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スケルツォ倶楽部”発起人/作 オリジナル・ストーリー
「サンタクロース物語 ~ It’s A Small World ~  」
この物語は、2010年11月30日から同年12月25日に投稿しました、
“スケルツォ倶楽部”発起人.作 の オリジナル連載小説に 手を加えたものです。

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ヘロデ王を表敬訪問する 三賢者
(6)ヘロデ王 

 ヘロデ王は 激怒していました。
 七日前の午後、東の国から 裕福そうな身なりの占星術師三人が 突然 宮殿に立ち寄るやいなや「この国を治めることになる 神の御子の出生をお祝いに参りました 」などと 寝耳に水のようなことを言うので、そんな話は知らないぞ、と王は返事をしたのです。すると彼らは無邪気に、今宵 御子がお生まれになる場所が ベツレヘムのどこであっても 自分たちはつきとめる技術を持っています などと語るので、ヘロデ王も「それでは 御子に無事会えたら、どこにいらっしゃったか ぜひ知らせてほしい。余も 挨拶に行きたいから 」と鎌をかけてみると、彼らは やすやすとひっかかり 「もちろん、帰路 必ず立ち寄りましょう 」と約束の言葉を残して 宮殿を退出したのでした。
 しかし、翌日になっても そのまた翌日になっても、学者たちはヘロデのところへは現われず、今日で もう七日も経とうとしています。
「あの異邦人どもは 非礼にも約束を忘れたようだ、余を軽んじた罪は重いぞ。それ以上に、余の代わりに王国を支配する者の誕生など 想像することも出来ぬわ 」
 
 この当時 ユダヤの国の統治者が このヘロデ王でしたが、王は決して他人を信じることが出来ず、猜疑心ばかり強い頑迷な老人でした。けれど それには複雑な理由もありました。
 ヘロデ王は、当時ユダヤの国を軍事制圧していた 強大なローマ帝国の支配を認める立場にありました。帝国は、その見返りとして 彼にユダヤ王としての権限を与えていたのです。
 ヘロデ王は、圧政に苦しむ自国民の激しい反発を 力づくで抑えるために ローマ軍隊の力を借りているほどでしたから、ユダヤ教の自治組織 最高法院をはじめとする 国民のすべてから憎まれ、同時に恐れられてもいました。そしてヘロデ王もまた 反逆や謀反などの可能性に対しては、異常なまでに神経質だったのです。
 ヘロデ自身に代わって「この国を治めることになる 神の御子 」誕生などという情報を聞かせてしまったら、この残酷な王が選ぶ手段は もはや一つしかありません。彼は 東方三博士から「御子 」の住む場所を聞き出したら、「挨拶に 」どころか 即刻 捕まえに向かわせるつもりだったのです。

「もう待ってはおれん 」
王は、命令に忠実な 若い近衛隊長ロンギヌスを呼びました。ヘロデ王が直轄する王宮守備の近衛小隊は ローマ兵が半分、ユダヤ兵が半分の混合部隊で、特にローマ兵は たとえどんなに残虐なことであっても 王の命令なら顔色一つ変えず 完璧に遂行する訓練を帝国で受けてきていました。
 彼らは、ヘロデ王自身の求めによって その妻だった王妃ばかりか、つい2ヶ月前も ヘロデが血を分けた実の息子 ‐ それは かつて王が 後継者に指名するほど可愛がっていた王子まで - をも 謀反の疑惑から 処刑してしまったほどでした。しかし、今回ほど酷い命令は 過去一度もなかったのではないでしょうか。
 その命令とは、「ベツレヘムおよび周辺の 2歳以下の男子を すべてその場で 速やかに処刑すること 」というものでした。

- つづく - 


- 解説 ―
1.私 “スケルツォ倶楽部”発起人のストーリーに登場するヘロデ王は、主人公ニコラウスの対極に立つ位置の人物です。
 ささやかな日常生活の幸せを享受していた木工職人ニコラウスは、愛する妻マルタと息子カルロスを病気で失い、心から嘆き悲しむ存在ですが、その一方、「他人を信じることが出来ず、猜疑心ばかり強い頑迷な老人 」であるヘロデ王は、妻(王妃 )と息子(王子 )を 謀反の疑惑をかけて自ら殺してしまいます。家族の死に直面するという悲劇的な共通点以外は すべてが異なる二人ですが、その立場と心境もまた 互いに 何とかけ離れていることでしょうか。

2.近衛隊長ロンギヌス - 命令に忠実なこの登場人物は、それから30数年後 ゴルゴダの丘で十字架に磔にされたキリストの生死を確かめるために、その左脇腹を槍で突くローマの百卒長の若き日の姿です。その頃にはもう高齢で白内障を患っていましたが、キリストを槍で刺した時に その血が飛んで ロンギヌスの眼に入るのです。奇跡によって視力を取り戻したロンギヌスは改心し、その後 洗礼を受けて布教活動に入り、聖ロンギヌスとなるのでした。

ワーグナー
リヒャルト・ワーグナーの最後の作品 神秘的な舞台神聖祭典劇「パルジファル 」で、聖杯を守る騎士アムフォルタス王が 邪悪なクリングゾルに奪われてしまう(パルジファルが奪還する )聖槍が、伝承上このロンギヌスの槍であることは 言うまでもありません。


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