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スケルツォ倶楽部”発起人/作 オリジナル・ストーリー
「サンタクロース物語 ~ It’s A Small World ~  」
この物語は、2010年11月30日から同年12月25日に投稿しました、
“スケルツォ倶楽部”発起人.作 の オリジナル連載小説に 手を加えたものです。

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「クリスマス・オラトリオ」クイケン(DENON)盤
(9)迫りくる危機 

「その子をこちらへ渡せ 」
「その子は、将来 王位簒奪者となる可能性を秘めているのだ 」
二人のユダヤ兵の両方が 同時に声を上げ、幼子を隠すように抱きしめているエリサベトのほうへ 一歩、近づきました。
 妻を守ろうと、宿の主人イヴリーが兵を阻(はば )みます。
「おい、宿泊客でないんだったら、こちらはお前らに用なんかない。出ていってくれ 」
父の大声を聞いて、母エリサベトの腕の中に抱かれた 2歳のイエスちゃんは 激しく泣き出しました。
「そうはいかん、ヘロデ王の命令だ。ベツレヘムで 2歳以下の男子を一人残らず始末せよ との王の指示なのだ 」
見かねたニコラウスが両手を広げ、彼らの間に 割って入りました。二人の兵士は、頑健な体格の木工職人を見上げると、思わず剣を構えました、
「何者だ、こいつは? 」
「オレは 通りがかりの旅行者で この宿屋の宿泊客だ。聞いていると、お前たちは二人とも 残虐な異教徒 ローマ兵ではなさそうだ、違うか 」
二人はたしかに ニコラウスやイヴリーらと同じ ユダヤ出身の兵卒でした。本来はローマ兵一人とユダヤ兵一人の二人一組で行動すべき予定のところ、人数の都合で ユダヤ兵の二人組で イヴリーの宿屋へ押し入ることになったのです。兵士は お互いに顔を見合わせました。 ・・・実は 彼らにとっても この任務は受け入れ難いものだったのです。
「ユダヤの兵だったら、お前らはオレたちと同朋ではないか。同じ民族の者が どうして われらを制圧している外国人の手先になって、同じ先祖を持つ同朋に - しかも 幼児に - 刃を向けようとするんだ、おかしくないか 」
二人のユダヤ兵は、手にしていた剣を下ろしてしまいました。この機を逃さず、ニコラウスも必死で、自分の懐中から おもちゃ制作の代金として東方三博士に支払を受けた 銀30枚の入った袋を 取り出しました。
「アブラハムの子孫であるお前たちと、同じ父祖を持つ我々とで 信頼の取引をしようではないか 」
と、ニコラウスは 二人の兵士にその金を全部渡しながら、憑かれたようにしゃべり続けました。
「お前たちは 立場上 受け入れ難い仕事をしなければならない、その事情をオレたちは察する。しかし、この報酬をもって 今 この時間だけ オレに雇われてくれないか 」
銀30枚は ローマでは 1か月暮らせる程度の金額でしたが、帝国より物価の遥かに安い、被支配地ユダヤ国内であれば、半年間は楽に生活出来るほどの価値がありました。二人で山分けすれば 当然二分の一ずつです。
「これをもって オレが依頼することは たった一つだ、簡単なことだ。この宿屋の子どもに会わなかった事にしてほしい。お前たちがここへ来る前に、この子と両親は 外国へ旅立った。お前たちは 留守になった建物に入ってきただけだ。どうだ、それだけのことだ 」
二人の兵士は 再び 顔を見合わせると しばらく小声で相談し合っていましたが、やがて 一人が 深く頷くと言いました。
「わかった、危険だが 取引させてもらおう。何も言わずに お前らと家族はその子を連れて 今すぐに旅立て 」
もう一人の 暗い声のユダヤ兵も言いました、
「そうだ、村はずれに 高いイチジクの木があるだろう、そこは 我々兵士の集合場所だから、そちらとは必ず反対の方向へ走れよ。お前たちの脱出が成功しなかった時には、それは 我ら二人にとっても危険なことになる 」
「さあ、早く!」
イヴリーは、彼の妻エリサベトと 2歳になる彼の息子イエスちゃんを抱きしめながら、ニコラウスには深い感謝の言葉を手短に述べると、次の瞬間 転げるように外へ走り出ました。ニコラウスも おもちゃの袋の口を締め、よっこらしょと肩に背負うと、親子に続いて 外に出ようとしました。
 しかし、その激しい雨の戸外には、すでにそれぞれの持ち場で一仕事終えた 残虐なローマ兵数名を引き連れた 近衛隊長ロンギヌスが 剣を抜いて 立っていたのです。

- つづく - 


- 解説 ―
銀貨30枚 のもつ意味
 ヘロデ王の命令 - 「ベツレヘム周辺の2歳以下の男子を一人残らず始末せよ 」 - を請けて、イヴリーエリザベトの一人息子イエスちゃんを標的とする二人の兵士が宿屋に侵入してきます。旅宿の主人家族を守ろうと、ニコラウスが 兵士らを買収するために取り出したお金 - 銀貨30枚 - は、キリストに捧げるおもちゃ(“小さな世界” )の製作代金として 東方三博士から支払を受けた全額です。
 ・・・お気づきでしょうか、それは 後にキリスト・イエスを裏切って 反対勢力に引き渡してしまうイスカリオテのユダに与えられることになる報酬額と同じ値です。( お金としての価値自体は置いておいて、 )それは 一命を贖(あがな )う重み であり、同時に 比喩的な意味で 一人の命が「世界 It's a Small World 」とも また同じ重み を持っている - ということに 紐づけてみたつもりです。


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