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スヌーピーの作者シュルツ氏が語る、
シュローダー 」誕生秘話


シュローダー
 前回に引き続き「スヌーピー(コミック「ピーナッツ」)」の生みの親である チャールス・M.シュルツ氏が遺した言葉から、音楽について語っている文章を いくつかご紹介しましょう。

 ベートーベンの曲を弾くのが好きなシュローダーというアイデアは、『ピーナッツ』を始めた最初の年に読んだ音楽に関する本から来たものです。その本を読んでいたら、ベートーベン第九交響曲の楽譜の一部が掲載してありました。それがきっかけで、チャーリー・ブラウンが 第九を歌っている漫画を描きました。ずいぶんむかしのことで、ユーモアの質も今とは大きく違っていました。あの複雑な音符が漫画の登場人物の口から出てくるところを描けば、なかなかしゃれたものになるのではないかと思ったのです。さらに考えつづけ、一人の子供に おもちゃのピアノを弾かせたらどうだろう と思いついたのです」
 「・・・うちでは幼い娘のメレディスに、おもちゃのピアノを買ってあげたところでした。彼女はそのとき、まだ2歳でした。そこで思ったのです。赤ん坊として登場したばかりのシュローダーに、おもちゃのピアノを弾かせたらどうだろうかと。」
チャールズ・M.シュルツ/三川基好 訳 “ スヌーピーの50年 世界中が愛したコミック『ピーナッツ』 ”より 朝日新聞社)

 「長女のメレディスに買ってやった おもちゃのピアノ が、結局 シュローダーが毎日の練習に使うピアノになりました。ベートーヴェン第九交響曲の楽譜の一部が印刷されてあるのを見たのがきっかけで、シュローダーの この大作曲家に対する称賛の気持ちを扱った たくさんのエピソードのアイディアが湧いてきました。」
チャールズ・M.シュルツ/松岡和子 訳 “ ピーナッツ・ジュビリー ”より 角川書店)


ベートーヴェン作曲 「エリーゼのために」
 「音」を絵の中で正確に表現することは、味や匂いを表現するのと同様、不可能に近い技術です。また、コミックの絵の中で 鳴っている「音楽」を表現することも、非常に難しい課題でしょう。 作者は いろいろと工夫を凝らすことになります。
 たとえば、登場人物たちが歌を歌う場面があるとします。歌が有名なものであれば、その歌詞をフキダシの中に書き出すことによって メロディを知っている読者の記憶に委ねてしまう、というアイディアも ひとつの解決方法かもしれません。

♪ Happy Birthday Dear・・・ ♪ ・・・Beethoven  by Charles M.Schultz
 しかし、それは上記のように 誰もが知っている「有名な歌」に限られます。有名 とはいっても いわゆる ヒットチャートを賑わすような流行歌だと すぐに鮮度も落ちてしまいますから、よほど上質な曲でもない限り、読者も 来年には そのメロディを 忘れていることでしょう。 ましてや なじみの薄い歌や インストゥルメンタル(歌詞がない)楽曲の場合には 効果が生かせません。
 たとえば、この場面で こんな歌・・・
 
 「戦を前に 瞼の母を想ふ・・・」by Charles M. Schulz 
 「軍歌を歌ってるようだ 」ということはわかります。ここで 大事なのは「ライナスが おもちゃで 戦争ごっこをしていた 」というメッセージが 読者に伝わりさえ すればよいので、作者シュルツ氏は、この場合 必ずしも 音楽そのものを伝えるということまでは 意図していません。

 ・・・では、絵の中で具体的に特定の音楽を表現し、それを読者に伝える必要があった場合には、その作者は 一体 どうしたら良いのでしょう。 
Ⅰ Can’t Stand It ! Dont You Like Christmas Carols?
谷川俊太郎・訳(鶴書房 )

 登場人物の台詞の中に 曲名を登場させて、読者に伝えるという方法・・・
これは頻繁には使えない手法でしょう、使用には やはり限界があります。
 ・・・ 鑑賞者の側(読者)が 作品(コミック)を享受(読む)しようとする場合、紙に印刷されたものを手にしなければならない という状況は、(これから電子書籍の普及を考慮したとしても)まだ暫く続くでしょうから、平面上に描かれた絵の中に 一緒に楽譜を描き込むという表現方法が、現在の時点では ベターである、と言えるのではないでしょうか。
 そして、音楽を「紙媒体で伝える方法」として最も広く一般に認識されている表記・伝達方法の中でも 最善の手法は、やはり「楽譜 」であると思うのです。
 ただ、「楽譜を読めない読者も かなりいる 」という現実も考慮しなければならないでしょう。まんが作家の多くは 読者に気を遣い、たとえば「音楽を楽しんでいる登場人物」と一緒に 楽譜の一部も絵に描き込んだ上、さらに そのコマの外にも 「曲名」をお知らせする という 丁寧な工夫が凝らされています。
 たとえば、二ノ宮知子さん のご存知「のだめカンタービレ 」などは、音楽が主役ですから、名曲の登場シーンには その曲名ばかりか、作曲者や音楽の背景まで わかりやすく簡潔に解説する文章まで添えられているほどです(画の引用は自粛しますが、皆さまのお手元にある単行本を開いてみれば、素晴らしい用例に事欠くことはないでしょう )。

 「シュローダーが弾いている曲の楽譜を描くのは、ときにはとてもたいへんなことがあります。でも音符がページに並んでいるのが好きなのです。この点については常に正確さをこころがけています。読者の中にはシュローダーが弾いている曲を 当てて楽しんでいる人もいるかと思います 」
チャールズ・M.シュルツ/三川基好 訳 “ スヌーピーの50年 世界中が愛したコミック『ピーナッツ』 ”より 朝日新聞社 )


 ・・・はい、おっしゃるとおり! 「 曲を当てて楽しんでいる 」読者の 少なくとも一人は 私です(笑 )。
 たしかにシュルツ氏は 本物の楽譜を絵の中に用いてはいますが、それは多くの場合、音楽の「譜面 」というものの持つ デザイン的な美しさに対する シュルツ氏の愛情から発していた要素が大きかったようです。コミックの中で、シュローダーが「今日は何を弾いている 」という曲名を明かす必然性もありませんでした。わかる人がわかればよい、という程度のスタンスだったようです。
 その代わり、努力して正確な楽譜を引き写すことは シュルツ氏の プロの漫画家としての矜持 でもあり、また「常に本物を志向するこだわりを持つ 」という姿勢(初回の仮説)も手伝っていたように思います。
 そんな「本物 」志向のシュローダーが弾きこなすピアノが、実は「おもちゃ 」(!)という正反対のギャップがもたらす可笑しさもまた、シュルツ氏の描くコミック「ピーナッツ 」だけが持っている独特の空気でしょう。私が大好きなのは そんな感覚なのです。
ピアニストってお金になるの? 誰がお金の話を? これは「芸術」なんだぞ!

次回 (4)スヌーピーの作者シュルツ氏が語る「ベートーヴェンのパトロン、ロブコヴィッツ侯爵 」に続く・・・
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