スケルツォ倶楽部
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ロシアのワルツ王、チャイコフスキー
Tchaikovsky(1840~1893) ワルツ王 チャイコフスキー_VDC-1068(リヒテル、チャイコフスキーの詩情 1983 )

 今晩は、”スケルツォ倶楽部” 発起人(妻のほう )です。
 さて、ヨーロッパ発祥の代表的な舞踏音楽と言えば 三拍子の躍動的な「ワルツ 」と相場が決まってますが、もともとはゲルマン文化の中で芽生えた 農民男女が互いの体を接し合う素朴なダンスでした。それが「イヤらしい 」という理由だけで禁止されてたにもかかわらず、民衆の潜在的なパワーによって 隠れてしっかり生き残り、衰退するどころかチロル・バイエルン地方を中心に洗練と進化を遂げ、とうとう宮廷入りしたばかりか ハプスブルク帝国の文化を象徴する存在となったことは、”スケルツォ倶楽部” 会員の皆さまなら もう どなたもご存知のとおりですよね。
 庶民から発祥した この舞踏が インスブルックウィーンホーフブルク王宮で踊られるようになるのは その後18世紀に入ってからだそうですが、もはや帝国領内だけではありませんでした。それは すでに国境を越え、続く19世紀はじめにかけてはフランスロシアでも同じ「ワルツ 」の原型が 広く踊られるようになっていたのです。
 音楽評論家 志鳥栄八郎氏に拠れば、特に「ロシアでは、舞曲の中ではワルツが特に普及しており、ロシア・ワルツの初期の手本が すでに 」同じ時期「あらわれていた 」とされるほどだったからです。「そのなかでも、ロシア国民楽派の父として有名なグリンカなどは、このリズムの美点をじゅうぶん生かしながら、すばらしいワルツを書いて 」いました。

ヨハン・シュトラウス 2世 チャイコフスキー_Tchaikovsky, Pyotr Ilyich 
 クラシック音楽の世界で「ワルツ王 」と言えば ヨハン・シュトラウス以外にはいませんが、実は もうひとつ「ロシアのワルツ王 」という「隠れキーワード 」があり、これが チャイコフスキーを指すということは、知る人ぞ知るトリヴィア情報。 いえ、実際 深く意識せずとも チャイコフスキーの音楽に 少しでも親しく接している愛好家のかたであれば、グリンカから流れ出したロシア・ワルツの渓流を チャイコフスキーがしっかりと受け継いでいることを聴き取ることは 容易ですよね。
 そのバレエ音楽歌劇だけでなく、ピアノ曲、室内楽から 果ては 交響曲の中間楽章に至るまで チャイコフスキーワルツのリズムを積極的に起用することによって しっかりと効果を上げていることを、その音楽から 感じとれない人など いないでしょう (って、二重否定の肯定文です )。
 はい、では 今宵は ご一緒に、チャイコフスキーワルツを 思いつくまま ランダムに 聴きまくりましょう。

上原彩子_チャイコフスキー_ワルツ・スケルツォ イ長調 作品7
ワルツ・スケルツォ イ長調 作品7
上原彩子(ピアノ)
併録曲:
ロマンス ヘ短調Op.5、パガニーニの主題による狂詩曲 (ラフマニノフ )、ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 (シューマン )、ピアノ・ソナタ第1番 (ショスタコーヴィチ )
録 音:2002年 6月 チャイコフスキー国際コンクール・ライヴ
音 盤:TRITON(OVCT-00006 )

わたし   「まるで急につま先で走り出したかと思うと くるくる回ってはパタッと立ち止まり 振り返って微笑んでみせるような愛らしさ - ワルツであると同時にスケルツォでもある、という いかにもチャイコフスキーらしい 緩急自在で可憐なピアノ小品ね。これが おススメのディスクなの ? 」
     「2002年度チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門において 日本人として初であったばかりか、女性として史上初の『優勝 』という快挙を果たした上原彩子の白熱のライヴ・レコーディング。久しぶりに この一枚を聴き直したら その見事さに感銘を新たにしていたところ、素晴らしいドキュメント 」
わたし   「これって、まだ一般に入手可能なのかしら。曖昧さの欠片もない 豪快な迫力としなやかさが共存するシューマンショスタコーヴィチ、審査員の評価を決定づけた本選のラフマニノフが やはり白眉と言えると思うけど -  」
     「二次予選で弾かれた チャイコフスキーの『ワルツ・スケルツォ 』における、この語り口の精妙さには 唸るしかないぞ 」
わたし   「これほど短い一曲で ここまで即興性を感じさせる表情を出すには、逆に 上原さんがどれほど長いトレーニング時間をピアノの稽古に割いていたか、そんな研鑽の日々までも推察しちゃうわね 」

上原彩子_チャイコフスキー_東芝EMI(TOCE-55617 )
ワルツ 作品40、ワルツ・スケルツォ 作品7、
上原彩子(ピアノ )
併録曲:
ユーモレスク 作品10-2、ノクターン 作品10-1、ドゥムカ 作品59、瞑想曲 作品72-5、ノクターン 作品19-4、組曲「くるみ割り人形 」から「パ・ド・トゥ 」~「アンダンテ・マエストーソ 」、ピアノ・ソナタ ト長調 作品37「グランド・ソナタ 」
録 音:2003年 9月
音 盤:東芝EMI(TOCE-55617 )

     「上原チャイコフスキーのピアノ曲ばかりを集めてアルバム一枚分 スタジオ・レコーディングしてデビューしますが、そこでも この『ワルツ・スケルツォ 』、しっかり再演されてます 」

チャイコフスキー生誕150年記念ガラ・コンサート・ライヴ_1990年12月(レニングラード ) イツァーク・パールマン
もうひとつの「ワルツ・スケルツォ 」(ハ長調 作品34 )
イツァーク・パールマン(ソロ・ヴァイオリン )
ユーリ・テミルカーノフ 指揮
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
併録曲:
憂うつなセレナード(ヴァイオリン・ソロ、パールマン )、フランス語の歌詞による6つの歌から「セレナード 」、「ロンデル 」、歌劇「オルレアンの少女 」からアリア「さようなら、故郷の丘 」(ソプラノ独唱、ジェシー・ノーマン )、「ロココ風の主題による変奏曲 」(チェロ、ヨーヨー・マ )、歌劇「エフゲニー・オネーギン 」から「ポロネーズ 」、序曲「1812年 」
録 音:1990年12月 レニングラード(現在のサンクト・ペテルブルク )
音 盤:RCA(BMGビクター BVCC-82 )

わたし   「あ、これ 好きだな。もし チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲スケルツォ楽章 として挿入されたとしても 違和感のない佳作よね 」
     「うーん、実際 チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲を仕上げる前に技術的な助言を受けた友人のヴァイオリニスト コチュークに、この小品を捧げているそうだよ 」
わたし   「その逸話は、ちょうど メンデルスゾーンダヴィットに、ブラームスヨアヒムに、それぞれアドバイスを受けながらコンチェルトを完成させたというエピソードと同じね 」
     「パールマンの流麗な技巧と美音が聴ける このディスクは、チャイコフスキー(1840~1893 )の生誕150年を記念してレニングラード・フィルハーモニー 大ホールにおいて開催された 2時間以上におよぶガラ・コンサートのライヴ・レコーディングからのハイライト 」
わたし   「この祭典ったら 当時のソヴィエト政府の公認行事だったってホント ? 」
     「そう。パールマン、ヨーヨー・マ、ジェシー・ノーマンという豪華な3人のソリストは いずれもアメリカから招待されているし、イベントのフィナーレで演奏された『序曲“1812年” 』で 猛烈に打ち鳴らされた本物のカノン砲まで 実は アメリカから空輸されたものだったそう 」
わたし   「この当時の米ソ関係の良好さが目に見えるようなコンサートだったのね。ゴルバチョフロナルド・レーガンの共同声明的な政治色までも感じちゃう 」

VDC-1068(リヒテル、チャイコフスキーの詩情 1983 ) (2) VDC-1068(リヒテル、チャイコフスキーの詩情 1983 )
ワルツ・スケルツォ 作品7、ワルツ 作品40-8、サロン風ワルツ 作品51-1
併録曲:
夜想曲 作品10-1、ユーモレスク 作品10-2、カプリッチョーソ 作品19-5、悲しい歌 作品40-2、ロマンス 作品5、ロマンス 作品51-5、ショパン風に 作品72-15、いたずらっ子 作品72-12、夕べの夢想 作品19-1、メヌエット・スケルツォーソ 作品51-3、瞑想 作品72-5
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ )
録 音:1983年 4月 ミュンヘン
音 盤:メロディア(ビクター音楽産業 / VDC-1068 )


プレトニョフ_チャイコフスキー_「きらめくワルツ 」 作品72の11 ~ 「五拍子のワルツ 」作品72の16(DG) ミハイル・プレトニョフ_Pletnev
「きらめくワルツ 」、「5拍子のワルツ 」
ミハイル・プレトニョフ(ピアノ )

18の小品 作品72 全曲
第1曲 即興曲、第2曲 子守歌、第3曲 穏やかな叱責、第4曲 性格的舞曲、第5曲 瞑想曲、第6曲 踊りのためのマズルカ、第7曲 演奏会用ポロネーズ、第8曲 対話、第9曲 シューマン風に、第10曲 スケルツォ・ファンタジー、第11曲 きらめくワルツ、第12曲 いたずらっ子、第13曲 田舎のこだま、第14曲 悲歌、第15曲 ショパン風に、第16曲 5拍子のワルツ、第17曲 遠い昔、第18曲 踊りの情景 (トレパークへの招待 )
Encore 夜想曲 第20番 嬰ハ短調 遺作(ショパン )
録 音:2004年 6月 チューリヒ、トーンハレ ライヴ 
音 盤:ドイツ・グラモフォン D.G.(UCCG-1243 )

     「 『18の小品 作品72 』は、チャイコフスキーが亡くなってしまう年 - 1893年春 - にまとめられた、作曲家の最晩年のピアノ作品集。鬼才プレトニョフの表情豊かな演奏によって、その一曲一曲が個性的な作品すべてに丁寧に光が当たり、チャイコフスキーの才能と楽曲の真価を 私たちに 伝えています 」

トヴェルスカヤ_チャイコフスキー_組曲「四季 」から 12月「クリスマス Noel 」 チャイコフスキー 四季 ビクター(メロディア VICC-2024 )
組曲「四季 」作品37より 12月「クリスマス週間 」
(左 )オルガ・トヴェルスカヤ(フォルテピアノ、1867年製エラール )
   併録曲:
ドゥムカ、主題と変奏
   録 音:2000年1月、OPUS-111(30-304 )
(右 )エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮
   ソヴィエト国立交響楽団(ガウク編曲版 )
   録 音:1974年 9月、メロディア(ビクター VICC-2024 )


 - クリスマス・イヴには いつも
    少女たちは 占い遊びに夢中になったもの
    脱ぎ捨てた靴を 互いに競って 外へ投げたりして -
                  (英訳からの和訳 : 山田 誠 )



レヴァイン(D.G.)歌劇「エウゲーニ・オネーギン 」第2幕から ワルツ James Levine
歌劇「エフゲニー・オネーギン 」から
第2幕第1場「間奏曲と合唱付きワルツ 」
ジェイムス・レヴァイン(指揮 )James Levine
ドレスデン国立管弦楽団 Staatskapelle Dresden
ライプツィヒ放送合唱団
ニール・シコフ(レンスキー )、トーマス・アレン(オネーギン )
録 音:1987年 6月 ドレスデン
音 盤:ドイツ・グラモフォン(POCG-3055 抜粋 )

     「 歌劇『エフゲニー・オネーギン 』は、プーシキン原作の韻文小説をオペラ化したもの。チャイコフスキーが その生涯で残した全10作もの歌劇の中では 文句なく最高傑作。個人的に最もお気に入りのシーンは、やはり第1幕でヒロインのタチアーナ(ミレルラ・フレーニ )手紙を認(したた )める場面の叙情的なアリア、ここは 本っ当に 素晴らしい 」
わたし   「通常コンサートなどで 単独のオーケストラ曲として演奏される『ワルツ 』って 原曲は合唱付きだったんだね。この演奏ったら、漲(みなぎ )る気迫が もの凄いわね 」
     「親友レンスキーとの不本意な決闘の原因となる些細な諍(いさか )いの場面の導入ともなる重要な音楽が、ここでのワルツ。後半でぐーんと伸びるポルタメントから弾(はじ )け飛ぶ躍動感が ジェイムス・レヴァインの持ち味。名門シュターツカペレ・ドレスデン - の、特に弦セクションを - ここまでやりますかっていうくらい力いっぱいドライヴして鳴らし切った この『エフゲニー・オネーギン 』は、歌劇場の職人レヴァイン最良の記録の一つではないかな 」

ユーリ・バシュメット_チャイコフスキー_RCA(BMG BVCC-1950
弦楽セレナード ハ長調 から 第2楽章
ユーリ・バシュメット指揮
モスクワ・ソロイスツ
併録曲:
グリーグ ホルベルク組曲、二つのノルウェー舞曲
録 音:1989年 3月 ストックホルム
音 盤:RCA(BMG / BVCC-1950 )


Universal Music Company(PHILIPS 475 6316 )
交響曲第4番ヘ短調 から 第1楽章
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮
ウィーン・フィルハーモニー
録 音:2002年10月 ムジーク・フェラインザール、ウィーン
音 盤:Universal Music Company(PHILIPS 475 6316 )
 ゲルギエフウィーン・フィルによる このチャイコフスキー第4交響曲のCDが国内リリースされたのは 2004年10月27日 - 早いもので それからもう10年近くも経つことになります。10年前、ゲルギエフウィーン・フィルとは 翌11月に来日公演が予定されており、その公演プログラムには まさにチャイコフスキー後期三大交響曲が挙がっていたのです。この第4番と 既発売で評判も高かった第5番(再発売 )、そして当時 最新録音だった第6番「悲愴 」とのセットで 新しい装丁のもと 国内発売されたことは、来日公演に合わせた企画だったことは間違いありません。
 2004年当時「レコード芸術 」(音楽之友社 )に New Disc & Artists という定例の企画ページがあり、それは国内リリースされた新譜をいちはやく紹介するというコーナーでした。同年11月号の紙面には、このゲルギエフ = ウィーン・フィルによるチャイコフスキー第4、第6交響曲について 増田良介氏による紹介記事が掲載されていました。特に「第4番 」について、増田氏が そこでたいへん印象深い文章をお書きになっておられました。それは「ゲルギエフは、ウィーン・フィルの持ち味を生かし、第4交響曲の第1楽章を ワルツの動きで解釈している 」というもので、その着眼点のめずらしさ、文章の強い説得力とともに 鮮明に記憶に残っています。
 もう一度読みたいと思って 十年来ずっと探していたのですが、今回 久しぶりにレコ芸のバック・ナンバーの中から やっと見つけることができました。
レコード芸術_2004年11月号 New Disc Artists ゲルギエフ記事(増田良介氏 )
▲ 以下(青字の部分 )が 増田氏による文章です。わたし自身の覚え書きとしても、ここに引用することを 何卒 お許しください。
 - 全曲の半分近くを占める第1楽章で、ゲルギエフはかなり斬新な解釈を行っている。実は この楽章の第1主題には「ワルツの動きで 」とのテンポ指示があるのだが、たいていの演奏で この言葉は さほど重大に扱われることなく、最初のうちこそ 少しワルツっぽく揺らしても、すぐに運命交響曲ばりに 激しくたたみかけるような演奏になることが多い。
 ところがゲルギエフは、第1主題部を終始急がず 甘く歌わせ、ワルツのムードで通すのだ。こうなればウィーン・フィルの独壇場、ちょっとした音の動きにもゾクッとするような美しさがあるし、鋭いリズムで力強く進む音楽として聴き慣れたこの部分がメランコリックなワルツとして聴こえてくるのはそれだけで十分興味深い。
 しかしゲルギエフの意図は、別に普通と違うことをして面白がらせようということではなく、この主題を捉え直すことによって楽章全体の新しい解釈を示そうとしたのだと思われる。それを確信したのは再現部だ。第1主題がティンパニの激しいトレモロを伴って戻るとき(12分40秒頃 )、ゲルギエフはぐいっとテンポを - 提示部と同じテンポにまで - 落とす。楽譜にそんな指示はないし、わずかに緩めることはあっても ゲルギエフほどあからさまにテンポを落とす演奏は 多分ない。しかしこれによって この主題が周囲からある種 断絶した存在であるという印象が生まれるのだ。
 もともとこの(第1 )楽章は、第2主題もノスタルジックなワルツ(でなくても3拍子の舞曲 )的性格を持っている。だから、第1主題のワルツ的な色を強調すると、この楽章は ふたつのテンポの異なるワルツを主題として持つソナタ楽章 ということになる。つまり、ゲルギエフは この楽章を《幻想交響曲 》の第2楽章や マーラーの交響曲第5番の第3楽章のように、舞曲の形式を枠組みとした 一種の音詩として捉えなおそうとしたのではないだろうか - (以下略 )。


ゲルギエフ_ウィーン・フィル_チャイコフスキー_交響曲第5番から 第3楽章 ワルツ
交響曲第5番ホ短調 から 第3楽章(ワルツ )
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮
ウィーン・フィルハーモニー
録 音:1998年 7月、ザルツブルク 祝祭大劇場
音 盤:ORF(PHILIPS 462 905 2 )


チャイコフスキー_交響曲第6番「悲愴 」から 第2楽章_ジャン・マルティノン ウィーン・フィル(DECCA ) ジャン・マルティノン
交響曲第6番 ロ短調「悲愴 」から 第2楽章
ジャン・マルティノン指揮
ウイーン・フィルハーモニー
録 音:1958年 4月、ウィーン
併録曲:
ボロディン 交響曲第2番 ロ短調(ロンドン交響楽団、1960年 )
わたし   「5拍子という変拍子ロシア風の変形ワルツであるとする考え方を 支持しています 」
     「こと第2楽章に限っては、今回 20枚以上の音盤を聴き比べてみたのですが、この マルティノン / ウィーン・フィル盤の 何とも尋常でない揺れ具合の個性的な優美さ に 新鮮な魅力を感じてしまったので - 」
わたし   「おススメします(笑 ) 」

チャイコフスキー_「くるみ割り人形 」から 「花のワルツ 」RCA ユージン・オーマンディ
バレエ音楽「くるみ割り人形 」から
「花のワルツ 」
ユージン・オーマンディ指揮
フィラデルフィア管弦楽団
併録曲:
幻想序曲「ロメオとジュリエット 」(1973年 1月録音 )
録 音:1972年 9月
音 盤:RCA(BMG / BVCC-38117 )

     「オーマンディ盤『花のワルツ 』の特徴的な個性については、以前ご紹介しましたね 」 
詳しくはこちら ⇒ スヌーピーの音楽「シュローダー、『花のワルツ 』を弾く

ウィーンフィル、ニューイヤー2012_ヤンソンス
バレエ音楽「眠りの森の美女 」から「パノラマ 」と「ワルツ 」
マリス・ヤンソンス指揮
ウィーン・フィルハーモニー
録 音:2012年 1月 1日 ウィーン、ムジークフェラインザール

ウィーン・フィルニュー・イヤーチャイコフスキーのワルツが初登場 ! このディスクについても 以前触れましたね。
詳しくは ⇒ アフター・シュトラウス (32 )エピローグ ~ 2012年ニューイヤーの ウィーンフィルと「美しく青きドナウ

アンセルメ「白鳥の湖 」抜粋(DECCA )盤_ワルツ王 チャイコフスキー_0015 エルネスト・アンセルメ
バレエ音楽「白鳥の湖 」
エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団
録 音:1959年 6月 ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
音 盤:キングレコード(ロンドン=デッカ KICC-9341~42 )

     「全曲にわたって 随所で次々と繰り出される素晴らしいワルツ攻撃には もう降参するしかない。この傑作バレエ、実はチャイコフスキーの魅力的なワルツの宝庫なんだ。中でも最も有名なのは やはり第1幕の開幕から間もなく踊られる最初のワルツではないかな、下降するピッツィカートで始まる あの優雅な一曲・・・ 」
わたし   「わたしは やっぱり第2幕黒鳥(ブラック・スワン )オディーリャ の『グラン・パ・ドゥ・ドゥ 』の導入部、あの弦のボウイングが ぐーんと弧を描くように豊かなワルツのメロディが大好き。これに続く その後の展開(オディーリャの32回のグラン・フェッテ・アン・トゥールナン王子の16回のアントルシャ・シス! )にも期待しちゃうなー 」
     「 オマエさ、その黒鳥の『グラン・パ・ドゥ・ドゥ 』って チャイコフスキー初稿では もともと第1幕に置かれてた別の曲だったって、知ってたか ? 」
わたし   「 ? ぽかーん 」
白鳥の湖 アンセルメ_キング=ロンドン
     「 ふふん、『白鳥の湖 』を アンセルメ / スイス・ロマンドのレコードでしか聞いていなけりゃ 知らないでいるのも 道理というもの。しかもキング=ロンドンのL.P.盤なんかで(笑 ) 」
わたし   「 ぷんぷん。 年齢(トシ )を 暴露(バラ )すようなこと 言わないでよ。 たしかにアンセルメのレコードは愛聴盤だったけど・・・ わたし 他にも フェドートフ(Victor )ゲルギエフ(Decca )の全曲盤だって CDで聴いてるもん 」
     「 “聴いてるもん” って・・・ (哄笑 )とうとうオマエ白鳥の湖の淵まで追いつめる日が来たようだな 」
わたし   「 何なのよ、まるで勝ち誇ったように (思わず気色ばむ ) 」
夫     「 『白鳥の湖 』 は、チャイコフスキーの生前は 長らく失敗作として 不当に葬り去られていたものの、作曲者の死後になって マリインスキー劇場で大幅な改訂を施された上での再演(1895年 )によって大成功を収めることになる。 このため その後は 『改訂版(プティパ = イヴァーノフ版 ) 』のほうが 今日(こんにち ) 世界各地で上演されるお手本となり、 演奏・レコーディングされる場合には 指揮者・プロデューサーの、バレエ上演される場合には 演出家の、それぞれ自由に改変されること自体が伝統となり、これほどの名曲であるにもかかわらず 版によっては結末まで異なる場合があるほど、一種混迷を深めてきたとさえ いってよい 」
わたし   「ふんふん 」
     「1976年のプレヴィン(EMI )盤で有名な原典尊重とされたユルゲンソン版でさえ 現在は主流と言われる全集版に比べると差異がとても多い。たとえば第13曲“白鳥たちの踊り”など その好例で、まずもってそのタイトルからして全集版では“全員の踊り”になってるし、調性のほうも混乱してて、ユルゲンソン版ではイ長調だけど 全集版では半音低い変イ長調とか・・・ ( ここの個所、川崎高伸氏に拠る文章を参考にさせて頂きました ) 」
わたし   「へえー、タイトルや調性だけじゃなく、楽器の他 曲順、追加、カット、転用など、調べたらそれだけで一冊の本が書けそうね。実際、版ごとの相違などを比較した『白鳥の湖 』研究本が すでに存在してるかもよ。それで 黒鳥の『グラン・パ・ドゥ・ドゥ 』は ? 」
     「オリジナルでは第1幕5曲目の音楽で、王子と宮廷の若い女官(または廷臣 )の2人によって踊られたものと推察されているんだよ 」
わたし   「え、ウッソー! だ、だって この曲、第2幕の あの劇的な黒鳥のシーンに ドンピシャ ハマってるじゃないの。うう、信じたくない~っ 」
     「1895年の歴史的蘇演、プティパ=イヴァーノフ版による演出のとき、この曲を第2幕の舞踏会シーンに移すというアイディアは、上演の2年前に亡くなっていた作曲家の弟モデストも同意していたとされている。そこで最初に黒鳥を踊ったピエリーナ・レニャーニという名バレリーナが 32回のフェッテを見事に決め、『白鳥の湖 』再評価につながる大成功に貢献して以来、このバレエが上演される都度、『グラン・パ・ド・ドゥ 』は 常に第2幕に挿入され 黒鳥によって踊られることが慣例になったという経緯なんだな 」
わたし   「うわ ホントだ、アナタのCD棚に並んでる“白鳥の湖” アンドレ・プレヴィン (EMI )盤では 同曲が たしかに第1幕第5番に入ってるわ 」
     「ほらほら、スヴェトラーノフ(メロディア )盤もだよ 」
わたし   「ムムッ 私の愛聴盤だったアンセルメ盤、フェドートフ盤、ゲルギエフ盤・・・ って、みんな 揃いも揃って プティパ=イヴァーノフ版だったというわけね。だから 今までずーっと 黒鳥の『グラン・パ・ド・ドゥ 』第2幕 舞踏会シーンにあることに 何の疑念も持たなかったんだわ、きゃー 恥ずかしい~(耳たぶまで赤面 ) 」
     「さらに補足すると、アンセルメ盤プティパ=イヴァーノフ版とも 実はかなり異なるオリジナル曲順で、カットもたいへん多い。 もはや 『アンセルメ版 』だよな、ここまでくると。でも演奏は素晴らしいし、他と比較するだけでも充分楽しめるよ 」
わたし   「うーん、とっても勉強になりました。そして チャイコスキーの音楽が さらに好きになっちゃいそうだな 」

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コメント

たつさま !

かくも閑古な拙ブログに ご丁寧な補足を加えてくださる充実のコメント、誠にありがとうございます。
タチャーナの「手紙の場面 」で使われた旋律が、後年オネーギンとの再会の場において 歳月を経て彼女の心の裡の葛藤を表現するように再現される効果と、オネーギンにとっては皮肉な心理的演出 - について ご指摘、その深いご洞察に 心より拍手です。
今後も たつさまからのご意見、お待ちしてます。

URL | “スケルツォ倶楽部”発起人 ID:-

エフゲニー・オネーギン

 こんにちわ

 「ロシアのワルツ王、チャイコフスキー」を拝見しました。
中世ヨーロッパでは、ワルツが「いやらしい」という理由で禁止されていたことは初めて知りました。ワルツが洗練・進化しハプスブルク帝国の文化を象徴する存在になった・・・・・なんて、これまた初耳ですよ。
ショパンやチャイコフスキーの作品に用いられて素敵ですが。
 発起人さまが採り上げた3拍子・ワルツについては、高尚で広範囲にわたっていますが、偶然にも私と同じCDの「エフゲニー・オネーギン」(レバイン指揮シュターツカペレ・ドレスデン)に興味をそそられました。
このCDは抜粋版のため「ポロネーズ」が収められていないことが残念です。
おっしゃられるとおり歌劇場の職人の演奏はとってもいいのに「なぜ?もったいない」と思わずにはいられません。
そんなこんなやで、ボリショイ劇場のDVDは手にして観賞しています。これだと「ポロネーズ」が優雅に踊られており満足しています。
また、ワルツの場面はダンスパーティーのごとしで、ステップも荒々しく・・・ウヲッカ入りです(笑)
それにしてもチャイコフスキーは物語をうまく表現していますね。序奏のテーマはタチャーナだろうと思います。第1幕オネーギンがラリーナ家を訪問・・・タチャーナが「私が求めていた運命の人」として胸をときめかして夢を語る場面に、不幸な末路を予想するかのように序奏のタチャーナのテーマがオーボエで奏でられます。
また、「手紙の場面」を三つに分けると。第3番目の変ニ長調のテーマも第3幕の序奏に表れます。その他、「手紙の場面」第1番目のテーマは、オネーギンに手紙で告白するも慇懃無礼な仕打ちを受けたのに。時が経ってグレーミン公爵夫人となったタチャーナに過去の非礼を詫びオネーギンが熱い胸のうちを告白する場面で、そのテーマが歌われるのですが、貞淑なタチャーナは、上品に無理であることを告げる。
まったく皮肉な展開をうまく音楽に表していると思います。と想像しています。
それは兎も角「ポロネーズ」は素晴らしいですね。
 拙文にて失礼いたしました。

URL | たつ ID:mQop/nM.[ 編集 ]

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