 盤:Reprise(ワーナー・ミュージック・ジャパン WPCR-14718 )
 

 リリース時、ザ・ヴォイス・オブ“スティーリー・ダン”として圧倒的な名声を誇っていたドナルド・フェイゲンの新作にしては めずらしく その評価が賛否両論に分かれていたことを記憶してます。過剰な期待の大きさの裏返しなのでしょう。
 このディスクについては、以前 触れました ⇒ こちら「マイルス・デイヴィスの『ソー・ホワット 』に影響を受けた(と思われる )音楽をランダムに聴く


スティーヴィ・ワンダー_ミュージックエイリアム
スティーヴィー・ワンダー Stevie Wonde r
ミュージックエイリアム Original Musiquarium I
収録曲:迷信 Superstition、悪夢 You Haven't Done Nothin'、.汚れた街 Living for the City、フロント・ライン、スーパーウーマン、愛を贈れば Send One Your Love、ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・ マイ・ライフ、リボン・イン・ザ・スカイ、ハイヤー・グラウンド、愛するデューク Sir Duke、マスター・ブラスター、レゲ・ウーマン、ザット・ガール、回想 I Wish、可愛いアイシャ Isn't She Lovely ? ドゥ・アイ・ドゥ Do I Do
発 表:1982年

 タイトルは、お察しのとおり Music(音楽 )Aquarium(水族館 )を混ぜた スティーヴィーの造語。それこそが、ジャケットの熱帯魚たちが 涼しげに五線の上を音符になって泳いでいる理由です。
 スティーヴィー・ワンダーが 自作をセルフ・プロデュースするようになった、1971年以降の作品から 名曲ばかりを選曲したベスト・アルバムで、オリジナルL.P.リリース時から 2枚組でした。
 「フロント・ライン 」、「リボン・イン・ザ・スカイ 」、「ザット・ガール 」、「ドゥ・アイ・ドゥ 」 という いずれも甲乙つけがたい 4曲が このアルバムのために (当時 )書き下ろされた、いずれも素晴らしい新曲でした。 そのうち 恋人と愛し合える歓喜を溢れんばかりに歌い上げた 力強いジャンプ・ナンバー「ドゥ・アイ・ドゥ 」の間奏で トランペット・ソロを聴かせてくれるのは ビー・バップの創始者のひとり ディジー・ガレスピー。嬉しそうに ガレスピーを 紹介する スティーヴィー・ワンダーの声に続いて登場しますが、どちらかといえばショボい 朴訥なプレイに終始して ・・・ちょっと残念 ?


The Beatles_from Help_Pool Scene(1965 ) Early Takes Volume 1 Music From The Martin Scorsese Picture Living In The Material World
ジョージ・ハリスン George Harrison
アーリー・テイクス Vol.1 Early Takes Volume 1
収録曲 : マイ・スウィート・ロード My Sweet Lord (Demo )、ラン・オブ・ザ・ミル Run of the Mill (Demo )、アイ’ド・ハヴ・ユー・エニィ・タイム I'd Have You Any Time (early take )、ママ・ユー’ヴ・ビーン・オン・マイ・マインド Mama You've Been On My Mind (Demo )、レット・イット・ビー・ミー Let It Be Me (Demo )、ぼくのために泣かないで Woman Don't You Cry For Me (early take )、アウェイティング・オン・ユー・オール Awaiting On You All (Demo )、ビハインド・ザット・ロックド・ドアー Behind That Locked Door (Demo )、オール・シングス・マスト・パス All Things Must Pass (Demo )、ザ・ライト・ザット・ハズ・ライテッド・ザ・ワールド The Light That Has Lighted the World (Demo )

 これは、ジョージの生涯を描いたドキュメンタリー映画「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド (監督は、かつてザ・バンドの解散コンサートを - というより、メンバー同士の人間関係の崩壊を - 描いた 映画 『ラスト・ワルツ 』の マーティン・スコセッシ ! ) 」のDVD / Blu-ray コレクターズ・エディションに付けられていた特典盤ジョージのソロ活動初期の未発表音源を集めた一枚でした。そのジャケット写真は ビートルズの映画「ヘルプ ! 」で使われた ホテルのプールのシーン、若きビートルたちが水の中に飛び込むシーンから採られたショットと思われます。
The Beatles_HELP ! The Beatles_LIFE_1965
 ビートルズの現役活動期には、センターで圧倒的なカリスマを放っていた二人の天才 - ジョン・レノン、ポール・マッカートニー - の陰にかすむ存在だったジョージ・ハリスンは、このせいで(? )早くからソロ活動を志向、その作曲技能に少しずつ磨きをかけ、音楽性を深めていました。
 グループ活動の後期に発表された 「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス 」、「サムシング 」、「ヒア・カムズ・ザ・サン 」 といった傑作から聴けるとおり、ビートルズ末期には レノン=マッカートニーに迫るほどの作曲技巧を 身に着けています。グループ解散後 初めて自作曲をソロ・アルバムにまとめて発表するチャンスを得たジョージが、ビートルズ在籍当時には陽の目を見ずに書き貯めていたオリジナル曲の数々をL.P.3枚組という異例のヴォリュームで炸裂させたアルバム「オール・シングス・マスト・パス 」によって、初めて その才能への正当な評価が与えられたことは、もはや言うまでもないでしょう。
 「マイ・スウィート・ロード My Sweet Lord 」、「 アイ’ド ハヴ・ユー・エニィ・タイム I'd Have You Any Time 」、「アウェイティング・オン・ユー・オール Awaiting On You All 」、「ビハインド・ザット・ロックド・ドアー Behind That Locked Door 」、「ラン・オブ・ザ・ミル Run of the Mill 」 など アルバム「オール・シングス・マスト・パス 」 に収められることになる楽曲のデモ・ヴァージョンが聴ける他、個人的に興味深かったことは、アコースティック・ギターによる弾き語り中心の楽曲のほうでした。すなわち このあと1976年に発表されるアルバム「33 & 1/3 」の冒頭一曲目に ディスコ風のリズム・アレンジで紹介されることになる「 ぼくのために泣かないで Woman Don't You Cry For Me 」 が、すでに この時期 作曲されており、その原型が ジュース・ハープまで加えたカントリー調のアコースティック・ヴァージョンだったこと、「 ママ、ユー’ヴ・ビーン・オン・マイ・マインド Mama You've Been On My Mind 」 の歌唱・発声法ともに 他では聴けぬほど ボブ・ディランの影響が色濃いこと、さらにジョージには珍しく 多重録音操作による ひとりコーラスで(高音パート、あまり ジョージの声っぽくはないけれど ? ) エヴァリー・ブラザーズ風 Let It Be Me が聴けること - などです。推薦!


Richard Wright_Wet Dream_スケルツォ倶楽部
リック・ライト Richard Wright
ウエット・ドリーム Wet Dream
発 売:1978年 9月
音 盤:CBS(SRCS-6407 )

 模型の帆船がゆったりと漂う、涼しいプール・サイドのジャケット・デザイン (見開きのインナーも同じく )担当は、これもヒプノシスでした。しかし音楽のほうは、残念ながら、この秀逸なジャケットほどではありませんでした。
 当時は ピンク・フロイドの名盤「ザ・ウォール 」が リアルタイムでリリースされていた時期で、その素晴らしさを心から称賛する高校生だったボクは、ピンク・フロイドのキーボード奏者を務めるリック・ライトについては あまり詳しく知らなかったものの、彼の初めてのソロ・アルバム - その素晴らしくイマジネーションと空想を広げてくれるダブル・ジャケット - に 大いに期待しながらレコードに針を下ろしたものでしたが・・・ 
Richard Wright_Wet Dream_スケルツォ倶楽部 (2)
 ・・・どうにも起伏の乏しいコード・チェンジの繰り返しに終始する 単調なインストゥルメンタル・ナンバーの意図するところが まず 初っ端から 理解できませんでした。 また、メル・コリンズのサックスは、楽器の金属的な鳴りがメタリックに響く 都会的な美しさを特徴とする音色ですが、たとえば「キャット・クルーズ 」という曲においては、おそらく作曲者であるリック・ライトの指定したコード・チェンジが細かすぎ、明らかにソロがとりにくそうなので 聴いていて思わず舌打ちしてしまうほど もったいないと思いました。インストゥルメンタルの楽曲であるなら むしろ すっきりとワン・コードのモード風にした方が、ホーン奏者は ずっと自由で創造的な即興演奏を繰り出すことができたはずで、同時代のサックス奏者であれば マイケル・ブレッカーデヴィッド・サンボーンのソロを好んでいたボクには、そこを比較してしまうと、たいへん不満でした。この点 まだ「ウェイヴズ 」という曲のほうが 幾分成功していると言えます。
 当時のフロイドにおいては ヴォーカリストとしては第三の存在に甘んじていたリック・ライトの歌唱も 甚だ説得力に欠け、「アゲインスト・ジ・オッズ 」など 特にマイナー楽曲は まるで有線放送から流れてくる演歌のようだとさえ思いました。「ホリデイ 」で 「Sail on, sail on across the sea 」と繰り返すところなど まるで 「セイル・アウェイ 」 を歌うランディ・ニューマンの物真似をしているのか、それも本気なのか冗談なのかさえ判別できませんでした。 残念 !


Billy Joel_Journey To The River Of Dreams
ビリー・ジョエル Billy Joel
ジャーニー・トゥ・ザ・リヴァー・オブ・ドリームス Journey To The River of Dreams
VIDEO-VHS(73分 )
収録曲:ノー・マン’ズ・ランド No Man’s Land、 プレッシャー Pressure、 ザ・バラッド・オブ・ビリー・ザ・キッド The Ballad of Billy The Kid、 レニングラード Leningrad、 アレンタウン .Allentown、 マイ・ライフ My Life、 アイ・ゴー・トゥ・エクストリーム I Go To Extremes、 シェイズ・オブ・グレイ Shades of Grey、 ザ・リヴァー・オブ・ドリーム The River of Dreams、 グッドナイト・サイゴン .Goodnight Saigon、 ウィ・ディドゥン’ト・スタート・ザ・ファイア We Didn't Start The Fire、 ア・ハード・デイズ・ナイト .A Hard Day's Night、ビッグ・ショット Big Shot、 ピアノ・マン Piano Man
CD1
収録曲:グッバイ・イエロー・ブリック・ロード Goodbye Yellow Brick Road、ノー・マン’ズ・ランド No Man's Land、ザ・バラッド・オブ・ビリー・ザ・キッド The Ballad of Billy The Kid、ララバイ Lullabye、ザ・リヴァー・オブ・ドリーム The River of Dreams、ア・ハード・デイズ・ナイト A Hard Day’s Night
CD2 
An Evening of Questions and Answers... And A Few Song
講演内容 ( ピアノ弾き語り演奏を含む ) 
影響を受けた音楽について、 「イタリアン・レストランで 」 について、 「RIVER OF DREAMS 」について、 「ウィーン 」、「夏、ハイランドフォールズにて 」について、 音楽業界について、 将来のコンサートについて、  「ルート・ビアー・ラグ 」について、 ピアノ・マン
規格 : Sony Records(SRCS 7598~7600 )

 このジャケットで 明らかに不機嫌な仏頂面のビリー・ジョエルが なぜスーツ姿のままで 水の中に放置されているのかは、謎です。いえ、たぶん 暑かったのでしょう(笑 )。
 1995年に来日記念盤として限定パッケージにてリリースされた 当時の最新作にして大ヒット・アルバム「リヴァー・オブ・ドリームス 」のコンサート・ツアー記録ヴィデオ および CDには このツアーから名演が選り抜かれ、ジャイアンツ・スタジアム における エルトン・ジョンのナンバー「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 」や フランクフルト祝祭大ホールにおける ビートルズ・ナンバー「ア・ハード・デイズ・ナイト 」など 比較的めずらしいレパートリーを含む、鮮度も高いライヴ・レコーディング6曲が収められています。
 CD-2には1994年春のプリンストン大学での講演の録音が収められています。この内容は「イタリアンレストラン~ 」「ウィーン 」、「夏、ハイランドフォールズ~ 」など ビリーが自作の成立についてのエピソードや思い出、彼の音楽観などを語りまくるもので、それらの語り口は 本当に巧みで素晴らしい - 特に ビリー自身が尊敬する ビートルズが 名盤「アビー・ロード 」のB面を スタジオで制作する過程を 自由な想像や口真似をまじえてピアノを叩きながら おもしろおかしく再現してみせるくだりなど - 傑作です。 これは またあらためて話題にしたいと考えています。


ジョニ・ミッチェル 夏草の誘い the Hissing of Summer Lawns ジョニ・ミッチェル 夏草の誘い the Hissing of Summer Lawns
ジョニ・ミッチェル Joni Mitchell
the Hissing of Summer Lawns  邦題 「夏草の誘 (いざな )」 
見開きジャケット 内側のフォト (右 )
収録曲 : フランスの恋人たち、ジャングル・ライン、イーディスと親玉、悲しみはともだち、美しい誘惑者、夏草の誘い、ボーホー・ダンス、ハリーの家 / センターピース、スウィート・バード、シャドウズ・アンド・ライト
録 音 : 1975年
音 盤 : WPCR-14099

joni mitchell the hissing of summer lawns (2) joni mitchell the hissing of summer lawns


Bill LaBounty (2 Bill LaBounty Original Design
ビル・ラバウンティ Bill LaBounty
ビル・ラバウンティ Bill LaBounty
収録曲:Livin’ It Up、Didn’t Want To Say Goodbye、Dream On、Slow Fade、Comin’ Back、Look Who’s Lonely Now、Never Gonna Look Back、It Used To Be Me、Nobody’s Fool、Secrets
発表:1982年
音盤:Warner Bros.(THCD-195 )

 が80年代にリリースされたL.P.時代「サンシャイン・メモリー 」(笑 )なる邦題が付いた日本盤のジャケット、がオリジナル米盤ジャケットです。
 うーん、日本盤の必死な「売らんかな 」精神、でも中身(楽曲 )の素晴らしさを聴けば その姿勢もわからなくはありません。だって余りにももったいないからです。こんな素晴らしいアルバムなのに、こんな冴えない(失礼! )おじさんのポートレートがジャケットじゃ きっと売れないよー・・・って。
 歌っているシンガーの容姿と その爽やかな歌唱とのギャップの大きさは、クリストファー・クロスに迫るものがあるかも(笑 )。
 現行のCDジャケットも やはり(? )ラバウンティのポートレートではなく、もともと裏ジャケだった 涼しげなプール・サイド・デザインです(泣 )。
Bill LaBounty
 そんな「ビル・ラバウンティ 」さんは 1975年ソロ・デビュー、1978年リリースのバラード 「涙は今夜だけ This Night Won’t Last Forever 」は、わが国でも中山美穂のトレンディ・ドラマに挿入されるなど話題になりました。そして 1982年にリリースされた4作目が 自身の名を冠した この「Bill LaBounty 」でした。
 冒頭の名曲「リヴィン’イット・アップ Livin’ It Up 」 - イントロから ビル自身が弾くフェンダーローズ・エレクトリック・ピアノが ズンと胸に響きます。哀愁漂うヴォーカル。ジャストタイムなビートを刻むドラマーは誰あろう われらがスティーヴ・ガッドです(! )、弱拍部でさり気なく 刷毛で払うようなトレモロ、個性的なオカズを 次々と繰り出してみせる小技の数々、素晴らしい ! 後半で 熱い泣きのブロウを聞かせる 傑出したアルト・サックス・ソロは 名手デイヴィッド・サンボーン。他にも ジェームス・テイラー、パティ・オースティン、チャック・レイニー(エレクトリック・ベース )、スティーヴ・ルカサー(エレクトリック・ギター )、ジェフ・ポーカロ(ドラムス )など、バッキングをサポートする スタジオ・ミュージシャンの活躍も聴き逃せません。


Whitney Houston (日本盤 )SRISTAWhitney Houston(日本盤)Arista
ホイットニー・ヒューストン
そよ風の贈りもの Whitney Houston
収録曲:How Will I Know(恋は手さぐり )、All at Once、Take Good Care of My Heart(やさしくマイ・ハート )、Greatest Love of All、Hold Me、You Give Good Love(そよ風の贈りもの )、Thinking About You、Someone for Me、Saving All My Love for You(すべてをあなたに )、Nobody Loves Me Like You Do(夢の中のふたり / ジャーメイン・ジャクソンとのデュエット )
リリース:1985年
音  盤:アリスタ Arista

 惜しくも 2年前(2012年 2月 )48歳の若さで急逝した ホイットニー・ヒューストンが 最初にソロ名義で発表したスタジオ・アルバムです。アリスタ Arista というレーベルは、前身たるベル・レコードの頃から ディオンヌ・ワーウィックホイットニーの従姉 )、アレサ・フランクリンという大物歌手を擁し、70年代以降も バリー・マニロウ、ベン・シドラン、ケニーG、エア・サプライ、ベイ・シティ・ローラーズ、エリック・カルメン といった、AORのセンスが香る、個性豊かで趣味のよい優れたミュージシャンの作品を数多く輩出してきた老舗レーベルでしたから、ボクも以前から好意をもって注視してきました。
ホイットニーのデビュー盤は凄まじい傑作で、収録曲のうち「すべてをあなたに 」、「恋は手さぐり 」、「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール 」の3曲が ビルボードで1位を獲得、アルバムもリリース翌年(1986年 )には全米チャートで14週連続第一位を獲得、現在まで3,000万枚以上のセールスを記録しているそうです。
 ビーチに白い水着姿ですくっと立つ 若き日のホイットニーの写真をあしらった涼しいジャケットは、実は 日本だけのオリジナル仕様だったそうです。 って、実は 最近になって初めて知りました (赤面 )。
Whitney Houston original 1985
▲ そう言われてみれば 当時 輸入盤店の店頭にずらっと並んでいた 米盤オリジナル・ジャケットには見覚えがある。でも これならやっぱり日本盤のデザインのほうが 個人的には思い入れがありますねー。


オリヴィア・ニュートン-ジョン 水のなかの妖精 Olivia Newton-John
オリヴィア・ニュートン-ジョン Olivia Newton-John
「水の中の妖精 」COME ON OVER
収録曲:ジョリーン Jolene、ポニー・ライド Pony Ride、一人ぽっちの囁き Come On Over、いつも一緒に It'll Be Me、グリーンスリーヴス Greensleeves、雨の別離 Blue Eyes Crying In The Rain、恋にさよなら Don't Throw It All Away、フー・アー・ユー・ナウ Who Are you Now ? 微笑みを私に Smile For Me、意地っぱりな貴方 Small Talk And Pride、貴方の腕に抱かれて Wrap Me In Your Arms、ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードThe Long And Winding Road
発 表:1976年
音 盤:TOCP-50721

 オリヴィア・ニュートン-ジョンは、イギリスのケンブリッジ出身。ノーベル賞受賞物理学者マックス・ボルン(独 )の孫にあたる家系で、幼い頃 大学教授の父について 家族とともにオーストラリアへ移住しました。
 1971年、最初のシングル - ボブ・ディランジョージ・ハリスンに提供した カントリー調の楽曲「イフ・ノット・フォー・ユー If Not For You 」のカヴァー - で注目を浴び (ビルボード25位 )、その美しい声と容姿で 急速に欧米で人気を高めてゆきました。1974年 シングル「愛の告白 I Honestly Love You 」が全米一位、これにより グラミー賞最優秀レコード賞、最優秀女性歌唱賞を獲得します。
 その後も「そよ風の誘惑 Have You Never Been Mellow 」、「カントリー・ロード Take Me Home, Country Roads 」、「サム Sam 」、「きらめく光のように Making A Good Thing Better 」など 上質で聴きやすいカントリー調ポップスの路線でヒット・シングルを量産していた 最良の時期にリリースされたのが、このアルバム Come On Over「水の中の妖精 」でした。
 これは 1975年以降オリヴィア・ニュートン-ジョンアビーロード・スタジオで行ってきた一連のレコーディング、「そよ風の誘惑」、「クリアリー・ラヴ 」に続くアルバムで、その涼しげなジャケットは 当時としては とても斬新なデザインでした。水の中から顔を出す大人の女性オリヴィアの濡れた眼差しが 何だかとても意味深です。
 アルバムからは 日本だけ独自にシングル・カットされた「ジョリーン 」が国内でヒット。ドリー・パートン、ウィリー・ネルソンらのカントリー・ナンバーや「グリーンスリーヴス 」のようなトラッド・ソングだけでなく、ビートルズビー・ジーズなどといった ポップ・ロックのカヴァー曲など、それら一曲一曲が素晴らしい仕上がりです。特にラストの一曲「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 」では 美しいオリヴィアのヴォーカルだけでなく、彼女が唇を開くときの間接音やブレスの音までも アビーロード・スタジオのマイクロフォンが正確にとらえており、ドキュメントとしても第一級の記録と言えます。
 アルバム全体は ヴァラエティに富んだ曲集であるとも言えますが、しかし 今のボクの耳で あらためて聴き直してみると、オリヴィア の美しい声にのみ 頼って作られた側面があることは否めず、一枚のレコードとしては 幾分 散漫な印象も受けます。
 尚、その後 オリヴィアは、ご存知のとおり ミュージカル映画「グリース 」ジョン・トラボルタと共演したり、これに続く「ザナドゥ Xanadu 」でも女優として大成功を収め、さらにビー・ジーズアンディ・ギブとも共演、ロック色・ダンサブルな要素をも加えた さらなる新しい歌唱スタイルを開拓してゆくことになる経緯は もうどなたも ご存知のとおりでしょう。
Olivia Newton John_Physical (2) Olivia Newton John_Physical

▼ オリヴィアの名盤 「フィジカル Physical 」 ジャケットで 水遊び( ? )
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出典は ⇒ こちら
この回もよろしく ⇒  カフェ ソッ・ピーナ 「お面ジャケット 」で 爆笑 の巻 


Barbra Streisand CBS_Barbra Streisand wet
バーブラ・ストライザンド Barbra Streisand
「ウエット 」 Wet
収録曲:ウエット Wet、降っても晴れても Come Rain Or Come Shine、スプリッシュ・スプラッシュ Splish,Splash、雨の午後には On Rainy Afternoons、アフター・ザ・レイン After The Rain、ノー・モア・ティアーズ No More Tears(with ドナ・サマー )、ナイアガラ Niagara、アイ・エィント・ゴナ・クライ・トゥナイト I Ain't Gonna Cry Tonight、キス・ミー・イン・ザ・レイン Kiss Me In The Rain
マイク・ラング(ピアノ )、アラン・ブロードベント(エレクトリック・ピアノ )、デイヴィッド・フォスター(ピアノ )、リチャード・ティー(ピアノ )、ラリー・カールトン(エレクトリック・ギター )、ジェイ・グレイドン(エレクトリック・ギター )、ジェフ・バクスター(エレクトリック・ギター )、ダン・ファーガソン(ギター )、ディーン・パークス(エレクトリック・ギター )、ニール・ステューベンハウス(ベース )、デイヴィッド・ハンゲイト(ベース )、ジェフ・ポーカロ(ドラムス )、スティーヴ・シェファー(ドラムス )、トム・スコット(サックス )他
発 表:1979年
音 盤:CBS CK-36258
 
 涙、滴、雨、滝・・・ バーブラ・ストライザンドによる「 」をテーマにした コンセプト・アルバムです。このディスクについては、以前 触れました。
こちら ⇒  村上春樹のライナー・ノーツ + スヌーピーのジャケット = スタン・ゲッツ 


松田聖子_ユートピア 松田聖子_ユートピア (2) 松田聖子_ユートピア (3)
松田聖子
「ユートピア 」
収録曲:(blue-island side )ピーチ・シャーベット、マイアミ午前5時、セイシェルの夕陽、小さなラブソング、天国のキッス
(south-wind side )ハートをRock、Bye-bye playboy、赤い靴のバレリーナ、秘密の花園、メディテーション
発 表:1983年6月
音 盤:CBSソニー

 松田聖子 7枚目のアルバムは 初のデジタル・レコーディング、第25回日本レコード大賞において 年間ベスト・アルバム賞を受賞しています。
 このアルバムに 収録された曲の中でも 個人的に最も愛好するナンバーは、シンセベースの固定音も印象的なモード手法を一部で活用した「マイアミ午前 5時 」(来生たかお 作曲 )、夏の涼しい早朝を感じさせる絶妙の工夫とサウンド・カラーが 出色と思います。
 アルバムがリリースされるのに先立って、 、松任谷由実呉田軽穂 名義 )の作品として知られる 名曲「 秘密の花園 」が シングル発売、これも大ヒットを記録しましたね。
 では 次は、その ユーミンによる 「ユートピア 」 と 同年に 発表された レコードです。


ユーミン VOYAGER 松任谷由実_1983
松任谷由実 VOYAGER
収録曲:ガールフレンズ、結婚ルーレット、ダンデライオン ~ 遅咲きのタンポポ、青い船で、不思議な体験、ハートブレイク、TYPHOON、TROPIC OF CAPRICORN、私を忘れる頃、時をかける少女
発 表:1983年12月
音 盤:東芝EMI ( ETP-90265 )
 

 都会の高層ビルの間に伸びているコース・ラインに沿って 力強く泳いでゆく女性を見上げるという シュールな構図の不思議なジャケット写真は、ピンク・フロイドなどのアルバム・デザインも手掛けたことで知られる ヒプノシスによるもの。この感性・・・ 素晴らしいです。
 振り返ってみれば 80年代とは、男女雇用機会均等法施行によって 働く女性たちの社会進出するチャンスが大幅に拡大された変革の時代でもありました。それまで何事も男性が中心だった あらゆる職場環境に進出することになった女性たちは、彼女らが本来手がけるべき仕事を覚える以前に、まず女性に対する社会の偏見や差別という 目に見えぬ敵と闘わなければならなかったはずなのです。
 失恋した主人公を励まそうと 久しぶりに集まった気の合う女ともだちが、明るく肩を組みながら 互いに微笑み合う光景が目に浮かぶ、そんな冒頭の一曲「ガールフレンズ 」は、シンセサイザーによる弾むベース・ラインのビートが耳につきますが、深読みすれば、その低音パートは ロイ・オービソンの「オー、プリティ・ウーマン 」のそれを引用することによって まさしく街を躍動的に闊歩する女性たちのイメージと 意図的に重ね合わせているように聴こえなくもありません( って、二重否定の肯定文です )。
 この時代、ユーミンが表現する女性たちは 社会から与えられた重い課題を切り開くという宿命を背負わされつつも 同時に 恋愛にもレジャーにも仕事にも能動的に力強く生きてゆくエネルギーを発散させています。特に この「VOYAGER 」以降、「NO SIDE 」、「DA・DI・DA 」、「ALARM à la mode 」、「ダイアモンドダストが消えぬまに 」、「Delight Slight Light KISS 」、そして少なくとも「LOVE WARS 」や「天国のドア 」辺りまでは間違いなく、これでもかとばかりに 時代に寄り添う女性をテーマに深く追求してきたユーミンの推進力に溢れた音楽は、そうであったがゆえに 80年代を生きる若い女性層に 圧倒的な支持を受けてきたに違いありません。
 今年2014年 - 今でこそ どこの会社においても 普通に女性管理職が輩出する時代になりました。けれど かつて80年代に新卒だった 若い女性たちが乗り越えてきた壁、彼女たちが必死に崩してきた高い障壁の瓦礫の上に、実は 今日の女性の職場における地位向上がなされつつあるという事実を忘れてはならぬと思います。


中島みゆき_寒水魚_スケルツォ倶楽部 中島みゆき_寒水魚_スケルツォ倶楽部 (2)
中島みゆき
寒水魚
収録曲:悪女、傾斜、鳥になって、捨てるほどの愛でいいから、B.G.M、家出、時刻表、砂の船、歌姫
発 表:1982年
音 盤:PONY CANYON(PCCA-00078 )

 才媛 中島みゆき 9枚目のアルバム - 傑作です。
 薄着をまとって 海水(? )に浸かっている 中島みゆき の寂しげな横顔も美しい ジャケットの意味するところは、そのタイトル「寒水魚 」が 熱帯魚を逆にした言葉である(Wikipedia )ということ以外は 何もわからないということと同様、最近まで ずっとエニグマ(謎 )でした。
 しかし 今回A面の最後に収録されていた 美しいバラード 「捨てるほどの愛でいいから 」を あらためて 聴いていたら、まさしく この曲の歌詞こそが ジャケット写真のテーマを 表現していたのではないか - と思えるくだりに気づいたのでした ( って、すでにそんなこと もう とっくに知っているよ っていう 昔からの みゆきファンの皆さまには 何を今さら ってな話題で、ホント 誠に 恐縮です。 どうかお許しください )。
 ・・・で、 もとい。 この名曲 「捨てるほどの愛でいいから 」 は、みゆきが その初期から得意としてきた いわゆる トーチ・ソング(Torch Song )なのですが、片思いの「あなた 」に「夢でもいいから 」、「嘘でもいいから 」、「どうぞ ふりむいて 」、「どうぞ 気がついて 」 と、まるで その足元にすがりついて 未練いっぱい 涙で訴えるような 主人公の哀訴が、胸に響きます。
 あたかも遠くへ流れ去るように ひたすら下降線をリピートする 特徴的な旋律を バッキングのストリング・セクションも 歌手に合わせながら 一緒に繰り返しますが、やがて 主人公は 悲しみのあまり 胸が詰まって、ついに力尽き 歌えなくなってしまいます。しかし バッキングの弦楽セクションだけは残って、絶句した主人公が繰り返していたメロディを 引き継ぐと その哀訴の旋律を 演奏し続けます、が これも 徐々にフェイド・アウトしてゆくのでした・・・。
 「あなたの胸の中は あの人のために寄せる愛で満たされ 」、「わたしの姿は波間に消えるだけ 」、「わすれられて、さまよい揺れるだけ 」、やがて 「独り 浜辺に 打ちあげられるだけ 」 という歌詞・・・ いかがでしょうか、まさに この辺りが アルバム「寒水魚 」 ジャケット・デザインの真意ではないでしょうか。

 さて、さらに このアルバムの冒頭に置かれた名曲「悪女 」は この前年シングル・リリースされて大ヒットを記録したヴァージョン(船山基紀:編曲 )のほうではなく、全く異なるヘヴィーなロック・テイスト(後藤次利:編曲 )で新録音されており、十二弦ギターが爽やかにリズムを刻むフォーク調によるシングル盤のほうでしか「悪女 」を知らずに 後者を聴いた人は、かなり驚かされることと思います。船山基紀氏によるアレンジが劣るというわけでは決してありませんが、後藤次利ヴァージョンの力強さ、スケールの大きさには 目が覚めるような魅力がありました。
 しかし 今日(こんにち )の耳で さらに聴き直してみると、このアルバムにおける 本当の傑作とは「悪女 」に続き 二曲目に配されていた「傾斜 」という作品だったのではないか、と感じています。リアルタイムでこのアルバムを聴いていた1982年当時には殆ど気づきませんでしたが、この歌は 来たるべき明日 - すなわち 深刻な高齢化を迎えた「今日の 」わが国の高齢社会の姿を描いていたのです。あらゆる人すべてに 等しく しかも確実に訪れる老化・・・ 果たして「傾斜10度の坂道 」や「また少し重くなった / 紫色の風呂敷包み 」が象徴するものとは 一体 何だったのでしょうか。
 「齢(とし )をとるのはステキなことです、そうじゃないですか / 忘れっぽいのはステキなことです、そうじゃないですか / 悲しい記憶の数ばかり / 飽和の量より増えたなら / 忘れるよりほか ないじゃありませんか 」とは、おお・・・ ここは、まさしく認知症の症状を歌っているとは思いませんか。すでに今から30年近くも前中島みゆきの鋭い洞察力は、かくも深いテーマで彼女自身に歌詞を書かせていた - それは、驚愕の一語に尽きます。

マスター  「どうですか、奥さん。だいぶ 涼しくなったでしょう ? 」
わたし   「ううん、なんか 逆に 暑さが増してきたような気がするんだけど・・・ 」
マスター  「そんなはず ないですよ・・・って う、うわ! 」
100×100 絶句 by Schulz
わたし   「どーしたの、マスター ? 」
マスター  「す、すみません。 お店のエ アコン、壊れてました  」
わたし   「・・・ 」

(外から聞こえてくる、店内にしみ入るような アブラゼミの声 -  )

・・・つづく (次回は 一体 いつになるやら )


最後に、おまけ : 「水に飛び込み 」ジャケット 4コマ
「ある日 ボートを 漕いでいたら・・・ 」 
ジェームス・テイラー ワン・マン・ドッグ
(ジェームス・テイラー : ワン・マン・ドッグ )

「突然 水中に飛びこんだ 」、「なんで ? 」 
img_0[1] (2)
ブラー:ザ・グレイト・エスケイプ

「だって 米ドル札が流れてたんだもん 」 
imagesPQD3WZSA.jpg
ニルヴァーナ:ネヴァーマインド

「・・・でも それは 『 釣り 』 だったのさ 」、「みんなも 気をつけようね ! 」 
schubert_Levine_DG.jpg
ジェイムス・レヴァイン他:シューベルト「ます 」

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