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「気分がふさいでいるときは、いつも 新しいレコードを何枚か買うことにしてるんだよ 」
▲ 「 レコード買うと 元気がでるよ。
    落ちこんだときには いつも新しいレコード 買うんだ・・・ 」


シベリウス「カーネーション 」
作曲者所蔵のピアノを弾く舘野 泉
美智子皇后さまとの逸話を語る。

シベリウスの肖像(1915年 シベリウス博物館) 母の日ギフトに!母の日定番♪【赤いカーネーションの花束】

 ・・・あ、気がつけば 今日は 5月の第2日曜 - 「母の日 」ですね。
親孝行 したいときには 親はなし 」などとも申します、後悔することないよう 伝えられるうちに 日頃の感謝の気持ちは しっかりと 自分の母親には 伝えておかなくちゃ などと思いました。
 はい、そこで 今宵は 母の日にちなみ、一枚の お気に入り名盤を ご紹介します。

館野泉_シベリウス 健康を損なう前の 舘野泉氏(EMI ) シベリウス所有のピアノ
シベリウス作曲
カーネーション 」 ( 「花の組曲 」より )


 1964年以降、約30年間もフィンランドの首都ヘルシンキで生活され、そこで北欧のピアノ音楽を深く弾き込んできた名手 舘野泉氏が、アイノラに残されたシベリウスの自宅に置かれている 作曲家の愛器 - ニューヨーク・スタインウェイ、 それは1915年にフィンランド国民から贈られたという名誉ある逸品です - を使ってレコーディングされた、シベリウス自身がアイノラに移住して以降に書かれた小品ばかりを収めた 忘れがたい一枚のアルバムがあります。
題して ・・・ アイノラのシベリウス - 作曲家所蔵のピアノによる
収録曲:5つのスケッチ、樹の組曲(全5曲 )、花の組曲(全5曲 )、3つのソナチネ(嬰ヘ短調、ホ長調、変ロ短調 )、5つのロマンティックな小品、5つの性格的な小品
ピアノ:舘野 泉
録 音:1994年 7月 フィンランド ヤルヴェンパー、シベリウスのアイノラ山荘にて
音 盤:ポニーキャニオン(PCCL-00243 )

 
 傑作「樹の組曲 」から 2年後に書かれた、ヒヤシンス、カーネーション、あやめ、金魚草、釣がね草 - という5曲の花の名前から成る「花の組曲 」の第2曲・・・。
 ねえ これショパンの曲だよ、と知らずに聴かされたら、容易(たやす )く信じてしまいそうな、変イ長調の優美な分散和音の合間を縫って静かに浮かび上がってくるメロディは 「母の日 」に贈られる習慣をもつ花の印象にもぴったりの可憐さ。そう言えば、これに「花の組曲 」という秀逸な邦題を付けたのは、実は、舘野 泉氏であったというトリヴィア情報もあり。
 また、このアルバムのライナー・ノートには 舘野氏ご自身が「アイノラの静寂 」と題する 感動的な小文を寄せておられるのですが、そこには舘野氏が このレコーディングをおこなう きっかけともなった ある出来事が さらりとつづられており、繰り返し読むたび 私は胸が熱くなります。
 それは、このレコーディングの半年ほど前にあたる1993年12月 6日(偶然にもフィンランドの独立記念日 )、舘野氏が 天皇 皇后両陛下から 赤坂御所にお招きを受けた日のことでした(以下、舘野氏による原文を引用させて頂きます - 青字

舘野 泉 紀宮さま、天皇 皇后両陛下
  ― 新御所に移る前の最後のお客様ですと言われ、紀宮さま、それに 私の妹夫妻(広瀬八朗・悠子 )で 音楽と歓談に、忘れ難い数時間を過ごさせていただいた。
 妹と連弾をする際には、陛下がもうひとつのピアノ椅子を運んできてくださり、紀宮さまが高さを調節してくださるといったふうに、気取りも隔てもなく、人と人の心が音楽とともに自然に溶け合う時であった。
 美智子さまは まだお話しされることが出来ず
( 発起人 注:1993年当時、美智子皇后は 過度な精神的ストレスによって、一時的に 心因性失声という症状で苦しまれました )、メモ帳に筆記され、それを陛下、時には紀宮さまが声にされて伝えてくださったが、私には皇后陛下が声をだされなかったという印象が全くなく、魂全体が響いて触れてくるかのような感じを受けて感動した。言葉の もっと先にあるもの、あるいは言葉の一番元にあるものが響いていたように思う。
 この時に 私は シベリウスの小品をいくつか演奏したのだが、美智子皇后は「わたしにも弾かせてください 」と(筆談で )書かれ、シベリウスの 「樅の木 」 を 流れるようなタッチで、美しく演奏してくださった。

美智子妃殿下
 両陛下は皇太子時代にアイノラを訪れられたことがある。初夏の森の小道に鈴蘭の花を見つけられた美智子さまに、フィンランドの報道陣が鈴蘭を手折るポーズを求めた。しかし「野のものは野に 」とおっしゃって、花をそっとそのままにされたことが感動をよんで、翌日のフィンランドの新聞は その記事で溢れるようであった。
 「樅の木 」を演奏された美智子さまには、アイノラでの想い出が 強く生きておられるのではないだろうか。
 12月 7日、御所訪問の翌朝、紀宮さまから お電話をいただいた。母からの感謝の言葉です、と お心のこもったお言葉をいただいたあと、紀宮さまは「昨夜は 母が言葉を取り戻すかと思いました 」と仰言った。後に 新聞などの報道で皇后さまが 7日にささやき声ではあるが、ゆっくりとひとつの文章をお話しになられたことを読み、心が震えた。アイノラで「樅の木 」を含めた シベリウスのアルバムを作ろうという考えが、光を得て一歩先に進んだ。

(以上、アルバム「アイノラのシベリウス 」所収、舘野泉氏による ライナー・ノートの文書より )

アイノラのシベリウス
▲ レコーディング合間、アイノラシベリウス自室で寛ぐ 舘野 泉

 シベリウスアイノラ財団から特別の許可を得て制作された このディスクは、シベリウス自身の愛器によって演奏された 世界最初のアルバムだったそうです。
 現代のメカニカルなピアノとは大分異なるため 微妙なペダル操作も難しく、長い間 使用されていなかったせいもあって 鍵盤から指が離れる瞬間に 手元でコトンと音が鳴ってしまうキーがあったり、また ダンパーのフェルトも柔らかすぎて 響きにむらが出てしまいやすいことなど、この後 さらに舘野氏の文章には ピアニストらしい 古い楽器を演奏する技術的な苦労ばなしも つづられています。
 シベリウスが所蔵していた 歴史的にも価値の高い古いピアノは、必要から いずれは修復されてしまう運命にありますが、そうすると 楽器本来が持っている固有な響きや音色は失われてしまいます。ですから ちょうど一世紀前に製造された名器スタインウェイの、あたかも素材の 「 」 がもつ温かい響きが このレコーディングによって 半永久的に記録されたことは、特記事項でもあると思うのです。

  (シベリウスの )ニューヨーク・スタインウェイは 、独特な温かく美しい音色を持っている。保存状態もよい。木造の部屋の響きにも独特な雰囲気がある。窓からはトゥースラ湖にいたる田園風景が拡がり、樅や白樺、ピヒラヤなど、シベリウスの愛した樹々が見える。冬なら一面の白雪。そこで人が語る肉声のような この楽器で弾いていると、まるでシベリウスが傍らに座って聴いているような気がする。
(以上、引用 同上より )

 ― さもあらん、と どなたもきっと思われますよ この音を聴けば。
 
アイノラの風景(fujikuma-jun )
▲ アイノラの風景fukuma-junさん のブログよりお借りしました )


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