スケルツォ倶楽部
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「変ホ長調 」 の音楽
 E-flat-major 136×100 シュローダー 変ホ長調

こんにちわ、“スケルツォ倶楽部発起人 です。
子どものころ以来、意識して音楽を聴くようになってから いつも私の頭の中では 音楽が勝手に鳴りだします。それは 決まってひとつの協和音であることが多く、大体 いつも具体的な音響です。 ええと、たとえば・・・

モーツァルト_ノリントン_ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(EMI )盤
▲ モーツァルト交響曲第39番 K.543 の、あの雄大な開幕とともに轟(とどろ )く 快いティンパニの激打と まるで天からリボンが何本も するすると降ってくるような 高音弦による 変ホ長調スケールの下降運動などは、どうやらノリントン / ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(EMI )盤の記憶であるらしく -

ベートーヴェン_ピアノ協奏曲_スホーンデルヴルト(フォルテピアノ) アンサンブル・クリストフォリ(Alpha )盤
▲ ベートーヴェンピアノ協奏曲「皇帝 」 - その冒頭の物凄い気迫が殺気立つ個性的な古楽の響き。今、頭の中で再現されているのは お気に入りの「ロプコヴィッツ邸編成による 」とされる スホーンデルヴルト(フォルテピアノ)/ アンサンブル・クリストフォリ(Alpha )盤の音に違いありません - 

けれど・・・妙なことに、私自身に無断で(? )勝手な再現を 頭の中で繰り返す音楽のレパートリーの殆どが、どれも決まって 変ホ長調 の曲ばかりのようなのです。
その理由は ・・・不明です(笑 )。すみません、個人的で 取るに足りぬことですが、まあ たまたま愛好している曲が どれも 偶然に 変ホ長調 だったというだけのことかもしれませんし、この調性が自分の波長に合っていて それゆえ 変ホ長調 の楽曲を偏愛しているかの どちらかいずれなのでしょう。

E-flat-major 88×65 E flat major scale
 
変ホ長調 E♭ Major or Es-Dur - 主音 E♭、中音 G、下属音 B♭、属音 A♭ - 調号フラット3つ です。
Wikipedia に拠れば、この調性 - 変ホ長調は「落ち着いた、荘厳で重厚な曲想となることが多い 」とされているそうです。
また 金管楽器の中でも 特にホルンが非常によく鳴る調性としても 知られていますよね。

モーツァルトのホルン五重奏曲K.407 モーツァルト_ピアノと管楽器のための五重奏曲K.452 ブラームス_ホルン三重奏曲 変ホ長調
▲ モーツァルトホルン五重奏曲K.407 ピアノと管楽器のための五重奏曲K.452ブラームスの魅力的なホルン三重奏曲など、ホルンが参加する室内楽の古典的な名曲にこの調性が多いことも そのためでしょう。
さらに 興味深いことに、変ホ長調の調号には - 
E-flat-major 136×100
▲ このように フラットが三つ付くことから、西洋音楽史にとっては重要な キリスト教の考え方である「三位一体 」へ繋がる「 聖なる和音 」として考えられた時期があったそうです。
古代キリスト教の神学者アウグスティヌス Augustinus(354 – 430 )の考え方に拠ると、その「三位格 」の関係とは、「言葉を発する者」= 父なる神、「言葉 」= その子キリスト、「言葉によって伝えられる愛 」= 聖霊 の三つであり、それら三者は 各々が独立していると同時に 一体として働き、本質において同一である - というもの。

セル「英雄 」LPジャケット( CBSソニー ) R.シュトラウス『英雄の生涯」オーマンディ(RCA)盤
▲ そして、言うまでもなく、ベートーヴェン三番め の偉大な交響曲「英雄 」で このキーを採用して以来、音楽を愛する人々の潜在意識下では この調性 = 変ホ長調が「英雄の調 」として定着していることは、間違いないでしょう。
・・・たとえば リヒャルト・シュトラウス交響詩「英雄の生涯 」、あの印象的な開始も 変ホ長調 ですよね。 うーん、素晴らしい ! えー、オーマンディ(RCA )盤 おキライですか ? ぜひ一度 冒頭からお聴きになってみてください。ホラ、他の演奏では聴けない この個性的な音、一体何でしょう ? フィラデルフィアの弦の充実、凄いでしょう。ますます好きになっちゃったでしょう ?


■ “スケルツォ倶楽部発起人
お気に入り「変ホ長調 」楽曲の名盤を 思いつくまま・・・

モーツァルト 最期の年

特に ▲ モーツァルトには 変ホ長調の名曲がたくさんありますよね。
すでに前述の 交響曲第39番 とか 室内楽の傑作 K.407、K.452 などは言うまでもなく、ホルン協奏曲第2番、第3番、第4番、あぁ、そう言えば - 
協奏交響曲 Symphonie Concertante (管 )K.297 B モーツァルト_ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364
協奏交響曲 Symphonie Concertante には 管(K.297 B )弦(K.364 )の2種類ありますが 両方ともに その調性は 変ホ長調 ですし・・・

モーツァルト弦楽五重奏曲全集 ブダペスト弦楽四重奏団 CBS-Sony.
▲ 当 “スケルツォ倶楽部” オリジナル連載小説の拙作 「モーツァルト 最期の年 」にも 過去登場した 弦楽五重奏曲第6番 K.614 などなど、リストアップすれば ホント限(きり )がないほどですが、もし 貴方がモーツァルティアンを自負されるなら まっ先に思い出す「変ホ長調 」作品といえば - 

モーツァルト「魔笛 」ショルティ(デッカ=ロンドン )盤 ベーム「魔笛 」D.G._E♭ の音楽
▲ やはり 最後の年 - 1791年 - の 歌劇「魔笛 」ではないでしょうか。
モーツァルトは このジングシュピール(歌芝居 )の中で - 冒頭の「序曲 」は言うまでもなく フィナーレの合唱に至るまで - 変ホ長調 を重要な主調として選んで(主調に関連して、その関係調である 変ロ長調、ヘ長調、あるいは登場人物の立場によって 逆に♯系の調性も 効果的に生かして )います 。
前述のとおり 変ホ長調という調号には ♭(フラット )が「3つ 」付きますが、オペラの序曲や神殿の場面など モットーのように たびたび劇場で鳴り響く変ホ長調の和音は、その都度「3回 」セットで重ねられることになっていますよね。 「3回 」・・・ そう言えば、夜の女王の侍女も「3人 」、主人公を助ける童子も「3人 」、神殿に侍る神官も「3人 」と、よく言われるとおり「 3 」という数字は 実は フリーメイソンの崇高な儀式において 象徴的な意味をもっており、モーツァルトシカネーダーは これを意図的にドラマの中に取り入れ、ストーリーの神秘性にさらにリアリティを加えようとした - とされますが、でもその話題は またいずれ。

クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ ) モーツァルト_ピアノ協奏曲第22番K.482_クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ )_フライブルク・バロック・オーケストラ(ハルモニア・ムンディ盤 )
▲ 大好きな ピアノ協奏曲第22番K.482 - 最近 聴いた音盤の中でも鮮烈な印象を残した一枚は、やはり クリスティアン・ベザイデンホウト(フォルテピアノ )フライブルク・バロック・オーケストラと共演した 注目のハルモニア・ムンディ・フランス盤です ( 録音 : 2012年 5月 フライブルク、アンサンブルハウス )。 ぱきんぱきん鳴る古楽ピアノの音に生理的な悦びさえ感じてしまう“スケルツォ倶楽部”発起人、即興的な装飾フレーズの頻出に 思わずうれしくなってしまう一方で、オーケストラの最前に並ぶ管楽器の意外なほど甘美な響き、撥の硬さまで目に見えるティンパニの炸裂、ソリストと管を取り囲む弦の立ち上がりの見事さ、久しぶりに新鮮な驚きをもらいました。

ホッグウッド モーツァルト交響曲全集 ホッグウッド、シュレーダー、エンシェント室内管弦楽団
▲ 意外なところでは、モーツァルトが 僅か 8歳の時に作曲した 最初の交響曲 第1番K.16 が、変ホ長調でした。
当時のイタリア式序曲風の 急 - 緩 - 急という基本的な三楽章構成の習作なのですが、注目すべきは ハ短調の緩徐楽章です。弦セクションが規則的に刻み続ける三連符の背後で ホルンがはっきりと E♭ → F → A♭ → G という いわゆる 「ジュピター音型 」を奏でている( ! )ことに驚愕。 ・・・つまり W.A.モーツァルトは、彼の 最初の交響曲で登場させた動機を、自身の 最後の交響曲となった第41番のフィナーレにおいても - それはきっと偶然だったのでしょうが、結果的に「人生の円環 」を閉じるかのように - 再び用いることになったのですから。


バッハ_無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調_ビルスマ(Sony )盤 フランス組曲全曲、フランス風序曲 グールド
J.S.バッハ
(左 )無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調
(右 )フランス組曲第4番 変ホ長調

ミンコフスキ(Naïve )のロンドン・セット
ハイドン
交響曲第99番 変ホ長調
交響曲第103番 変ホ長調 「太鼓連打 」

このミンコフスキ(Naïve )ロンドン・セットは、実に素晴らしい一組でした。リリースされた当時、二度ほど 当スケルツォ倶楽部でも紹介させて頂きました。 ⇒ 過去記事は こちら 
やはり 103番「太鼓連打 」の冒頭、「うわー、一体 何のお祭りが始まったんだろ 」 というほどの リズミカル・ダイナミックな ティンパニ・ソロ、口を開けて思考停止します。
私にとって ハイドンの「103番 」といえば、今となっては おとなしいカラヤン / ウィーン・フィル(Decca )盤、次いで 当時としては先鋭的な評価を与えられていた オイゲン・ヨッフム / ロンドン・フィル(D.G. )盤でした。が、今は 専ら ミンコばかり聴く日々ですね。

ベートーヴェン_弦楽四重奏曲第10番「ハープ 」エロイカ弦楽四重奏団(HM)
ベートーヴェン
弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 Op.74「ハープ 」
エロイカ弦楽四重奏団

録音:1999年3月
以前 話題にしました ⇒ カラヴァッジョ「聖マタイの召命 」は エロイカSQ (ベートーヴェン Op.74 )ジャケットと どこか似てる。
ベートーヴェンの「変ホ長調 」作品って 他にも結構たくさんあるんですが、また あらためて 別の機会に取り上げたいと思ってます。

インマゼール ビルスマ:ピアノ・トリオ第2番 SONY
シューベルト
ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調D.929
ジョス・ファン・インマゼール(フォルテピアノ )、
ヴェラ・ベス(ヴァイオリン )、
アンナー・ビルスマ(チェロ )

録音:1996年4月
こちらも 以前 話題にしましたね ⇒ 架空のシューベルティアーデ

メンデルスゾーン_八重奏曲_ラルキブデッリ スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズ(Sony )
メンデルスゾーン
弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20
ラルキブデッリ & スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズ

(併録曲:N.ガーデの弦楽八重奏曲ヘ長調 も名曲 )
録音:1992年
メンデルスゾーン16歳の時の作曲という、早熟な才能の飛沫が弾(はじ )けて飛び散るような瑞々しさ。特に 第3楽章スケルツォ(これはト短調 ) 」は 特に素晴らしく、のちに作られる 舞台のための音楽「真夏の夜の夢 」の「スケルツォ 」を先取りしているとさえ思います。
この録音で使用されている楽器は、ワシントンのスミソニアン博物館が所蔵する歴史的なストラディヴァリウスとのこと。これだけでも聴く価値があるというものですが、アンナー・ビルスマ、ヴェラ・ベスはじめ 名手の揃ったアンサンブルの奏でる表情の豊かさは、イチ押しさせて頂く価値も十分と思います。

サヴァリッシュのシューマン交響曲
シューマン
交響曲第3番 変ホ長調「ライン 」

シューマンの交響曲を聴くのであれば、やはり私 “スケルツォ倶楽部発起人にとって ヴォルフガング・サヴァリッシュ / ドレスデン・シュターツカペレEMI盤の、渋くもまた 鮮明に抜けるサウンドに最高点を与えたいです。あぁー、このディスクの音質って どうしてこんなに素晴らしいんだろ、特に2番ハ長調とか。当時「このサウンド 」のままで ブラームスマーラーまで レコーディングしておいてくれればよかったのになー・・・って。
以下、青字部分は 近衛秀麿著「オーケストラを聞く人へ(改訂版 ) 」(音楽之友社 1970年 )からの興味深い引用です。
― シューマンのオーケストレーションが時代遅れであるとの評価は昔から言われており、オーケストラが鳴らないことは指揮者泣かせであるが 近年はその「鳴らない響き 」が 却って個性的であるとの再評価も出てきている。
シューマンのオーケストレーションの拙劣さの例としてしばしば言及されるのが、この第4楽章の始めに現れる ホルンとトロンボーンによるコラールであろう。第1トロンボーンにアルト・トロンボーンが指定(当時は一般的であった )されているせいもあるが、その最高音は「変ホ 」音である。これはラヴェルの「ボレロ 」のトロンボーン・ソロで使われている音域よりもさらに高く、しかも、いきなり4度上昇して変ホ音に達するため、現代の普通のオーケストラで使用されているテナー・トロンボーンでは しばしば吹き損ねることで知られる。
引用した文章Wikipedia に掲載されたものです )


アシュケナージ_「ショパン名曲集 」(Decca POCL-5001)
ショパン
ワルツ第1番 変ホ長調「華麗なる大円舞曲 」作品18
ノクターン(夜想曲 )第2番 変ホ長調作品9-2
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ )

オムニバス盤「ショパン名曲集 」(Decca / POCL-5001 )に収録
併録曲:「小犬のワルツ 」、ワルツ第7番嬰ハ短調、「幻想即興曲 」、練習曲第3番ホ長調「別れの曲 」、練習曲第5番変ト長調「黒鍵 」、練習曲第12番「革命 」、 練習曲第23番イ短調「木枯らし 」、前奏曲第15番変ニ長調「雨だれ 」、夜想曲第1番変ロ短調、舟歌 嬰ヘ長調、子守歌 変ニ長調、マズルカ第5番変ロ長調、ポロネーズ第3番イ長調「軍隊 」、ポロネーズ第6番変イ長調「英雄 」
アシュケナージが1975年~1985年にデッカ=ロンドン・レーベルに録音したショパンの全レパートリーから 一般に最もポピュラーな名曲として知られる作品を収めた ヒット盤(笑 )です。
テンポも表現力もメリハリある偉大なピアニスト、アシュケナージの折り紙つきの名演から 最高の有名曲だけをセレクトして収めた贅沢な一枚であり、二曲の「変ホ長調 」楽曲 である「華麗なる大円舞曲 」と「ノクターン第2番 」は、いずれも 前者がワルツ全集から、後者が夜想曲全集から採られたもの。もはや コメントも不要でしょう。


パダジェフスカ_「乙女の祈り 」ユリア・チャプリーナ(ピアノ)
パダジェフスカ
「乙女の祈り 」
ユリア・チャプリーナ(ピアノ )

併録曲:乙女の感謝、マズルカ「甘き夢 」、マグダレーナ、マズルカ、天使の夢、エオリアン・ハープ、第2の「乙女の祈り 」、幻影、友愛、田舎小屋の思い出、母の祈り、森のこだま、信仰、希望、愛、かなえられた祈り
録音:2006年11月 東京(キングレコード )
わが国のピアノ学習者なら知らぬ者のないポピュラー名曲「乙女の祈り 」変ホ長調で書かれた楽曲です。18歳だった作曲者テクラ・パダジェフスカ(あるいは ポンダジェフスカ 1834~1861 )は、ショパンと 同時代にポーランドに生を受けた女性ピアニストでしたが この後27歳 (32歳だったとの説も ) の若さで夭折しています。
この ユリア・チャプリーナ盤は、パダジェフスカが遺した17曲のピアノ曲を集成した たいへん珍しいアルバムですが、実際に聴いてみると、唯一 世界的に有名になった「乙女の祈り 」と同工異曲の作品ばかりが並び、一般大衆には歓迎されたものの 気の毒に、生前から批評家筋には相当酷評されていたそうです。


ラインの黄金URANIA(RM11.906 2CD)1953 ケンペ 「ラインの黄金」1960年バイロイト・ライヴ Audiofile Classics 楽劇「ラインの黄金」DG(カラヤン)盤
ワーグナー
楽劇「ラインの黄金 」
(開始部分 )
変ホ長調 」でスタートするワーグナーの歌劇・楽劇は 唯一この「ラインの黄金 」だけ。
冒頭のインスピレーションを得たワーグナーの記事は こちら ⇒ スケルツォ倶楽部「大作曲家のインスピレーション (霊感、天啓 ) 」


ブルックナー_交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック 」ベーム ウィーン・フィル(Decca LONDON )
ブルックナー
交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック 」
カール・ベーム / ウィーン・フィル
録音:1973年、ウィーン

私 “スケルツォ倶楽部発起人が中学生時代、最初にブルックナーの音楽を「刷り込まれた 」音盤が まさにコレでした。 ・・・え、アナタもですか(笑 ) ウィーンフィルの弦の深い森林の奥、その遥か遠い彼方から聞こえてくる ウィンナ・ホルンの自然な響きに まず耳を奪われましたね。何て素晴らしいんだ - そう感じると同時に 背筋を走りぬけてゆく震え、それは一瞬のことでしたが、記憶は 今も鮮明です。その時 両手に抱えていたのが キング=ロンドンの見開きジャケット(LP 2枚組、3,000円也 ) - これが たしか国内初出でした。

クラリネット・ソナタ_0002 クラリネット・ソナタ_0003
▲ サン・サーンス
クラリネット・ソナタ 変ホ長調

過去記事は ⇒ こちら


1979年_ウィーンフィル、ニューイヤー実況録音( ロンドン=デッカ )
ヨハン・シュトラウス一世 
ワルツ「ローレライとラインの調べ 」Op.154
ウィリー・ボスコフスキー / ウィーン・フィル
録音:1979年、ウィーン ムジークフェラインザール

ウィーンフィルニューイヤー・コンサートで 長年ヴァイオリンの弓を振りながら指揮を務めていた - それ以前はウィーンフィルのコンマスでもあった - ウィリー・ボスコフスキーが 最後に指揮台に立ったのが 1979年1月元旦のこと。
そのコンサートの冒頭一曲目が、父ヨハン・シュトラウスの作曲した「ローレライとラインの調べ 」でした。この変ホ長調ワルツには ひとつの因縁話があります。後に ワルツ王として 父ヨハン以上の成功を収めることになる息子ヨハン・シュトラウス二世ですが、音楽家になることについては 父ヨハンは強く反対していました。その反対を押し切ってデビューした 最初のコンサートで、息子ヨハン二世オープニング・ナンバーの1曲目として選んだのが まさにこの「ローレライ~ 」だったのです。息子ヨハンは ステージ上で この曲を始める前、これが「自分が最も尊敬している作曲家の代表作 」であると告げ、会場の聴衆から 心のこもった大きな喝采を受けたということです。
もとい。 1979年ニューイヤーの実況録音ロンドン / デッカのデジタル・ライヴ第一弾にして、またメジャー・レーベル初のデジタル・レコーディングとして、当時としては異例のスピードで(ヨーロッパでは 4月、日本でも 5月 )リリースされたことは、当時高校生だった 私“スケルツォ倶楽部”発起人も リアルタイムで出会った記憶があります。
レコードの針を盤面に降ろしてすぐに気づいたことは、アナログ録音特有の原テープの歪みによるとされる耳障りなヒスノイズが全く聞こえない 完全に無音の状態から、ムジークフェラインザールの聴衆のざわめきや拍手が湧き起こり、そしてウィーンフィルの楽員が楽器を構える様子が - 弦楽器奏者の指が開放弦に触れる時に鳴ってしまう微かな弦の音までも - それとわかるほど鮮明に聞こえたことです。ウィーンフィルの低音弦がワルツのリズムを刻む生々しさは、衝撃に近い驚きでした。

他にも シュトラウス・ファミリー変ホ長調の作品を 思いつくまま列記すると・・・
小澤征爾_2002年
ヨハン・シュトラウス二世 
ワルツ「酒、女、歌 」、常動曲 Perpetumn Mobile

が聴ける、小澤征爾の年(2002年 )
変ホ長調の音楽_0002

ヨゼフ・シュトラウス 
ワルツ「オーストリアの村つばめ 」

が聴ける、カルロス・クライバーの年(1992年 )


グールド ブラームス 間奏曲集
ブラームス 
間奏曲 変ホ長調Op.117の1

これは 絶対に外せませんよね。
過去の記事は こちら ⇒ グレン・グールドが描く ブラームス「間奏曲集 」を聴く。


1812年_ドラティ ミネアポリス交響楽団(Mercury )
▲ チャイコフスキー
序曲「1812年 」



マーラー_千人の交響曲_クラウディオ・アバド ベルリン・フィル_D.G.
マーラー
交響曲第8番 変ホ長調
クラウディオ・アバド / ベルリン・フィル
シェリル・ステューダー(ソプラノ1:贖罪の女 )
シルヴィア・マクネアー(ソプラノ2:罪の女 )
アンドレア・ロスト(ソプラノ3:栄光の聖母 )
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(アルト1:サマリアの女 )
ローゼマリー・ラング(アルト2:エジプトのマリア )
ペーター・ザイフェルト(テノール:マリア崇拝の博士 )
ブリン・ターフェル(バリトン:法悦の教父 )
ヤン=ヘンドリク・ロータリング(バス:黙想の教父 )
ベルリン放送合唱団、プラハ・フィルハーモニー合唱団、テルツ少年合唱団
録音:1994年 2月、ベルリン
D.G.

 いわゆる 「千人の交響曲 」 ・・・今までずっと 最初に刷り込まれたショルティ / シカゴ交響楽団(Decca )盤ばかりを聴いてまいりましたが、最近 逝去したアバドを偲んで 久しぶりにD.G.盤を聴き直してみたら、すっきりと透徹したパースペクティヴが たいへん聴きやすく、マーラーの知られざる一面を アバドが新たに開陳し得ていることは大きな功績と思います。かつてオペラ指揮者としてのキャリアを築き上げたクラウディオ・アバドの「力づくではない 」力量とその真価に目ざめました。


シベリウス_交響曲 第5番 変ホ長調_マゼール_ウィーンフィルDecca_(UCCD-7222 )
シベリウス
交響曲 第5番 変ホ長調 作品82
組曲「カレリア 」から 第1曲「間奏曲 」
ロリン・マゼール / ウィーン・フィル
録音:1966年 2月(交響曲 )、1963年(「カレリア」 )ウィーン
Decca(UCCD-7222 )

今回「変ホ長調の交響曲 」といえば 何があったかなーと考えて、まっ先に連想したのが、シベリウスの この 5番でした。
個人的に思い入れの深いバルビローリ(EMI )盤は別格にして、カラヤン(D.G. )盤、ベルグルンド(EMI )盤、オーマンディ(RCA )盤など 比較試聴してみましたが、意外にも 若きロリン・マゼールがタクトを振った 雄弁なウィーン・フィルデッカ盤が 私の耳にはたいへん新鮮に響き、今回 おススメの一枚とさせて頂きました。
自由自在なウィンナ・ホルンのアンサンブルがやはり素晴らしく「変ホ長調 」が「ホルンの調 」たる所以だなあと改めて実感した次第。
氷河に削られた湖と深い森林を眼下に見おろしながら高く飛ぶように滑空する第3楽章、雲が流れるほど高い場所まで上昇するホルン・アンサンブル 変ホ長調でゆっくりと深呼吸を始めるようなフレーズを繰り返すところ、そして間もなくハ長調に転調する瞬間なんか もう 涙が出るくらい好きです。
シベリウスなら これも名曲 「カレリア 」冒頭、魅力的な「間奏曲 」も 変ホ長調 ! 。


エルガー_エニグマ変奏曲_バーンスタイン_BBC交響楽団_D.G.
エルガー
エニグマ変奏曲から
第9変奏曲「ニムロッド 」変ホ長調
バーンスタイン /  BBC交響楽団
録音:1987年 ロンドン
D.G.

ご存知のとおり「エニグマ 」とは、ギリシア語で「謎なぞ 」の意。
この名曲は、主題(注:テーマはト短調 )14の変奏曲からできていますが、各変奏のタイトルとして付されているイニシャルや略称などから、エルガー研究者によって、その謎解きは ほぼ完了しているとされます。
しかし、エルガー自身が残した別のヒント「この変奏曲は、主題とは別に、作品中に現われない謎の主題も使われている 」という「もうひとつのエニグマ 」発言があり、こちらの謎は 今も まだ解けていないということになるそうです。
第9変奏曲「ニムロッド Nimrod 」は、エルガーの友人で 楽譜出版社ノヴェロ社に勤めていたアウグスト・イェーガー August Jaeger の人柄を表し、かつて彼と親しく散策しながら芸術について論じ合った一夜の思い出を エルガーが音楽で描いたものとされます。
変ホ長調で書かれた「ニムロッド 」は、「エニグマ変奏曲 」のうちでも 最も有名な美しい部分で、コンサート等では 単独で演奏できるよう編曲された版も多く存在するそうです。


ホルスト「惑星」_ノリントン SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
ホルスト
組曲「惑星 」から
第4曲「木星 」ジュピター Jupiter, the Bringer of Jollity

中間部 アンダンテ・マエストーソの旋律が「変ホ長調
ロジャー・ノリントン / SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
録音:2001年 6月 シュトゥットガルト

木星 」は 組曲中の「スケルツォ 」に相当する楽曲で、主調はハ長調とされますが 全曲中でもおそらく最もポピュラーなパートが、このトリオ部分に現れるアンダンテ・マエストーソメロディでしょう、「変ホ長調 」で書かれている部分です。
この変ホ長調のメロディには イギリスの外交官セシル・スプリング=ライス Cecil Spring-Rice(1859 – 1918 )が1918年に書いた詩「我は汝に誓う、わが祖国よ I Vow To Thee, My Country 」があてられ、その後 イングランドの愛国的な賛歌として広く歌われるようになったそうです。エルガーの「威風堂々 」と似たエピソードですね。
おススメCDの演奏について。
さすがノリントンが指揮すると 近代のホルストまで異なるレシピで調理された料理に仕上がってしまいます。うーん、オモシロい ! 弦の運弓と左手の動きに注目すれば それらは瞭然ですが、ぜひご自分の耳でお確かめになってください。 「木星 」冒頭「金星 」中間部以降の 弦セクション辺りに注目されると 判りやすいと思いますよ。


ショスタコーヴィッチ 交響曲第9番変ホ長調_バーンスタイン ニューヨーク・フィル
▲ ショスタコーヴィチ
交響曲第9番 変ホ長調
レナード・バーンスタイン / ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1965年、ニューヨーク CBS



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コメント

発見。 さすが、岡本先生

岡本先生の「早わかりクラシック音楽講座 」において「Es-Dur(変ホ長調 ) 」と題されたコラムが投稿されているのを発見しました。しかも すでに7年前(2007年9月 )に・・・! 
こちら http://classic.opus-3.net/column/es-dur2007914/
“スケルツォ倶楽部”発起人、後塵を拝しましたね(脱帽 )。

URL | “スケルツォ倶楽部”発起人 ID:-

岡本先生も 「変ホ長調 」派 ?!

好きなものに 理由なんか、いりませんよね !
岡本先生も 「変ホ長調 」の同志と知った瞬間、今 発起人の頭の中は ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第26番から 歓喜の第3楽章 が大炸裂中(笑 )

URL | “スケルツォ倶楽部”発起人 ID:-

同じくです

こんばんは。
同じく僕も変ホ長調の作品には一際思い入れが強いです。
理由は・・・、やっぱりわかりません。(笑)
僕の感覚では「宇宙的広がり」に長けた曲が多いように思いますが。

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