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パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を、
オリジナルの 「変ホ長調( ! ) 」 で聴く。


Paganini.jpg パガニーニ ヴァイオリン協奏曲_マッシモ・クァルタ(Dynamic ) Massimo Quarta
パガニーニ
ヴァイオリン協奏曲 第1番 変ホ長調 ( ! ) 作品6
マッシモ・クァルタ Massimo Quarta(Vn. 指揮 )
ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ劇場管弦楽団 Orchestra del Teatro Carlo Felice di Genova
録 音:1999年7月、イタリア ジェノヴァ
音 盤:Dynamic CDS-260(併録:第2番ロ短調 )

 これは、パガニーニ自身が所有していた銘器グァルネリを用いての世界初録音というだけでも興味深い企画盤です。
 1742年製グァルネリ“デル・ジェズ”( = 通称「キャノン砲 」 )は、現在ジェノヴァ市庁舎に永久保存されています。パガニーニ自身のデモーニッシュ「悪魔的 」と言われた技巧を想像することは出来なくても、彼が愛用していた楽器が現存することによって 少なくとも その楽器の「音色 」だけは こうして聴くことが出来るのです。
 しかし それ以上に 私 “スケルツォ倶楽部発起人が注目し、この録音盤の価値を高めているのは、これが「原典版 」 すなわち 作曲者 = オリジナル・ソリストだった パガニーニ自身の意図したとおりの方法で、演奏されている - ということなのです。

 パガニーニヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 において、作曲者が自筆譜で指定した「原典版 」のキーとは、意外なことに「変ホ長調 」でした。
 どういうことかというと、初演当時 ソリストのパガニーニは (独奏者の楽譜だけは「ニ長調 」で記譜していながら、わざわざ半音高くチューニングすることによって ) 張力を高めたヴァイオリン・ソロだけ 際立って輝かしく響く仕掛け(トリック )を施していたのでした。これが、パガニーニのカラクリ技法「スコルダトゥーラ 」です。
 今日(こんにち )では この協奏曲は、どんなヴァイオリニストも どこの指揮者もオーケストラも 当たり前のように「ヤラセなしのニ長調 」で演奏しています。レコード(CD )で聴く限りにおいて、フランチェスカッティリッチグリュミオーコーガンシェリングレビンアッカルドパールマンカントロフ シャハムムローヴァヴェンゲーロフハーン石川静五嶋みどり諏訪内晶子庄司紗矢香も・・・ みんな「ニ長調 」です。
 
 しかし、これは - 逆説的ですが - 作曲者の意図を無視しています(笑 )。 ・・・いえ、そもそもパガニーニが ここで「スコルダトゥーラ 」を用いた意図、それ自体が 邪(よこしま )な 外面的効果を狙って 聴衆を騙すようなトリックだったのだから、という偏見が 今日(こんにち )では一般的なので 仕方ないですが、これが作曲者による「演奏効果 」を狙った特殊な戦法の結果であったとするならば、世間には 他に受け容れられている事例もあるということを 私たちは知らなければなりません。

モーツァルト_ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364 モーツァルト 最期の年
▲ たとえば W.A.モーツァルトが作曲した「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364 」のヴィオラ・ソロだって パガニーニと同じく 全ての弦を半音ずつ高く調弦、ニ長調のパート譜を演奏するよう指示されています( この初演では モーツァルト自身がヴィオラ・パートのソリストを務めており、当時ライヴァルだったヴァイオリン奏者と張り合った - などという伝説も残っています )。
レリ・グリスト マーラー 交響曲第4番(バーンスタイン )Sony Gustav Mahler
▲ 同じく、マーラー交響曲4番スケルツォ楽章においても、コンサートマスターは、すべての弦を全音(長2度 )ずつ高く調弦したスコルダトゥーラのヴァイオリンを別に用意し、第2楽章の冒頭から これでソロを弾かなければなりません。

 ・・・しかし これらの指定は今日のコンサートホールでは 普通に順守されています。なぜなら、これが 作曲者の意図したところ だからです。
 でも そう考えたら、パガニーニヴァイオリン協奏曲第1番こそ、オーセンティックなオリジナル版が尊重される現代のこと、作曲者が もともと狙ったとおりに演奏されるべきではないでしょうか - と、“スケルツォ倶楽部発起人は 強く主張したいです。

 もとい。 そういうわけで、この協奏曲 の成り立ちを 初めて知った高校生の頃から、私 発起人は、これを「変ホ長調 」で演奏されているレコードがないか 必死に調べてみたものです・・・ が、これが意外や 全く存在しないのです。「これが 今の見識と言えるやつなのかなー 」などと考えながら、しかし あきらめきれない想いを抱いてきました。
 そんな頃 - といっても 今から10年以上前でしたが - 発見した一枚が、 コレだったのです。

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲_マッシモ・クァルタ(Dynamic )
▲ パガニーニが生前 愛用していた銘器グァルネリを用い、
「ヴァイオリン協奏曲第1番 」を オリジナル・キーの「変ホ長調 」で演奏するという試み
ヴァイオリン協奏曲 第1番 変ホ長調 作品6
マッシモ・クァルタ(Vn. 指揮) ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ劇場管弦楽団
録音:1999年7月、イタリア ジェノヴァ
音盤:Dynamic CDS-260


 このコンチェルトを パガニーニが自筆譜で指定したオリジナルの「変ホ長調 」で聴けるディスクは、今の時点では おそらく これしかありません。
 そして唯一の音盤も その内容は、デモーニッシュな表情こそ薄く 端正な演奏ではありますが 飛び切りの素晴らしさです。このディスクは、パガニーニの真実の一端を窺える、数少ない試みであり、資料的な価値も高い録音の貴重盤である、と言えます。
 銘器グァルネリ“デル・ジェズ”を弾く栄誉を担うことになったヴァイオリン奏者マッシモ・クァルタは、1991年パガニーニ・コンクール優勝した実績を持つ実力派で、名手サルヴァトーレ・アッカルドの直弟子でもあるそうです。


シュローダーとルーシー (1)
 「ねえねえ、パガニーニってさ、絶対音感を持ってなかったんじゃない ? 」
 「はあ? また オマエったら、一体 何を根拠に そんなこと言うんだろ 」
 「だってさー、もし絶対音感あったとしたら ヴァイオリンのD線を弾いてE♭が鳴るようなチューニングって、気持ちワルくて とても演奏を続けられなかったじゃない ? 」
 「・・・なるほど それ、一理あるかも ?  」

 
パガニーニ作曲 ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調注目ディスクを聴く
パガニーニ ヴァイオリン協奏曲_クレーメル(Ariola Eurodisc ) ウィルヘルミ_August Wilhelmj
アウグスト・ヴィルヘルミ編曲版(1楽章のみ )
ギドン・クレーメル盤、写真右が ウィルヘルミ August Wilhelmj

アレンジされた管弦楽部分は、シューマン初期ワーグナー の作風を思わせる、とても新鮮な音響です。
その ヴィルヘルミという人は、19世紀ドイツの大ヴァイオリニスト。J.S.バッハの名曲「エア 」を 「G線上のアリア 」として ヴァイオリン独奏曲に編曲したことによって 広く知られ、また 第一回バイロイト音楽祭という歴史的な舞台(の下? )で コンサートマスターも務めました。

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲_ベンジャミン・シュミット(Oehms ) フリッツ・クライスラー(1875~1962)
フリッツ・クライスラー編曲版(1楽章のみ )
ベンジャミン・シュミット盤、写真右は クライスラー

クライスラーらしくない(?) サービス過剰なアレンジは、ちょっと凝り過ぎに聴こえます。 期待に反し、管楽器のオブリガードが絡むパートが多すぎて、これではソリストの動きが拘束され、伸び伸びプレイできない気がします。シュミットのヴァイオリンも 聴いていて とても歌いづらそうで、なんか気の毒な・・・。

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番 「ラ・カンパネッラ」(ヴィスロツキ指揮ワルシャワ国立フィル) 1966年PHILIPS パガニーニ ヴァイオリン協奏曲_イヴリー・ギトリス(Philips)
現行の ニ長調版で演奏された 膨大なディスクの中から一枚選ぶとしたら・・・
イヴリー・ギトリスの最高傑作のひとつ。

このバージョンなら名盤は無数にありますが、個人的におススメなのは やはりこの一枚。
たとえ第1楽章のイントロダクションで 第2主題の提示部分がカットされていようが、カデンツァ後のオーケストラによる終結部に大胆な省略があろうが、ガチンコで追いかけてくる ギトリスの跳躍するフィドルには もはや敵なし、その「アクロバティックな凄まじいヴァイオリンの鳴らし方は 扇情的(竹内貴久雄氏 ) 」という表現がぴったり。狂気さえ宿る もの凄さです。

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